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13 ーアイリッシュパブー
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いかにもアイリッシュパブ、という木製のファサードがどっしりとした店内に入る。
外からでも、開口部の大きな格子窓から中のクラシカルな内装の雰囲気が見えた。
「よお。来てやったぜ。」
斉藤は入り口をくぐって、カウンター奥でビールを注いでいる一際大柄な男に声をかけた。
斉藤と大柄な男は握手をして、もう片方の手ではお互いの肩や腕をバンバン叩いている。
「おいおい、両手に花じゃん。うらやましいねえ。」そう言って、大男は女性陣に近づき握手を求める。
2人はハンガリー歴が長いので会話はマジャール語だ。
「こいつここのオーナー。コルム・オブライエン。まあ悪友かな。」
斉藤がみんなで会話できるよう英語に切り替えた。
よろしく、とそれぞれ握手を交わす。
依子はうれしくて思わず話しかけてしまった。
「コルムさん? 私が世界で一番大好きな歌手のコルム・ウィルキンソンさんと同じ名前ですね。彼もアイルランド出身ですけれどご存知?」
コルムはびっくりした様子で、握手したまま斉藤を振りかえる。
「おい!驚いたな!ここで郷土の英雄、コルム・ウィルキンソンの名前を聞けるとは!」
そして空いた手でバンバンと依子の肩を叩きながら、
「この人は良い人だ!間違いない!」ガッハッハと豪快に笑う。
「おい、お前の馬鹿力でうちのスタッフを潰すなよ。」
さあまずは乾杯しよう、と斉藤は2人を奥のテーブル席へ促した。
最初の一杯を決めて斉藤がオーダーしに立ってくれた。
カウンターの中でビールを注いでいたコルムに、3人のビールとつまみを頼む。コルムは早速それぞれのビールを注ぎながら言う。
「で、本命はどっちだい? 若い方か?いや、違うな。若すぎるしお前の好みからするとちいと陽キャすぎる。
熟女の方だろ。そうだな。歳はいってそうだが、インテリで庇護欲が掻き立てられる、ちょっと頼りない感じもある。」
乾杯のビールを三杯受け取りながら
「やめてくれよ。すぐそういう方向に持ってくの。大事なスタッフだよ。それだけ。俺が女性関係が下手なの知ってるだろ。」
手だすなよ、と釘を刺してから斉藤はテーブルに向かった。
ガサツに見えて、相変わらず人間を見る目が鋭いな、と感心しつつ。
コルムが後をついてきて、3つの小さなショットグラスを差し出す。
ハンガリーのソウルドリンク、パーリンカだ。
「俺からの奢り。どうぞ楽しんでって。」
ありがたく頂戴して、ハンガリー式に乾杯する。
「「「Egészségedre!」」」
グラスをぶつけ合うことはせず、それぞれ高く掲げた後、グッと飲み干す。
「くう~~~!!きくう!」
思わず中村が声を漏らす。
喉を熱く焼くパーリンカの、それでいて芳醇な杏の香りを存分に楽しんだ。
次は日本式に、ビールをガチンとぶつけて、乾杯。
「うわ。美味しい!」
依子は思わず呟いて中村と顔を見合わせた。
選んだアイリッシュエールは、マーフィーズ。
「そうでしょ~。コルムのセンスはすごいんだから。ガラは悪いけど。」
斉藤が旧友を自慢する。
そこで店内BGMがコルム・ウィルキンソンのアルバムに切り替わったのがわかった。
コルム・ウィルキンソンは、ミュージカルの世界的スターだが、興味ない人にはわからないだろう。
それでもかけてくれたマスターの粋な計らいに感激し、思わずカウンターを振り返り、大男の姿を探す。
目が合うと、コルムはウインクしながらグッと親指を立ててくれた。依子もいいねサインを返した。
「今日はまず依子さんにお願いがあります。」
いきなり中村が切り出す。
「え、なんでしょう。」
姿勢を正して依子が答える。
「あのですね、いい加減私のことは『愛ちゃん』と呼んでください。一番若輩者なんですから。他人行儀でサビシイ。」
泣き顔を作って中村が言う。
「はあ、なんだ。でも年齢に関係なくお二人は私の上長ですしね。弁えなきゃと思って…」
依子は説明してみた。
「かたいっ! かたいっすよ。もっと私たちの前ではリラ~っくすしてくださいよ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。愛ちゃん、これからもよろしくお願いしますね。」
ウフ、ウフフ、と女2人で盛り上がっている。
「私も前から興味津々だったんですけどね。愛ちゃんはこれまで何カ国くらい放浪してきたんですか? 私もバックパック旅行好きで。」
「そうですねえ、60ヵ国はいったかな?」
「凄すぎる~。マヂ尊敬します。」
女の貧乏一人旅で気をつけるべきこと、荷造り、トラブルあるある、など大いに盛り上がっている。
会話に間ができたところで、斉藤が聞きたかったことを尋ねる。
「それで? 初個展のご感想は? 俺はどんな出会いがあったのか興味があってね。」
来たな、という目で愛が斉藤を見ている。
「そうですね~。順番に思い出しますね。
まずオーナーのテキトーイタリア人マルコ。いい加減すぎて面白いですが、大変よくしてもらいました。
それから日本人会の事務所にも宣伝のDM置かせてもらってたんですが、事務所の方。なんか暇を持て余している駐在員の奥さんたちとか、子供さん向けに講座を開けないか、みたいないいお話をいただきました。
あと、反物を買ってくださった、日本贔屓のご夫婦。また案内があれば送ってくれ、と言ってました。
それと、絵を買ってくださった年配のお爺さん。ちょっと謎な感じでした。
あとは、和紙の小物をけっこうたくさんの方が気に入って買ってくださいました。女性たちに人気で、喜んでもらえてとてもうれしかった。」
「印象的だったのはそんな感じ?」
まだあるんじゃないか、と斉藤は促す。
「あとはもちろんお二人や、ハンガリーの旧友のカロリンやその友人、親族とか。友人知人です。」
「カロリンさんって前にちらっと聞いたけど、昔からの知り合いなんだっけ?」
「そうなんです。父親同士が仕事仲間で、10代の頃に日本出張に来た時に知り合ったんですよ。それ以来の心の友です。」
「いいね。今度ウチの店にも連れていらっしゃいよ。」
「ぜひぜひ!ありがとうございます!」
「カロリンさんがいたってのがハンガリーに来た理由ですか? そもそもなんで移住を?」
今度は愛が質問する。
あー、うー、とうめきながら、いたって軽い調子を装いながら依子が話始めた。
「うん、まあ、すごく簡単に言うと、日本で辛い思い出をたくさん作っちゃったからかな。私バツイチなんですね。10年前くらいに、夫のDVが原因で離婚しました。
それからしばらく実家に帰ったあと作家として独立したんです。
その時に、なんか失ったものを取り戻すみたいに焦って婚活して、男性関係でたくさん失敗したんです。
悔しくて、情けなくて、恥ずかしくて、死にたいって思ってました。
別に悪いことしたわけじゃないんです。ただただ愚かだっただけ。
それが、自分で自分が許せないんです。」
依子は一口エールを飲む。
「まあそんなわけで、いろいろなことを日本に置いて、自分のことを知らない人たちの中で、ゼロからやり直して、淡々と日々を生きて、知らない土地の土に還りたいな、って思ったんです。
ハンガリーを選んだのは、全く知らない土地でもなくて、ほどよく放っといてくれる友人がいて、あと生活費が安いからです。」
依子は例によって、恥ずかしくて顔をあげられずにしゃべっていたのだが、愛を見れば悲しそうな顔をしている。
と思うと、ふわっと依子を抱きしめて、背中をトントンとしながら、
「大丈夫、大丈夫」と言ってくれた。
依子は涙がこぼれそうになった。
腕組みをして厳しい顔で静かに聞いていた斉藤が口を開く。
「まずさ、どんな理由があってもやっぱりパートナーに手あげちゃダメだよね。そういうのが好きな特殊な例は除いて。何年くらい続いたの?」
「結婚してすぐ兆候が出始めたんですけど、結婚生活は8年半でした。」
「8年?!!」2人が揃って声をあげた。
「よく我慢しましたねえ。。。」愛が言う。
また考えていた斉藤が話す。
「もしかして依子さんちって、親御さんがけっこう厳しい感じ? そんなに我慢してた、ってことは、途中まで気づいてなかったってことでしょ。
そういうふうに刷り込まれてたんじゃない?
あとさ、自分が情けない、愚かなのが許せない、って言うけど、愚かなののどこが悪いの。
みんな愚かなとこくらいあるよ。犯罪おかしたわけじゃないんだからさ。
それが許せないってことは、愚かであることとか、失敗とか許されない環境で育ったてことでしょ。」
依子はびっくりした。
「よくわかりますね~。私は自分でそんなふうに客観的になれたのは割と最近です。おっしゃるように、母が厳しい人で。
自分の理想通りに私をコントロールしたがる人でした。今は歳とっていくぶん丸くはなりましたけど。」
「俺、IQ180だからね~。」
ふふん、とさも当たり前のように斉藤は言う。
「愛ちゃんの言う通り。大丈夫大丈夫。もう次行こ、次! 今めっちゃがんばってるんだから自信持って。」
「次、ってなんすか。新しいオトコつかまえろよ、って話ですか。(俺みたいな、ってか。)」
愛が冷たい目で斉藤を見てくる。
「いやあ、、もういいかな。ほんと見る目がない、ってことがわかっちゃったから。どんなオトコでも自分が努力すれば楽しく2人で過ごせるんだ、みたいなドツボにハマっちゃうんですよね。
自分が我慢しさえすれば、その人を、2人の状態を良くすることができる、ってどこかで思い上がってるんでしょうね。あるいは無能な自分をドツボにはめて罰したいのかもしれない。」
依子はまた俯いてしまった。
「今はまださ、傷が癒えてないんじゃない。
がんばりすぎて疲れてるし、歳もとるし。
そのうち、元気が体に満ちてきたら自然とピカピカオーラが出て、いい出会いが向こうからやってくるよ。」
斉藤は賢明に慰める。
「ありがとうございます。親身になっていただいて。お二人と出会えたことがハンガリーでまず一番幸せなことです。」
いやあ、照れるなあ、と愛がまぜっかえす。
あんまりこの前みたいにくどくど愚痴っぽくなっちゃいかんな、と再度思い至ったところで、依子は思い出した。
「そう言えば、個展に来ていただいた人でね、面白い出会いがあったんですよ。」
偶然にもマックで出会った日本人男性、イチゴの話、『さくら』に置いたDMのおかげで再会できた話、先日ユダヤレストランに行った話。
一連の顛末を2人に聞かせる。
ユダヤレストランの菜食ビュッフェは激推しな件などにも脱線しつつ。
「田中君て言うの、その人。何歳くらい? そんな人うちに来たかな。」
日本人のお客さんは大抵覚えるようにしているんだがな、と斉藤が記憶を辿る。
「多分アラフォーじゃないかと思います。髪はボサボサで、黒縁メガネ。痩せ型かな。」
「ああ~、なんとなくわかった。すごい寡黙な感じでしょ。
気配を消すように意識してる雰囲気の。そう言えばレジでしばらくDMに見入ってたから、おすすめしたわ。」
(そいつか。依子さんの顔色を良くしたのは。)
(おっと、師匠、田中氏にロックオン。こりゃおもしろくなってきた。)
愛は内心で勝手にゴングを鳴らしている。
ちょっとお手洗いへ、と席を立った依子の姿が見えなくなるや、愛が斉藤の方へ身を乗り出して捲し立てる。
「ちょっと、ちょっと師匠。簡潔ながら、短い間にいろいろツッコミ満載なネタを聞きましたね~!誰しも人生いろいろですねえ! そんで、どうすんですか?」
「何がよ。そっとしときなさいよ。」
斉藤は余裕をかまして嗜める。
「その田中氏がヤベエやつだったらどうすんですか。
というかむしろめっちゃいいヤツだったらどうすんですか。あっという間に依子さん掻っ攫われちゃいますぜ。」
愛がふざけて下卑た言い方をする。
「彼女が幸せならそれでいいでしょ。
つかず離れず見守るのが友人の役目ですよ。」
斉藤は冷静に言ったかと思うと、でも、と言って付け加えた。
「まあ、ウチの店はぜひご贔屓にしてもらって、人となりを知っとくことは損ではないわな。」
「そ~お来なくっちゃ。」
うヒヒ、面白くなってきた、と揉み手をした愛は、あたしゃこの絶品なエールの数々をとりあえず制してきます。と言ってカウンターのコルムの元へそそくさと歩いて行った。
ーーー
愛と入れ違いに依子がテーブルに戻ってきた。
卓上にはコルムの絶品アイリッシュ料理が並んでいる。
「さすがに一流ホテル出身のシェフさんですねえ。まず見た目美しくて食欲をそそられます。香りと味はいわんや。」
いただきまーす、と言って手をつけ始める。
「愛ちゃんは食べなくていいんですか?」
カウンターに齧り付いてすでに大ジョッキを2杯空けている愛を見つけて手を振った。
「いいのよ。あの子はね、から酒なの。」
へえ!すごい~!と、さきほどからずっと愛の超人的能力に感嘆しきりだった依子が何度目かのスゴイを追加した。
酔いに任せて図々しく聞いてしまうんですけれど、と前置きしながら依子が言う。
「斉藤さんはパートナーとかいらっしゃらないんですか? すごく有能でいらっしゃるんだから、引くて数多でしょうに。」
「そりゃどうも。照れるなあ。」
と、全く照れていない様子で斉藤が淡々と答える。
ちなみに愛も斉藤もアルコールで全く顔色が変わっていない。ザルである。
一杯でもう出来上がりつつある依子だけがほっぺたを赤くしている。
「見てわかると思うけど、俺はさあ、あんまり人に優しくできないのよ。鋼のメンタルだから、弱い人の気持ちに共感できないの。人にどう思われようとあんまり気にしないし。
でも、女性ってやっぱり優しくしてもらうことで愛情を測るところあるじゃない。それに付き合いきれなくて、いつもダメになっちゃうんだよね。」
「うーん。
単純にそういう斉藤さんの性格と相性がいい人に出会ってないだけじゃないですかね。
同じように自分を持ってて、同じような共感力の人。」
依子が宙を見ながら考え考え言う。
「誰しも100%この色!っていう人はいないわけで、利己的なところ、優しいところ、自由なところ、いろんな色の気質が入れ子になってるわけですよね。
それぞれの色のパーセンテージが、ある人は赤みが強かったり、ある人は青みが強かったりで、バランスが違うだけで。
斉藤さんの性格のバランスと似たバランスの女性で、理解し合える人は必ずいますよね。
あるいは必ずしも似たバランスでなくて、真逆でもいいかもしれない。
補色みたいに反対の色同士はお互いを引き立てあいますから。
まあただ、、自分が好きになるタイプの人が必ずしも相性のいいタイプではないんだよな。そこがいつも問題で。
人のこと言えませんよね。私もそれでいつも失敗してるし。」
依子がふっと斉藤の目を見て言った。
「ふと思ったんですけど、斉藤さんが意識しなくて自然と優しくなれるような人に出会ってないんじゃないですかね。
本当に好きになったら、この人を大事にしたい、って思うわけでしょ?そしたら無理なく優しくできると思いますよ。」
「そうねえ。そういう出会いを期待するかな。もう還暦が見えてきてるけど。」
斉藤はやれやれというふうに言った。
「しかし対等に女と恋バナできるイケおじな斉藤さんはやっぱモテるはずですよ。」
励ますように依子が言う。
「やっぱそう思う?」
ご満悦で斉藤が言う。
(そこは否定しないんだ。。)依子は内心で笑ってしまう。
「俺、老いも若きも女性としゃべるの好きだからさ。
知り合いにいい人いたらどんどんお店に連れてきてよ~。
とりあえず商売的にありがたいし。」
(しっかりしてんね、、、)と思いつつ、とりあえず褒めるとどんどん機嫌が良くなる斉藤を見て、依子はその後もちょいちょい持ち上げながら、今後の参考に、と斉藤のビジネスの手法や過去の失敗談の話を聞き出していったのだった。
ーーー
「おいおい!この姉ちゃんすげえな!ザルだし、下手すると俺より詳しいぜ。」
すっかり意気投合したらしい愛とコルムが肩を組んで店を出てくる。
楽しい飲み会の時間はあっという間に過ぎ、いいお年頃の2人の体力が限界を迎えたところでお開きになり、斉藤と依子が外に出たところだった。
「この人なんせ女性の細腕一本で世界を渡り歩いてきた人だからね。経験と知識は俺より上だと思うよ。」
素直に斉藤が愛の実力を評価する。
また来いよ~というコルムの見送りを背に、3人は深夜のブダペストの街を歩いて、帰路についた。
外からでも、開口部の大きな格子窓から中のクラシカルな内装の雰囲気が見えた。
「よお。来てやったぜ。」
斉藤は入り口をくぐって、カウンター奥でビールを注いでいる一際大柄な男に声をかけた。
斉藤と大柄な男は握手をして、もう片方の手ではお互いの肩や腕をバンバン叩いている。
「おいおい、両手に花じゃん。うらやましいねえ。」そう言って、大男は女性陣に近づき握手を求める。
2人はハンガリー歴が長いので会話はマジャール語だ。
「こいつここのオーナー。コルム・オブライエン。まあ悪友かな。」
斉藤がみんなで会話できるよう英語に切り替えた。
よろしく、とそれぞれ握手を交わす。
依子はうれしくて思わず話しかけてしまった。
「コルムさん? 私が世界で一番大好きな歌手のコルム・ウィルキンソンさんと同じ名前ですね。彼もアイルランド出身ですけれどご存知?」
コルムはびっくりした様子で、握手したまま斉藤を振りかえる。
「おい!驚いたな!ここで郷土の英雄、コルム・ウィルキンソンの名前を聞けるとは!」
そして空いた手でバンバンと依子の肩を叩きながら、
「この人は良い人だ!間違いない!」ガッハッハと豪快に笑う。
「おい、お前の馬鹿力でうちのスタッフを潰すなよ。」
さあまずは乾杯しよう、と斉藤は2人を奥のテーブル席へ促した。
最初の一杯を決めて斉藤がオーダーしに立ってくれた。
カウンターの中でビールを注いでいたコルムに、3人のビールとつまみを頼む。コルムは早速それぞれのビールを注ぎながら言う。
「で、本命はどっちだい? 若い方か?いや、違うな。若すぎるしお前の好みからするとちいと陽キャすぎる。
熟女の方だろ。そうだな。歳はいってそうだが、インテリで庇護欲が掻き立てられる、ちょっと頼りない感じもある。」
乾杯のビールを三杯受け取りながら
「やめてくれよ。すぐそういう方向に持ってくの。大事なスタッフだよ。それだけ。俺が女性関係が下手なの知ってるだろ。」
手だすなよ、と釘を刺してから斉藤はテーブルに向かった。
ガサツに見えて、相変わらず人間を見る目が鋭いな、と感心しつつ。
コルムが後をついてきて、3つの小さなショットグラスを差し出す。
ハンガリーのソウルドリンク、パーリンカだ。
「俺からの奢り。どうぞ楽しんでって。」
ありがたく頂戴して、ハンガリー式に乾杯する。
「「「Egészségedre!」」」
グラスをぶつけ合うことはせず、それぞれ高く掲げた後、グッと飲み干す。
「くう~~~!!きくう!」
思わず中村が声を漏らす。
喉を熱く焼くパーリンカの、それでいて芳醇な杏の香りを存分に楽しんだ。
次は日本式に、ビールをガチンとぶつけて、乾杯。
「うわ。美味しい!」
依子は思わず呟いて中村と顔を見合わせた。
選んだアイリッシュエールは、マーフィーズ。
「そうでしょ~。コルムのセンスはすごいんだから。ガラは悪いけど。」
斉藤が旧友を自慢する。
そこで店内BGMがコルム・ウィルキンソンのアルバムに切り替わったのがわかった。
コルム・ウィルキンソンは、ミュージカルの世界的スターだが、興味ない人にはわからないだろう。
それでもかけてくれたマスターの粋な計らいに感激し、思わずカウンターを振り返り、大男の姿を探す。
目が合うと、コルムはウインクしながらグッと親指を立ててくれた。依子もいいねサインを返した。
「今日はまず依子さんにお願いがあります。」
いきなり中村が切り出す。
「え、なんでしょう。」
姿勢を正して依子が答える。
「あのですね、いい加減私のことは『愛ちゃん』と呼んでください。一番若輩者なんですから。他人行儀でサビシイ。」
泣き顔を作って中村が言う。
「はあ、なんだ。でも年齢に関係なくお二人は私の上長ですしね。弁えなきゃと思って…」
依子は説明してみた。
「かたいっ! かたいっすよ。もっと私たちの前ではリラ~っくすしてくださいよ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。愛ちゃん、これからもよろしくお願いしますね。」
ウフ、ウフフ、と女2人で盛り上がっている。
「私も前から興味津々だったんですけどね。愛ちゃんはこれまで何カ国くらい放浪してきたんですか? 私もバックパック旅行好きで。」
「そうですねえ、60ヵ国はいったかな?」
「凄すぎる~。マヂ尊敬します。」
女の貧乏一人旅で気をつけるべきこと、荷造り、トラブルあるある、など大いに盛り上がっている。
会話に間ができたところで、斉藤が聞きたかったことを尋ねる。
「それで? 初個展のご感想は? 俺はどんな出会いがあったのか興味があってね。」
来たな、という目で愛が斉藤を見ている。
「そうですね~。順番に思い出しますね。
まずオーナーのテキトーイタリア人マルコ。いい加減すぎて面白いですが、大変よくしてもらいました。
それから日本人会の事務所にも宣伝のDM置かせてもらってたんですが、事務所の方。なんか暇を持て余している駐在員の奥さんたちとか、子供さん向けに講座を開けないか、みたいないいお話をいただきました。
あと、反物を買ってくださった、日本贔屓のご夫婦。また案内があれば送ってくれ、と言ってました。
それと、絵を買ってくださった年配のお爺さん。ちょっと謎な感じでした。
あとは、和紙の小物をけっこうたくさんの方が気に入って買ってくださいました。女性たちに人気で、喜んでもらえてとてもうれしかった。」
「印象的だったのはそんな感じ?」
まだあるんじゃないか、と斉藤は促す。
「あとはもちろんお二人や、ハンガリーの旧友のカロリンやその友人、親族とか。友人知人です。」
「カロリンさんって前にちらっと聞いたけど、昔からの知り合いなんだっけ?」
「そうなんです。父親同士が仕事仲間で、10代の頃に日本出張に来た時に知り合ったんですよ。それ以来の心の友です。」
「いいね。今度ウチの店にも連れていらっしゃいよ。」
「ぜひぜひ!ありがとうございます!」
「カロリンさんがいたってのがハンガリーに来た理由ですか? そもそもなんで移住を?」
今度は愛が質問する。
あー、うー、とうめきながら、いたって軽い調子を装いながら依子が話始めた。
「うん、まあ、すごく簡単に言うと、日本で辛い思い出をたくさん作っちゃったからかな。私バツイチなんですね。10年前くらいに、夫のDVが原因で離婚しました。
それからしばらく実家に帰ったあと作家として独立したんです。
その時に、なんか失ったものを取り戻すみたいに焦って婚活して、男性関係でたくさん失敗したんです。
悔しくて、情けなくて、恥ずかしくて、死にたいって思ってました。
別に悪いことしたわけじゃないんです。ただただ愚かだっただけ。
それが、自分で自分が許せないんです。」
依子は一口エールを飲む。
「まあそんなわけで、いろいろなことを日本に置いて、自分のことを知らない人たちの中で、ゼロからやり直して、淡々と日々を生きて、知らない土地の土に還りたいな、って思ったんです。
ハンガリーを選んだのは、全く知らない土地でもなくて、ほどよく放っといてくれる友人がいて、あと生活費が安いからです。」
依子は例によって、恥ずかしくて顔をあげられずにしゃべっていたのだが、愛を見れば悲しそうな顔をしている。
と思うと、ふわっと依子を抱きしめて、背中をトントンとしながら、
「大丈夫、大丈夫」と言ってくれた。
依子は涙がこぼれそうになった。
腕組みをして厳しい顔で静かに聞いていた斉藤が口を開く。
「まずさ、どんな理由があってもやっぱりパートナーに手あげちゃダメだよね。そういうのが好きな特殊な例は除いて。何年くらい続いたの?」
「結婚してすぐ兆候が出始めたんですけど、結婚生活は8年半でした。」
「8年?!!」2人が揃って声をあげた。
「よく我慢しましたねえ。。。」愛が言う。
また考えていた斉藤が話す。
「もしかして依子さんちって、親御さんがけっこう厳しい感じ? そんなに我慢してた、ってことは、途中まで気づいてなかったってことでしょ。
そういうふうに刷り込まれてたんじゃない?
あとさ、自分が情けない、愚かなのが許せない、って言うけど、愚かなののどこが悪いの。
みんな愚かなとこくらいあるよ。犯罪おかしたわけじゃないんだからさ。
それが許せないってことは、愚かであることとか、失敗とか許されない環境で育ったてことでしょ。」
依子はびっくりした。
「よくわかりますね~。私は自分でそんなふうに客観的になれたのは割と最近です。おっしゃるように、母が厳しい人で。
自分の理想通りに私をコントロールしたがる人でした。今は歳とっていくぶん丸くはなりましたけど。」
「俺、IQ180だからね~。」
ふふん、とさも当たり前のように斉藤は言う。
「愛ちゃんの言う通り。大丈夫大丈夫。もう次行こ、次! 今めっちゃがんばってるんだから自信持って。」
「次、ってなんすか。新しいオトコつかまえろよ、って話ですか。(俺みたいな、ってか。)」
愛が冷たい目で斉藤を見てくる。
「いやあ、、もういいかな。ほんと見る目がない、ってことがわかっちゃったから。どんなオトコでも自分が努力すれば楽しく2人で過ごせるんだ、みたいなドツボにハマっちゃうんですよね。
自分が我慢しさえすれば、その人を、2人の状態を良くすることができる、ってどこかで思い上がってるんでしょうね。あるいは無能な自分をドツボにはめて罰したいのかもしれない。」
依子はまた俯いてしまった。
「今はまださ、傷が癒えてないんじゃない。
がんばりすぎて疲れてるし、歳もとるし。
そのうち、元気が体に満ちてきたら自然とピカピカオーラが出て、いい出会いが向こうからやってくるよ。」
斉藤は賢明に慰める。
「ありがとうございます。親身になっていただいて。お二人と出会えたことがハンガリーでまず一番幸せなことです。」
いやあ、照れるなあ、と愛がまぜっかえす。
あんまりこの前みたいにくどくど愚痴っぽくなっちゃいかんな、と再度思い至ったところで、依子は思い出した。
「そう言えば、個展に来ていただいた人でね、面白い出会いがあったんですよ。」
偶然にもマックで出会った日本人男性、イチゴの話、『さくら』に置いたDMのおかげで再会できた話、先日ユダヤレストランに行った話。
一連の顛末を2人に聞かせる。
ユダヤレストランの菜食ビュッフェは激推しな件などにも脱線しつつ。
「田中君て言うの、その人。何歳くらい? そんな人うちに来たかな。」
日本人のお客さんは大抵覚えるようにしているんだがな、と斉藤が記憶を辿る。
「多分アラフォーじゃないかと思います。髪はボサボサで、黒縁メガネ。痩せ型かな。」
「ああ~、なんとなくわかった。すごい寡黙な感じでしょ。
気配を消すように意識してる雰囲気の。そう言えばレジでしばらくDMに見入ってたから、おすすめしたわ。」
(そいつか。依子さんの顔色を良くしたのは。)
(おっと、師匠、田中氏にロックオン。こりゃおもしろくなってきた。)
愛は内心で勝手にゴングを鳴らしている。
ちょっとお手洗いへ、と席を立った依子の姿が見えなくなるや、愛が斉藤の方へ身を乗り出して捲し立てる。
「ちょっと、ちょっと師匠。簡潔ながら、短い間にいろいろツッコミ満載なネタを聞きましたね~!誰しも人生いろいろですねえ! そんで、どうすんですか?」
「何がよ。そっとしときなさいよ。」
斉藤は余裕をかまして嗜める。
「その田中氏がヤベエやつだったらどうすんですか。
というかむしろめっちゃいいヤツだったらどうすんですか。あっという間に依子さん掻っ攫われちゃいますぜ。」
愛がふざけて下卑た言い方をする。
「彼女が幸せならそれでいいでしょ。
つかず離れず見守るのが友人の役目ですよ。」
斉藤は冷静に言ったかと思うと、でも、と言って付け加えた。
「まあ、ウチの店はぜひご贔屓にしてもらって、人となりを知っとくことは損ではないわな。」
「そ~お来なくっちゃ。」
うヒヒ、面白くなってきた、と揉み手をした愛は、あたしゃこの絶品なエールの数々をとりあえず制してきます。と言ってカウンターのコルムの元へそそくさと歩いて行った。
ーーー
愛と入れ違いに依子がテーブルに戻ってきた。
卓上にはコルムの絶品アイリッシュ料理が並んでいる。
「さすがに一流ホテル出身のシェフさんですねえ。まず見た目美しくて食欲をそそられます。香りと味はいわんや。」
いただきまーす、と言って手をつけ始める。
「愛ちゃんは食べなくていいんですか?」
カウンターに齧り付いてすでに大ジョッキを2杯空けている愛を見つけて手を振った。
「いいのよ。あの子はね、から酒なの。」
へえ!すごい~!と、さきほどからずっと愛の超人的能力に感嘆しきりだった依子が何度目かのスゴイを追加した。
酔いに任せて図々しく聞いてしまうんですけれど、と前置きしながら依子が言う。
「斉藤さんはパートナーとかいらっしゃらないんですか? すごく有能でいらっしゃるんだから、引くて数多でしょうに。」
「そりゃどうも。照れるなあ。」
と、全く照れていない様子で斉藤が淡々と答える。
ちなみに愛も斉藤もアルコールで全く顔色が変わっていない。ザルである。
一杯でもう出来上がりつつある依子だけがほっぺたを赤くしている。
「見てわかると思うけど、俺はさあ、あんまり人に優しくできないのよ。鋼のメンタルだから、弱い人の気持ちに共感できないの。人にどう思われようとあんまり気にしないし。
でも、女性ってやっぱり優しくしてもらうことで愛情を測るところあるじゃない。それに付き合いきれなくて、いつもダメになっちゃうんだよね。」
「うーん。
単純にそういう斉藤さんの性格と相性がいい人に出会ってないだけじゃないですかね。
同じように自分を持ってて、同じような共感力の人。」
依子が宙を見ながら考え考え言う。
「誰しも100%この色!っていう人はいないわけで、利己的なところ、優しいところ、自由なところ、いろんな色の気質が入れ子になってるわけですよね。
それぞれの色のパーセンテージが、ある人は赤みが強かったり、ある人は青みが強かったりで、バランスが違うだけで。
斉藤さんの性格のバランスと似たバランスの女性で、理解し合える人は必ずいますよね。
あるいは必ずしも似たバランスでなくて、真逆でもいいかもしれない。
補色みたいに反対の色同士はお互いを引き立てあいますから。
まあただ、、自分が好きになるタイプの人が必ずしも相性のいいタイプではないんだよな。そこがいつも問題で。
人のこと言えませんよね。私もそれでいつも失敗してるし。」
依子がふっと斉藤の目を見て言った。
「ふと思ったんですけど、斉藤さんが意識しなくて自然と優しくなれるような人に出会ってないんじゃないですかね。
本当に好きになったら、この人を大事にしたい、って思うわけでしょ?そしたら無理なく優しくできると思いますよ。」
「そうねえ。そういう出会いを期待するかな。もう還暦が見えてきてるけど。」
斉藤はやれやれというふうに言った。
「しかし対等に女と恋バナできるイケおじな斉藤さんはやっぱモテるはずですよ。」
励ますように依子が言う。
「やっぱそう思う?」
ご満悦で斉藤が言う。
(そこは否定しないんだ。。)依子は内心で笑ってしまう。
「俺、老いも若きも女性としゃべるの好きだからさ。
知り合いにいい人いたらどんどんお店に連れてきてよ~。
とりあえず商売的にありがたいし。」
(しっかりしてんね、、、)と思いつつ、とりあえず褒めるとどんどん機嫌が良くなる斉藤を見て、依子はその後もちょいちょい持ち上げながら、今後の参考に、と斉藤のビジネスの手法や過去の失敗談の話を聞き出していったのだった。
ーーー
「おいおい!この姉ちゃんすげえな!ザルだし、下手すると俺より詳しいぜ。」
すっかり意気投合したらしい愛とコルムが肩を組んで店を出てくる。
楽しい飲み会の時間はあっという間に過ぎ、いいお年頃の2人の体力が限界を迎えたところでお開きになり、斉藤と依子が外に出たところだった。
「この人なんせ女性の細腕一本で世界を渡り歩いてきた人だからね。経験と知識は俺より上だと思うよ。」
素直に斉藤が愛の実力を評価する。
また来いよ~というコルムの見送りを背に、3人は深夜のブダペストの街を歩いて、帰路についた。
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