【完結】魔王奮闘記

刺客の接近

再建作業が軌道に乗り始めた夕暮れ時、村の外れで不穏な気配が漂い始めた。

木々の影が揺れ、鳥が一斉に飛び立つ。
ミリアが杖を握り、鋭い視線を森に向けた。  

「リオン様、気をつけてください。何か来ます。」  

リオンは土だらけの手をズボンで拭きながら首をかしげた。  

「え？ また人間？」  

その瞬間、森から黒い影が飛び出し、村の広場に着地した。
黒いローブに身を包んだ男で、顔はフードに隠れ、手には細長い短剣が握られている。
男の背後には、さらに数人の暗殺者らしき影が現れた。  

「魔王リオン・ヴァルガード……貴様をここで葬る。」  

男の声は低く、冷たく響いた。リオンはビクッと肩を震わせたが、すぐに前に出た。  

「僕を殺すって？ 何！？ 僕、なんか悪いことした！？」  

ガルドが剣を構え、吼えた。  
「小僧を狙うなら俺を倒してからだ！ 来い！」  

暗殺者のリーダーが短剣を構え、静かに答えた。  

「我々は人間の王、直属の『影刃団』。新魔王の芽を早々に摘むのが任務だ。お前たちごと消す。」  

戦闘が始まった。
ガルドが突進し、剣を振り下ろすが、暗殺者は素早く身を翻して避ける。
ミリアが杖を振って雷撃を放つと、別の暗殺者が地面に飛び込み、魔法をかわした。ゼドラは杖を地面に突き刺し、魔力の結界を張ってリオンを守った。  

「リオン様、ここは我々に任せて下がっていてください！」  

ゼドラが叫ぶと、リオンは首を振った。  

「僕だって戦うよ！ みんなを守りたいんだ！」  

リオンは目を閉じ、深呼吸した。昨日ミリアに教わった「心を落ち着ける」方法を思い出し、魔力を集中させる。
暗殺者の一人がリオンに気づき、短剣を投げつけた。  

「死ね！」  

短剣が飛ぶ瞬間、リオンの周囲に黒い魔力が渦巻き、短剣を弾き返した。

暗殺者が驚愕の声を上げる。  
「何！？ この魔力は……！」  

リオンが目を開け、叫んだ。  
「僕、負けないよ！」  

黒い魔力が波となって広がり、暗殺者たちを押し返す。
だが、リーダーは冷静に距離を取り、短剣を手に持ったまま呟いた。  

「確かに魔王の血だな……だが、まだ未熟だ。」  

ガルドがリーダーに飛びかかり、剣を振り下ろした。  

「黙れ！ 小僧を侮るな！」  

リーダーは短剣で剣を受け止め、ガルドの腕に浅い傷をつけた。
ガルドが唸りながら後退すると、ミリアが援護に回る。  

「リオン様、今です！ 私と一緒に！」  
ミリアが杖を掲げ、リオンも手を前に出した。  
「うん！ 燃えろー！」  

二人の魔力が共鳴し、巨大な炎の竜が暗殺者たちに向かって飛び出した。
炎が地面を焦がし、暗殺者たちは慌てて散開する。リーダーは歯噛みしながら叫んだ。  
「撤退しろ！ 今はまだ時期尚早だ！」  

暗殺者たちは森の闇に消え、村は再び静寂に包まれた。
リオンは膝をつき、息を切らした。  
「はあ、はあ……逃げちゃった？」  

ガルドが剣を地面に突き刺し、唸った。  
「チッ、逃げ足の速い奴らだ。だが、次は逃がさん。」  

ミリアがリオンに駆け寄り、頭を撫でた。  
「リオン様、すごかったですよ。少しずつ魔法が上達してますね。」  

ゼドラが厳しい顔で呟いた。  
「人間の王が本気で動き出したか……リオン様、我々も本腰を入れねばならん。」  

リオンは立ち上がり、疲れた顔で笑った。  
「うん……僕、もっと強くなるよ。村のみんなを守るために！」