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第26話 新たな鎧と次なる試練
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猫探し依頼を終えてから数日後、アルトは約束の日を待ちきれない様子で、村の鍛冶屋の扉を叩いた。
中からは、いつものように金属を打つ音と、親方の威勢の良い声が聞こえてくる。
「おう、来たか。できて…いや、直しておいたぞ」
親方は、汗を拭いながら、店の奥から一領の革鎧を差し出した。
黒光りする、硬質化された革。
胸当て、肩当て、そして腰回りを守る前垂れが、頑丈な革紐で繋がれている。
アルトの体に合わせて、肩や脇の部分が丁寧に調整されており、見るからに頼もしい。
「どうだ?悪くねぇだろう。ま、中古は中古だが、下手な新品よりはよっぽど役に立つはずだ」
親方は、ぶっきらぼうながらも、どこか誇らしげに言った。
そして、アルトに革鎧の手入れ方法――オイルの塗り方や保管場所の注意点などを、改めて丁寧に教えてくれた。
「道具ってのはな、使い手次第で良くも悪くもなる。鎧もおんなじだ。ちゃんと手入れして、大事に使ってやれよ。そうすりゃ、いざという時にお前さんの命を守ってくれるはずだ」
「はい!ありがとうございます、親方!」
アルトは深く頭を下げ、約束の代金を支払った。
念願の革鎧。
そのずっしりとした重みが、アルトの冒険者としての覚悟を、さらに確かなものにしてくれるようだった。
家に帰り着くと、アルトは早速、新しい革鎧を身に着けてみた。
しっかりとした重みを感じる。
体を動かしてみると、最初は少し動きにくさを感じたが、すぐに慣れた。
何より、体を守られているという安心感が、これまでとは全く違う。
鏡に映る自分の姿は、少し不格好かもしれないが、間違いなく以前よりずっと頼もしく、冒険者らしく見えた。
アルトは、自然と笑みがこぼれるのを止められなかった。
その後、アルトは庭先で、鎧を装備した状態での訓練を開始した。
ナイフの素振り、ステップ、回避行動。
鎧の重さに慣れ、動きを阻害しないように、体の使い方を調整していく。
そして、ギフト【ダメージ反射】の発動。
鎧を着ていても、問題なくギフトは発動するようだ。
むしろ、鎧によってダメージが軽減される分、より冷静に、より集中して反射に意識を向けられるかもしれない。
防御力が向上したことで、アルトの心には、より挑戦的な依頼に挑みたいという気持ちが湧き上がっていた。
彼は再び冒険者ギルドへ向かい、依頼掲示板をじっくりと見つめた。
ジャイアントラット討伐は、今の自分なら鎧なしでも問題なくこなせるだろう。
もっと手応えのある相手はいないか…。
そして、アルトの目は一つの依頼書に釘付けになった。
『ブルーキャップ討伐:森の湿地帯に発生したブルーキャップを10個体(傘ではなく本体)討伐。毒胞子に注意。報酬銅貨30枚。ランクF以上』
以前、傘の採取で訪れた場所。
あの時は、毒胞子に苦しめられ、本体との戦闘は避けた。
しかし、今なら、この新しい鎧があれば、接近戦のリスクも軽減できるはずだ。
毒を持つ魔物との本格的な戦闘。
それは、アルトにとって乗り越えるべき新たな壁だと感じられた。
「よし、これに挑戦しよう」
アルトは決意し、依頼書をカウンターへ持っていった。
ギルドマスターは、アルトの新しい鎧を一瞥すると、依頼書を見て頷いた。
「ほう、ブルーキャップ討伐か。鎧も手に入れたようだし、ちょうどいいかもしれんな。だが、油断はするなよ」
マスターは、そこで少し表情を引き締めて続けた。
「実は、最近、あの湿地帯で少し大型のブルーキャップ…『キングキャップ』と呼ばれる変種の目撃情報が入っている。通常の個体よりも毒性が強く、体力もあるらしい。もし遭遇したら、十分に注意しろ」
「キングキャップ…?」
新たな脅威の存在に、アルトは少し緊張した。
近くで話を聞いていたバルガスも、心配そうに声をかけてくる。
「キングキャップか…厄介だな。普通のブルーキャップと違って、胞子だけじゃなく、傘から毒液を飛ばしてくることもあると聞くぞ。動き自体は鈍いが、油断してると痛い目を見るぜ」
「ありがとうございます、気をつけて行ってきます」
アルトは、貴重な情報に感謝し、気持ちを引き締めた。
家に帰り、アルトは家族に新しい鎧を見せ、次の依頼がブルーキャップ討伐であることを報告した。
鎧の頑丈そうな様子に、両親は少し安堵の色を見せたが、やはり毒を持つ魔物への挑戦には、心配そうな表情を隠せない。
兄のヨハンは、「鎧を着てても、過信するなよ。毒ってのは、鎧じゃ防げねぇこともあるからな」と、いつもの調子で、しかし的を射た注意を与えてくれた。
リナにも報告に行くと、彼女は鎧が手に入ったことを喜びながらも、やはり心配を隠せない様子だった。
「鎧、手に入ったんだね!よかった!でも、ブルーキャップ…大丈夫?キングキャップなんていうのもいるんでしょ?」
「うん、でも大丈夫だよ。ちゃんと準備もしたし、この鎧もあるから。それに、色々な経験を積まないとね」
アルトがそう言うと、リナは理解を示しつつも、「はい、これ」と、新しい解毒薬草と、皮膚のかぶれに効くという塗り薬を渡してくれた。
「絶対に、絶対に無理はしないでね。約束だよ」
「うん、約束する。ありがとう、リナ」
皆の心配と応援を力に変えて。
アルトは、ブルーキャップ討伐に向けて、万全の準備を整えた。
新しい革鎧。
これまでの依頼で培った経験。
少しずつ成長しているギフト。
そして、仲間からの情報とサポート。
キングキャップという未知の脅威は存在する。
しかし、今の自分なら、きっと乗り越えられるはずだ。
「よし、行こう!」
アルトは、決意を固め、革鎧の感触を確かめながら、毒キノコの魔物が待つ、森の湿地帯へと再び足を踏み入れた。
Fランク冒険者として、そして一人の成長する若者として、アルトの新たな試練が、今、始まろうとしていた。
中からは、いつものように金属を打つ音と、親方の威勢の良い声が聞こえてくる。
「おう、来たか。できて…いや、直しておいたぞ」
親方は、汗を拭いながら、店の奥から一領の革鎧を差し出した。
黒光りする、硬質化された革。
胸当て、肩当て、そして腰回りを守る前垂れが、頑丈な革紐で繋がれている。
アルトの体に合わせて、肩や脇の部分が丁寧に調整されており、見るからに頼もしい。
「どうだ?悪くねぇだろう。ま、中古は中古だが、下手な新品よりはよっぽど役に立つはずだ」
親方は、ぶっきらぼうながらも、どこか誇らしげに言った。
そして、アルトに革鎧の手入れ方法――オイルの塗り方や保管場所の注意点などを、改めて丁寧に教えてくれた。
「道具ってのはな、使い手次第で良くも悪くもなる。鎧もおんなじだ。ちゃんと手入れして、大事に使ってやれよ。そうすりゃ、いざという時にお前さんの命を守ってくれるはずだ」
「はい!ありがとうございます、親方!」
アルトは深く頭を下げ、約束の代金を支払った。
念願の革鎧。
そのずっしりとした重みが、アルトの冒険者としての覚悟を、さらに確かなものにしてくれるようだった。
家に帰り着くと、アルトは早速、新しい革鎧を身に着けてみた。
しっかりとした重みを感じる。
体を動かしてみると、最初は少し動きにくさを感じたが、すぐに慣れた。
何より、体を守られているという安心感が、これまでとは全く違う。
鏡に映る自分の姿は、少し不格好かもしれないが、間違いなく以前よりずっと頼もしく、冒険者らしく見えた。
アルトは、自然と笑みがこぼれるのを止められなかった。
その後、アルトは庭先で、鎧を装備した状態での訓練を開始した。
ナイフの素振り、ステップ、回避行動。
鎧の重さに慣れ、動きを阻害しないように、体の使い方を調整していく。
そして、ギフト【ダメージ反射】の発動。
鎧を着ていても、問題なくギフトは発動するようだ。
むしろ、鎧によってダメージが軽減される分、より冷静に、より集中して反射に意識を向けられるかもしれない。
防御力が向上したことで、アルトの心には、より挑戦的な依頼に挑みたいという気持ちが湧き上がっていた。
彼は再び冒険者ギルドへ向かい、依頼掲示板をじっくりと見つめた。
ジャイアントラット討伐は、今の自分なら鎧なしでも問題なくこなせるだろう。
もっと手応えのある相手はいないか…。
そして、アルトの目は一つの依頼書に釘付けになった。
『ブルーキャップ討伐:森の湿地帯に発生したブルーキャップを10個体(傘ではなく本体)討伐。毒胞子に注意。報酬銅貨30枚。ランクF以上』
以前、傘の採取で訪れた場所。
あの時は、毒胞子に苦しめられ、本体との戦闘は避けた。
しかし、今なら、この新しい鎧があれば、接近戦のリスクも軽減できるはずだ。
毒を持つ魔物との本格的な戦闘。
それは、アルトにとって乗り越えるべき新たな壁だと感じられた。
「よし、これに挑戦しよう」
アルトは決意し、依頼書をカウンターへ持っていった。
ギルドマスターは、アルトの新しい鎧を一瞥すると、依頼書を見て頷いた。
「ほう、ブルーキャップ討伐か。鎧も手に入れたようだし、ちょうどいいかもしれんな。だが、油断はするなよ」
マスターは、そこで少し表情を引き締めて続けた。
「実は、最近、あの湿地帯で少し大型のブルーキャップ…『キングキャップ』と呼ばれる変種の目撃情報が入っている。通常の個体よりも毒性が強く、体力もあるらしい。もし遭遇したら、十分に注意しろ」
「キングキャップ…?」
新たな脅威の存在に、アルトは少し緊張した。
近くで話を聞いていたバルガスも、心配そうに声をかけてくる。
「キングキャップか…厄介だな。普通のブルーキャップと違って、胞子だけじゃなく、傘から毒液を飛ばしてくることもあると聞くぞ。動き自体は鈍いが、油断してると痛い目を見るぜ」
「ありがとうございます、気をつけて行ってきます」
アルトは、貴重な情報に感謝し、気持ちを引き締めた。
家に帰り、アルトは家族に新しい鎧を見せ、次の依頼がブルーキャップ討伐であることを報告した。
鎧の頑丈そうな様子に、両親は少し安堵の色を見せたが、やはり毒を持つ魔物への挑戦には、心配そうな表情を隠せない。
兄のヨハンは、「鎧を着てても、過信するなよ。毒ってのは、鎧じゃ防げねぇこともあるからな」と、いつもの調子で、しかし的を射た注意を与えてくれた。
リナにも報告に行くと、彼女は鎧が手に入ったことを喜びながらも、やはり心配を隠せない様子だった。
「鎧、手に入ったんだね!よかった!でも、ブルーキャップ…大丈夫?キングキャップなんていうのもいるんでしょ?」
「うん、でも大丈夫だよ。ちゃんと準備もしたし、この鎧もあるから。それに、色々な経験を積まないとね」
アルトがそう言うと、リナは理解を示しつつも、「はい、これ」と、新しい解毒薬草と、皮膚のかぶれに効くという塗り薬を渡してくれた。
「絶対に、絶対に無理はしないでね。約束だよ」
「うん、約束する。ありがとう、リナ」
皆の心配と応援を力に変えて。
アルトは、ブルーキャップ討伐に向けて、万全の準備を整えた。
新しい革鎧。
これまでの依頼で培った経験。
少しずつ成長しているギフト。
そして、仲間からの情報とサポート。
キングキャップという未知の脅威は存在する。
しかし、今の自分なら、きっと乗り越えられるはずだ。
「よし、行こう!」
アルトは、決意を固め、革鎧の感触を確かめながら、毒キノコの魔物が待つ、森の湿地帯へと再び足を踏み入れた。
Fランク冒険者として、そして一人の成長する若者として、アルトの新たな試練が、今、始まろうとしていた。
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