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第30話 剣術の基礎と新たな師
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ショートソード。
念願の新しい武器を手に入れたアルトだったが、その喜びも束の間、彼はすぐに現実の壁にぶつかっていた。
ナイフと同じ感覚で振るってみても、重さもバランスも全く違う剣は、思うように動いてくれない。
下手をすれば、自分の足を斬ってしまいそうな危うさすらある。
「やっぱり、ちゃんと使い方を学ばないとダメだ…」
鍛冶屋の親方の言葉が、アルトの頭の中で繰り返される。
自己流では限界がある。
誰かに、剣術の基礎を教えてもらう必要がある。
アルトは考えた末、ギルドへ向かい、あの年配の戦士、バルガスに頼んでみることに決めた。
彼は経験豊富な冒険者だ。
きっと、剣の扱いにも詳しいはずだ。
ギルドでバルガスを見つけると、アルトは深呼吸を一つして、思い切って声をかけた。
「あの、バルガスさん!お願いがあります!俺に、剣の基礎を教えていただけませんか?」
突然の申し出に、バルガスは少し驚いたような顔をしたが、すぐにその口元にニヤリとした笑みを浮かべた。
「ほう、キングキャップを倒したルーキーが、今度は剣術に挑戦か。威勢がいいじゃねえか。いいだろう、面白そうだ。俺でよければ、基礎くらいは見てやるよ」
快く引き受けてくれたバルガスだったが、その目は真剣だった。
「ただし、言っておくが、俺の指導は厳しいぞ。生半可な覚悟なら、今すぐやめておけ。それでもやるって言うなら、ついてこい」
「はい!お願いします!」
アルトは、迷うことなく力強く頷いた。
バルガスは満足そうに頷くと、アルトを連れてギルドの裏手にある、簡素な訓練場へと向かった。
そこから、アルトにとって地獄のような、しかし充実した基礎訓練の日々が始まった。
バルガスはまず、剣の基本的な構えからアルトに叩き込んだ。
足の開き方、腰の落とし方、体重の乗せ方、そして剣の正しい握り方。
一つ一つの動作に、理に適った意味があることを、バルガスは丁寧に、しかし厳しく説明した。
「構えがなってなきゃ、どんな技も意味をなさねえ。まずは体に叩き込め!」
次に始まったのは、ひたすらな素振りだった。
バルガスが示す正しいフォームで、ショートソードを振り下ろす。
ただ振るのではない。
肩、腰、足、体全体の連動を意識し、剣の重さを感じながら、正確な軌道で。
最初は数十回振るだけで、アルトの腕はパンパンに張り、息が切れた。
ナイフとは比較にならない負荷が、全身にかかる。
それでも、アルトは歯を食いしばって剣を振り続けた。
何百回、何千回と。汗が地面に滴り落ち、手のひらの皮が剥けても、彼は止めなかった。
フットワークの訓練も、同様に過酷だった。
基本的な前後の動き、左右へのステップ、相手の攻撃を想定した素早い回避行動。
ナイフを使っていた時の、どちらかというと直線的な動きとは全く違う、剣術独特の足捌きに、アルトは何度も足をもつれさせ、地面に転びそうになった。
「もっと腰を落とせ!軸がブレてるぞ!」
「腕だけで振るな!体全体を使えと言ってるだろうが!」
バルガスの容赦ない檄が、訓練場に響き渡る。
厳しい指導だったが、その言葉にはアルトを本気で育てようという熱意がこもっているのを、アルトは感じていた。
辛い基礎訓練の合間、アルトは時折、ショートソードと自分のギフト【ダメージ反射】の連携について、ぼんやりと考えを巡らせていた。
剣で相手の攻撃を受け流し、体勢が崩れたところにカウンターで反射を叩き込む。
それは、ナイフを使っていた時よりも、さらに効果的な戦術になるかもしれない。
あるいは、もっと別の可能性は…?
例えば、剣で斬りつける、その瞬間に、あの「衝撃波(仮)」のような力を剣に乗せることができたら?
斬撃の威力を上げたり、相手の防御を崩したりできるかもしれない…。
もちろん、それはまだ夢想の域を出ない。
今の自分には、剣の基礎を固めることで精一杯だ。
それでも、ギフトと剣術を組み合わせることで生まれるかもしれない、自分だけの独自の戦い方。
その可能性が、アルトの心を奮い立たせ、厳しい訓練を乗り越えるモチベーションとなっていた。
厳しい訓練が始まってから、一週間ほどが過ぎた頃。
アルトの剣の扱いは、依然として未熟ではあったが、最初の頃と比べれば、目に見える変化が現れ始めていた。
不安定だった構えは安定し、長時間構えていても、ふらつくことが少なくなった。
素振りの軌道も、以前よりずっと一定になり、振り下ろす剣先に、わずかながらも力が乗るようになってきた。
フットワークも、まだぎこちなさは残るものの、基本的なステップは確実に身についてきている。
その変化は、師であるバルガスの目にも明らかだったようだ。
「ふん、少しはマシになってきたじゃねえか。根性だけはあると思っていたが、飲み込みも悪くないようだ。だが、まだまだヒヨッコもいいところだぞ。油断するな」
口では相変わらず厳しかったが、その声には、アルトの努力を認める響きが含まれていた。
剣術の基礎をしっかりと身につけること。
それが今の最優先事項だと考えたアルトは、しばらくの間、ギルドの依頼を受けるのを控えることにした。
幸い、キングキャップの素材売却で得た資金には、まだ十分な余裕がある。
焦って依頼を受け、中途半端な状態で危険な目に遭うよりも、今は集中して剣の扱いに習熟するべきだと判断したのだ。
新しい武器、ショートソード。
そして、バルガスという頼れる師。
アルトは、剣術という新たな、そして大きな壁に、真正面から挑み始めた。
その道は険しく、地道で単調な基礎訓練が続く。
しかし、アルトの目には、苦しさや辛さよりも、強くなることへの純粋な渇望と、ギフトと剣術を融合させるという、まだ見ぬ未来への確かな希望が映っていた。
彼の成長物語は、武器と技を基礎から徹底的に磨き上げる、新たな修練の期間へと入っていく。
この地道な努力が、いつか必ず大きな力となり、彼をさらなる高みへと導いてくれることを信じて。
アルトは今日もまた、夕暮れの訓練場で、汗と泥にまみれながら、黙々と剣を振り続けるのだった。
念願の新しい武器を手に入れたアルトだったが、その喜びも束の間、彼はすぐに現実の壁にぶつかっていた。
ナイフと同じ感覚で振るってみても、重さもバランスも全く違う剣は、思うように動いてくれない。
下手をすれば、自分の足を斬ってしまいそうな危うさすらある。
「やっぱり、ちゃんと使い方を学ばないとダメだ…」
鍛冶屋の親方の言葉が、アルトの頭の中で繰り返される。
自己流では限界がある。
誰かに、剣術の基礎を教えてもらう必要がある。
アルトは考えた末、ギルドへ向かい、あの年配の戦士、バルガスに頼んでみることに決めた。
彼は経験豊富な冒険者だ。
きっと、剣の扱いにも詳しいはずだ。
ギルドでバルガスを見つけると、アルトは深呼吸を一つして、思い切って声をかけた。
「あの、バルガスさん!お願いがあります!俺に、剣の基礎を教えていただけませんか?」
突然の申し出に、バルガスは少し驚いたような顔をしたが、すぐにその口元にニヤリとした笑みを浮かべた。
「ほう、キングキャップを倒したルーキーが、今度は剣術に挑戦か。威勢がいいじゃねえか。いいだろう、面白そうだ。俺でよければ、基礎くらいは見てやるよ」
快く引き受けてくれたバルガスだったが、その目は真剣だった。
「ただし、言っておくが、俺の指導は厳しいぞ。生半可な覚悟なら、今すぐやめておけ。それでもやるって言うなら、ついてこい」
「はい!お願いします!」
アルトは、迷うことなく力強く頷いた。
バルガスは満足そうに頷くと、アルトを連れてギルドの裏手にある、簡素な訓練場へと向かった。
そこから、アルトにとって地獄のような、しかし充実した基礎訓練の日々が始まった。
バルガスはまず、剣の基本的な構えからアルトに叩き込んだ。
足の開き方、腰の落とし方、体重の乗せ方、そして剣の正しい握り方。
一つ一つの動作に、理に適った意味があることを、バルガスは丁寧に、しかし厳しく説明した。
「構えがなってなきゃ、どんな技も意味をなさねえ。まずは体に叩き込め!」
次に始まったのは、ひたすらな素振りだった。
バルガスが示す正しいフォームで、ショートソードを振り下ろす。
ただ振るのではない。
肩、腰、足、体全体の連動を意識し、剣の重さを感じながら、正確な軌道で。
最初は数十回振るだけで、アルトの腕はパンパンに張り、息が切れた。
ナイフとは比較にならない負荷が、全身にかかる。
それでも、アルトは歯を食いしばって剣を振り続けた。
何百回、何千回と。汗が地面に滴り落ち、手のひらの皮が剥けても、彼は止めなかった。
フットワークの訓練も、同様に過酷だった。
基本的な前後の動き、左右へのステップ、相手の攻撃を想定した素早い回避行動。
ナイフを使っていた時の、どちらかというと直線的な動きとは全く違う、剣術独特の足捌きに、アルトは何度も足をもつれさせ、地面に転びそうになった。
「もっと腰を落とせ!軸がブレてるぞ!」
「腕だけで振るな!体全体を使えと言ってるだろうが!」
バルガスの容赦ない檄が、訓練場に響き渡る。
厳しい指導だったが、その言葉にはアルトを本気で育てようという熱意がこもっているのを、アルトは感じていた。
辛い基礎訓練の合間、アルトは時折、ショートソードと自分のギフト【ダメージ反射】の連携について、ぼんやりと考えを巡らせていた。
剣で相手の攻撃を受け流し、体勢が崩れたところにカウンターで反射を叩き込む。
それは、ナイフを使っていた時よりも、さらに効果的な戦術になるかもしれない。
あるいは、もっと別の可能性は…?
例えば、剣で斬りつける、その瞬間に、あの「衝撃波(仮)」のような力を剣に乗せることができたら?
斬撃の威力を上げたり、相手の防御を崩したりできるかもしれない…。
もちろん、それはまだ夢想の域を出ない。
今の自分には、剣の基礎を固めることで精一杯だ。
それでも、ギフトと剣術を組み合わせることで生まれるかもしれない、自分だけの独自の戦い方。
その可能性が、アルトの心を奮い立たせ、厳しい訓練を乗り越えるモチベーションとなっていた。
厳しい訓練が始まってから、一週間ほどが過ぎた頃。
アルトの剣の扱いは、依然として未熟ではあったが、最初の頃と比べれば、目に見える変化が現れ始めていた。
不安定だった構えは安定し、長時間構えていても、ふらつくことが少なくなった。
素振りの軌道も、以前よりずっと一定になり、振り下ろす剣先に、わずかながらも力が乗るようになってきた。
フットワークも、まだぎこちなさは残るものの、基本的なステップは確実に身についてきている。
その変化は、師であるバルガスの目にも明らかだったようだ。
「ふん、少しはマシになってきたじゃねえか。根性だけはあると思っていたが、飲み込みも悪くないようだ。だが、まだまだヒヨッコもいいところだぞ。油断するな」
口では相変わらず厳しかったが、その声には、アルトの努力を認める響きが含まれていた。
剣術の基礎をしっかりと身につけること。
それが今の最優先事項だと考えたアルトは、しばらくの間、ギルドの依頼を受けるのを控えることにした。
幸い、キングキャップの素材売却で得た資金には、まだ十分な余裕がある。
焦って依頼を受け、中途半端な状態で危険な目に遭うよりも、今は集中して剣の扱いに習熟するべきだと判断したのだ。
新しい武器、ショートソード。
そして、バルガスという頼れる師。
アルトは、剣術という新たな、そして大きな壁に、真正面から挑み始めた。
その道は険しく、地道で単調な基礎訓練が続く。
しかし、アルトの目には、苦しさや辛さよりも、強くなることへの純粋な渇望と、ギフトと剣術を融合させるという、まだ見ぬ未来への確かな希望が映っていた。
彼の成長物語は、武器と技を基礎から徹底的に磨き上げる、新たな修練の期間へと入っていく。
この地道な努力が、いつか必ず大きな力となり、彼をさらなる高みへと導いてくれることを信じて。
アルトは今日もまた、夕暮れの訓練場で、汗と泥にまみれながら、黙々と剣を振り続けるのだった。
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