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68 ー譲治の家族ー
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依子の2度目の個展も最終日。
五月晴れの爽やかな日である。
会期中の客入りはまあまあだった。
ふらっと新規に立ち寄ってくれた人も、前回に引き続き来てくれた人もそこそこいた。作品も数点売れて、小物はそれなりに。
今年もなんとか赤字は回避できそう。
地元の日本文化好きな人が立ち寄ってくれたのはやはりうれしい。
そういう人が昨年よりさらに増えた。こうやって、毎年一歩ずつ、蓄積していければいいなあ、と願わずにはいられない。
今年は、カルチャーの生徒さん経由での来客も多かった。店番もちょくちょくしてくれたし、本当にありがたいことだ。
地元や日本人仲間の来訪者問わず、要望があったことで、依子も前から希望していたことだが、定期的にポップアップストアを開くべきじゃないか、ということだ。
通販も始めてはいるが、基本的に一点物なので動向が見えにくく定期的な収入になりにくい。宣伝効果も薄い。
それはそれとして進めつつ、リアルな販売パターンを確立しておきたい。
常設店舗を構えておけるほどのニーズはないので、期間限定でよい。
うーん。
マルコに相談してみるか。知り合いにいないかな。
安くて小さな空き店舗貸してくれる所。
それはさておき、依子的には、最後の最後に今日は正念場だ。
頭の中でスケジュールを確認する。
譲治の家族がハンガリーに遊びに来るのである。
朝に空港に着く便とのことで、今譲治が迎えに行っている。
今日明日は休みをとって、案内するらしい。
もしかしたらギャラリーの方に来るかもしれないので、気合い入れて掃除をする。
依子は明日は搬出もあるので、今日明日は挨拶と、向こうが望めば夕食を一緒にするくらい。
その後週末は依子がバイトなので、家族水入らずで過ごすだろう。
バラトン湖畔の素敵なホテルに泊まって観光しようかな、と言っていた。
すばらしい計画だ。
週末明けて残り平日は、必要なら依子がお世話をするつもりだ。
まあ、向こうの依子に対する心象が良ければの話だが。
楽しんでもらえるといいなあ...。
これからヨーロッパは一番良い季節だ。晴れ間も多く、暑すぎず寒すぎず。
花々が咲き乱れ、新緑が目に爽やかで、アルプスから流れてくる雪解け水が澄んで清らかだ。
ハンガリーの景色を見て、楽しんでもらいたい。
譲治ががんばっている土地がどんなに美しいかを。
ーーー
お昼過ぎ。
譲治の家族がギャラリーに訪れた。
わいわい、と女性陣の賑やかな声を先頭に入ってくる。
依子はLINEで、そろそろ着きます、と譲治から連絡が入っていたので、待ち構えていて、めちゃくちゃ緊張していた。
こんなに緊張するのも最近では割と久しぶりである。
ギャラリーに出る前に、鏡の前でぱちぱちと頬を叩いて笑顔の練習をした。
服装チェック。
相変わらずこういう場では毎度お馴染みのモノトーンコーデで、今日も自分が作ったイヤリングをしていた。
そして、姿勢を良くして。
「いらっしゃいませ」
譲治の姿が見えて自然と笑みが溢れる。
「依子さん、母です。 そして父。あと妹の美智子です。」
譲治が順番に紹介してくれる。
「ようこそいらっしゃいました。 小石川依子です。 はじめまして。」
深々と頭を下げて挨拶する。
譲治の父も、妹の美智子も、はじめまして、とそつなく挨拶してくれる。
とりわけ母親は賑やかで元気が良く、自然と楽しくなってしまうような人だった。
「まあまあ!依子さんね! お話はかねがね! 譲治の母の加奈子です~。
もうね、とっても楽しみにしてたの!
こんなギャラリーなんて初めてだし。素敵なのね~!!」
「喜んでいただけて良かったです。どうぞごゆっくりご覧になってください。
今お茶を一服お出ししますので。」
「ちょっとちょっと!美智子~見て~!かわいい!」
母は娘を呼んでわいわいと、見始めた。
依子は1人静かに見回していた父に近寄り声をかける。
「お疲れになったんじゃないですか? 少し御休憩されてくださいね。」
「ああ、ありがとうございます。父の隆です。
譲治がお世話になりっぱなしのようで。」
「いいえ!とんでもない!
どうぞ、あちら椅子もありますからごゆっくりされてくださいね。」
そう言って、お茶の用意をしにバックヤードへ行く。
途中で譲治に声をかける。
「譲治くんもお疲れ様。 くたびれてない? お昼は食べた?」
依子が譲治の腕にそっと手を添えてさすりながら聞く。
「すみません、ほんとうるさい母で。お昼は空港で食べてきました。」
譲治は既にげんなりしている。
依子はクスッと笑って言う。
「あんまり私のことは気にしないでね。すっごく楽しいお母さんじゃない。
せっかくの旅行なんだから、ご家族のおもてなし最優先にしてあげてね。」
奥の接客用のテーブルに、折り畳み椅子を追加して持ってきて、いつもの緑茶と『さくら』の練り切りを並べた。
「あらまあ! ハンガリーでこんな和菓子いただけるとは思わなかったわ。」
加奈子が言いながら早速食べ始める。
「和風がコンセプトの展示会なので、会期中は日本式のおもてなしにしてるんですよ。私がバイトをしている日本食レストランのものなんです。」
へえ~、と皆が感心している。
「これからのご予定はだいたい決まりましたか?」
依子が聞く。
「うん!もうね、わかんないから譲治にお任せなの。
あ、とりあえず今日のホテルが楽しみ。」
加奈子が呑気に答える。
「ケンピンスキーなんですよ。」
美智子が興奮気味に言う。
「わあ!良いですね!五つ星の、ブダペストじゃ一番有名な老舗ですよ。」
依子もうれしくなって答える。
「美智子さんチョイスですか?」
「ええ! 両親そういうの疎いし、私はいろんなホテルに興味あるのですごい楽しみです。」
「素敵。私も25年前初めてハンガリーに来た時に泊まったのがケンピンスキーでした。
今ちょうど改装が終わったところだから、もっと素敵になってますよ。」
「依子さんは、ハンガリーとどういったご縁が?
けっこう若い時にいらしたんですか?」
隆が静かにたずねる。
「父親は研究職なんですけど、仕事の関係でハンガリーに出張に来たり、人材交流がちょいちょいあったんです。
私も、その子供同士で仲良くなって、友人がいるもんですから。」
「ははあ、というと数学とか工学関係ですか?」
隆が興味を見せる。
「よくご存知ですね。そうなんです。
土木工学関係の民間研究所に勤めてたんですよ。」
依子がにっこりする。
「よく知ってんね。」
譲治がぽそっと口を挟んだ。
「ハンガリーは有名な数学者とかたくさんいて、科学分野は強い国なんだよ。」
隆が説明する。
「ルービックキューブってパズルも最初に発明したのは、ハンガリーの数学者ですよね。」
依子の説明に隆はうんうん、と頷く。
へえ~、と他の3人は軽く驚いている。
ひとしきりお茶を飲んで、それぞれが展示物を見たり世間話をしているところで依子が気を遣ってこの後の行動を促す。
「お疲れになったんじゃありません?フライトは長かったでしょう?
今からホテルに行けば、ちょっとお昼寝して夕方またお散歩にでも出掛けられますね。
ケンピンスキーは立地が抜群にいいからどこでも歩いて出られますよ。」
「そうね~、とりあえずゆっくり豪華なホテルを楽しむってのはいいわね~」
加奈子が言う。
「私は荷物置いて、早速街ブラしたいな。」
これは美智子。
「景色がいい王宮の丘ってのは近いんだっけ?」
隆がまたぼそっと言う。
てんでばらばらかよ、譲治がぼやく。
「そろそろ行くか。」
そんなマイペースな田中家の人々の様子を微笑ましく見ながら依子はまとめる。
「今日はお疲れなのに、わざわざ寄っていただいて本当にありがとうございました。どうぞ滞在中楽しまれてくださいね。」
あ、そうだ、と言って依子は携帯を持ってくる。
「もし、譲治くんがお仕事中とかで手を離せないことがあれば、私もフォローできますので、連絡先お知らせしときましょうか?
旅行中は携帯使われてます?」
あ、じゃあお願いします、と言って、加奈子と美智子が早速LINEを交換した。
「なにかちょっと具合悪くなったとか、小さなもの、必需品とか、あればご遠慮なくなんでもお知らせくださいね。
道に迷ったーとかでも。」
それじゃまた~、と言って母を始めとして賑やかな3人をギャラリーから押し出し、譲治は依子と話したくてしばしとどまる。
「ほんと賑やかですみません。いろいろ気を遣ってもらって。
ありがとうございます。」
譲治は外から見えない位置で依子の腰に手を滑らせ、さすった。
「全然! 私にできることあればなんでもするから、遠慮なく言ってね。
今日の夕飯どうするのかな? わかったら教えてね。
ご家族水入らずなら、私はテキトーにするから。」
「聞いときます。あの人たちが希望したら、同席してもらえますか?」
「もちろんよ!」
依子はにこにこと譲治に微笑みかける。
かしましく自由な家族に翻弄されて既にげんなりしてきている譲治は、依子の柔らかさに身を投じたくなる。
「家族がいなきゃ今すぐ後ろに連れてってあなたを押し倒すのに。
ああ、依子さんが足りない。」
もう、と言って少し顔を赤らめた依子も、譲治の手をそっと握った。
そして、戸口まで出て全員を見送ったのだった。
個展最終日の今日は、この後、カルチャーの生徒さんや、昨年来てくれた人、駆け込みのお客さんなどもぽろぽろと来てくれて、慌しく過ぎていった。
依子の、ハンガリーでの2回目の個展はこうして幸せなうちに終えることができたのだった。
明日は搬出なので、ささっと片付けを済ませて、マルコに挨拶をしてギャラリーを出る。
少し前に携帯をチェックしたら、譲治からLINEが入っていて、今日は両親も疲れているので、ホテルのレストランで夕食を取るとのこと。
遅くなっても構わないのでぜひ来ていただいてお話ししたい、と家族が言っているが、無理しなくていい、とあった。
依子は、もちろんうかがいます、と返信して急ぎ向かった。
ーーー
「遅くなりまして。」
急足で、ホテルのレストランに入ると、スタッフは承知してくれていたらしく、田中家のテーブルにするっと案内してくれた。
みんな食事を始めたばかりのところに間に合ったようだ。
「あら! 依子さん、お疲れ様です! 呼びつけちゃってごめんなさいね~。」
加奈子がいの一番に依子を見つけ元気に声をかける。
「いえいえ! こんな素敵なレストランで同席させていただいて、とてもうれしいです。」
「お先にいただいてましたよ。」
隆も気遣ってくれる。既にワインでほろ酔いのようだ。
「依子さん疲れてませんか? すみませんね、ほんとに。」
譲治は申し訳なさそうだ。
「全然いいのよ! 私も楽しみだったの。
久しぶりだわ、こんな正統派レストラン。
みなさんもう注文されました?」
「それぞれ別のもの注文して、シェアできるよう頼んであるところです。
依子さんはどうします?」
譲治がメニューをウエイターに頼んでくれた。
「うーん、ここはやっぱりグヤーシュのお手なみ拝見したいとこかな。
みなさんお酒はイケますか? 何飲んでらっしゃるの?」
「みんな好きなものをばらばらに。女たちはジュース?それ。
あと男たちは地元ワイン。」
譲治が見渡しながら説明する。
「トカイワイン試されません?」
依子は隆に聞いてみる。
「おお、いいですね。
名前は知ってますが、どういうものかちょっとわからなくて。
譲治もてんでわかってないし。」
隆はほろ酔いで機嫌良く乗ってくる。
「説明したでしょうよ、さっき。
よくわからんからいいや、って言ったじゃない。」
譲治が呆れている。
「せっかくなので、プレゼントさせてください。
みなさんの旅が楽しいものとなりますように、景気付けに。いかがですか? お母様も美智子さんも飲まれます?」
依子は女性陣に聞いてみる。
はい、はーい、と加奈子が手を挙げ、美智子もうれしそうだ。
よし、決まり、と言って、ウエイターを呼んで、ボトルで頼んだ。
早速運ばれてきて、琥珀色のトカイが注がれる。
そしてみなで乾杯した。
田中家の3人は恐る恐る一口飲んでいる。
「ほお、これは、ワインとは思われない味ですね。
なんかこう、梅酒みたいな?」
隆が驚いている。
「ええ~めちゃくちゃ美味しい!
白ワインってあんまり良さがわからなかったんだけど、これはすごい飲める。甘くてまろやかで。」
美智子も驚いている。
「へえ!これは私も飲めるわ! いいもの教えてもらった。」
加奈子も気に入ったようだ。
「そりゃ美味しいでしょうよ。そうおいそれと買えないからね?
依子さんすみません、高価なもの...」
譲治は、依子が自分の食事とワイン代はちゃんと自分につけるよう、ウエイターに言うのを聞いていた。
「全然!喜んでもらえてすごくうれしいです! せっかくの機会ですもの。
5プトンの等級だと日本ではなかなかお目にかかれないし。」
「すごいこれ好き! お土産に欲しいなあ。等級があるんですか?」
美智子は相当気に入ったようだ。
「そうなんですよ。
3から6の等級があって、プトンとかプットニョシって単位なんですけれど、これは原料の葡萄を入れるカゴの数なんですね。
1樽作るのに、何カゴ葡萄を使うか、っていう。
たくさんなほど甘くて高級品です。
もし買うなら、このトカイ・アスーという種類で、プトン数が多いものがいいですよ。
ホテルとか空港とか観光客向けのショップは高いから、街中のなんでもない酒屋とかスーパーが安くていいです。
日本はもちろん、ハンガリー外ではほとんど売ってないから、おすすめですよ。」
「へえ。プトンてカゴって意味だったんですね。」
譲治が言う。
「まあ実際は科学的に成分で分けてるらしいけどね。」
「おにい、いまさらそんなこと言ってんの? ていうか教えてよ~。」
美智子が小馬鹿にする。
「高級品だから縁がないもんと思って、手出してなかったんだよ。」
譲治がムッとして言う。
「私もそうだし、地元の人だって特別な時に、たま~に買うくらいですよ。」
依子がフォローした。
料理が運ばれてきて、しばらくみなわいわいと郷土料理を楽しむ。
「午後はどちらかに行かれましたか?」
依子はみなに聞いてみた。
「ちょっとお昼寝してからね、夕方そこらへん少しだけぷらっと歩いたのよ。
あの、鎖橋?ライトアップされてて、とってもキレイだったわ!」
加奈子が張り切って報告してくれる。
「そうですか!それは良かった。
朝、昼、夜とそれぞれ印象が違って素敵ですよ。」
依子もうれしくなってニコニコと答える。
「ここらへんは、やっぱり中心街なんですね。高級品のお店が多い感じ。
もっと離れたら市場とかもあります?」
美智子が聞く。
「もちろんもちろん! 地元の人がいく大きな市場がちょっと南の方にありますし、青空市みたいなものもよく広場とかでやってますよ。」
そんなふうに依子は、女性陣とショッピングの話をしたり、時折ぼそっと言葉を挟む隆の好きそうな風景の話をしたり、これからの一週間の期待に満ちた、楽しいひとときを、田中家の人々と過ごしたのだった。
夜も更けてだいぶ遅くなり、譲治と依子は、田中家と別れて自宅へ帰った。
3人は疲れながらも大満足の心地で部屋へ引き取る。
ーーー
部屋に戻った3人は、ここぞとばかりに久しぶりにあった譲治と、依子のことを話題に出す。
「おにいさあ、なんか若返った? ていうかちょっとイイ男味が出た?
今までカッスカスの死んだ魚みたいな目してたから、別人かと思ったわ。」
美智子は一応褒めてみる。
「あんた、死んだ魚って。いくらなんでもお兄ちゃんがかわいそうじゃない。」
加奈子が擁護する。
でもそうでしょ、と美智子が肩をすくめる。
「そうねえ。
あの子ってあんなに表情豊かだったかしら、ってびっくりしたわ。」
「譲治は...幸せなんだろうな。」
隆が遠くを見て言う。
「依子さんのおかげなのね、きっと。
7つも上っていうから、大丈夫かしら、どんな人かしら、って心配だったけど。実際に会ってみたら杞憂だったわ。」
加奈子はしみじみとした調子で言う。
「すごいしっかりした人だし、頭いい感じだよね。なんかかっこいいわ~。」
美智子は感心している。
「こんな外国に女だてらに1人やってきて、自立してるんだから、相当苦労したんじゃないか?しっかりもするだろう。」
隆が言う。
「でもさあ、なんでおにいみたいな冴えない男が、あんなしっかりした人を射止めることができたんだろね。ナゾだわ~。」
美智子がまたしても失礼なことを言う。
「お兄ちゃんはああ見えて芯が図太いところあるから、意外と頼れそうだと思ったんじゃない?」
加奈子が分析する。
そうしてぺちゃくちゃと田中家の夜は更けていくのだった。
五月晴れの爽やかな日である。
会期中の客入りはまあまあだった。
ふらっと新規に立ち寄ってくれた人も、前回に引き続き来てくれた人もそこそこいた。作品も数点売れて、小物はそれなりに。
今年もなんとか赤字は回避できそう。
地元の日本文化好きな人が立ち寄ってくれたのはやはりうれしい。
そういう人が昨年よりさらに増えた。こうやって、毎年一歩ずつ、蓄積していければいいなあ、と願わずにはいられない。
今年は、カルチャーの生徒さん経由での来客も多かった。店番もちょくちょくしてくれたし、本当にありがたいことだ。
地元や日本人仲間の来訪者問わず、要望があったことで、依子も前から希望していたことだが、定期的にポップアップストアを開くべきじゃないか、ということだ。
通販も始めてはいるが、基本的に一点物なので動向が見えにくく定期的な収入になりにくい。宣伝効果も薄い。
それはそれとして進めつつ、リアルな販売パターンを確立しておきたい。
常設店舗を構えておけるほどのニーズはないので、期間限定でよい。
うーん。
マルコに相談してみるか。知り合いにいないかな。
安くて小さな空き店舗貸してくれる所。
それはさておき、依子的には、最後の最後に今日は正念場だ。
頭の中でスケジュールを確認する。
譲治の家族がハンガリーに遊びに来るのである。
朝に空港に着く便とのことで、今譲治が迎えに行っている。
今日明日は休みをとって、案内するらしい。
もしかしたらギャラリーの方に来るかもしれないので、気合い入れて掃除をする。
依子は明日は搬出もあるので、今日明日は挨拶と、向こうが望めば夕食を一緒にするくらい。
その後週末は依子がバイトなので、家族水入らずで過ごすだろう。
バラトン湖畔の素敵なホテルに泊まって観光しようかな、と言っていた。
すばらしい計画だ。
週末明けて残り平日は、必要なら依子がお世話をするつもりだ。
まあ、向こうの依子に対する心象が良ければの話だが。
楽しんでもらえるといいなあ...。
これからヨーロッパは一番良い季節だ。晴れ間も多く、暑すぎず寒すぎず。
花々が咲き乱れ、新緑が目に爽やかで、アルプスから流れてくる雪解け水が澄んで清らかだ。
ハンガリーの景色を見て、楽しんでもらいたい。
譲治ががんばっている土地がどんなに美しいかを。
ーーー
お昼過ぎ。
譲治の家族がギャラリーに訪れた。
わいわい、と女性陣の賑やかな声を先頭に入ってくる。
依子はLINEで、そろそろ着きます、と譲治から連絡が入っていたので、待ち構えていて、めちゃくちゃ緊張していた。
こんなに緊張するのも最近では割と久しぶりである。
ギャラリーに出る前に、鏡の前でぱちぱちと頬を叩いて笑顔の練習をした。
服装チェック。
相変わらずこういう場では毎度お馴染みのモノトーンコーデで、今日も自分が作ったイヤリングをしていた。
そして、姿勢を良くして。
「いらっしゃいませ」
譲治の姿が見えて自然と笑みが溢れる。
「依子さん、母です。 そして父。あと妹の美智子です。」
譲治が順番に紹介してくれる。
「ようこそいらっしゃいました。 小石川依子です。 はじめまして。」
深々と頭を下げて挨拶する。
譲治の父も、妹の美智子も、はじめまして、とそつなく挨拶してくれる。
とりわけ母親は賑やかで元気が良く、自然と楽しくなってしまうような人だった。
「まあまあ!依子さんね! お話はかねがね! 譲治の母の加奈子です~。
もうね、とっても楽しみにしてたの!
こんなギャラリーなんて初めてだし。素敵なのね~!!」
「喜んでいただけて良かったです。どうぞごゆっくりご覧になってください。
今お茶を一服お出ししますので。」
「ちょっとちょっと!美智子~見て~!かわいい!」
母は娘を呼んでわいわいと、見始めた。
依子は1人静かに見回していた父に近寄り声をかける。
「お疲れになったんじゃないですか? 少し御休憩されてくださいね。」
「ああ、ありがとうございます。父の隆です。
譲治がお世話になりっぱなしのようで。」
「いいえ!とんでもない!
どうぞ、あちら椅子もありますからごゆっくりされてくださいね。」
そう言って、お茶の用意をしにバックヤードへ行く。
途中で譲治に声をかける。
「譲治くんもお疲れ様。 くたびれてない? お昼は食べた?」
依子が譲治の腕にそっと手を添えてさすりながら聞く。
「すみません、ほんとうるさい母で。お昼は空港で食べてきました。」
譲治は既にげんなりしている。
依子はクスッと笑って言う。
「あんまり私のことは気にしないでね。すっごく楽しいお母さんじゃない。
せっかくの旅行なんだから、ご家族のおもてなし最優先にしてあげてね。」
奥の接客用のテーブルに、折り畳み椅子を追加して持ってきて、いつもの緑茶と『さくら』の練り切りを並べた。
「あらまあ! ハンガリーでこんな和菓子いただけるとは思わなかったわ。」
加奈子が言いながら早速食べ始める。
「和風がコンセプトの展示会なので、会期中は日本式のおもてなしにしてるんですよ。私がバイトをしている日本食レストランのものなんです。」
へえ~、と皆が感心している。
「これからのご予定はだいたい決まりましたか?」
依子が聞く。
「うん!もうね、わかんないから譲治にお任せなの。
あ、とりあえず今日のホテルが楽しみ。」
加奈子が呑気に答える。
「ケンピンスキーなんですよ。」
美智子が興奮気味に言う。
「わあ!良いですね!五つ星の、ブダペストじゃ一番有名な老舗ですよ。」
依子もうれしくなって答える。
「美智子さんチョイスですか?」
「ええ! 両親そういうの疎いし、私はいろんなホテルに興味あるのですごい楽しみです。」
「素敵。私も25年前初めてハンガリーに来た時に泊まったのがケンピンスキーでした。
今ちょうど改装が終わったところだから、もっと素敵になってますよ。」
「依子さんは、ハンガリーとどういったご縁が?
けっこう若い時にいらしたんですか?」
隆が静かにたずねる。
「父親は研究職なんですけど、仕事の関係でハンガリーに出張に来たり、人材交流がちょいちょいあったんです。
私も、その子供同士で仲良くなって、友人がいるもんですから。」
「ははあ、というと数学とか工学関係ですか?」
隆が興味を見せる。
「よくご存知ですね。そうなんです。
土木工学関係の民間研究所に勤めてたんですよ。」
依子がにっこりする。
「よく知ってんね。」
譲治がぽそっと口を挟んだ。
「ハンガリーは有名な数学者とかたくさんいて、科学分野は強い国なんだよ。」
隆が説明する。
「ルービックキューブってパズルも最初に発明したのは、ハンガリーの数学者ですよね。」
依子の説明に隆はうんうん、と頷く。
へえ~、と他の3人は軽く驚いている。
ひとしきりお茶を飲んで、それぞれが展示物を見たり世間話をしているところで依子が気を遣ってこの後の行動を促す。
「お疲れになったんじゃありません?フライトは長かったでしょう?
今からホテルに行けば、ちょっとお昼寝して夕方またお散歩にでも出掛けられますね。
ケンピンスキーは立地が抜群にいいからどこでも歩いて出られますよ。」
「そうね~、とりあえずゆっくり豪華なホテルを楽しむってのはいいわね~」
加奈子が言う。
「私は荷物置いて、早速街ブラしたいな。」
これは美智子。
「景色がいい王宮の丘ってのは近いんだっけ?」
隆がまたぼそっと言う。
てんでばらばらかよ、譲治がぼやく。
「そろそろ行くか。」
そんなマイペースな田中家の人々の様子を微笑ましく見ながら依子はまとめる。
「今日はお疲れなのに、わざわざ寄っていただいて本当にありがとうございました。どうぞ滞在中楽しまれてくださいね。」
あ、そうだ、と言って依子は携帯を持ってくる。
「もし、譲治くんがお仕事中とかで手を離せないことがあれば、私もフォローできますので、連絡先お知らせしときましょうか?
旅行中は携帯使われてます?」
あ、じゃあお願いします、と言って、加奈子と美智子が早速LINEを交換した。
「なにかちょっと具合悪くなったとか、小さなもの、必需品とか、あればご遠慮なくなんでもお知らせくださいね。
道に迷ったーとかでも。」
それじゃまた~、と言って母を始めとして賑やかな3人をギャラリーから押し出し、譲治は依子と話したくてしばしとどまる。
「ほんと賑やかですみません。いろいろ気を遣ってもらって。
ありがとうございます。」
譲治は外から見えない位置で依子の腰に手を滑らせ、さすった。
「全然! 私にできることあればなんでもするから、遠慮なく言ってね。
今日の夕飯どうするのかな? わかったら教えてね。
ご家族水入らずなら、私はテキトーにするから。」
「聞いときます。あの人たちが希望したら、同席してもらえますか?」
「もちろんよ!」
依子はにこにこと譲治に微笑みかける。
かしましく自由な家族に翻弄されて既にげんなりしてきている譲治は、依子の柔らかさに身を投じたくなる。
「家族がいなきゃ今すぐ後ろに連れてってあなたを押し倒すのに。
ああ、依子さんが足りない。」
もう、と言って少し顔を赤らめた依子も、譲治の手をそっと握った。
そして、戸口まで出て全員を見送ったのだった。
個展最終日の今日は、この後、カルチャーの生徒さんや、昨年来てくれた人、駆け込みのお客さんなどもぽろぽろと来てくれて、慌しく過ぎていった。
依子の、ハンガリーでの2回目の個展はこうして幸せなうちに終えることができたのだった。
明日は搬出なので、ささっと片付けを済ませて、マルコに挨拶をしてギャラリーを出る。
少し前に携帯をチェックしたら、譲治からLINEが入っていて、今日は両親も疲れているので、ホテルのレストランで夕食を取るとのこと。
遅くなっても構わないのでぜひ来ていただいてお話ししたい、と家族が言っているが、無理しなくていい、とあった。
依子は、もちろんうかがいます、と返信して急ぎ向かった。
ーーー
「遅くなりまして。」
急足で、ホテルのレストランに入ると、スタッフは承知してくれていたらしく、田中家のテーブルにするっと案内してくれた。
みんな食事を始めたばかりのところに間に合ったようだ。
「あら! 依子さん、お疲れ様です! 呼びつけちゃってごめんなさいね~。」
加奈子がいの一番に依子を見つけ元気に声をかける。
「いえいえ! こんな素敵なレストランで同席させていただいて、とてもうれしいです。」
「お先にいただいてましたよ。」
隆も気遣ってくれる。既にワインでほろ酔いのようだ。
「依子さん疲れてませんか? すみませんね、ほんとに。」
譲治は申し訳なさそうだ。
「全然いいのよ! 私も楽しみだったの。
久しぶりだわ、こんな正統派レストラン。
みなさんもう注文されました?」
「それぞれ別のもの注文して、シェアできるよう頼んであるところです。
依子さんはどうします?」
譲治がメニューをウエイターに頼んでくれた。
「うーん、ここはやっぱりグヤーシュのお手なみ拝見したいとこかな。
みなさんお酒はイケますか? 何飲んでらっしゃるの?」
「みんな好きなものをばらばらに。女たちはジュース?それ。
あと男たちは地元ワイン。」
譲治が見渡しながら説明する。
「トカイワイン試されません?」
依子は隆に聞いてみる。
「おお、いいですね。
名前は知ってますが、どういうものかちょっとわからなくて。
譲治もてんでわかってないし。」
隆はほろ酔いで機嫌良く乗ってくる。
「説明したでしょうよ、さっき。
よくわからんからいいや、って言ったじゃない。」
譲治が呆れている。
「せっかくなので、プレゼントさせてください。
みなさんの旅が楽しいものとなりますように、景気付けに。いかがですか? お母様も美智子さんも飲まれます?」
依子は女性陣に聞いてみる。
はい、はーい、と加奈子が手を挙げ、美智子もうれしそうだ。
よし、決まり、と言って、ウエイターを呼んで、ボトルで頼んだ。
早速運ばれてきて、琥珀色のトカイが注がれる。
そしてみなで乾杯した。
田中家の3人は恐る恐る一口飲んでいる。
「ほお、これは、ワインとは思われない味ですね。
なんかこう、梅酒みたいな?」
隆が驚いている。
「ええ~めちゃくちゃ美味しい!
白ワインってあんまり良さがわからなかったんだけど、これはすごい飲める。甘くてまろやかで。」
美智子も驚いている。
「へえ!これは私も飲めるわ! いいもの教えてもらった。」
加奈子も気に入ったようだ。
「そりゃ美味しいでしょうよ。そうおいそれと買えないからね?
依子さんすみません、高価なもの...」
譲治は、依子が自分の食事とワイン代はちゃんと自分につけるよう、ウエイターに言うのを聞いていた。
「全然!喜んでもらえてすごくうれしいです! せっかくの機会ですもの。
5プトンの等級だと日本ではなかなかお目にかかれないし。」
「すごいこれ好き! お土産に欲しいなあ。等級があるんですか?」
美智子は相当気に入ったようだ。
「そうなんですよ。
3から6の等級があって、プトンとかプットニョシって単位なんですけれど、これは原料の葡萄を入れるカゴの数なんですね。
1樽作るのに、何カゴ葡萄を使うか、っていう。
たくさんなほど甘くて高級品です。
もし買うなら、このトカイ・アスーという種類で、プトン数が多いものがいいですよ。
ホテルとか空港とか観光客向けのショップは高いから、街中のなんでもない酒屋とかスーパーが安くていいです。
日本はもちろん、ハンガリー外ではほとんど売ってないから、おすすめですよ。」
「へえ。プトンてカゴって意味だったんですね。」
譲治が言う。
「まあ実際は科学的に成分で分けてるらしいけどね。」
「おにい、いまさらそんなこと言ってんの? ていうか教えてよ~。」
美智子が小馬鹿にする。
「高級品だから縁がないもんと思って、手出してなかったんだよ。」
譲治がムッとして言う。
「私もそうだし、地元の人だって特別な時に、たま~に買うくらいですよ。」
依子がフォローした。
料理が運ばれてきて、しばらくみなわいわいと郷土料理を楽しむ。
「午後はどちらかに行かれましたか?」
依子はみなに聞いてみた。
「ちょっとお昼寝してからね、夕方そこらへん少しだけぷらっと歩いたのよ。
あの、鎖橋?ライトアップされてて、とってもキレイだったわ!」
加奈子が張り切って報告してくれる。
「そうですか!それは良かった。
朝、昼、夜とそれぞれ印象が違って素敵ですよ。」
依子もうれしくなってニコニコと答える。
「ここらへんは、やっぱり中心街なんですね。高級品のお店が多い感じ。
もっと離れたら市場とかもあります?」
美智子が聞く。
「もちろんもちろん! 地元の人がいく大きな市場がちょっと南の方にありますし、青空市みたいなものもよく広場とかでやってますよ。」
そんなふうに依子は、女性陣とショッピングの話をしたり、時折ぼそっと言葉を挟む隆の好きそうな風景の話をしたり、これからの一週間の期待に満ちた、楽しいひとときを、田中家の人々と過ごしたのだった。
夜も更けてだいぶ遅くなり、譲治と依子は、田中家と別れて自宅へ帰った。
3人は疲れながらも大満足の心地で部屋へ引き取る。
ーーー
部屋に戻った3人は、ここぞとばかりに久しぶりにあった譲治と、依子のことを話題に出す。
「おにいさあ、なんか若返った? ていうかちょっとイイ男味が出た?
今までカッスカスの死んだ魚みたいな目してたから、別人かと思ったわ。」
美智子は一応褒めてみる。
「あんた、死んだ魚って。いくらなんでもお兄ちゃんがかわいそうじゃない。」
加奈子が擁護する。
でもそうでしょ、と美智子が肩をすくめる。
「そうねえ。
あの子ってあんなに表情豊かだったかしら、ってびっくりしたわ。」
「譲治は...幸せなんだろうな。」
隆が遠くを見て言う。
「依子さんのおかげなのね、きっと。
7つも上っていうから、大丈夫かしら、どんな人かしら、って心配だったけど。実際に会ってみたら杞憂だったわ。」
加奈子はしみじみとした調子で言う。
「すごいしっかりした人だし、頭いい感じだよね。なんかかっこいいわ~。」
美智子は感心している。
「こんな外国に女だてらに1人やってきて、自立してるんだから、相当苦労したんじゃないか?しっかりもするだろう。」
隆が言う。
「でもさあ、なんでおにいみたいな冴えない男が、あんなしっかりした人を射止めることができたんだろね。ナゾだわ~。」
美智子がまたしても失礼なことを言う。
「お兄ちゃんはああ見えて芯が図太いところあるから、意外と頼れそうだと思ったんじゃない?」
加奈子が分析する。
そうしてぺちゃくちゃと田中家の夜は更けていくのだった。
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