鈍色の空と四十肩

いろは

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51 ー男子会ー

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 のんびりお茶を飲んでいた譲治はちょっとどき、とする。
 まさかしつこすぎていきなり別れたい、とか言われないよな。
 いや、でも目の前の依子さんはいつも通り、優しくてきれいだ。表情も穏やかだし。
「何でしょう? なにか不安なことありましたか?」

「んー、不安というか、お互いの意思確認かな。
 あのね、昨日の夜も少し話したけど。もし子供ができたら、っていう話。」
 依子は、譲治がめんどくさそうな顔をしないか、つい顔色を窺ってしまう。

「譲治くんは、避妊しないでそのまましたいでしょ? 
 もちろん私もそうよ。
 何も隔てずに、大事な人とと繋がれるって、すごくすごく幸せなことだわ。
 妊娠が体にとって危険な場合は論外だけど、幸い私の場合、年齢以外は今のところ問題ないしね。
 でも、譲治くんは本当に大丈夫?
 もし私が妊娠したらどうする?」

 譲治はそれを聞いて前のめりになり、依子の手をぎゅうっと両手で握りしめて言う。
「もちろん、めちゃくちゃ嬉しいです。
 今、依子さんの口からそれを聞いて、急に目の前にビジョンが見えた。
 あなたが小さい子を抱いてる姿。」

 譲治の様子を見て、依子はうれしくなる。ああ、とりあえず良かった。
「子供好きだったっけ?」

「いや、別に。
 でも、あなたと、僕たちの子供と。そういう暖かな家庭を築ける未来があるかもしれない、ってことに胸いっぱいになります。」
 譲治は微笑んでいる。

「ただね、普通に考えれば私の年齢では妊娠しないし、したとしてもハンデを背負って生まれてくる可能性が高いのよ。母体自身にもリスクが高いし。
 そういう危険性をはらんでても大丈夫?」

「あなたに危険があるなら、わかった時点ですぐにやめます。
 あと、もし産まれた子にハンデがあっても僕のあり方は、健康な子に対してのそれと何ら変わりません。ただ全力で守り育てる。
 依子さんと、僕たちの子と、全員含めた家庭と。守り支えるのが僕の使命です。というか喜びです。
 ちょっと古い考えかもしれないけど、大黒柱として一家を守る、って考えると武者震いする。
 何ですかね、今まで自信とか自尊心とか、挫かれまくって生きてきた人生だったから、誇らしい気持ちになるのかな。」

 依子は目を見張る。
「譲治くんは...すごい。偉いのね...。私、感動してしまう。」

「何言ってんですか。自分の人生に責任持つのは当たり前でしょ。
 依子さんが男に期待しなさすぎなんでは。」
 譲治は笑って言った。

 依子は少し気楽になって肩の力を抜いて続ける。
「まあでも、私、結婚自体に執着ないし、もし妊娠したら、って仮定の話ね。
 私もいい歳だからそろそろ生理も不定期になってきてるし、妊娠自体かなり可能性低いとは思うけどね。
 一応定期的に婦人科検診だけは受けてるけど、幸い私はそっちの方は丈夫みたいだから、妊娠なんてもってのほか、ってこともないし。」

 譲治は握っていた依子の手を持ち上げて、キスをしながら言う。
「でも、やっぱり嫌だ、と思ったらすぐに言ってくださいね。僕だってちゃんと我慢しますから。
 あと、もし仮に子供ができたら、すぐ入籍してくれますか?」

 こういうことに真面目に正面から相対してくれる譲治に、依子はホッとする。
 そしてこういう人で良かった、と心底思った。自然と笑みが溢れる。
「そうね。
 子供にはやっぱり両親そろった籍が欲しいかな。昭和的かもしれないけど。」

 話を切り出した時から、少し緊張気味だった依子の表情が、やっと和らいで、強張っていた肩の力も抜けた様子を見て、譲治も、良かった、と思う。

 口では、子供ができたら入籍して、などと言ってはみたが、正直、依子に告白する決心をした年末の時点で、譲治は依子を法的にも自分のものにする気満々であった。
 子供がいるいないに関わらず、この後の生涯を、死ぬまで、死んでも、依子と共に歩みたい。
 過去の結婚でトラウマを抱えている依子を、どう籠絡していくか、根気よくタイミングを見計らっている。

 それにしても依子は1人で気を回して。
 それに男に期待しないにもほどがある。
 きっと、妊娠して、譲治が少しでも嫌悪感を見せたら、1人で去って自力で子育てしよう、とか思ってるんだろうなあ。
 世の中そんなにクズ男が多いもんかね? どんだけクズと付き合ってきたんだ。
 まあ、他所様のことはどうでもいい。
 僕は決して依子さんを一人にさせたりしない。

 譲治は想いを込めて、依子の手に口付けを降らせ続けた。

ーーー

 テーブルを片付けながら、依子は今週の予定などを聞いている。
「今日はまた普通にお仕事でしょ? 早く帰らなきゃ。」
「また夜、来ていいですか?」
 譲治は、キッチンで洗いものをする依子の背中から抱きしめつつ聞いた。

「うーん。もちろん私も会いたいし、一緒にいたいわ。
 でもなんかこう、あまりに、飢餓感っていうの?強すぎて、また離れられないと、翌日に支障が出るわよね? どうしたらいいと思う?」
 依子も幸せそうではあるものの、困り顔だ。

「じゃあ、お互いに気を遣いすぎないように、基本ルールを決めましょう。
 僕はできるだけ定時ですぐ上がって、すぐ依子さんの所に来る。
 翌朝は7時には帰って、その日の仕事にかかる。
 依子さんがウチに来てくれるならその逆で。
 週末は、金土日は我慢して日曜夜に会う。」
 でどうですか、と譲治は優しく提案してくれた。
「ありがと。譲治くんはいつも優しいのね。しんどかったら臨機応変に変えましょう。」
 洗い物を終えた依子は、手を譲治のそれに重ねて、背中を譲治に預けて譲治を見上げた。
「でも、どうしてもどうしてもどうしても我慢できなかったら、会いに来ていい?」
 子供のように聞く譲治に、依子は、いいわよ、と答えて顎にキスした。

 譲治はカウンターに置いていたスマホを見て言う。
「よし、7時まであと15分あります。」
 ええっ? ちょっと...、と慌てる依子の手を引っ張って、寝室に連れて行く。

 ベッドにちゃんと乗る間も惜しんで、依子をベッドに座らせた。
 ブラウスをたくしあげて、ブラを下ろして、性急に乳房に食らいつき吸い上げる。
「あっ、譲治くん...腰が痛いんじゃないの...?」
「平気。全然感じない。僕にはこの15分の方が大事だ。」

 そういう間も、依子のジーパンとショーツをさっさと脱がせて、足を開かせる。自分は床に立ち膝になった姿勢で、目の前にある赤く熟れた襞に吸い付く。
「あっ、あん...」
 依子の肉壁からあっという間に蜜が垂れてきた。
 指を2本差し込んで、奥に突き当たるまで、ずぐり、とねじ込み優しく擦る。同時に花芽を舌で強く擦り、唇で吸う。
 依子はすぐに登り詰めそうになってしまう。

「ああっ...譲治くん、私もうすぐに...ダメになっちゃいそう...」
 依子の内部が震えて激しい締め付けが始まる。
 譲治はそれを感じると、起き上がり、依子の体をひっくり返して、お尻を上げさせる。
 自分のズボンをくつろげて、既にがちがちになっている己の分身を取り出して、依子のお尻を手で広げて襞を露出させた。
 自分の昂りを何度かそこに擦りつけ潤みをなすりつける。そして一気に突き込んだ。
「ぐっ...」
 思わず声が漏れる。依子は悲鳴をあげて顔をベッドに埋めている。
いきなり激しい勢いで強く打ち込む。ぱん、ぱん、ぱん、肉がぶつかりあう音が響く。

「あんっ、あんっ、あんっ...」
 譲治は依子の背中に被さり、息を荒げながら言う。
「僕のものだ。
 依子さんの胸も、お尻も、膣も、クリトリスも、子宮も、ぜんぶ、僕だけが知ってる。僕だけが入れる。誰にも渡さない。」
「んっ...そうよ...ぜんぶ、この体のぜんぶ、譲治くんだけのものよ..」
 依子の声を聞いて、譲治は横を向かせ、深く唇を奪った。その瞬間、子宮口をぐぐっと押し上げた譲治の昂りが爆発した。
 そして、とどめとばかりに、そのまま依子の姿勢をぐるりと変え、両足を肩に担いで、いつの間にか瞬時に復活した肉棒で深く刺し貫く。
 そしてまた深いキスをしながら、もう一度自分の白濁を残らず依子に注ぎ込んだのだった。

ーーー


 斉藤の目の前にいる譲治は、半分ほど飲み干したエールを前に、仏頂面をしている。ざまあみろ、と斉藤は内心笑っている。

 結局、月曜日は、朝方帰る直前に依子を貪ってしまい、罰としてその晩と、翌日火曜日も出入り禁止を言い渡された。
 仕事にならないでしょ、お互いのためだから、と言われ、仕方なくである。
 しょうがないので、火曜の今日はランチに『さくら』を訪れ、その晩の男子会の約束をして、閉店後、ここに来たというわけである。

「君もさあ、若いから仕方ないけど、ちょっと加減してやんなさいよ。」
 斉藤は譲治の苦境を面白がってニヤニヤしている。
 ブスッとしながらぼそぼそと譲治は言う。
「若いって言ったって、今月39ですよ。立派なおっさんです。」
「ああ、今月誕生日なの? 
 依子さんも1月って言ってたよ。そんじゃ2人で仲良くお祝いしてさ、甘えて許してもらいなさいよ。」

「それにしても、うまくいって良かったねえ。
 おじさんは、君が苦戦するんじゃないかと思ってたよ。」
 斉藤は、乾杯、と1人で言って、ぐびぐびとエールを流し込む。

「斉藤さんが入れ知恵してくださったんでね。落ち着いて対処できました。
 聞いてなかったら、もうちょっと時間かかってたかもしれません。
 まあ、結果は変わらないと思いますけど。」
 譲治は憮然として言う。
「そーけそーけ。」
 斉藤はやっぱりニヤニヤしている。

「付き合いたてでお熱いのはわかるけどさあ。
 さっきも言ったけど、も~ちょっとなんとかならんかね。依子さんがどうにも色っぽすぎて、艶かしいし。」
 斉藤は口をへの字にして言う。
「そんなこと言われても。
 禁欲して清い関係でいろってことですか。無理ですよ。」
 譲治はフィッシュ&チップスのチップスをつまみながら言う。

「斉藤さんは知らないからそんなことが言えるんですよ。
 依子さんは、なんて言ったらいいか、セイレーンって妖いるでしょ、あんな感じ。魔性の。
 普段は普通の穏やかな人なのに。目の前にすると理性がどっか行っちゃうんです。」
 譲治は顔を逸らし、何もない宙を見ながら、ぼーっとして言う。

「おいおーい。公共の場だぞー。戻ってこーい。」
 斉藤が声をかける。
「誰にでもわかるような、目立つ指輪でもつけてもらいますか。。それいいかもしれないな。」
 譲治は自分のアイデアに気をよくしている。

「...斉藤さんはそういう経験ありませんか。僕も自分で戸惑ってるんです。
こんなことは初めての経験で。」
 譲治はボソボソと俯いて言う。
「今まで何人か女性と付き合った経験もあるんですけど、依子さんは。。
 彼女のそばにいると歯止めが効かないんです。
 どっかおかしいんでしょうか。独り身が長すぎたから?とか。
 彼女を壊してしまうんじゃないか、って怖くなる時があります。
 もう、彼女がいない人生が考えられない。もし失ったらと思うと。。。」
 譲治は両手を握って、組み換えたり握ったりしながら続ける。

「...彼女に...愛している、と言いました。
 彼女も同じように返してくれた。
 まだこういう関係になって、ほんの1週間です。でも、意識せず思わず口をついて出てきたんです。
 自分の人生で、そんな言葉を言う日が来るなんて、思ってもみなかった。」

「人を愛する、ってこういうことなんでしょうか?」
 譲治はどこか途方に暮れた子供のような顔で斉藤に訴えた。

 そんな譲治を見る斉藤の眼差しはひどく優しい。
「そっか。
 良かったなあ。素晴らしいことだよ。
 そんなふうに自然に愛してる、と言える人に出会えるなんて、すごく幸せなことだよ。 
 愛し方なんか人それぞれ、年齢もタイミングも千差万別さ。
 それが君らのスタイルだと思えばいいじゃないか。悪いことしてるんじゃないんだから。」

「俺はなんかうれしいよ。」
 そう言って斉藤はまたグビリとエールを流し込む。
「自分でもコントロールできないほどの情欲ってのは、まああるよね。
 付き合い始めは特に。でも、だんだん歳をとって、お互いに慣れてくれば、穏やかな愛し合い方に変わっていくと思うよ。
 最初はゴウゴウと燃える炎だったのが、だんだん鎮火して、暖炉の熾火みたいになっていくんだ。
 それって燃え盛る勢いはないけど、ずーっとあったかいだろ。
 そういう穏やかな日がそのうち来るよ。今はせっかくなんだから楽しんどきなさいよ。」
 斉藤はウインクする。
 そういうバタくさい言動が似合うおやじなのだった。

「ありがとうございます。斉藤さん。いつも、心強いです。」

「依子さんも君もさあ、やっぱどっか似てるんだよね。
 すごい真面目で素直なんだけど、どっか寂しそうで、こう、虚ろな感じがしたんだよ、最初。いつ死んでも別にいい、みたいな厭世観てのかな。
 それがさ、君たちお互いに出会ってから、その虚ろな所を埋めあってすごい生き生きし出したんだよね。
 非常に生命力が溢れる眼差しをするようになったな、と思って。
 お互いが、お互いの隙間を埋める鍵なんだなあ。」
 斉藤は感心しているような声音で、宙を見て考え考え話をした。

「俺もね、昔そういう人がいたんだ。だから君の気持ちがわかるよ。」
 そう言って、斉藤は微笑みを浮かべたまま俯いて自分の手を見ながら、自分の遠い記憶にしばらく心を彷徨わせているようだった。

ーーー

「うぉーい、飲んでるかあ?」
 コルムが大きい手で譲治の背中をバシバシ叩きながら乗り込んできた。
「ジョージ~、足りないんじゃねえか? ほら、飲め飲め。 
 それからもっと食わねえとでかくなれねえぞ~」
 そう言って、羊とじゃがいも、人参などの根菜が入ったアイリッシュシチューと茶色いソーダブレッドを目の前におく。
「しっかり食ってもっと体力つけないと、依子を満足させられねーぞ」
 ニヤニヤしながらこそこそ、と譲治に耳打ちする。
 それを聞いて譲治は反射的にシチューに手を伸ばして、積極的に食べ始めた。
「聞こえてんだよ。まったく下品なヤツだな。
 満足させられないどころか、壊しそうだ、って困ってんだよ。」
 斉藤が突っ込む。

 譲治は、コルムとは店に入った時が初対面だったが、会って1分でこの大男に気に入られて、どうも弟分のように思われているらしい。
「おれ、この子気に入っちゃった。」とか言って、コルムは譲治の肩を抱いてニコニコしていたのだった。
 寡黙で必要最低限のアクションで済ませる年齢不詳の日本人がどうやら古武士の風格、と映ったらしい。

「なあ、アイにさあ、なんか結婚式の時プレゼントしたいんだよ。
 なんか特別なもの。指輪とかドレスとかは、家に代々伝わるもの使うことになってるから、そういうんじゃなくて。
 でも、俺なんせ料理以外無教養だからなんも思い浮かばないんだよね。」
 子供のような純真さでコルムが訊ねる。
「俺たちどっちも料理人だから食い物、飲み物はつまらないじゃん。
 宝石とか服とか、アイは興味ないし、欲しいものは自分でだいたい買うからいらねえ、って言うし。」
「僕みたいなクソ気が利かない奴に聞かれてもね。
 斉藤さんはそういうの得意なんじゃないですか?」
 そう言って譲治とコルムは縋るような目で斉藤を見る。

「お前らさ、ホント...」
 斉藤は眉間に指を当てて、はあーっ、と呆れる。
「自分にしかできないこと考えたら? 
 要するに、女たちってのはモノじゃなくて、男の行動で愛情を確認したいわけでしょ。
 だから一生懸命ですよーっていう気持ちが伝わるようなやつ。」

「たとえば?」
 コルムの目は真剣だ。
「肩たたき券とかおてがみとか?」
 笑いながら斉藤が言う。
 母の日かよ、と譲治が呟く。
 コルムはそばにあったナプキンにメモしている。
「冗談だよ。」
 それを見て斉藤はげんなりした。

「そうねえ。まずはオーソドックスに花束か。
 そこら辺で買ったやつじゃなくて、2人の思い出の場所に生えてるやつとか、彼女が好きなやつを、自分で摘みにいく、あるいは押し花にしてしおりとかカードにする。
 彼女の好きな本に挟んでもいい。
 観葉植物。まだ式まで時間あるんだから種とか苗から育てたやつとか。
 あとは~、最近さ、日本で流行ってんじゃん。
 結婚指輪を2人で作る、ってやつ。お前がデザインした指輪作ってやったら?バングルとかネックレスでもいい。
 知り合いにいんだろ、鋳造作家くらい。愛の言葉を刻んでさ。
 重くない方がいいなら、折り紙とかちまちま折ってみたら?
 小さい鶴でピアスにするとかさ。女はさ、愛する男の気持ちを身につけたがるから、邪魔にならないアクセとかいいかもね。」
 コルムは今やしゃかりきにメモしていた。

「斉藤さん、すごいすね。」
 譲治はジョッキを持つ手を止めて感心している。
「トモ、助かる!早速鋳造屋に電話してこよっと。」
 コルムは、楽しんでって~、と言い置いて持ち場に戻っていった。
 結局、コルムは授けられたアイデアを全て実行して、愛は喜んだものの若干うっとおしがられたことが後程わかるのだった。

「斉藤さんはそれだけお洒落で女性心理にも通じていて男女の機敏について熟知してるのに、パートナーはいないんですね。」
 譲治に少しばかりの憐れみの目で見られる。
「うっせ。まあ器用ならいいってもんじゃないんだな、男女関係は。
 ねえ、依子さんを幸せにしてあげるんだよ。
 それから同じくらい、君も幸せにしてもらうんだよ。」
 斉藤はまた優しい眼差しで譲治に言った。
 それからちょっと胸を張って、いつものニヒルな顔で付け加える。

「まっ、君が依子さんに愛想尽かされたら、俺がすかさず彼女を支えに行くから、心配しないでいいよ。」
「天地がひっくり返ってもありえませんね。」
 譲治はまたブスッとして言い、残りのエールを飲み干した。
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