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第75話 王都武闘大会、初陣の喝采
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Cランク冒険者となり、ギフトレベルも【3割】へと成長を遂げたアルト。
彼は王都アステリアでの活動基盤を固めつつ、次なる目標、Dランク、いや、いずれはさらにその上を見据え、日々の鍛錬と情報収集に励んでいた。
そんな折、王都全体がにわかに活気づき始める出来事が起こった。
年に一度、王国で最も盛大に開催される「建国王祭」が間近に迫っていたのだ。
街の至る所に色とりどりの旗が飾られ、楽団の陽気な音楽が鳴り響く。
そして、その建国王祭の数ある催しの中でも、特に冒険者たちの注目を集めるイベントがあった。
王都冒険者ギルドが主催する、「王都武闘大会」である。
ギルド本部の巨大な掲示板には、大会の開催を告げる羊皮紙が、ひときわ大きく張り出されていた。
『建国王祭奉納 王都武闘大会 開催! ランクB以下の冒険者よ、集え! 力と技を競い、最強の栄誉と莫大な賞金を掴み取れ! 上位入賞者には、王立騎士団への推薦、有力貴族からの後援の道も開かれる!』
その告知文は、多くの冒険者たちの心を熱くさせた。
アルトもまた、その一人だった。
「武闘大会か……」
掲示板を見上げ、アルトの胸は自然と高鳴った。
今の自分の実力が、この王都の数多いる猛者たちを相手に、どこまで通用するのか。
手に入れたばかりの黒き剣「黒曜」、腕に装着したバックラー、そして3割へと成長したギフト【ダメージ反射】。
それらを、魔物相手ではなく、技術と経験を持つ人間相手に、この大舞台で試してみたい。
もちろん、Cランクになったばかりの自分が、簡単に勝ち進めるとは思っていない。
上位には、Bランクという、自分よりも遥かに格上の冒険者たちも参加するだろう。
優勝など、夢のまた夢だ。
それでも、この大会に参加することで得られる経験は、計り知れないものがあるはずだ。
強者たちの戦いを間近で見ること、そして、自分自身の限界を知ること。
それは、今後の成長にとって、何物にも代えがたい財産となるだろう。
その話をギフト研究家のエリアーヌにすると、彼女は案の定、目をキラキラと輝かせた。
「まあ!王都武闘大会ですって!?素晴らしいじゃありませんか、アルトさん!ぜひ、ぜひ参加なさってくださいまし!」
彼女は興奮気味に続ける。
「ああいった極限の緊張状態、観衆の視線、そして強敵との真剣勝負!それこそ、あなたのギフトに眠る未知なる力…あの神秘的な麻痺効果が、再び発現する最高の機会かもしれませんわ!ああ、考えただけでもゾクゾクしますわね!わたくし、最前列でしっかりと応援、いえ、観察させていただきますから!」
エリアーヌの(研究者としての興味が大部分を占めるであろう)熱烈な後押しも、アルトの決意をさらに固めさせた。
アルトは、迷うことなく武闘大会への参加登録を済ませた。
参加資格はランクB以下。
Cランクになったばかりのアルトも、問題なく参加できる。
大会までの残された数週間、彼はこれまで以上に厳しい訓練に没頭した。
故郷の師、バルガスの教えを思い出す。
特に対人戦における間合いの重要性、相手の呼吸や視線の動きを読む洞察力、フェイントを見抜き、それに対応する技術。
アルトは、ギルドの訓練場で、仮想の敵を相手に、剣と盾の連携を繰り返し練習した。
防御から攻撃へ、攻撃から防御へ、流れるような動きを体に叩き込む。
ギフトとの連携も、対人戦を強く意識して磨き上げた。
相手の武器による攻撃を、剣や盾で受け止め、カウンター反射で武器ごとダメージを与え、相手の攻撃のリズムを崩す。
衝撃波(仮)による牽制や、一瞬の目くらましのタイミング。
そして、もしもの時の切り札となるかもしれない、あの麻痺効果の発動条件の模索…。
エリアーヌも、時折訓練場に顔を出し、アルトの動きやギフトの発動状態を熱心に観察し、魔物学や古代遺物の知識に基づいた、独自の(そして時に突拍子もない)アドバイスを送ってくれた。
そして、ついに大会当日がやってきた。
王都の中心に位置する、巨大な円形闘技場(コロッセオ)。
そこは、朝から熱狂的な観衆で埋め尽くされ、地鳴りのような歓声と期待感で満ち溢れていた。
闘技場の上空には、王国の旗や、有力貴族の紋章旗、そして冒険者ギルドの旗などが、青空の下で勇壮にはためいている。
楽団の奏でる、血沸き肉躍るような勇ましい音楽が、会場全体の興奮をさらに高めていた。
観客席には、王都の一般市民や商人たちに混じって、ひときわ華やかな衣装を身にまとった貴族たちの姿や、整然と隊列を組んで観戦する王立騎士団の銀色の鎧も見える。
この大会が、単なる冒険者の腕比べではなく、王国全体が注目する一大イベントであることがうかがえた。
闘技場の地下にある、広大な控え室。
そこには、アルトと同じように、この大会で己の力を証明しようと集まった、数多くの冒険者たちがひしめいていた。
歴戦の風格を漂わせる屈強な戦士。
影のように素早い動きを見せる斥候。
神秘的なローブに身を包み、杖を携えた魔術師。
その誰もが、確かな実力と、勝利への渇望を漂わせている。
アルトは、その場の圧倒的な熱気と、強者たちの放つオーラに少し気圧されながらも、同時に、武者震いにも似た興奮を禁じ得なかった。
やがて、予選トーナメントの一回戦の組み合わせが発表された。
アルトの名前が呼ばれ、対戦相手が告げられる。
相手は、アルトと同じくCランクに所属する冒険者。
腰に下げたプレートには、長槍の紋章が刻まれている。
体格が良く、頑丈そうな鎧を身に着けた、経験豊富そうな男だった。
観衆の大歓声に迎えられ、アルトは闘技場の中央へと歩み出た。
足元の硬く踏み固められた土の感触。
観客席から降り注ぐ、無数の視線。
初めて経験する、大舞台の空気だ。
対峙する槍使いの男。
その目には、確かな実力への自信と、同時に、アルト(まだ若く、王都では見慣れない顔だ)に対する、わずかな油断の色が見て取れた。
「両者、前へ!礼!」
審判を務める、ベテランのギルド職員の声が響く。
アルトと槍使いは、互いに向き合い、騎士の礼に基づいた短い挨拶を交わす。
「始めっ!!」
審判の鋭い声と共に、試合開始のゴングが鳴り響いた!
槍使いは、その長いリーチを最大限に活かし、試合開始と同時に鋭い突きを連続で繰り出してきた。
風を切る穂先が、アルトの顔面、胸元、足元へと、立て続けに襲いかかる!
(速い!そして、的確だ!)
アルトは冷静に、ショートソード「黒曜」と、左腕のバックラーを巧みに使い、その槍の穂先を捌いていく。
受け流し、弾き、あるいはステップで回避する。
魔物相手の戦いとは、明らかに勝手が違う。
相手には知恵があり、技術があり、そして駆け引きがある。
対人戦の難しさと面白さ。
アルトは、試合の序盤で、早くもその洗礼を受けていた。
相手の突きをバックラーで弾き返し、アルトは一瞬の隙を突いて懐に潜り込もうとする。
しかし、槍使いも熟練者だ。
巧みに間合いをコントロールし、アルトに決定的な攻撃の機会を与えない。
槍の石突き(柄の末端)を使った牽制や、足払いなども織り交ぜてくる。
観客席からは、一進一退の攻防に、大きな歓声が上がっていた。
焦れたのか、あるいはアルトの実力を侮ったのか。
槍使いが、渾身の力を込めた一撃、体を大きく捻り、薙ぎ払うような軌道を描く横殴りの突きを放ってきた。
その動きは大きいが、威力は絶大だ。
(ここだ!)
アルトはその攻撃を、あえてバックラーで受け止めた。
左腕に、骨が軋むほどの衝撃が走る。
しかし、耐えられる!
そして、受け止めた瞬間に、全神経を集中させ、ギフトを発動!
「反射ッ!!」
盾越しに放たれたカウンター反射の衝撃が、槍の穂先から柄を通して、槍使い自身の腕へと逆流する!
「ぐおおっ!?」
槍使いは、予期せぬ内部からの衝撃に、驚愕の声を上げた。
腕が痺れ、槍を持つ手に力が入らない。
体勢が、大きく崩れる。
アルトはその決定的な隙を見逃さなかった。
素早く踏み込み、ショートソード「黒曜」を閃かせる。
狙いは、相手の胴鎧の隙間。
アルトの鋭い一撃が、槍使いの脇腹を浅く、しかし確実に捉えた!
「ぐっ……ま、参った……」
槍使いは、脇腹を押さえながら、苦痛に顔を歪め、降参の意を示した。
「勝者、アルトォォーーッ!!」
審判が高らかに勝者の名を告げると、闘技場全体から、アルトの勝利を称える大きな拍手と歓声が沸き起こった。
派手さこそなかったかもしれない。
堅実な守りから、一瞬の隙を突いてカウンターで仕留める。
しかし、その戦いぶりは、観客に強い印象を与えた。
特に、攻撃を受け止めてそのまま相手に返すという、【ダメージ反射】のユニークな戦法は、多くの人々の興味を引いたようだ。
貴賓席の一角。
壮年の貴族が、隣に座る、厳つい顔つきの騎士団長らしき人物に、興味深そうに囁いていた。
「ふむ、なかなか面白い若者がいたものだな。あの最後の妙な技は……ギフトであろうか?」
騎士団長もまた、鋭い目で、闘技場を後にするアルトの後ろ姿を見つめていた。
「ええ。詳細は不明ですが、防御からの反撃に特化した、興味深い力のようですな。名前はアルト…覚えておきましょう」
高ランクの冒険者たちも、アルトの戦いに注目し、その実力と将来性を評価し始めていた。
王都武闘大会での初戦を、見事な勝利で飾ったアルト。
控え室に戻ると、安堵感と共に、確かな達成感が彼を満たした。
しかし、他の試合の様子を目の当たりにすると、上位の冒険者たちのレベルの高さに、改めて身が引き締まる思いだった。
剣技、魔法、特殊なギフト…そのどれもが、アルトの想像を遥かに超えている。
上位への道は、限りなく険しいだろう。
この大会で、自分の力を試し、何かを掴みたい。
アルトの心は、次なる戦いへの期待で燃えていた。
彼は王都アステリアでの活動基盤を固めつつ、次なる目標、Dランク、いや、いずれはさらにその上を見据え、日々の鍛錬と情報収集に励んでいた。
そんな折、王都全体がにわかに活気づき始める出来事が起こった。
年に一度、王国で最も盛大に開催される「建国王祭」が間近に迫っていたのだ。
街の至る所に色とりどりの旗が飾られ、楽団の陽気な音楽が鳴り響く。
そして、その建国王祭の数ある催しの中でも、特に冒険者たちの注目を集めるイベントがあった。
王都冒険者ギルドが主催する、「王都武闘大会」である。
ギルド本部の巨大な掲示板には、大会の開催を告げる羊皮紙が、ひときわ大きく張り出されていた。
『建国王祭奉納 王都武闘大会 開催! ランクB以下の冒険者よ、集え! 力と技を競い、最強の栄誉と莫大な賞金を掴み取れ! 上位入賞者には、王立騎士団への推薦、有力貴族からの後援の道も開かれる!』
その告知文は、多くの冒険者たちの心を熱くさせた。
アルトもまた、その一人だった。
「武闘大会か……」
掲示板を見上げ、アルトの胸は自然と高鳴った。
今の自分の実力が、この王都の数多いる猛者たちを相手に、どこまで通用するのか。
手に入れたばかりの黒き剣「黒曜」、腕に装着したバックラー、そして3割へと成長したギフト【ダメージ反射】。
それらを、魔物相手ではなく、技術と経験を持つ人間相手に、この大舞台で試してみたい。
もちろん、Cランクになったばかりの自分が、簡単に勝ち進めるとは思っていない。
上位には、Bランクという、自分よりも遥かに格上の冒険者たちも参加するだろう。
優勝など、夢のまた夢だ。
それでも、この大会に参加することで得られる経験は、計り知れないものがあるはずだ。
強者たちの戦いを間近で見ること、そして、自分自身の限界を知ること。
それは、今後の成長にとって、何物にも代えがたい財産となるだろう。
その話をギフト研究家のエリアーヌにすると、彼女は案の定、目をキラキラと輝かせた。
「まあ!王都武闘大会ですって!?素晴らしいじゃありませんか、アルトさん!ぜひ、ぜひ参加なさってくださいまし!」
彼女は興奮気味に続ける。
「ああいった極限の緊張状態、観衆の視線、そして強敵との真剣勝負!それこそ、あなたのギフトに眠る未知なる力…あの神秘的な麻痺効果が、再び発現する最高の機会かもしれませんわ!ああ、考えただけでもゾクゾクしますわね!わたくし、最前列でしっかりと応援、いえ、観察させていただきますから!」
エリアーヌの(研究者としての興味が大部分を占めるであろう)熱烈な後押しも、アルトの決意をさらに固めさせた。
アルトは、迷うことなく武闘大会への参加登録を済ませた。
参加資格はランクB以下。
Cランクになったばかりのアルトも、問題なく参加できる。
大会までの残された数週間、彼はこれまで以上に厳しい訓練に没頭した。
故郷の師、バルガスの教えを思い出す。
特に対人戦における間合いの重要性、相手の呼吸や視線の動きを読む洞察力、フェイントを見抜き、それに対応する技術。
アルトは、ギルドの訓練場で、仮想の敵を相手に、剣と盾の連携を繰り返し練習した。
防御から攻撃へ、攻撃から防御へ、流れるような動きを体に叩き込む。
ギフトとの連携も、対人戦を強く意識して磨き上げた。
相手の武器による攻撃を、剣や盾で受け止め、カウンター反射で武器ごとダメージを与え、相手の攻撃のリズムを崩す。
衝撃波(仮)による牽制や、一瞬の目くらましのタイミング。
そして、もしもの時の切り札となるかもしれない、あの麻痺効果の発動条件の模索…。
エリアーヌも、時折訓練場に顔を出し、アルトの動きやギフトの発動状態を熱心に観察し、魔物学や古代遺物の知識に基づいた、独自の(そして時に突拍子もない)アドバイスを送ってくれた。
そして、ついに大会当日がやってきた。
王都の中心に位置する、巨大な円形闘技場(コロッセオ)。
そこは、朝から熱狂的な観衆で埋め尽くされ、地鳴りのような歓声と期待感で満ち溢れていた。
闘技場の上空には、王国の旗や、有力貴族の紋章旗、そして冒険者ギルドの旗などが、青空の下で勇壮にはためいている。
楽団の奏でる、血沸き肉躍るような勇ましい音楽が、会場全体の興奮をさらに高めていた。
観客席には、王都の一般市民や商人たちに混じって、ひときわ華やかな衣装を身にまとった貴族たちの姿や、整然と隊列を組んで観戦する王立騎士団の銀色の鎧も見える。
この大会が、単なる冒険者の腕比べではなく、王国全体が注目する一大イベントであることがうかがえた。
闘技場の地下にある、広大な控え室。
そこには、アルトと同じように、この大会で己の力を証明しようと集まった、数多くの冒険者たちがひしめいていた。
歴戦の風格を漂わせる屈強な戦士。
影のように素早い動きを見せる斥候。
神秘的なローブに身を包み、杖を携えた魔術師。
その誰もが、確かな実力と、勝利への渇望を漂わせている。
アルトは、その場の圧倒的な熱気と、強者たちの放つオーラに少し気圧されながらも、同時に、武者震いにも似た興奮を禁じ得なかった。
やがて、予選トーナメントの一回戦の組み合わせが発表された。
アルトの名前が呼ばれ、対戦相手が告げられる。
相手は、アルトと同じくCランクに所属する冒険者。
腰に下げたプレートには、長槍の紋章が刻まれている。
体格が良く、頑丈そうな鎧を身に着けた、経験豊富そうな男だった。
観衆の大歓声に迎えられ、アルトは闘技場の中央へと歩み出た。
足元の硬く踏み固められた土の感触。
観客席から降り注ぐ、無数の視線。
初めて経験する、大舞台の空気だ。
対峙する槍使いの男。
その目には、確かな実力への自信と、同時に、アルト(まだ若く、王都では見慣れない顔だ)に対する、わずかな油断の色が見て取れた。
「両者、前へ!礼!」
審判を務める、ベテランのギルド職員の声が響く。
アルトと槍使いは、互いに向き合い、騎士の礼に基づいた短い挨拶を交わす。
「始めっ!!」
審判の鋭い声と共に、試合開始のゴングが鳴り響いた!
槍使いは、その長いリーチを最大限に活かし、試合開始と同時に鋭い突きを連続で繰り出してきた。
風を切る穂先が、アルトの顔面、胸元、足元へと、立て続けに襲いかかる!
(速い!そして、的確だ!)
アルトは冷静に、ショートソード「黒曜」と、左腕のバックラーを巧みに使い、その槍の穂先を捌いていく。
受け流し、弾き、あるいはステップで回避する。
魔物相手の戦いとは、明らかに勝手が違う。
相手には知恵があり、技術があり、そして駆け引きがある。
対人戦の難しさと面白さ。
アルトは、試合の序盤で、早くもその洗礼を受けていた。
相手の突きをバックラーで弾き返し、アルトは一瞬の隙を突いて懐に潜り込もうとする。
しかし、槍使いも熟練者だ。
巧みに間合いをコントロールし、アルトに決定的な攻撃の機会を与えない。
槍の石突き(柄の末端)を使った牽制や、足払いなども織り交ぜてくる。
観客席からは、一進一退の攻防に、大きな歓声が上がっていた。
焦れたのか、あるいはアルトの実力を侮ったのか。
槍使いが、渾身の力を込めた一撃、体を大きく捻り、薙ぎ払うような軌道を描く横殴りの突きを放ってきた。
その動きは大きいが、威力は絶大だ。
(ここだ!)
アルトはその攻撃を、あえてバックラーで受け止めた。
左腕に、骨が軋むほどの衝撃が走る。
しかし、耐えられる!
そして、受け止めた瞬間に、全神経を集中させ、ギフトを発動!
「反射ッ!!」
盾越しに放たれたカウンター反射の衝撃が、槍の穂先から柄を通して、槍使い自身の腕へと逆流する!
「ぐおおっ!?」
槍使いは、予期せぬ内部からの衝撃に、驚愕の声を上げた。
腕が痺れ、槍を持つ手に力が入らない。
体勢が、大きく崩れる。
アルトはその決定的な隙を見逃さなかった。
素早く踏み込み、ショートソード「黒曜」を閃かせる。
狙いは、相手の胴鎧の隙間。
アルトの鋭い一撃が、槍使いの脇腹を浅く、しかし確実に捉えた!
「ぐっ……ま、参った……」
槍使いは、脇腹を押さえながら、苦痛に顔を歪め、降参の意を示した。
「勝者、アルトォォーーッ!!」
審判が高らかに勝者の名を告げると、闘技場全体から、アルトの勝利を称える大きな拍手と歓声が沸き起こった。
派手さこそなかったかもしれない。
堅実な守りから、一瞬の隙を突いてカウンターで仕留める。
しかし、その戦いぶりは、観客に強い印象を与えた。
特に、攻撃を受け止めてそのまま相手に返すという、【ダメージ反射】のユニークな戦法は、多くの人々の興味を引いたようだ。
貴賓席の一角。
壮年の貴族が、隣に座る、厳つい顔つきの騎士団長らしき人物に、興味深そうに囁いていた。
「ふむ、なかなか面白い若者がいたものだな。あの最後の妙な技は……ギフトであろうか?」
騎士団長もまた、鋭い目で、闘技場を後にするアルトの後ろ姿を見つめていた。
「ええ。詳細は不明ですが、防御からの反撃に特化した、興味深い力のようですな。名前はアルト…覚えておきましょう」
高ランクの冒険者たちも、アルトの戦いに注目し、その実力と将来性を評価し始めていた。
王都武闘大会での初戦を、見事な勝利で飾ったアルト。
控え室に戻ると、安堵感と共に、確かな達成感が彼を満たした。
しかし、他の試合の様子を目の当たりにすると、上位の冒険者たちのレベルの高さに、改めて身が引き締まる思いだった。
剣技、魔法、特殊なギフト…そのどれもが、アルトの想像を遥かに超えている。
上位への道は、限りなく険しいだろう。
この大会で、自分の力を試し、何かを掴みたい。
アルトの心は、次なる戦いへの期待で燃えていた。
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