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第115話 迷宮の死闘、覚醒せし力
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迷宮の奥深く、円形の広間。
そこに響き渡るのは、巨大なミノタウロスの、大地を揺るがすかのような蹄の音と、全てを打ち砕かんとする獰猛な咆哮。
最後の力を振り絞るかのように、その巨躯はアルトめがけて一直線に突進してくる。
頭部の巨大な二本の角が、槍のように鋭く突き出され、手にした両刃斧(ラビュリス)は、もはやアルトには回避不能な軌道を描いていた。
(これが、最後の一撃…!)
アルトの全身を、極度の緊張が貫く。
体力は限界を超え、左腕のバックラーは亀裂が走り、もはや盾としての機能を果たせるかも怪しい。
右腕も痺れ、黒曜の剣を握る手に力が入らない。
絶体絶命。
しかし、アルトの心は、不思議と澄み切っていた。
恐怖はない。
あるのは、ただ、生き残りたいという強烈な意志。
そして、この試練を乗り越え、さらに強くなりたいという渇望。
リナとの約束、故郷の家族、王都で出会った仲間たち…守りたい者たちの顔が、脳裏をよぎる。
(俺は、まだ、死ねない…!)
アルトは、震える足で踏ん張り、残された全ての力を、その一点に集中させた。
バックラーと、ひび割れた革鎧を前面に押し出し、黒曜の剣を、祈るように、しかし確かな意志を持って構える。
そして、自身の内なる力――ギフト【ダメージ反射】に、心の底から呼びかけた。
(応えてくれ…!俺の意志に、俺の想いに…!守るための力を!)
ミノタウロスの突進が、アルトに激突する、まさにその刹那。
パァァァァァァッ!!!
再び、あの蒼白い閃光が、アルトの全身から迸った!
それは、忘れられた神殿でコア・ゴーレムを打ち破った時よりも、さらに強く、さらに眩しく、そして明確な指向性を持った光の奔流だった!
閃光は、アルトの構えた剣と盾から放たれ、突進してきたミノタウロスの巨体を、真正面から包み込んだ!
「モ゛……ォ……!?」
ミノタウロスの動きが、完全に停止した。
その赤い瞳には、信じられないものを見たかのような、驚愕と混乱の色が浮かんでいる。
振り上げられたラビュリスは空中で静止し、突進の勢いは完全に殺され、まるで巨大な石像のように、その場で完全に硬直している。
リフレクト・ショック!
ギフトの覚醒した力が、今度こそ、アルトの強い意志に応え、完全な形で発動したのだ!
(……やった!)
アルト自身も、その力の制御にまだ慣れていない。
ギフトを発動させた反動で、全身に激しい脱力感が襲う。
しかし、目の前に訪れた、これ以上ないほどの絶好の機会を、彼が見逃すはずはなかった。
麻痺し、完全に無防備になったミノタウロス。
その巨体の、わずかに守りが薄い首筋――太い血管が走っているであろう場所――めがけて、アルトは最後の気力を振り絞り、黒曜の剣を突き出した!
ズブリッ!
重く、確かな手応え。
剣先は、硬い皮膚と筋肉を貫き、ミノタウロスの生命の急所を、深く捉えた。
「モ………ォ………」
ミノタウロスは、声にならない、くぐもった呻き声を漏らすと、その巨体から急速に力が抜けていく。
赤い瞳の光が消え、ゆっくりと、しかし確実に、その巨体は前のめりに傾き……やがて、大きな地響きを立てて、迷宮の硬い石床に完全に倒れ伏した。
もう、二度と動くことはないだろう。
…………しん。
迷宮の広間に、絶対的な静寂が戻った。
残されたのは、倒れたミノタウロスの巨体と、その傍らで、剣を杖代わりに、荒い息を繰り返しながら、かろうじて立っているアルトの姿だけだった。
「はぁ……はぁ……勝った……勝ったんだ……!」
アルトは、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。
全身から力が抜け、指一本動かすのも億劫なくらい、疲労困憊している。
左腕のバックラーは、最後の衝撃で完全に砕け散っていた。
革鎧もボロボロで、もはや防具としての機能はほとんど残っていないだろう。
黒曜の剣も、無事ではあるが、刃には細かな傷がいくつも入っている。
しかし、アルトの心は、これまでにないほどの達成感と、そしてギフトの覚醒という大きな手応えに満たされていた。
Cランクの強敵とされるミノタウロスを、単独で打ち破ったのだ。
そして何より、あのリフレクト・ショックを、自分の意志で、完全な形で発動させることができた。
まだ制御は不安定で、発動条件も完全には理解できていない。
それでも、あの力が自分の中に眠っていることを、確かに実感できた。
しばらくの間、アルトはその場で動けなかった。
極度の疲労と、ギフトを発動させた後の奇妙な虚脱感が、彼を襲っていた。
だが、いつまでもこうしているわけにはいかない。
アルトは、最後の力を振り絞って立ち上がり、討伐の証拠となるものを回収し始めた。
ミノタウロスの巨大な角を一本、根元からナイフで慎重に切り取る。
そして、倒れた際に落としたと思われる、巨大な両刃斧(ラビュリス)の一部(刃が欠けたものなど)も拾い集めた。
これらがあれば、依頼達成の証明は十分だろう。
今回の戦いで、ギフトの新たな可能性を掴んだ。
しかし同時に、その制御の難しさ、そして発動に伴う精神的な消耗の大きさも痛感した。
この力を自在に使いこなすためには、エリアーヌと共に、さらなる研究と、そして精神力を高めるための特別な訓練が必要になるだろう。
ボロボロの体を引きずりながら、アルトは迷宮からの帰路についた。
壁に記された印や、地図を頼りに、慎重に出口を目指す。
単独での高難易度依頼達成。
そして、ギフトの覚醒。
彼は、この迷宮で、冒険者として、そしてギフト使いとして、間違いなく大きな壁を一つ乗り越えたのだ。
その代償もまた、決して小さくはなかったが。
王都へと戻るアルトの足取りは重かった。
しかし、その目には、疲労の色だけでなく、次なる目標を見据えた、力強い光が宿っていた。
ギルドにこの成果を報告すれば、どのような評価が下されるだろうか。
アルトは、王都の灯りを目指し、一歩一歩、確かな足取りで歩みを進めるのだった。
そこに響き渡るのは、巨大なミノタウロスの、大地を揺るがすかのような蹄の音と、全てを打ち砕かんとする獰猛な咆哮。
最後の力を振り絞るかのように、その巨躯はアルトめがけて一直線に突進してくる。
頭部の巨大な二本の角が、槍のように鋭く突き出され、手にした両刃斧(ラビュリス)は、もはやアルトには回避不能な軌道を描いていた。
(これが、最後の一撃…!)
アルトの全身を、極度の緊張が貫く。
体力は限界を超え、左腕のバックラーは亀裂が走り、もはや盾としての機能を果たせるかも怪しい。
右腕も痺れ、黒曜の剣を握る手に力が入らない。
絶体絶命。
しかし、アルトの心は、不思議と澄み切っていた。
恐怖はない。
あるのは、ただ、生き残りたいという強烈な意志。
そして、この試練を乗り越え、さらに強くなりたいという渇望。
リナとの約束、故郷の家族、王都で出会った仲間たち…守りたい者たちの顔が、脳裏をよぎる。
(俺は、まだ、死ねない…!)
アルトは、震える足で踏ん張り、残された全ての力を、その一点に集中させた。
バックラーと、ひび割れた革鎧を前面に押し出し、黒曜の剣を、祈るように、しかし確かな意志を持って構える。
そして、自身の内なる力――ギフト【ダメージ反射】に、心の底から呼びかけた。
(応えてくれ…!俺の意志に、俺の想いに…!守るための力を!)
ミノタウロスの突進が、アルトに激突する、まさにその刹那。
パァァァァァァッ!!!
再び、あの蒼白い閃光が、アルトの全身から迸った!
それは、忘れられた神殿でコア・ゴーレムを打ち破った時よりも、さらに強く、さらに眩しく、そして明確な指向性を持った光の奔流だった!
閃光は、アルトの構えた剣と盾から放たれ、突進してきたミノタウロスの巨体を、真正面から包み込んだ!
「モ゛……ォ……!?」
ミノタウロスの動きが、完全に停止した。
その赤い瞳には、信じられないものを見たかのような、驚愕と混乱の色が浮かんでいる。
振り上げられたラビュリスは空中で静止し、突進の勢いは完全に殺され、まるで巨大な石像のように、その場で完全に硬直している。
リフレクト・ショック!
ギフトの覚醒した力が、今度こそ、アルトの強い意志に応え、完全な形で発動したのだ!
(……やった!)
アルト自身も、その力の制御にまだ慣れていない。
ギフトを発動させた反動で、全身に激しい脱力感が襲う。
しかし、目の前に訪れた、これ以上ないほどの絶好の機会を、彼が見逃すはずはなかった。
麻痺し、完全に無防備になったミノタウロス。
その巨体の、わずかに守りが薄い首筋――太い血管が走っているであろう場所――めがけて、アルトは最後の気力を振り絞り、黒曜の剣を突き出した!
ズブリッ!
重く、確かな手応え。
剣先は、硬い皮膚と筋肉を貫き、ミノタウロスの生命の急所を、深く捉えた。
「モ………ォ………」
ミノタウロスは、声にならない、くぐもった呻き声を漏らすと、その巨体から急速に力が抜けていく。
赤い瞳の光が消え、ゆっくりと、しかし確実に、その巨体は前のめりに傾き……やがて、大きな地響きを立てて、迷宮の硬い石床に完全に倒れ伏した。
もう、二度と動くことはないだろう。
…………しん。
迷宮の広間に、絶対的な静寂が戻った。
残されたのは、倒れたミノタウロスの巨体と、その傍らで、剣を杖代わりに、荒い息を繰り返しながら、かろうじて立っているアルトの姿だけだった。
「はぁ……はぁ……勝った……勝ったんだ……!」
アルトは、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。
全身から力が抜け、指一本動かすのも億劫なくらい、疲労困憊している。
左腕のバックラーは、最後の衝撃で完全に砕け散っていた。
革鎧もボロボロで、もはや防具としての機能はほとんど残っていないだろう。
黒曜の剣も、無事ではあるが、刃には細かな傷がいくつも入っている。
しかし、アルトの心は、これまでにないほどの達成感と、そしてギフトの覚醒という大きな手応えに満たされていた。
Cランクの強敵とされるミノタウロスを、単独で打ち破ったのだ。
そして何より、あのリフレクト・ショックを、自分の意志で、完全な形で発動させることができた。
まだ制御は不安定で、発動条件も完全には理解できていない。
それでも、あの力が自分の中に眠っていることを、確かに実感できた。
しばらくの間、アルトはその場で動けなかった。
極度の疲労と、ギフトを発動させた後の奇妙な虚脱感が、彼を襲っていた。
だが、いつまでもこうしているわけにはいかない。
アルトは、最後の力を振り絞って立ち上がり、討伐の証拠となるものを回収し始めた。
ミノタウロスの巨大な角を一本、根元からナイフで慎重に切り取る。
そして、倒れた際に落としたと思われる、巨大な両刃斧(ラビュリス)の一部(刃が欠けたものなど)も拾い集めた。
これらがあれば、依頼達成の証明は十分だろう。
今回の戦いで、ギフトの新たな可能性を掴んだ。
しかし同時に、その制御の難しさ、そして発動に伴う精神的な消耗の大きさも痛感した。
この力を自在に使いこなすためには、エリアーヌと共に、さらなる研究と、そして精神力を高めるための特別な訓練が必要になるだろう。
ボロボロの体を引きずりながら、アルトは迷宮からの帰路についた。
壁に記された印や、地図を頼りに、慎重に出口を目指す。
単独での高難易度依頼達成。
そして、ギフトの覚醒。
彼は、この迷宮で、冒険者として、そしてギフト使いとして、間違いなく大きな壁を一つ乗り越えたのだ。
その代償もまた、決して小さくはなかったが。
王都へと戻るアルトの足取りは重かった。
しかし、その目には、疲労の色だけでなく、次なる目標を見据えた、力強い光が宿っていた。
ギルドにこの成果を報告すれば、どのような評価が下されるだろうか。
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