落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

文字の大きさ
27 / 125

第27話 毒キノコの王と成長の証

しおりを挟む
新しい革鎧を身にまとい、アルトは再び森の奥の湿地帯へと足を踏み入れた。
以前訪れた時とは違い、体を守る確かな防具があるという事実は、アルトの心に大きな余裕をもたらしていた。
もちろん、油断は禁物だ。
ブルーキャップの毒胞子は、鎧があっても厄介なことに変わりはない。

湿地帯に到着すると、アルトはすぐに青白い光を放つキノコの群生を発見した。
彼は布で口元をしっかりと覆い、革手袋をはめ、ナイフを抜く。
風向きを確認し、慎重にブルーキャップに近づいていく。

以前は胞子を恐れて遠巻きに様子をうかがうことも多かったが、今は違う。
アルトは積極的に距離を詰め、ブルーキャップの傘の下、本体である柄の部分を狙って素早くナイフを振るった。

プシュッ。
軽い音と共に、ブルーキャップは力を失い、その場にしなだれるように活動を停止した。
鎧のおかげで多少の胞子は気にせず接近できるため、反射を使うまでもなく、ナイフでの攻撃が非常に有効だった。

「これなら、意外と早く依頼を達成できるかも……」

アルトは手応えを感じ、次々とブルーキャップを討伐していく。
一体、また一体と、順調に討伐数を重ねていった。

その油断が、新たな脅威を呼び寄せたのかもしれない。
群生の中でもひときわ大きく、傘の色が毒々しい紫色に近い、異様なブルーキャップが、ぬっとアルトの前に立ちはだかったのだ。
通常の個体の倍はあろうかという巨体。
周囲には、通常よりも濃い毒のオーラのようなものが漂っている。
間違いない。

「こいつが……ギルドマスターが言っていた、キングキャップ……!」

アルトはゴクリと息をのみ、ナイフを構え直した。
全身から発せられるプレッシャーが、これまでのブルーキャップとは明らかに違う。
本能が、危険信号を発していた。

キングキャップは、その巨大な傘を不気味に震わせると、周囲に大量の毒胞子を撒き散らした。
それと同時に、傘の先端から、粘度の高い紫色の毒液を、まるで水鉄砲のようにアルトに向かって飛ばしてきた!

「うわっ!」

毒胞子よりも明らかに速く、そして威力のある攻撃。
アルトは咄嗟に横へ跳んで回避する。
毒液が地面に落ちると、ジュウウウッと激しい音を立て、地面が泡立ちながら溶けていく。
鎧で受け止めようなどとは、考えない方がよさそうだ。

アルトは、飛んでくる毒液に対し、例の「衝撃波(仮)」を放ってみた。
ギフトの力を前方に押し出すイメージ。
衝撃波は毒液の塊にぶつかり、その勢いをいくらか弱めることができた。
しかし、完全に弾き飛ばすことはできない。
掠めた毒液が鎧に付着し、革の表面がジリジリと変色していくのが見えた。
強力な酸性、あるいは腐食性の毒なのだろう。

「衝撃波だけじゃ防ぎきれない…接近するしかない!」

アルトは、毒液攻撃の合間を縫って、キングキャップの懐へと飛び込んだ。
動き自体は、通常のブルーキャップより少し鈍重なようだ。
しかし、その巨体から繰り出される体当たりや、巨大な傘での叩きつけは、非常に力強い。

ドゴンッ!
キングキャップの体当たりを、アルトは革鎧と【ダメージ反射】で受け止める。
鎧が衝撃の大部分を吸収してくれるが、それでも体には鈍い痛みが響く。
アルトは受けた衝撃を、集中力を込めて反射する!

「グオッ!?」

キングキャップは、反射ダメージを受けてわずかに怯んだような声を上げた。
だが、その体力は通常の個体とは比較にならないほど高いようで、すぐに体勢を立て直し、再び攻撃を仕掛けてくる。
毒液、毒胞子、そして物理攻撃。
多彩な攻撃に、アルトは苦戦を強いられた。

戦闘の最中、どうしても避けきれなかった毒胞子をわずかに吸い込んでしまい、軽い目眩と咳がアルトを襲う。

「くっ…!」

アルトはすぐに距離を取り、リナにもらった解毒薬草を口に含んで強く噛んだ。
苦味が広がり、症状はいくらか和らぐが、万全の状態ではない。
集中力が途切れれば、一瞬でやられてしまうだろう。

消耗戦。
アルトは、この強敵を倒すには、一撃必殺のチャンスを待つしかないと判断した。
キングキャップの攻撃パターンを冷静に観察し、弱点を探る。
通常のブルーキャップと同じなら、傘の付け根、本体との境目が弱点のはずだ。

そして、そのチャンスは訪れた。
キングキャップが、最大級の毒液を放とうと、大きく傘を振りかぶった瞬間。
その動作は大きく、わずかな硬直を生んでいた。

「今だ!」

アルトはその隙を見逃さなかった。
毒液が放たれるよりも早く、キングキャップの懐に飛び込み、渾身の力を込めて、ナイフを傘の付け根めがけて突き立てた!

グシャリッ!
鈍い、確かな手応えがあった。
ナイフは、硬い傘の下の、比較的柔らかい本体部分に深々と突き刺さった。

「ギシャアアアアアアアッ!!」

キングキャップは、これまでにない苦悶の絶叫を上げ、巨体を激しく震わせた。
そして、アルトがさらに追撃の反射ダメージを叩き込むと、ついにその巨体を支えきれなくなり、ゆっくりと地面に倒れ込み、動かなくなった。

「はぁ……はぁ……はぁ………倒した………!」

アルトは、その場に膝をつき、荒い息を繰り返した。
キングキャップは、フォレストスパイダーとはまた違う種類の、厄介で手強い敵だった。
毒、特殊攻撃、そして高い体力。
新しい鎧がなければ、勝てたかどうか分からない。

息を整えた後、アルトは立ち上がり、残っていた通常のブルーキャップを数体、手早く討伐し、依頼目標である10個体を達成した。
そして、キングキャップの残骸へと近づいた。
討伐の証拠として、通常よりも一回り大きく、毒々しい紫色をした傘の一部を切り取る。
さらに、傘の付け根あたりに、粘液が詰まったような袋状の器官があるのを見つけた。

「これが、毒袋…かな?」

バルガスが言っていた毒液は、ここから生成されていたのかもしれない。
アルトは、これも貴重な素材になるかもしれないと思い、慎重にナイフで切り取り、採取袋に収めた。

キングキャップという予期せぬ強敵との戦いは、アルトに大きな疲労をもたらしたが、同時に、確かな成長の実感も与えてくれた。
新しい鎧の有効性。
ギフトの応用の可能性。
そして、毒を持つ強敵との戦い方。
多くの学びがあった。

しかし、同時に新たな課題も見えた。
自分の攻撃力不足。
キングキャップのような体力のある相手には、ナイフだけでは決定打を与えにくい。
そして、毒への根本的な対策の必要性。
今回は薬草で乗り切れたが、もっと強力な毒だったらどうなっていただろうか。

依頼を達成し、貴重な素材も手に入れたアルト。
彼は、達成感と新たな課題を胸に、湿地帯を後にした。
ギルドに戻り、この大きな成果を報告するのが楽しみだった。
Fランク冒険者アルトの挑戦は、まだまだ終わらない。
彼は、さらなる強さを求め、歩み続ける。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...