【完結】勇者パーティーが落ちぶれて、こんどは私が楽しむ番!

シマセイ

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第3話:町の騒動と勇者たちの食糧難

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朝日が昇る小さな町「ミルフィア」に、アリシアたちは馬車で到着した。
木造の家々が並び、市場では野菜や魚を売る声が賑やかだ。
アリシアは馬車から降りて、伸びをしながら空を見上げた。

「いい天気だねぇ。こういう日は何か楽しいことありそう」
商人リドリーは荷物を下ろしながらニコニコしてる。

「アリシアちゃん、ここで商売してくよ。テオと一緒に市場見ておいで」
「え、僕もですか?」
テオが少しビビりながら言うと、アリシアが笑って肩を叩いた。

「いいじゃん。一緒に散歩しようよ。美味しそうなもの探そっか」
こうして、アリシアとテオは市場へ繰り出した。

市場は活気に溢れてた。
焼きたてのパン、ジューシーな果物、串焼きの肉——アリシアの目はキラキラしてる。

「うわっ、このリンゴ飴美味しそう! テオ、食べる?」
「え、でもお金…」
「いいよ、私が出すからさ」
アリシアがコインを渡して、リンゴ飴を2本買う。2人でかじりながら歩いてると、突然、市場の端っこで騒ぎが起きた。

「泥棒だ! 誰か捕まえてくれ!」
おばさんが叫んでる。見ると、小柄な影がパンを持って走り去ろうとしてた。

「へぇ、泥棒か。面白そう」
アリシアはリンゴ飴をテオに預けて、軽く走り出した。

その影の正体は少女だった——少女は路地裏に逃げ込んだけど、アリシアには敵わない。
スッと横に回り込んで、少女の腕を優しく掴む。

「はい、ストップ。パン返してあげなよ」
少女はビクッとして、アリシアを見上げた。
ボサボサの茶髪に、ボロい服。歳は13くらいかな。
目は警戒心でいっぱいだけど、その奥に何か寂しそうな光があった。

「離してよ! お腹空いてるんだから!」
少女が叫ぶと、アリシアは少し考え込んで、柔らかく笑った。

「ふーん、お腹空いてるなら仕方ないね。ちょっと待ってて」
アリシアは懐から野イチゴを取り出して少女に渡した。
少女が驚いて固まると、アリシアはおばさんのとこへ戻って事情を説明。

コインを出してパンを買い取った。

「おばちゃん、ごめんね。この子、お腹空いてたみたいだから私が払うよ」

「…まぁ、あんたがそう言うならいいけどさ。気をつけなよ」

おばさんが渋々納得して、アリシアは少女にパンを差し出した。

「ほら、これで落ち着いて食べな。名前は?」
少女はパンを手に持ったまま、しばらくアリシアをジッと見てた。でも、アリシアの笑顔が柔らかすぎて、敵意を保つのが難しかったみたい。

「……ミナ」

ポツリと呟いて、ミナはパンをかじり始めた。
その後、アリシアはミナを市場の隅に座らせて、少し話を聞いた。
ミナは孤児で、親がいないから盗みを働いて生きてきたらしい。

お腹が空くと我慢できなくて、つい手が出てしまうんだって。

「大変だったんだね。でもさ、盗む以外にも生きる方法あるよ」

アリシアが優しく言うと、ミナは目を伏せて呟いた。

「…そんなの知らないよ。誰も助けてくれないし」

「なら、私が助けてあげるよ。一緒に旅しない? ご飯くらいなら稼げるし、楽しいよ」

ミナが顔を上げて、アリシアをまじまじと見つめる。

「…なんであんたがそんなこと言うの? 私、泥棒だよ?」

「うーん、別にいいじゃん。お腹空いてただけだし、私も昔は色々やらかしたことあるよ。それに、賑やかな方が好きだからさ」

アリシアが笑うと、ミナの固い表情が少し緩んだ。

そこへテオがリンゴ飴を持って近づいてきて、慌てて言った。

「アリシアさん、仲間に誘うんですか!?」

「いいじゃん、テオだって仲間になったんだからさ。ミナ、こいつはテオ。よろしくね」

「え、う、うん…よろしく」

ミナが小さく頷くと、テオも少し照れながら笑った。

「僕も最初はビックリしたけど、アリシアさんといると楽しいよ。ミナも慣れるって」

ミナはまだ半信半疑だったけど、アリシアの手から渡された野イチゴとパンの温かさが、ちょっとだけ心を解かしたみたい。

「…じゃあ、ちょっとだけなら一緒にいてもいいよ」

「やった! じゃあ決定ね。ミナ、よろしく!」

アリシアが手を差し出すと、ミナはためらいながらも小さく握り返した。

こうして、アリシアの旅仲間が自然と一人増えたんだ。


一方、勇者パーティーは森を出て、川沿いの道をフラフラ歩いてた。

「腹減った…」

レオンが呻くと、リリアがため息をつく。

「食料、もう底ついたわ。昨日、イノシシに荷物荒らされたから…」

「仕方ねぇよ。あのイノシシ強すぎたんだから」

ガルドが言い訳すると、ミレーユがキレた。

「言い訳しないでよ! あんたが荷物守れなかったからでしょ!」

4人は泥だらけで、服もボロボロ。
しかもお金も食料もない。

だって、アリシアがいた頃はモンスターを倒して稼いでたけど、今じゃ中級どころか雑魚にも勝てないんだから。

仕方なく、川で魚を捕まえようとしたけど…。

「よし、僕が剣で刺す!」

レオンが川に飛び込むも、魚はスルスル逃げる。剣が水に刺さって抜けなくなっちゃって、慌てて引っ張る。

「レオン、馬鹿! 水をかき回さないで!」
リリアが怒るけど、彼女が聖魔法で魚を捕まえようとしても光が弱すぎてダメ。

「俺が素手で捕る!」
ガルドが飛び込むけど、ドボンと転んで水をかぶるだけ。

「もうやだ…私、こんな泥臭い生活嫌…」
ミレーユが泣きながら岸で座り込む。

結局、魚は1匹も捕れず。腹ペコのまま、
彼らは川辺でうなだれてた。

「アリシアがいたら、簡単に食料調達できたのに…」
レオンがボソッと言うと、全員が黙り込んだ。

「……誰か、アリシアに謝りに行こうって言わない?」
リリアが呟いたけど、誰も目を合わせなかった。

その夜、アリシアたちはミルフィアの宿屋で夕食を楽しんでた。
リドリーが商売で稼いだお金で、チキンの丸焼きとスープを注文。

「いやぁ、アリシアちゃんがいてくれると心強いよ。ミナちゃんも歓迎するからね」

「ありがとう、リドリーさん!」

ミナがパクパク食べてると、テオが少し羨ましそうに言った。

「僕もアリシアさんみたいに強くなりたいなぁ…」

「なら明日から鍛えてあげるよ。ミナも一緒にどう?」

「うん、やってみる…」

ミナが小さく笑って頷く。
3人でワイワイ食べてると、宿屋の噂話が耳に入ってきた。

「最近、勇者様たちが弱くなったってさ。魚も捕れないらしいよ」

「え、マジ!? 昔は魔王討伐の希望だったのに…」

アリシアはそれを聞いて、ニヤッと笑った。
(へぇ、魚も捕れないんだ。まぁ頑張ってねー)

食事が終わって、アリシアは窓から夜空を見上げた。

「さて、明日はどこ行こうかな。楽しみだなぁ」

新しい仲間と自由な旅。アリシアの気分はますます上向きだった。

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