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第52話 二つの道
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『世界おやつ防衛同盟』――。
その、あまりにも、気の抜けるような名前とは裏腹に、サミットの場は、一転して、緊迫した作戦会議の様相を呈していた。
「影を相手にするには、まず、その形を知らねばなりませんわ」
アミーラ王女が、怜悧な分析を始める。
「『黎明の子供たち』が、封印を解くために行動を起こすのであれば、その標的は、我々が、つい先日、力を取り戻させたばかりの、四つの『礎石』の、いずれかであるはず」
「天衝山の、炎の礎石は、あまりにも、守りが堅固すぎる。そして、ここ、アクアティアの、水の礎石は、今や、女王陛下の、厳重な警備下にあります。狙われるとすれば、残る二つ……」
リリアナが、その分析を引き継ぐ。
「ゼファーの、風の礎石か。あるいは、五竜山の、大地の礎石か……」
そこへ、セラフィーナ隊長が、もたらした、最新の諜報が、議論に、一つの、方向性を与えた。
「五竜山周辺にて、白銀のローブをまとった、不審な集団の目撃情報が、多数、寄せられています」
次の、戦場は、決まった。
一行は、再び、あの、活火山へと、向かうことになったのだ。
しかし、その決定に、アッシュが、待ったをかけた。
「ええっ!?また、すぐに出発するの!?でも、僕、来週、王宮の料理長さんと、プリンを作る、約束があるのに!」
世界の危機よりも、プリンの約束を、優先しようとする、英雄の孫。
その、あまりにも、アッシュらしい発言に、アレクシスが、思わず、声を荒らげた。
「リンクス!我々は、世界の命運を、話し合っているんだぞ!」
その時、静かに、二人を制したのは、エリアス学院長だった。
彼は、アッシュに向かって、優しく、諭すように、言った。
「アッシュ君。君のおじいさんは、かつて、こう、言っていた。『真の強さとは、何もかも、一人で背負うことではない。仲間を、信じることじゃ』、と」
そして、エリアスは、一つの、大胆な作戦を、提案した。
パーティを、二つに分ける、という、分進合撃の策だった。
先遣隊は、アレクシスと、ドワーフの王子、ブロック。
二人の、優れた戦士が、先に、五竜山へと向かい、敵の動向を、調査、そして、必要とあらば、遅滞させる。
そして、アッシュとリリアナは、王都に、数日、残る。
アッシュは、その間に、重要な「プリンの修行」を、行い、リリアナは、王立大図書館の、禁書庫にて、『黎明の子供たち』に関する、さらなる、情報を、収集する。
「プリンも作れて、世界も救えるの!?やったあ、最高の作戦だ!」
アッシュが、大喜びで、その作戦に、賛成したことで、一行の、次なる、方針は、決定した。
数日後。アレクシスとブロックが、五竜山へと、旅立った後のこと。
アッシュは、王宮の厨房で、王国一の料理長と、プリン作りに、励んでいた。
「アッシュ殿!だから、カスタードは、優しく、丁寧に、かき混ぜるのでございます!そうしないと、舌触りが、悪くなりますぞ!」
「えー?でも、こうやって、指で、ぐるぐる混ぜる方が、気持ちいいんだけどなあ」
アッシュは、料理長の、懇切丁寧な指導を、全く、聞かず、自分の感覚だけを、頼りに、ボウルの中の、カスタードを、指で、こねくり回していた。
その時、彼の指先から、ごく、微量の、しかし、極めて、純粋な、生命エネルギーが、カスタードの中へと、流れ込んだ。
すると、ただの、卵と牛乳の混合物が、淡い、金色の光を、放ち始めた。
「こ、これは……!?なんという、輝き……!」
王国一の料理長は、目の前の、奇跡に、言葉を失う。
同じ頃。
リリアナは、王立大図書館の、最も、深い場所に、いた。
彼女は、一冊の、埃をかぶった、古文書の中に、探し求めていた、記述を、見つけ出した。
「……『黎明の子供たち』は、古来より、月と星々の、『白銀の光』を、力の源としてきた。それは、秩序と、静寂、そして、幻を司る、強力な魔力。しかし、その力には、ただ、一つ、致命的な、弱点が存在する」
リリアナは、ごくり、と、唾をのんだ。
「それは、太陽と、生命そのものの、輝きである、『黄金の光』。純粋にして、混じり気のない、生命の奔流の前では、『白銀の光』は、その力を、完全に、失う……」
王宮の厨房。
アッシュ特製の、プリンが、完成した。
それは、もはや、プリンというより、太陽のかけらを、固めたかのような、神々しい、黄金色の、デザートだった。
料理長が、おそるおそる、その、ひとかけらを、口に運ぶ。
次の瞬間、彼の目から、歓喜の涙が、溢れ出した。
「お、おいしい……!これは、プリンでは、ない!生命そのものの、味が、する……!」
♢
険しい、五竜山の山頂付近に、不気味な、白銀の魔力の光が、灯るのを、目撃する、アレクシスとブロック。
禁書庫で、敵の、唯一の弱点を、発見し、震える、リリアナ。
そして、その、究極の、弱点となりうる、最終兵器を、今、まさに、デザートとして、幸せそうに、頬張っている、アッシュ。
世界の、おやつを守るための戦いは、今、その、切り札が、無自覚のうちに、生み出されたことで、新たな、局面を、迎えようとしていた。
その、あまりにも、気の抜けるような名前とは裏腹に、サミットの場は、一転して、緊迫した作戦会議の様相を呈していた。
「影を相手にするには、まず、その形を知らねばなりませんわ」
アミーラ王女が、怜悧な分析を始める。
「『黎明の子供たち』が、封印を解くために行動を起こすのであれば、その標的は、我々が、つい先日、力を取り戻させたばかりの、四つの『礎石』の、いずれかであるはず」
「天衝山の、炎の礎石は、あまりにも、守りが堅固すぎる。そして、ここ、アクアティアの、水の礎石は、今や、女王陛下の、厳重な警備下にあります。狙われるとすれば、残る二つ……」
リリアナが、その分析を引き継ぐ。
「ゼファーの、風の礎石か。あるいは、五竜山の、大地の礎石か……」
そこへ、セラフィーナ隊長が、もたらした、最新の諜報が、議論に、一つの、方向性を与えた。
「五竜山周辺にて、白銀のローブをまとった、不審な集団の目撃情報が、多数、寄せられています」
次の、戦場は、決まった。
一行は、再び、あの、活火山へと、向かうことになったのだ。
しかし、その決定に、アッシュが、待ったをかけた。
「ええっ!?また、すぐに出発するの!?でも、僕、来週、王宮の料理長さんと、プリンを作る、約束があるのに!」
世界の危機よりも、プリンの約束を、優先しようとする、英雄の孫。
その、あまりにも、アッシュらしい発言に、アレクシスが、思わず、声を荒らげた。
「リンクス!我々は、世界の命運を、話し合っているんだぞ!」
その時、静かに、二人を制したのは、エリアス学院長だった。
彼は、アッシュに向かって、優しく、諭すように、言った。
「アッシュ君。君のおじいさんは、かつて、こう、言っていた。『真の強さとは、何もかも、一人で背負うことではない。仲間を、信じることじゃ』、と」
そして、エリアスは、一つの、大胆な作戦を、提案した。
パーティを、二つに分ける、という、分進合撃の策だった。
先遣隊は、アレクシスと、ドワーフの王子、ブロック。
二人の、優れた戦士が、先に、五竜山へと向かい、敵の動向を、調査、そして、必要とあらば、遅滞させる。
そして、アッシュとリリアナは、王都に、数日、残る。
アッシュは、その間に、重要な「プリンの修行」を、行い、リリアナは、王立大図書館の、禁書庫にて、『黎明の子供たち』に関する、さらなる、情報を、収集する。
「プリンも作れて、世界も救えるの!?やったあ、最高の作戦だ!」
アッシュが、大喜びで、その作戦に、賛成したことで、一行の、次なる、方針は、決定した。
数日後。アレクシスとブロックが、五竜山へと、旅立った後のこと。
アッシュは、王宮の厨房で、王国一の料理長と、プリン作りに、励んでいた。
「アッシュ殿!だから、カスタードは、優しく、丁寧に、かき混ぜるのでございます!そうしないと、舌触りが、悪くなりますぞ!」
「えー?でも、こうやって、指で、ぐるぐる混ぜる方が、気持ちいいんだけどなあ」
アッシュは、料理長の、懇切丁寧な指導を、全く、聞かず、自分の感覚だけを、頼りに、ボウルの中の、カスタードを、指で、こねくり回していた。
その時、彼の指先から、ごく、微量の、しかし、極めて、純粋な、生命エネルギーが、カスタードの中へと、流れ込んだ。
すると、ただの、卵と牛乳の混合物が、淡い、金色の光を、放ち始めた。
「こ、これは……!?なんという、輝き……!」
王国一の料理長は、目の前の、奇跡に、言葉を失う。
同じ頃。
リリアナは、王立大図書館の、最も、深い場所に、いた。
彼女は、一冊の、埃をかぶった、古文書の中に、探し求めていた、記述を、見つけ出した。
「……『黎明の子供たち』は、古来より、月と星々の、『白銀の光』を、力の源としてきた。それは、秩序と、静寂、そして、幻を司る、強力な魔力。しかし、その力には、ただ、一つ、致命的な、弱点が存在する」
リリアナは、ごくり、と、唾をのんだ。
「それは、太陽と、生命そのものの、輝きである、『黄金の光』。純粋にして、混じり気のない、生命の奔流の前では、『白銀の光』は、その力を、完全に、失う……」
王宮の厨房。
アッシュ特製の、プリンが、完成した。
それは、もはや、プリンというより、太陽のかけらを、固めたかのような、神々しい、黄金色の、デザートだった。
料理長が、おそるおそる、その、ひとかけらを、口に運ぶ。
次の瞬間、彼の目から、歓喜の涙が、溢れ出した。
「お、おいしい……!これは、プリンでは、ない!生命そのものの、味が、する……!」
♢
険しい、五竜山の山頂付近に、不気味な、白銀の魔力の光が、灯るのを、目撃する、アレクシスとブロック。
禁書庫で、敵の、唯一の弱点を、発見し、震える、リリアナ。
そして、その、究極の、弱点となりうる、最終兵器を、今、まさに、デザートとして、幸せそうに、頬張っている、アッシュ。
世界の、おやつを守るための戦いは、今、その、切り札が、無自覚のうちに、生み出されたことで、新たな、局面を、迎えようとしていた。
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