落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第29話 新たな武器、ショートソード

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キングキャップ討伐という大きな成果は、アルトに予想以上の副産物をもたらした。
ギルドマスターの紹介で会った、薬や錬金術の材料を扱うという行商人は、アルトが持ち込んだキングキャップの素材、特に状態の良い大きな毒袋を見ると、目を丸くして興奮した様子を見せた。

「こ、これは素晴らしい!まさしく極上のキングキャップの毒袋…!これほどのものは滅多にお目にかかれませんぞ!ぜひ、ぜひ当方に買い取らせていただきたい!」

行商人は熱心に買い取りを申し出てきた。
提示された金額は、アルトがこれまでに稼いだ報酬の合計額を軽く上回る、まとまった額の銀貨だった。
Fランク冒険者が一度に手にするには、破格と言える大金だ。
アルトは、震える手で銀貨の詰まった袋を受け取り、これが冒険者としての成功の一つの形なのかもしれない、と感じた。

大きな資金を得たアルトは、迷うことなく次の目標へと動き出した。
キングキャップ戦で痛感した、攻撃力不足の解消。
すなわち、ナイフよりも強力な、本格的な武器の購入だ。

アルトはまず、兄のヨハンや鍛冶屋の親方の言葉を思い出し、再び村の鍛冶屋を訪れた。
事情を話すと、親方は「ほう、キングキャップの素材、高く売れたようだな。そいつは良かった。で、武器か…」と、少しだけ表情を和らげた。

「お前さんの戦い方…あの妙な反射のギフトと、ナイフの動きを見る限りじゃ、やはり片手で扱えて、取り回しの良いものがいいだろうな」

親方はそう言って、店の壁にかけてあったいくつかの武器をアルトの前に並べてみせた。
ずっしりと重い、頑丈そうな作りのダガー。
バランスが良く、突きにも斬撃にも使えそうなショートソード。
そして、硬い相手にも打撃を与えられそうな、無骨な片手メイス。

アルトは、それぞれの武器を慎重に手に取ってみた。
ダガーは、これまで使ってきたナイフに近い感覚で扱えそうだが、やはりリーチの短さが気になる。
メイスは、その重さと威力は魅力的だが、自分の素早さを活かした戦い方には合わないかもしれない。

そして、ショートソード。
手に持ってみると、長さも重さもちょうど良く感じられた。
ナイフのように精密な突きは難しいかもしれないが、しっかりとした斬撃が可能で、防御にも使えそうだ。
何より、アルトの手の中に、しっくりと馴染む感覚があった。
華美な装飾は一切ない、質実剛健な作り。
だが、その無骨さの中に、確かな信頼性が感じられる一振りだった。

以前、バルガスからも「ショートソードなら、攻守のバランスも良いし、反射との連携も考えやすいだろう」というアドバイスをもらっていたことも、アルトの心を後押しした。

「親方、これにします!このショートソードをください!」

アルトは決意を固め、ショートソードを選んだ。
親方は満足そうに頷き、「見る目があるじゃねえか。そいつは俺が若い頃に打ったもんでな、見習いの頃の作だが、素材と鍛えは確かだ。安くしといてやるよ」と、手頃な価格で譲ってくれた。

アルトは代金を支払い、初めて手にする本格的な剣に、武者震いするような興奮と、同時に身が引き締まるような責任感を感じていた。

「ただし、小僧、一つ言っておくぞ」

親方は、アルトが店を出ようとした時、厳しい声で呼び止めた。

「剣はナイフとは違う。ただ振り回せばいいってもんじゃない。ちゃんと使い方を学ばねば、それはただの重い鉄の棒だ。いや、下手をすれば、自分自身を傷つけることになる。そのことを、ゆめゆめ忘れるな」

「……はい!肝に銘じます!」

アルトは、親方の言葉を深く胸に刻み、鍛冶屋を後にした。

新しい相棒となるショートソードを大切に抱え、アルトは家路についた。
自室に戻り、革鎧の隣に、そっとショートソードを置く。
これから、この剣と共に戦っていくのだ。
アルトは、親方に教わった通り、錆止めと艶出しの効果があるという専用のオイルを柔らかい布に染み込ませ、剣身を丁寧に磨き上げた。
輝きを取り戻した剣は、まるでアルトの決意に応えるかのように、静かな光を放っているようだった。

合わせて、剣を腰に安定して下げるための、丈夫な革製の剣帯も購入した。
新しい革鎧、そして新しいショートソード。
アルトの装備は、数週間前とは比べ物にならないほど充実し、もはや駆け出しの新人とは思えないほどの風格を備え始めていた。

新たな武器、ショートソード。
それは、アルトにとって、攻撃力不足という大きな課題を克服するための、重要な一歩となるはずだ。
しかし、親方の言葉通り、剣は持っているだけでは意味がない。
剣術という、全く新しい技術を、これから習得していかなければならない。

ギフト【ダメージ反射】。
未熟ながらも必死に磨いてきたナイフ術。
そして、これから学ぶ剣術。

これらをどう組み合わせ、融合させ、自分だけの戦い方へと昇華させていくのか。
アルトの前には、険しくも、しかし無限の可能性に満ちた道が続いていた。
彼の成長物語は、新たな武器という頼もしい相棒を得て、いよいよ次の章へと進もうとしていた。
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