【完結】ホラー短編集「隣の怪異」

シマセイ

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雪だるま

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これは俺がまだ小学生だった頃、ばあちゃん家で体験した話だ。

冬休みになると、毎年ばあちゃん家がある雪国の村に遊びに行くのが恒例だった。

その年も、年末からばあちゃん家に行ってて、年が明けて数日経った頃だったかな。

夜から雪が降り始めて、朝起きたら一面真っ白。

俺はもう大喜びで、いとこの姉ちゃんと二人で、庭に大きな雪だるまを作ったんだ。

石で目と口をつけて、鼻はニンジン。

バケツを帽子みたいにかぶせて、マフラーも巻いてやった。

我ながら力作で、二人で「傑作だ!」なんて言いながら、写真を撮ったりしてはしゃいでた。

その日の夜。

俺は客間で一人で寝てたんだけど、ふと夜中にトイレに起きたんだ。

客間の窓から、ちょうど庭が見える。

何気なく窓の外を見たら、昼間作った雪だるまが、ぼんやりと月明かりに照らされて立ってた。

…ん?

なんか、違和感がある。

昼間見た時と、位置が、ほんの少しだけ、ズレてるような気がするんだ。

玄関の方に、ほんのちょっとだけ、近づいてるような。

いやいや、気のせいだろ。

雪が少し溶けて動いたとか、そんなんだよな。

そう自分に言い聞かせて、トイレに行って、また布団に入った。

でも、次の日の夜。

また夜中に目が覚めて、窓の外を見てみたら、やっぱり雪だるまの位置がおかしい。

昨日よりも、さらに玄関に近づいてる。

しかも、顔が、こっちの窓の方を向いてるんだ。

石で作ったはずの目が、じっとこっちを見てるような気がして、背筋がゾワッとした。

さすがに怖くなって、隣の部屋で寝てる姉ちゃんを起こそうかと思ったけど、怖がらせるのも悪いし、結局一人で布団に潜り込んだ。

その次の日は、一日中雪が降ってた。

夕方、雪が小降りになったんで外に出てみたら、雪だるまは、もう玄関のドアのすぐそこまで来てた。

まるで、家の中に入りたがってるみたいに。

そして、木の枝で作ったはずの手が、不自然に持ち上がってて、まるでドアノブに手を伸ばしてるような形になってる。

俺はもう、怖くてたまらなくなって、ばあちゃんにそのことを話した。

「ばあちゃん、雪だるまが動いてるんだよ!家に入ろうとしてる!」

って。

でも、ばあちゃんは、

「あらあら、面白いこと言うねぇ。雪の重みで傾いたんじゃないのかい?」

って、全然信じてくれない。

その晩、俺は怖くてなかなか寝付けなかった。

布団の中でガタガタ震えてたら、突然、玄関の方から、ギィィ…って、重いドアが開くような音がした。

そして、ドスッ…ドスッ…って、何か重いものが家の中を歩き回るような音。

まさか、雪だるまが…!?

俺は恐怖で声も出せずに、布団の中で息を殺してた。

足音は、だんだん俺の寝てる客間の方に近づいてくる。

そして、客間の襖のすぐ前で、ピタッと止まった。

シーン…と静まり返った部屋に、自分の心臓の音だけが大きく響く。

どれくらい時間が経っただろうか。

気づいたら、俺はそのまま眠ってしまってたみたいだ。

朝、恐る恐る布団から出て、家の中を確認したけど、特に荒らされた様子はない。

庭に出てみると、雪だるまは、最初に作った場所に、ちゃんと立ってた。

顔も、いつもの無表情な雪だるまに戻ってる。

なんだ、やっぱり夢だったのか…?

ホッとしながら部屋に戻ろうとした時、ふと、玄関のたたきに、何か黒いものが落ちてるのに気づいた。

拾い上げてみると、それは、俺が雪だるまの目として使った、黒い石ころの一つだった。

そして、その石ころのすぐ横には、濡れた、大きな足跡みたいなものが、玄関から居間の方へ向かって、点々と続いていたんだ。

俺はもう、何も言えなかった。

あの雪だるまは、やっぱり家の中に入ってきてたんだ。

そして、俺の部屋の前まで来てたんだ。

それ以来、俺は雪が降るのが怖くなった。

特に、夜中にシンシンと雪が積もる音を聞くと、あの雪だるまが、また家の玄関の前に立ってるんじゃないかって、今でも思い出してゾッとすることがある。
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