UNLEASH

いらはらい

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終焉

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 ハラハラと桜が舞い散り、殺風景だった校舎に早めの色鮮やかな風が訪れた。
 そんな舞い落ちる桜を、部活や帰宅で人が少なくなった教室のベランダから眺めていたマコトは軽くため息を吐き、左手にある念珠を眺めた。
 この念珠を着けてから数年の歳月が過ぎた。その頃に比べ、珠の中心にあるモヤのような黒い渦はかなり薄くなっていた。だが、透明に近いが呪いが解ける気配はまったく感じられなかった。
 この呪いはどういうわけか、男性であるマコトが女性になってしまうという不可思議な呪いだった。特殊な紐で髪を結い、一時的に呪いを封じ込める事はできるが、根本的な解決には至っていなかった。
 来年は卒業してここにはいない。それまでにこの呪いを解くことができるのかと不安が脳裏をかすめた。
 最近、憑かれる事があったが酷く……いや、霊的障害で見れば酷くはなかったが、警察案件に首を突っ込むような事に巻き込まれた。
 憑いた女性は自分以外の女性が同じような被害に遭わないようにして欲しい、という願いだった。呪いで女性の身体になれるマコトだからこそ、憑いた女性の無念を晴らし、そのおかげで被害に合う女性を未然に防げたとでも言おうか。
 幸いにもマコト達が関わった事がバレずに終わり事なきを得たが…… 
「なんであんな物騒なもんが存在してんだよ……」
 ため息混じりに呟き、ベランダの縁に頭をつけた。
「どうかしたの?」
 いつの間にか、アキが後ろに立っていた。不意に声をかけられ少し驚きはしたが、なんでもない、と体の向きを変え空を仰いだ。アキもその隣に寄り、同じようにベランダに背を預けマコトに話しかけた。
「そういえばさ、この前の件。あれから身体は大丈夫?」
 まさしく今、その事を考えていただけにコイツは自分の思考を読めるのでは?とマコトはアキを疑いたくなった。そんな事を思われているとはつゆ知らず、アキは何も答えないマコトに喋り続けた。
「あんな薬があるなんてびっくりだったね。あの子から聞いた時は睡眠薬なのかなって思ったけど。まさか男に戻ったらあんな事になるなんて……でも、女性の時にそういう行動取られてもボクは全然気にしないし……」
 アキの話しでマコトはその時の場面が浮かび、思わず顔を隠しその場に座り込んだ。
 急に座り込んだマコトに驚き、アキは心配して顔を近づけるも、耳まで赤くなっているのに気付き、慌てて身体を反らした。それと同時にマコトの拳が飛んできて、アキは回避できた事に胸をなで下ろした。
「あの話しはするな!」
 躱された事も相まって、マコトは過剰に怒りを露わにした。そんなマコトを気にもせず、アキは嬉々として口を開いた。
「ボクとしては、あんな激しく求められて嬉しかったけどね。信じてない訳ではなかったけど媚薬って存在していたんだね~」
 マコトが必死になって話題を避けていた理由はその薬物の作用が媚薬と言うモノであったからだ。
 薬物による暴行を止めてほしいと言う願いを晴らすため、そして証拠を取るために探偵まがいの行動をする事になったのだった。
 非力な女子高生に扮し接触したマコトに、警戒心がなかった男はまんまと策にはまり、手の内を明かした。その過程で薬物を注入された時は焦ったが、作用が効く前に反撃し、男はあえなく警察のお世話になったのだった。
 しばらく経っても薬剤の作用はなく、マコトには効かないのかと思っていた。だが残念と言うべきか、薬物の作用は機能していた。
 そう、先ほどアキが言ったように男に戻ってから発症したのだ。
 薬の作用が発症したマコトは、自分が自分じゃないと思うほど、狂ったようにアキを求めていた。何度登りつめても満たされず、このまま快楽に支配されるのではと思った。だが気を失い作用が消えるまで、アキが幾度も付き合ってくれたのだ。
 いくらアキと普通に身体を重ねているとは言え、狂い、乱れてアキを求めた自分が恥ずかしく、その時の記憶が鮮明に残っているだけに思い出したくないのであった。
「まぁ、現に呪いで女性になるのを見ているし?そういうモノが実在していても意外と不思議じゃないかもね?」
「知らねーし!それよかお前、最終進路決めたのか?先生と面談してただろ?」
 これ以上アキのペースにハマっていては疲れると思い、マコトは強引に話題を変えた。いつもならサラリと答える話題だが、アキの返答は濁したものだった。
「アレ?……就職って言ってなかったか?」
 先ほどと打って変わってアキの表情は明るいものではなかった。困ったような顔でマコトを見たが、桜が舞う校庭に視線を移した。マコトは立ち上がり、同じように校庭に視線を向けた。
「……決まったらキミにも話すから、ちょっと待っていてね」
「別にそんな構わねーよ。それにお前なら就職だろうが進学だろうが、どこでも行けるだろうし」
 風が強く吹き、校庭に舞い落ちた花びらが一気に運ばれていく。不規則に舞う花びらは、見るものによっては儚く美しく映るが、マコトは舞い散る桜を淋しげに見つめた。
「オレは……なんも決めてねー。先のことなんて……この呪いがどうなるのか分かんねぇのもある。でもそれ以上に自分がどうしたいのかも分かんねぇ……」
 

 ──全てが満たされ花が散る頃に──


 呪いを受けた時に女が残した言葉。これはどういう意味を持っているのか。未だに分からずにいるのであった。
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