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第126話 凱旋と次なる目標
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険しい山道を下り、王都アステリアへの帰路につくアルトの足取りは、疲労の色こそ濃いものの、確かな力強さを伴っていた。
登りとは対照的に、心には達成感と安堵感が広がっている。
時折、腕に装着された「夜鏡」に目を落としては、グリフォンとの激闘を反芻した。
あの空の王者の猛攻を防ぎきり、勝利をもたらしてくれた新たな相棒。
ボルガン親方の技術と、自身のギフトとの融合が、これほどの力を生み出すとは。
アルトは静かな興奮と共に、その性能を改めて実感していた。
山岳地帯を抜け、見慣れた街道に戻る頃には、陽は西に傾き始めていた。
アルトは道中の泉で顔を洗い、軽く身なりを整える。
戦闘の痕跡は拭えないが、気分は幾分かさっぱりした。
やがて、王都アステリアの高い城壁が見えてくる。
北門の衛兵たちは、山岳地帯から戻ってきたアルトの姿を認めると、その消耗した様子と、腰に下げられた巨大なグリフォンの爪(討伐の証としていくつか持ち帰っていた)に気づき、目を見張った。
「おい、あれは…まさか、北の山のグリフォンか?」
「一人で、だと…?信じられん…」
衛兵たちの囁きを背に、アルトは軽く会釈して門をくぐり、まっすぐに冒険者ギルドを目指した。
ギルドの扉を開けると、夕刻の賑わいの中でも、アルトの姿は注目を集めた。
数日前にBランクに昇格したばかりの新人が、単独でBランクの緊急討伐依頼を受けていたことは、一部の冒険者の間では知られていたからだ。
アルトは受付カウンターへ向かい、討伐の証であるグリフォンの爪を差し出した。
「北部山岳地帯、グリフォン討伐依頼、完了しました」
受付嬢は、差し出された見事な爪と、アルトの落ち着いた報告に息を呑み、慌てて確認作業を行った後、奥へと声をかけた。
すぐに、ギルドマスター本人が姿を現した。
「アルト君、無事だったか!いやはや、驚いたぞ。まさか本当に単独でグリフォンを仕留めてくるとはな」
マスターは、グリフォンの爪を手に取り、感心したように眺めている。
「見事だ。君の実力は、もはや疑いようもないBランク、いや、それ以上かもしれんな」
マスターの言葉に、周囲で聞き耳を立てていた冒険者たちからも、驚嘆や称賛の声が小さく漏れた。
アルトは、約束の報酬である金貨5枚を受け取り、マスターの労いの言葉に頭を下げた。Bランク冒険者としての確固たる実績が、また一つ刻まれた瞬間だった。
ギルドを出たアルトは、その足でエリアーヌの研究室へと向かった。彼女にグリフォン討伐の成功と、無事の帰還を報告するためだ。
「まあ、アルトさん!ご無事で!本当によかった…!」
エリアーヌは、アルトの姿を見るなり駆け寄り、安堵の表情を浮かべた。しかし、すぐに研究者の顔に戻る。
「して、グリフォンはどうでした!? あの気高い魔獣の生態!何か新しい発見は!?」
アルトは苦笑しつつ、戦闘の経緯や観察できた範囲でのグリフォンの様子、特にウィンドカッターや飛行能力について報告した。
インパクト・パルスが飛行バランスを崩すのに有効だったことも伝えると、エリアーヌは目を輝かせた。
「やはり!衝撃波による平衡感覚への干渉は有効なのですね!素晴らしいデータですわ!あなたのギフトと『夜鏡』の組み合わせは、対空戦闘においても大きな可能性を秘めているようですわね。今後のリフレクト・ショック制御の研究にも、大いに役立ちそうです」
エリアーヌは興奮気味にメモを取りながら、アルトの労をねぎらった。
次にアルトが向かったのは、頑鉄工房だった。
「おう、小僧。無事だったようだな。で、どうだった? わしの魂の一部は」
ボルガン親方は、ぶっきらぼうな口調ながらも、どこかアルトの答えを待っている様子だった。
「はい、親方。この『夜鏡』のおかげで、グリフォンを倒すことができました。凄まじい攻撃も、しっかり防いでくれましたし、反射の威力も段違いでした。もちろん、壊れていません!」
アルトが力強く答えると、ボルガンは満足げに「ふん」と鼻を鳴らし、太い腕を組んだ。
「当たり前だ。わしが打ち直したんだからな。…まあ、使いこなせたようで何よりだ。その盾に見合うだけの腕を、これからも磨き続けることだな」
ぶっきらぼうな言葉の中に、確かな激励が込められているのをアルトは感じ取った。
ようやく、アルトは自身の宿に戻ることができた。
熱い湯で体の疲れと汚れを洗い流し、簡単な食事をとる。
そして、手入れのために、黒曜の剣と「夜鏡」をテーブルの上に並べた。
深い黒の輝きを放つ二つの武具。
グリフォンとの激闘を乗り越え、それらはアルトにとって、もはや体の一部と言っても過言ではない存在となっていた。
布で丁寧に汚れを拭き取りながら、アルトは戦いを振り返る。
空からの奇襲、地上での猛攻。
「夜鏡」の防御力と反射能力、そしてインパクト・パルスによる攪乱。
全てが噛み合ったからこその勝利だった。
しかし、一歩間違えればどうなっていたか分からない、きわどい戦いであったことも事実だ。
(グリフォンでこれだ。Bランクの上位、あるいはAランクの魔物となると、さらに厳しい戦いになるだろうな…)
アルトは気を引き締める。
【ダメージ反射】の基本的な威力は上がった。
だが、エリアーヌと研究している「リフレクト・ショック制御」――反射の指向性や威力をより精密にコントロールする技術は、まだ道半ばだ。これが完成すれば、戦いの幅はさらに広がるはずだ。
(もっと強くならなければ…)
グリフォン討伐の達成感は、アルトに自信を与えると同時に、さらなる成長への渇望を強くしていた。
この異世界で、 冒険者として生きていくために。そして、いつか胸を張って「落ちこぼれギフト」ではないと証明するために。
アルトは、手入れの終わった剣と盾を傍らに置き、ベッドに身を横たえた。
心地よい疲労感と共に、意識は深い眠りへと落ちていった。
登りとは対照的に、心には達成感と安堵感が広がっている。
時折、腕に装着された「夜鏡」に目を落としては、グリフォンとの激闘を反芻した。
あの空の王者の猛攻を防ぎきり、勝利をもたらしてくれた新たな相棒。
ボルガン親方の技術と、自身のギフトとの融合が、これほどの力を生み出すとは。
アルトは静かな興奮と共に、その性能を改めて実感していた。
山岳地帯を抜け、見慣れた街道に戻る頃には、陽は西に傾き始めていた。
アルトは道中の泉で顔を洗い、軽く身なりを整える。
戦闘の痕跡は拭えないが、気分は幾分かさっぱりした。
やがて、王都アステリアの高い城壁が見えてくる。
北門の衛兵たちは、山岳地帯から戻ってきたアルトの姿を認めると、その消耗した様子と、腰に下げられた巨大なグリフォンの爪(討伐の証としていくつか持ち帰っていた)に気づき、目を見張った。
「おい、あれは…まさか、北の山のグリフォンか?」
「一人で、だと…?信じられん…」
衛兵たちの囁きを背に、アルトは軽く会釈して門をくぐり、まっすぐに冒険者ギルドを目指した。
ギルドの扉を開けると、夕刻の賑わいの中でも、アルトの姿は注目を集めた。
数日前にBランクに昇格したばかりの新人が、単独でBランクの緊急討伐依頼を受けていたことは、一部の冒険者の間では知られていたからだ。
アルトは受付カウンターへ向かい、討伐の証であるグリフォンの爪を差し出した。
「北部山岳地帯、グリフォン討伐依頼、完了しました」
受付嬢は、差し出された見事な爪と、アルトの落ち着いた報告に息を呑み、慌てて確認作業を行った後、奥へと声をかけた。
すぐに、ギルドマスター本人が姿を現した。
「アルト君、無事だったか!いやはや、驚いたぞ。まさか本当に単独でグリフォンを仕留めてくるとはな」
マスターは、グリフォンの爪を手に取り、感心したように眺めている。
「見事だ。君の実力は、もはや疑いようもないBランク、いや、それ以上かもしれんな」
マスターの言葉に、周囲で聞き耳を立てていた冒険者たちからも、驚嘆や称賛の声が小さく漏れた。
アルトは、約束の報酬である金貨5枚を受け取り、マスターの労いの言葉に頭を下げた。Bランク冒険者としての確固たる実績が、また一つ刻まれた瞬間だった。
ギルドを出たアルトは、その足でエリアーヌの研究室へと向かった。彼女にグリフォン討伐の成功と、無事の帰還を報告するためだ。
「まあ、アルトさん!ご無事で!本当によかった…!」
エリアーヌは、アルトの姿を見るなり駆け寄り、安堵の表情を浮かべた。しかし、すぐに研究者の顔に戻る。
「して、グリフォンはどうでした!? あの気高い魔獣の生態!何か新しい発見は!?」
アルトは苦笑しつつ、戦闘の経緯や観察できた範囲でのグリフォンの様子、特にウィンドカッターや飛行能力について報告した。
インパクト・パルスが飛行バランスを崩すのに有効だったことも伝えると、エリアーヌは目を輝かせた。
「やはり!衝撃波による平衡感覚への干渉は有効なのですね!素晴らしいデータですわ!あなたのギフトと『夜鏡』の組み合わせは、対空戦闘においても大きな可能性を秘めているようですわね。今後のリフレクト・ショック制御の研究にも、大いに役立ちそうです」
エリアーヌは興奮気味にメモを取りながら、アルトの労をねぎらった。
次にアルトが向かったのは、頑鉄工房だった。
「おう、小僧。無事だったようだな。で、どうだった? わしの魂の一部は」
ボルガン親方は、ぶっきらぼうな口調ながらも、どこかアルトの答えを待っている様子だった。
「はい、親方。この『夜鏡』のおかげで、グリフォンを倒すことができました。凄まじい攻撃も、しっかり防いでくれましたし、反射の威力も段違いでした。もちろん、壊れていません!」
アルトが力強く答えると、ボルガンは満足げに「ふん」と鼻を鳴らし、太い腕を組んだ。
「当たり前だ。わしが打ち直したんだからな。…まあ、使いこなせたようで何よりだ。その盾に見合うだけの腕を、これからも磨き続けることだな」
ぶっきらぼうな言葉の中に、確かな激励が込められているのをアルトは感じ取った。
ようやく、アルトは自身の宿に戻ることができた。
熱い湯で体の疲れと汚れを洗い流し、簡単な食事をとる。
そして、手入れのために、黒曜の剣と「夜鏡」をテーブルの上に並べた。
深い黒の輝きを放つ二つの武具。
グリフォンとの激闘を乗り越え、それらはアルトにとって、もはや体の一部と言っても過言ではない存在となっていた。
布で丁寧に汚れを拭き取りながら、アルトは戦いを振り返る。
空からの奇襲、地上での猛攻。
「夜鏡」の防御力と反射能力、そしてインパクト・パルスによる攪乱。
全てが噛み合ったからこその勝利だった。
しかし、一歩間違えればどうなっていたか分からない、きわどい戦いであったことも事実だ。
(グリフォンでこれだ。Bランクの上位、あるいはAランクの魔物となると、さらに厳しい戦いになるだろうな…)
アルトは気を引き締める。
【ダメージ反射】の基本的な威力は上がった。
だが、エリアーヌと研究している「リフレクト・ショック制御」――反射の指向性や威力をより精密にコントロールする技術は、まだ道半ばだ。これが完成すれば、戦いの幅はさらに広がるはずだ。
(もっと強くならなければ…)
グリフォン討伐の達成感は、アルトに自信を与えると同時に、さらなる成長への渇望を強くしていた。
この異世界で、 冒険者として生きていくために。そして、いつか胸を張って「落ちこぼれギフト」ではないと証明するために。
アルトは、手入れの終わった剣と盾を傍らに置き、ベッドに身を横たえた。
心地よい疲労感と共に、意識は深い眠りへと落ちていった。
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