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第49話 謎めいた同伴者
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『世界平和サミット』へ向け、アッシュたちを乗せた王家の船『スターライト号』は、再び、大カルデラ湖の、穏やかな水面を滑り始めた。
アストリア王国の使節団。その構成員は、英雄
アッシュ、その補佐官となったリリアナとアレクシス、そして、監督役のエリアス学院長。
そこに、謎の転校生、ルナが、加わっていた。
旅の雰囲気は、以前とは、明らかに、違っていた。
リリアナとアレクシスは、常に、ルナの動向を、警戒するように、観察している。しかし、彼女は、いつも、ただ静かに、小さな黒い本を読んでいるだけで、その心の内を、一切、見せようとはしない。
アッシュだけが、そんな緊張感など、全く気にせず、新たな旅の仲間にも、いつも通りだった。
「ルナさん!このクッキー、母さんが焼いてくれたんだ!サクサクしてて、おいしいよ!一つ、どう?」
アッシュが、満面の笑みで、クッキーを差し出す。
ルナは、読んでいた本から、初めて、顔を上げた。彼女は、差し出されたクッキーと、アッシュの、一点の曇りもない笑顔を、しばらく見つめた後、そっと、そのクッキーを、受け取った。
「……ありがとう、アッシュさん」
彼女は、そう、小さく呟くと、そのクッキーを、食べるでもなく、そっと、ハンカチに包み、懐へと、しまい込んだ。
航海の途中、天候が、急変した。
穏やかだった湖面は、荒れ狂い、魔力を帯びた、激しい嵐が、船を襲う。
「くそっ!魔力嵐か!航路が、全く、わからん!」
船長が、怒鳴る。船の、魔力航行装置も、嵐の、混沌とした魔力の影響で、正常に、機能しない。船は、木の葉のように、湖面を、漂流し始めていた。
「皆、落ち着きなさい!」
エリアス学院長が、その強大な魔力で、船を守る結界を張るが、それも、長くは、もたないだろう。
その時、アッシュが、いつものように、呑気な声を上げた。
「大丈夫だよ!僕のコンパスで、安全な場所を探すから!」
彼は、得意げに、『おやつコンパス』を取り出した。
しかし、その針は、嵐の、強大な魔力に、当てられて、ただ、めちゃくちゃに、回転するばかりだった。
その、次の瞬間。
ずっと、静観していた、ルナが、動いた。
彼女は、そっと、アッシュの、コンパスを持つ手に、自分の、白い手を、重ねた。
その瞬間、二つの、奇妙な現象が、同時に、起こった。
一つ。あれほど、荒れ狂っていた、コンパスの針が、ぴたり、と止まり、ある、一点を、まっすぐに、指し示した。
そして、二つ。アッシュの首や、手首につけられた、四つの礎石のお守りが、一斉に、淡い光を、放ったのだ。風の葉は、冷たく、大地の石は、重く、水の涙は、湿り気を帯び、炎のルビーは、暖かくなった。
「わあ!ルナさん、すごい!コンパス、直してくれたんだ!」
アッシュが、驚いて、声を上げる。
ルナは、アッシュの手と、光るお守りを見つめ、その瞳に、一瞬だけ、深い、深い、悲しみの色を浮かべた。そして、慌てたように、その手を、引っこめた。
「……嵐の魔力が、干渉していただけです。わたくしが、少し、それを、安定させただけ。その方角に、嵐を避けられる、入り江があるはずです」
彼女は、そう、静かに、告げた。
ルナの言葉通り、船は、コンパスが指し示す方角へと進み、嵐を避けられる、穏やかな入り江を、見つけ出すことができた。
その夜。嵐が過ぎ去るのを待つ、船の甲板で、リリアナとアレクシスは、ルナを、問い詰めた。
「あなた、いったい、何をしたの?詠唱もなしに、嵐の魔力に、干渉するなんて……」
ルナは、遠くの、まだ、稲光が走る空を、見つめながら、静かに、答えた。
「あの方位磁石は、食べ物を、指し示しているのではありません。持ち主の心が、その瞬間、最も、『渇望』するものを、指し示すのです。あの時、アッシュさんが、渇望していたのは、おやつではなく、仲間たちの『安全』。わたくしは、ただ、その願いを、明確にしただけです」
彼女は、そこで、一度、言葉を切ると、二人に向き直った。その瞳は、もはや、ただの少女のものではなかった。
「あなたたちこそ、気をつけるべきです。彼の力は、あまりにも、強大すぎる灯台の光。そして、『大いなる封印』は、その、光を覆う、ランプシェード」
「あなたたちは、その光を、より、強くしてしまった。その結果、ランプシェードには、いくつもの、亀裂が、入り始めている。そして、あらゆる、闇に潜むものたちが、その、亀裂から漏れ出す、甘美な光と、その光が生み出す、濃い影に、惹きつけられているのです」
それは、あまりにも、不吉な、警告だった。
彼女は、それだけを告げると、闇の中へと、その姿を消した。
リリアナとアレクシスは、言葉もなかった。
船の反対側では、アッシュが、入り江で釣れた魚を、上機嫌で、焼いている。
『世界平和サミット』への旅路は、彼らが、想像していたものより、遥かに、危険で、そして、複雑な、様相を、呈し始めていた。
彼らの、本当の敵は、封印された『厄災』だけでは、ないのかもしれない。
そのことに、二人は、ようやく、気づき始めていた。
アストリア王国の使節団。その構成員は、英雄
アッシュ、その補佐官となったリリアナとアレクシス、そして、監督役のエリアス学院長。
そこに、謎の転校生、ルナが、加わっていた。
旅の雰囲気は、以前とは、明らかに、違っていた。
リリアナとアレクシスは、常に、ルナの動向を、警戒するように、観察している。しかし、彼女は、いつも、ただ静かに、小さな黒い本を読んでいるだけで、その心の内を、一切、見せようとはしない。
アッシュだけが、そんな緊張感など、全く気にせず、新たな旅の仲間にも、いつも通りだった。
「ルナさん!このクッキー、母さんが焼いてくれたんだ!サクサクしてて、おいしいよ!一つ、どう?」
アッシュが、満面の笑みで、クッキーを差し出す。
ルナは、読んでいた本から、初めて、顔を上げた。彼女は、差し出されたクッキーと、アッシュの、一点の曇りもない笑顔を、しばらく見つめた後、そっと、そのクッキーを、受け取った。
「……ありがとう、アッシュさん」
彼女は、そう、小さく呟くと、そのクッキーを、食べるでもなく、そっと、ハンカチに包み、懐へと、しまい込んだ。
航海の途中、天候が、急変した。
穏やかだった湖面は、荒れ狂い、魔力を帯びた、激しい嵐が、船を襲う。
「くそっ!魔力嵐か!航路が、全く、わからん!」
船長が、怒鳴る。船の、魔力航行装置も、嵐の、混沌とした魔力の影響で、正常に、機能しない。船は、木の葉のように、湖面を、漂流し始めていた。
「皆、落ち着きなさい!」
エリアス学院長が、その強大な魔力で、船を守る結界を張るが、それも、長くは、もたないだろう。
その時、アッシュが、いつものように、呑気な声を上げた。
「大丈夫だよ!僕のコンパスで、安全な場所を探すから!」
彼は、得意げに、『おやつコンパス』を取り出した。
しかし、その針は、嵐の、強大な魔力に、当てられて、ただ、めちゃくちゃに、回転するばかりだった。
その、次の瞬間。
ずっと、静観していた、ルナが、動いた。
彼女は、そっと、アッシュの、コンパスを持つ手に、自分の、白い手を、重ねた。
その瞬間、二つの、奇妙な現象が、同時に、起こった。
一つ。あれほど、荒れ狂っていた、コンパスの針が、ぴたり、と止まり、ある、一点を、まっすぐに、指し示した。
そして、二つ。アッシュの首や、手首につけられた、四つの礎石のお守りが、一斉に、淡い光を、放ったのだ。風の葉は、冷たく、大地の石は、重く、水の涙は、湿り気を帯び、炎のルビーは、暖かくなった。
「わあ!ルナさん、すごい!コンパス、直してくれたんだ!」
アッシュが、驚いて、声を上げる。
ルナは、アッシュの手と、光るお守りを見つめ、その瞳に、一瞬だけ、深い、深い、悲しみの色を浮かべた。そして、慌てたように、その手を、引っこめた。
「……嵐の魔力が、干渉していただけです。わたくしが、少し、それを、安定させただけ。その方角に、嵐を避けられる、入り江があるはずです」
彼女は、そう、静かに、告げた。
ルナの言葉通り、船は、コンパスが指し示す方角へと進み、嵐を避けられる、穏やかな入り江を、見つけ出すことができた。
その夜。嵐が過ぎ去るのを待つ、船の甲板で、リリアナとアレクシスは、ルナを、問い詰めた。
「あなた、いったい、何をしたの?詠唱もなしに、嵐の魔力に、干渉するなんて……」
ルナは、遠くの、まだ、稲光が走る空を、見つめながら、静かに、答えた。
「あの方位磁石は、食べ物を、指し示しているのではありません。持ち主の心が、その瞬間、最も、『渇望』するものを、指し示すのです。あの時、アッシュさんが、渇望していたのは、おやつではなく、仲間たちの『安全』。わたくしは、ただ、その願いを、明確にしただけです」
彼女は、そこで、一度、言葉を切ると、二人に向き直った。その瞳は、もはや、ただの少女のものではなかった。
「あなたたちこそ、気をつけるべきです。彼の力は、あまりにも、強大すぎる灯台の光。そして、『大いなる封印』は、その、光を覆う、ランプシェード」
「あなたたちは、その光を、より、強くしてしまった。その結果、ランプシェードには、いくつもの、亀裂が、入り始めている。そして、あらゆる、闇に潜むものたちが、その、亀裂から漏れ出す、甘美な光と、その光が生み出す、濃い影に、惹きつけられているのです」
それは、あまりにも、不吉な、警告だった。
彼女は、それだけを告げると、闇の中へと、その姿を消した。
リリアナとアレクシスは、言葉もなかった。
船の反対側では、アッシュが、入り江で釣れた魚を、上機嫌で、焼いている。
『世界平和サミット』への旅路は、彼らが、想像していたものより、遥かに、危険で、そして、複雑な、様相を、呈し始めていた。
彼らの、本当の敵は、封印された『厄災』だけでは、ないのかもしれない。
そのことに、二人は、ようやく、気づき始めていた。
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