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落とし物
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先週の土曜日の話なんだけどさ。
渋谷の、センター街あたりを一人でぶらぶらしてたんだ。
昼過ぎで、もう、ものすごい人混み。
まあ、いつもの渋谷って感じだったんだけど。
ふと、足元に、何かキラッと光るものが落ちてるのに気づいたんだ。
なんだろうと思って拾ってみたら、それは、小さな、古びたロケットペンダントだった。
銀製っぽくて、表面には細かい傷がたくさんついてる。
でも、不思議と、安っぽい感じはしなくて、むしろ、すごく丁寧に作られた感じ。
誰かの落とし物だろうな、って思った。
周りを見回したけど、落としたらしき人は見当たらないし、人混みもすごくて、声をかけるのも難しい。
とりあえず、近くの交番に届けようと思って、それをポケットに入れたんだ。
その時は、まさか、あんなことになるなんて、夢にも思ってなかった。
交番を探して歩き始めて、数分くらい経った頃かな。
急に、背後から、誰かに、じっと見られてるような、強い視線を感じたんだ。
振り返っても、ただ、雑踏があるだけ。
気のせいか…?
でも、その視線は、ずっと、俺の背中に突き刺さってる。
気味が悪くて、早足で交番へ向かった。
ロケットペンダントを警察官に渡して、簡単な書類を書いて。
これで一安心、と思ったんだけど…。
交番を出て、駅へ向かって歩き始めたら、また、あの視線を感じるんだ。
今度は、もっと強い。
まるで、すぐ後ろに、誰か立ってて、俺のうなじに、冷たい息を吹きかけてるみたいな。
怖くて、何度も振り返るんだけど、誰もいない。
いや、人はたくさんいるんだけど、俺に注目してるような奴は、一人もいない。
その日の夜。
アパートに帰って、飯食って、テレビ見てたんだ。
そしたら、ふと、テーブルの上に、何かキラッとするものがあるのに気づいた。
——— あの、ロケットペンダントだった。
え? なんで?
俺、確かに、交番に届けたはずだよな?
警察官が受け取って、書類も書いた。間違いない。
夢でも見てたのか?
混乱しながら、ペンダントを手に取る。
やっぱり、あの、古びた銀のロケットだ。
その時、気づいたんだ。
ロケットの、普段は固く閉じてるはずの蓋が、ほんの少しだけ、開いてる。
そして、その隙間から、何か、黒くて、細いものが、数本、はみ出してる。
なんだろう、これ…?
恐る恐る、爪で、その蓋を、ゆっくりと開けてみた。
中には、写真が入ってた。
セピア色の、古い家族写真。
父親らしき男、母親らしき女、そして、小さな女の子。
みんな、こっちを見て、にこやかに笑ってる。
でも、その笑顔が、どこか、不自然なんだ。
貼り付けたような、強張った笑顔。
そして、女の子の目が、おかしい。
笑ってるはずなのに、その目だけが、真っ黒で、何も映してなくて、まるで、深い穴みたいに…。
その写真を見た瞬間、部屋の空気が、急に、ズン、と重くなった気がした。
そして、また、あの視線を感じる。
部屋の、どこからか。いや、もっと近く。
すぐ、背後から。
ゆっくりと、振り返る。
——— そこには、誰もいない。
でも、床の、俺の影。
その影の「頭」の部分が、ほんの僅かに、俺とは違う動きをした。
俺は、まだ正面を向いてるのに、影の頭だけが、ゆっくりと、横を向いて、
そして、ニタァ…と、笑ったように見えたんだ。
影の口元が、三日月みたいに、大きく歪んで。
俺は、もう、声も出なかった。
ロケットペンダントを床に落として、そのまま、部屋を飛び出した。
ネットカフェに逃げ込んで、朝まで震えてた。
次の日、恐る恐る部屋に戻ったら、ロケットペンダントは、床に落ちたままだった。
写真は、閉じてた。
俺、もう、あれに触れない。
ゴミに捨てるのも怖い。交番に持っていくのも、もう一度あの写真を見るのも嫌だ。
だから、今も、俺の部屋の隅に、あのロケットは、転がったままなんだ。
そして、時々、感じる。
部屋のどこかから、あの、冷たい視線を。
渋谷の、センター街あたりを一人でぶらぶらしてたんだ。
昼過ぎで、もう、ものすごい人混み。
まあ、いつもの渋谷って感じだったんだけど。
ふと、足元に、何かキラッと光るものが落ちてるのに気づいたんだ。
なんだろうと思って拾ってみたら、それは、小さな、古びたロケットペンダントだった。
銀製っぽくて、表面には細かい傷がたくさんついてる。
でも、不思議と、安っぽい感じはしなくて、むしろ、すごく丁寧に作られた感じ。
誰かの落とし物だろうな、って思った。
周りを見回したけど、落としたらしき人は見当たらないし、人混みもすごくて、声をかけるのも難しい。
とりあえず、近くの交番に届けようと思って、それをポケットに入れたんだ。
その時は、まさか、あんなことになるなんて、夢にも思ってなかった。
交番を探して歩き始めて、数分くらい経った頃かな。
急に、背後から、誰かに、じっと見られてるような、強い視線を感じたんだ。
振り返っても、ただ、雑踏があるだけ。
気のせいか…?
でも、その視線は、ずっと、俺の背中に突き刺さってる。
気味が悪くて、早足で交番へ向かった。
ロケットペンダントを警察官に渡して、簡単な書類を書いて。
これで一安心、と思ったんだけど…。
交番を出て、駅へ向かって歩き始めたら、また、あの視線を感じるんだ。
今度は、もっと強い。
まるで、すぐ後ろに、誰か立ってて、俺のうなじに、冷たい息を吹きかけてるみたいな。
怖くて、何度も振り返るんだけど、誰もいない。
いや、人はたくさんいるんだけど、俺に注目してるような奴は、一人もいない。
その日の夜。
アパートに帰って、飯食って、テレビ見てたんだ。
そしたら、ふと、テーブルの上に、何かキラッとするものがあるのに気づいた。
——— あの、ロケットペンダントだった。
え? なんで?
俺、確かに、交番に届けたはずだよな?
警察官が受け取って、書類も書いた。間違いない。
夢でも見てたのか?
混乱しながら、ペンダントを手に取る。
やっぱり、あの、古びた銀のロケットだ。
その時、気づいたんだ。
ロケットの、普段は固く閉じてるはずの蓋が、ほんの少しだけ、開いてる。
そして、その隙間から、何か、黒くて、細いものが、数本、はみ出してる。
なんだろう、これ…?
恐る恐る、爪で、その蓋を、ゆっくりと開けてみた。
中には、写真が入ってた。
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父親らしき男、母親らしき女、そして、小さな女の子。
みんな、こっちを見て、にこやかに笑ってる。
でも、その笑顔が、どこか、不自然なんだ。
貼り付けたような、強張った笑顔。
そして、女の子の目が、おかしい。
笑ってるはずなのに、その目だけが、真っ黒で、何も映してなくて、まるで、深い穴みたいに…。
その写真を見た瞬間、部屋の空気が、急に、ズン、と重くなった気がした。
そして、また、あの視線を感じる。
部屋の、どこからか。いや、もっと近く。
すぐ、背後から。
ゆっくりと、振り返る。
——— そこには、誰もいない。
でも、床の、俺の影。
その影の「頭」の部分が、ほんの僅かに、俺とは違う動きをした。
俺は、まだ正面を向いてるのに、影の頭だけが、ゆっくりと、横を向いて、
そして、ニタァ…と、笑ったように見えたんだ。
影の口元が、三日月みたいに、大きく歪んで。
俺は、もう、声も出なかった。
ロケットペンダントを床に落として、そのまま、部屋を飛び出した。
ネットカフェに逃げ込んで、朝まで震えてた。
次の日、恐る恐る部屋に戻ったら、ロケットペンダントは、床に落ちたままだった。
写真は、閉じてた。
俺、もう、あれに触れない。
ゴミに捨てるのも怖い。交番に持っていくのも、もう一度あの写真を見るのも嫌だ。
だから、今も、俺の部屋の隅に、あのロケットは、転がったままなんだ。
そして、時々、感じる。
部屋のどこかから、あの、冷たい視線を。
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