【完結】ホラー短編集「隣の怪異」

シマセイ

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霊園

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これは俺がまだ大学生で、バイクでツーリングとかしてた頃の話だ。

その日は、友人のSと二人で、ちょっと遠出して山奥の温泉を目指してたんだ。

ナビ通りに進んでたはずなのに、いつの間にか細い林道に入り込んじまって、完全に道に迷っちまった。

「おい、ここどこだよ…」

Sが不安そうな声を出す。

日が暮れかかってて、辺りはどんどん薄暗くなっていく。

引き返そうにも、道が狭くてUターンもできない。

仕方なくそのまま進んでたら、突然、視界が開けた。

そして、目の前に広がってたのは、広大な霊園だった。

山の斜面一面に、墓石が延々と並んでる。

入り口には「〇〇霊園」って書かれた、古びた看板が立ってた。

「うわ…気味悪いな…」

俺もSも、さすがに言葉を失った。

こんな山奥に、こんなデカい霊園があるなんて知らなかったし、そもそも、この道はどこに繋がってんだよ、って。

でも、他に道もないし、とりあえずこの霊園を通り抜けるしかないってことになった。

霊園の中の道は、舗装はされてたけど、落ち葉が積もってて、ほとんど使われてない感じだった。

両脇には、無数の墓石。

どれも古いものばかりで、苔むしてたり、風化して文字が読めなくなってるのも多かった。

バイクのエンジン音だけが響いてて、不気味なくらい静かだった。

しばらく走ってると、Sが急に、

「おい、なんか寒くないか?」

って言った。

確かに、霊園に入ってから、急に気温が下がったような気がする。

夏だっていうのに、肌寒いくらいだ。

それに、なんだか空気が重い。

息苦しいような、圧迫感を感じる。

「早く抜けようぜ…」

俺たちは自然とスピードを上げた。

でも、いくら走っても、霊園の出口が見えてこない。

同じような墓石が並ぶ景色が、ただただ続いてる。

おかしい。

こんなに広い霊園なのか?

まるで、無限に続いてるみたいだ。

その時、ふと、道の脇の墓石の一つに目が止まった。

その墓石の前に、誰かが立ってたんだ。

黒い人影。

最初は見間違いかと思ったけど、確かに人が立ってる。

でも、顔も服装も、暗くてよく見えない。

ただ、じっとこっちを見てるような気がした。

「おい、S、あれ…」

俺が言いかけた瞬間、その人影が、スッ…と消えた。

「えっ?なんだったんだ今のは…」

Sも見てたらしい。

俺たちは顔を見合わせて、言葉を失った。

ヤバい。

ここはマジでヤバい場所だ。

もう一度スピードを上げて、とにかく出口を目指した。

すると、前方の方から、鈴の音が聞こえてきた。

チリン…チリン…って。

最初は遠くで鳴ってたんだけど、だんだんこっちに近づいてくる。

そして、道の向こうから、白い着物を着た集団が現れた。

手には提灯を持ってて、みんな俯いてて顔は見えない。

その集団が、ゆっくりとこっちに歩いてくるんだ。

「うわあああああ!」

俺たちはパニックになって、バイクの向きを変えようとしたけど、焦ってエンストしちまった。

集団はもう、すぐそこまで迫ってきてる。

鈴の音と、大勢の人の低い話し声みたいなのが、だんだん大きくなってくる。

もうダメだ、って思った瞬間。

突然、背後からクラクションの音が鳴り響いた。

振り返ると、一台の軽トラックが停まってて、運転席からお爺さんが顔を出してた。

「あんたら、こんなとこで何やってるだ!はよ乗れ!」

お爺さんはそう言うと、軽トラの荷台を指差した。

俺たちは訳も分からないまま、バイクを乗り捨てて荷台に飛び乗った。

軽トラが走り出すと、あの白い集団は、いつの間にか消えていた。

お爺さんは、俺たちを麓の町まで送ってくれた。

道中、お爺さんがポツリと言った。

「あの霊園はな、昔から“出る”って言われてる場所なんじゃ。特に、日が暮れてからは、絶対に近づいちゃいけん」

「迷い込んだ人間は、なかなか出られんくなるって話じゃ…」

俺たちは、ただ黙って聞いてることしかできなかった。

次の日、明るくなってから、Sと二人でバイクを取りに戻った。

昼間の霊園は、夜とは打って変わって、ただ静かな場所だった。

でも、あの不気味な雰囲気は、やっぱりどこか残ってる気がした。

俺たちのバイクは、乗り捨てた場所にそのままあった。

でも、バイクのそばの地面に、何か黒いシミができてたんだ。

まるで、誰かがそこに長時間立ってたみたいに。

そして、バイクのシートの上には、どこで紛れ込んだのか、一本の古びた線香が、ポツンと置かれていた。

俺たちは何も言わずにバイクに跨り、二度とあの霊園には近づかないと心に誓った。

今でも、あの鈴の音と、白い集団の姿が、脳裏に焼き付いて離れない。
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