落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第31話 剣とギフト、融合への道

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ショートソードを手にし、バルガスという師を得てから、アルトの生活は一変した。
来る日も来る日も、剣術の基礎訓練。
それは、これまでの自己流の訓練とは比べ物にならないほど厳しく、そして地道なものだった。

しかし、アルトは決して音を上げなかった。
新しい鎧による防御力向上、キングキャップ討伐による自信、そして何より、強くなりたいという渇望が、彼を支えていた。
バルガスの厳しい指導の下、アルトは黙々と汗を流し続けた。

基礎訓練が始まって数週間が経つ頃には、アルトの体には明らかな変化が現れていた。
毎日の素振りで腕や肩の筋肉はたくましくなり、フットワークの練習で下半身も安定してきた。
ショートソードの重さにも完全に慣れ、自分の体の一部のように感じられるようになっていた。

「よし、アルト。素振りはもう十分だ。今日からは、こいつが相手だ」

ある日の訓練で、バルガスは訓練場に立てられた、古びた木製の訓練用ダミーを指差した。
バルガスが木の棒でダミーを様々な角度から突いたり、叩いたりする。
アルトはそれに合わせ、ショートソードで打ち込み、あるいは受け流す練習を開始した。

静止した目標を相手にする素振りとは違い、動く目標に反応し、正確に剣を当てる、あるいは捌く必要がある。
タイミング、距離感、力の入れ具合。
より実践的な感覚が求められ、アルトは最初はタイミングが合わず、何度も空振りしたり、棒に弾かれたりした。

「もっと相手の動きをよく見ろ!」「剣先だけじゃなく、体全体で受け流すんだ!」

バルガスの檄が飛ぶ。
アルトは食らいつくように、失敗から学び、少しずつ動きを修正していった。

基礎がある程度固まってきたと判断したのか、バルガスは次の段階へ進んだ。
それは、アルトが最も期待していた、ギフト【ダメージ反射】と剣術の連携を探る試みだった。

「その妙な反射ってのは、攻撃を受け止めた時に発動するんだったな?」

バルガスは興味深そうに尋ねた。
アルトが頷くと、バルガスはダミーを使って具体的なアイデアを提案してきた。

「例えば、こうだ。相手の攻撃を、あえて剣でしっかりと受け止める。普通の剣士なら弾くか避けるところを、お前は受け止めるんだ。そして、その衝撃が伝わる瞬間に、お前のギフトを発動させる。防御と同時に、衝撃ごと相手に反射ダメージを叩き返すカウンター技だ。どうだ?できそうか?」

「剣で受け止めて…反射…!」

アルトは目を見開いた。
これまで、反射は主に腕で受けるものだと考えていた。
剣で受け止め、その衝撃を利用して反射する。
それは、攻撃と防御を一体化させる、全く新しい発想だった。

アルトは、バルガスが棒で繰り出す突きを、ショートソードの腹で受け止める練習を始めた。
金属と木がぶつかる衝撃が、剣を通して腕に伝わる。
その瞬間に、意識を集中させ、ギフトを発動させる。
最初はタイミングが難しく、ただ衝撃を受けるだけだったり、反射が弱かったりした。

しかし、何度も繰り返すうちに、アルトはコツを掴み始めた。
剣で衝撃を受け止める感覚と、ギフトを発動させる感覚を同調させる。
成功した時、ダミーを打つバルガスの棒が、通常よりも強く弾き返されるのが分かった。

「ほう、面白い!確かに、衝撃が増してるな。これを実戦で使えれば、強力な武器になるかもしれんぞ!」

バルガスも、アルトのギフトの可能性に目を見張っているようだった。

さらに、アルトは以前から考えていた「衝撃波(仮)」の応用も試してみた。
剣を振るう動作に合わせて、剣先から衝撃波を放つイメージ。
ダミーに向かって剣を振るいながらギフトを発動させると、微かだが、ダミーの表面が揺れるような気がした。

「まだ威力は小さいが…これも練習次第では、牽制とか、相手の体勢を崩すのに使えるかもしれない」

アルトは、ギフトと剣術を融合させることで生まれる、自分だけの戦い方の可能性に、胸を躍らせた。

アルトの目覚ましい成長は、師であるバルガスの目にも明らかだった。

「ふむ、なかなか様になってきたな。剣筋も安定してきたし、動きに無駄がなくなってきた。これなら、そろそろ実戦で試してみてもいいかもしれんぞ」

厳しい表情を崩さないバルガスだったが、その言葉には確かな評価が込められていた。

依頼を受けていない間も、アルトの生活は充実していた。
早朝に起き、午前中は家の畑仕事を手伝う。
午後はバルガスとの剣術訓練に汗を流す。
夜は、その日の訓練内容を復習し、鎧と剣の手入れを欠かさない。
地道で規則正しい日々が、アルトの心と体を着実に鍛え上げていた。
以前のひょろっとした少年の面影は薄れ、その体つきは引き締まり、精悍な若者のそれへと変わりつつあった。

リナは、そんなアルトの姿を、心配しながらも温かく見守ってくれていた。
時折、訓練場に顔を出し、「アルト、頑張ってるね。でも、無理しないでね」と声をかけ、手作りの干し肉や、冷たい湧き水などを差し入れてくれる。
その存在が、アルトにとってどれほど大きな励みになっているか、リナ自身は気づいていないかもしれない。

兄のヨハンも、アルトの変化を黙って見ていた。
畑仕事でのアルトの目覚ましい体力向上には内心驚いているようで、以前のようにからかうことは完全になくなった。
むしろ、剣の手入れに苦労しているアルトに、さりげなく手入れのコツを教えてくれたりすることもあった。
不器用ながらも、弟の成長を認め、応援しているのだろう。

たまに顔を出すギルドでは、アルトがバルガスの下で厳しい訓練に明け暮れていることは、ちょっとした噂になっていた。
「あのアルトってルーキー、バルガス爺さんの地獄のシゴキによく耐えてるらしいぜ」
「キングキャップを倒しただけあって、やっぱり根性あるんだな」
そんな声が聞こえてくるようになり、アルトに対するギルド内の評価は、もはや疑いようのないものとなっていた。

長く、そして厳しく感じられた基礎訓練期間。
しかし、それはアルトにとって、かけがえのない成長の時間だった。
ショートソードは、彼の頼れる相棒となりつつある。
ギフト【ダメージ反射】と剣術の融合も、バルガスのアドバイスを得て、具体的な形が見え始めてきた。

「そろそろ、実戦で試してみてもいいかもしれんぞ」

バルガスの言葉が、アルトの心の中で繰り返される。
剣術の基礎を身につけ、新たな戦い方の可能性を見出したアルト。
その力を、実際の依頼で試す時が、すぐそこまで近づいているのかもしれない。
冒険者としての活動再開。
その期待に、アルトの胸は静かに高鳴っていた。
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