サイコパス聖女 〜裁きの鉄槌〜

シマセイ

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第38話:不死鳥の涙と炎の契約

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「さあ、炎鳥さん。
あなたのその美しい炎、そしてその奥に隠された『秘密』……
私が、根こそぎ暴いてあげるわ」

私の言葉に、炎鳥の番人は一瞬動きを止めたように見えた。

その黄金色の瞳が、わずかに揺らめいたような気がする。

気のせいかしら?それとも、銀色の宝珠の精神感応の力が、すでに効果を発揮し始めているのかしらね。

「モモちゃん、あの子の動きをもう少しだけ抑えていてちょうだい。
あまり派手に暴れられると、繊細な作業ができないから」

私はモモちゃんに指示を出す。

モモちゃんは心得たとばかりに、粘着性の水流と氷の棘を巧みに操り、炎鳥の動きを巧みに制限する。

炎鳥は抵抗しようとするけれど、モモちゃんのトリッキーな攻撃に翻弄され、思うように身動きが取れないようだわ。

本当に、私のペットは優秀ね。

その間に、私はゆっくりと炎鳥に近づいていく。

灼熱の熱気が肌を焦がすけれど、それすらも心地よい刺激に感じられる。

炎鳥は、私を威嚇するように低く唸り声を上げるが、その瞳の奥には、先ほど感じ取った悲しみのような感情が、より強く現れているように見えた。

「大丈夫よ、怖がらなくても。
私はただ、あなたの『心』に少しだけ触れたいだけだから」

私は、まるで壊れ物を扱うかのように、そっと炎鳥の胸元『炎鳥の心臓』があるであろう場所に手を伸ばした。

もちろん、ただ触れるだけでは意味がない。

私は銀色の宝珠の力を最大限に引き出し、私の精神を炎鳥の意識の奥深くへと送り込む。

その瞬間、私の脳裏に、鮮烈なビジョンが流れ込んできた。

それは、遥か昔の記憶。

まだこの神殿が人々の信仰を集めていた時代。
一人の巫女が、この炎鳥と共に神殿を守っていた。

巫女と炎鳥は、言葉を交わさずとも心を通わせ、互いを深く信頼し合っていた。

しかし、ある時、邪悪な力を持つ者たちが神殿を襲撃し、巫女は炎鳥を庇って命を落としてしまう。

炎鳥は嘆き悲しみ、その怒りの炎で侵入者たちを焼き尽くしたが、巫女の魂は戻らなかった。

以来、炎鳥は巫女との約束を守り、この神殿と、そこに眠る巫女の魂の欠片が宿る『炎鳥の心臓』を、永遠に守り続けていたのだ――。

「……なるほどね。
だから、あんなに悲しい目をしていたのね」

私は、炎鳥の過去の記憶から意識を引き戻し、目の前の美しい獣を見つめた。

その黄金色の瞳からは、まるで涙のように、炎の雫がポツリポツリとこぼれ落ちている。

不死鳥の涙……なんて、ロマンティックなのかしら。

「あなたは、ずっと一人で寂しかったのね。
でも、もう大丈夫よ」

私は、炎鳥の核である『炎鳥の心臓』にそっと触れた。

熱い。

けれど、不思議と火傷はしない。

むしろ、温かいとさえ感じた。

「私と契約しましょう、炎鳥さん。
あなたを、この孤独な神殿から解放してあげる。
そして、私と一緒に、もっと楽しい『遊び』をしましょう?」

私の言葉は、銀色の宝珠の力を通じて、直接炎鳥の心に届いたようだ。

炎鳥は、しばらくの間、じっと私を見つめていたが、やがて、その巨大な頭をゆっくりと私の手に擦り寄せてきた。

それは、まるで幼子が母に甘えるような仕草だった。

「クゥン……」

先ほどまでの猛々しさが嘘のように、従順な鳴き声を上げる炎鳥。

その体からは、もはや敵意は感じられない。

代わりに、長い孤独から解放されたような、安堵と、そして私への信頼のようなものが伝わってくる。

「ふふ、いい子ね」

私は炎鳥の頭を優しく撫でてやる。

その燃えるような羽根は、触れると温かく、心地よい。

これで、四つ目の「鍵」と、そして強力な「ペット」が同時に手に入ったわけね。

一石二鳥とは、まさにこのことだわ。

神官長とアルノーは、この信じられない光景を、ただ呆然と見つめているだけだった。

特にアルノーは、私が聖女の力で奇跡を起こしたとでも思っているのかしら。

まあ、ある意味、奇跡みたいなものかもしれないけれど。


「さて、神官長。
この『炎鳥の心臓』が四つ目の『鍵』なのでしょう?
次はどこへ行けば、もっと楽しいことが待っているのかしら?」

私は、炎鳥の背中に軽々と飛び乗りながら、神官長に問いかけた。

炎鳥は、私を乗せたままゆっくりと立ち上がり、その大きな翼を広げる。

その姿は、まさに伝説の不死鳥そのものだった。
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