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第51話 王たちの決断
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『黎明の子供たち』と名乗る、謎の集団が、白銀の光と共に、玉座の間から、忽然と姿を消した。
後に、残されたのは、大混乱に陥った、各国の代表たちと、そして、あまりにも、重い、世界の真実だった。
「静粛に!!」
水の女王コーラリアの、凛とした声が、響き渡る。その声には、もはや、以前の物憂げな響きはなく、一国の主としての、力強い、威厳が、満ちていた。
「パニックは、敵の思う壺ですわ。今、我々が、為すべきは、団結し、この、新たな脅威に、どう、立ち向かうべきかを、議論することのはず」
彼女の言葉で、各国の王族や、重臣たちは、我に返り、再び、席に着いた。
もはや、『世界平和サミット』ではない。これは、世界の命運を左右する、『戦時作戦会議』だった。
しかし、その議論は、すぐに、紛糾した。
「奴らは、世界の理を、破壊しようと企む、異端者どもだ!『黎明の子供たち』などという、大層な名前を、名乗ってはいるが、その実態は、テロリストと、何ら変わりない!即座に、四王国合同の、討伐軍を結成し、その、根城を突き止め、殲滅すべきだ!」
蒼氷帝国の、クラウス皇子が、拳を、強く、握りしめ、そう、主張する。彼のやり方は、常に、直接的で、苛烈だった。
「お待ちあそばせ、クラウス殿下。影を、狩ることは、できませんわ」
砂漠の王国の、アミーラ王女が、それを、冷静に、制する。
「彼らは、何百年、あるいは、何千年も、歴史の裏で、活動してきた、古の組織。その力も、規模も、我々には、全く、わかっておりません。下手に動けば、相手の思う壺。まずは、諜報に、全力を注ぎ、敵の、正体と、目的を、正確に、知るべきです」
彼女のやり方は、常に、慎重で、緻密だった。
「がっはっは!回りくどいのは、性に合わねえな!」
ドワーフの王子、ブロックが、腕を組んで、豪快に笑う。
「話は、簡単だ!奴らの狙いは、この、アッシュの小僧だ!なら、やることは、一つ!この小僧を、世界一、頑丈な、お城の中に、閉じ込めて、誰も、手出しできんように、守り固める!それが、一番、手っ取り早い!」
彼のやり方は、常に、単純で、実践的だった。
議論は、平行線を辿る。
封印を、守る、という、一点では、一致しているものの、その「方法」が、全く、まとまらない。
その、堂々巡りの議論を、エリアス学院長は、静かに、聞いていた。
そして、やがて、重々しく、口を開いた。
「皆様方。あなた方は、『鍵』を、どう使うか、という、議論ばかりを、しておられる。しかし、その前に、一つ、為すべきことがあるのでは、ないかな?」
「……『鍵』、そのものに、どうしたいのか、と、聞いてみること、が」
その言葉に、全ての視線が、一人の少年に、注がれた。
アッシュは、会議の、あまりの退屈さに、先ほど、ブロックにもらった、ドワーフの干し肉を、こっそり、もしゃもしゃと、食べていた。
突然、注目を浴びて、きょとんとしている。
女王コーラリアが、優しく、彼に、問いかけた。
「アッシュ殿。あなたも、話は、聞いていたでしょう。『黎明の子供たち』は、あなたの力を使い、封印を、解こうとしている。我々、王国は、あなたと共に、封印を、守りたい。……あなた自身は、どうしたいと、お考えですか?」
世界の、指導者たちが、初めて、彼の「意志」を、問うた。
アッシュは、うーん、と、しばらく、考え込んだ。
彼は、さっき見た、恐ろしい、影の巨人のことを、思い出した。そして、銀色の髪の、どこか、悲しそうな顔をした、ルナのことも、思い出した。
やがて、彼は、一つの、彼らしい、結論に、たどり着いた。
「あのね、ルナさんたちも、別に、悪い人じゃない、と思うんだ。ただ、僕たちとは、考え方が、違うだけで……」
彼は、まず、そう、前置きした。そして、続ける。
「でも……。あの、ビジョンで見た、真っ黒くろすけは、なんだか、『調和』とか、そういう話が、通じる相手には、見えなかったなあ。あいつが出てきたら、全部、食べられちゃう感じがした。お城も、人も、お花も……」
彼は、そこで、一度、言葉を切り、会議室にいる、全ての王族たちを、これまで、誰も、見たことのない、真剣な、まっすぐな、瞳で、見つめた。
「……おやつも、全部、食べられちゃうのは、絶対に、嫌だ」
その、あまりにも、シンプルで、しかし、誰もが、否定できない、根源的な、理由。
それは、全ての、複雑な、政治的、哲学的な、議論を、貫いて、その場にいる、全員の心を、一つにした。
「……がっはっはっはっは!」
最初に、沈黙を破ったのは、ブロックだった。
「その通りだ!おやつが、なくなっちまったら、世界なんぞ、終わったも、同然よ!『厄災から、おやつを守る』!おう、その戦い、乗ったぜ!」
「……ふふっ。単純にして、真理。ですわね」
アミーラも、心からの、感嘆の笑みを、浮かべた。
「……フン。反論の、しようが、ないな」
クラウスも、その、あまりにも、まっすぐな理屈に、頷くしかなかった。
こうして、新たな、四王国同盟が、結成された。
その、崇高なる、統一目的は、『厄災による、おやつの消滅を、阻止すること』。
エリアス学院長は、その光景を、静かに、見つめていた。
この、どうしようもなく、呑気な、旧友の孫の、その、単純な心が、またしても、最も、賢明な、答えを、導き出したのだ。
『世界平和サミット』は、閉会した。
そして、今、ここに、『世界おやつ防衛同盟』が、結成された。
彼らの、次なる任務は、『黎明の子供たち』の計画を、阻止し、世界の、平和と、おやつを、守り抜くこと。
壮大で、そして、どこか、気の抜ける、新たな戦いが、始まろうとしていた。
後に、残されたのは、大混乱に陥った、各国の代表たちと、そして、あまりにも、重い、世界の真実だった。
「静粛に!!」
水の女王コーラリアの、凛とした声が、響き渡る。その声には、もはや、以前の物憂げな響きはなく、一国の主としての、力強い、威厳が、満ちていた。
「パニックは、敵の思う壺ですわ。今、我々が、為すべきは、団結し、この、新たな脅威に、どう、立ち向かうべきかを、議論することのはず」
彼女の言葉で、各国の王族や、重臣たちは、我に返り、再び、席に着いた。
もはや、『世界平和サミット』ではない。これは、世界の命運を左右する、『戦時作戦会議』だった。
しかし、その議論は、すぐに、紛糾した。
「奴らは、世界の理を、破壊しようと企む、異端者どもだ!『黎明の子供たち』などという、大層な名前を、名乗ってはいるが、その実態は、テロリストと、何ら変わりない!即座に、四王国合同の、討伐軍を結成し、その、根城を突き止め、殲滅すべきだ!」
蒼氷帝国の、クラウス皇子が、拳を、強く、握りしめ、そう、主張する。彼のやり方は、常に、直接的で、苛烈だった。
「お待ちあそばせ、クラウス殿下。影を、狩ることは、できませんわ」
砂漠の王国の、アミーラ王女が、それを、冷静に、制する。
「彼らは、何百年、あるいは、何千年も、歴史の裏で、活動してきた、古の組織。その力も、規模も、我々には、全く、わかっておりません。下手に動けば、相手の思う壺。まずは、諜報に、全力を注ぎ、敵の、正体と、目的を、正確に、知るべきです」
彼女のやり方は、常に、慎重で、緻密だった。
「がっはっは!回りくどいのは、性に合わねえな!」
ドワーフの王子、ブロックが、腕を組んで、豪快に笑う。
「話は、簡単だ!奴らの狙いは、この、アッシュの小僧だ!なら、やることは、一つ!この小僧を、世界一、頑丈な、お城の中に、閉じ込めて、誰も、手出しできんように、守り固める!それが、一番、手っ取り早い!」
彼のやり方は、常に、単純で、実践的だった。
議論は、平行線を辿る。
封印を、守る、という、一点では、一致しているものの、その「方法」が、全く、まとまらない。
その、堂々巡りの議論を、エリアス学院長は、静かに、聞いていた。
そして、やがて、重々しく、口を開いた。
「皆様方。あなた方は、『鍵』を、どう使うか、という、議論ばかりを、しておられる。しかし、その前に、一つ、為すべきことがあるのでは、ないかな?」
「……『鍵』、そのものに、どうしたいのか、と、聞いてみること、が」
その言葉に、全ての視線が、一人の少年に、注がれた。
アッシュは、会議の、あまりの退屈さに、先ほど、ブロックにもらった、ドワーフの干し肉を、こっそり、もしゃもしゃと、食べていた。
突然、注目を浴びて、きょとんとしている。
女王コーラリアが、優しく、彼に、問いかけた。
「アッシュ殿。あなたも、話は、聞いていたでしょう。『黎明の子供たち』は、あなたの力を使い、封印を、解こうとしている。我々、王国は、あなたと共に、封印を、守りたい。……あなた自身は、どうしたいと、お考えですか?」
世界の、指導者たちが、初めて、彼の「意志」を、問うた。
アッシュは、うーん、と、しばらく、考え込んだ。
彼は、さっき見た、恐ろしい、影の巨人のことを、思い出した。そして、銀色の髪の、どこか、悲しそうな顔をした、ルナのことも、思い出した。
やがて、彼は、一つの、彼らしい、結論に、たどり着いた。
「あのね、ルナさんたちも、別に、悪い人じゃない、と思うんだ。ただ、僕たちとは、考え方が、違うだけで……」
彼は、まず、そう、前置きした。そして、続ける。
「でも……。あの、ビジョンで見た、真っ黒くろすけは、なんだか、『調和』とか、そういう話が、通じる相手には、見えなかったなあ。あいつが出てきたら、全部、食べられちゃう感じがした。お城も、人も、お花も……」
彼は、そこで、一度、言葉を切り、会議室にいる、全ての王族たちを、これまで、誰も、見たことのない、真剣な、まっすぐな、瞳で、見つめた。
「……おやつも、全部、食べられちゃうのは、絶対に、嫌だ」
その、あまりにも、シンプルで、しかし、誰もが、否定できない、根源的な、理由。
それは、全ての、複雑な、政治的、哲学的な、議論を、貫いて、その場にいる、全員の心を、一つにした。
「……がっはっはっはっは!」
最初に、沈黙を破ったのは、ブロックだった。
「その通りだ!おやつが、なくなっちまったら、世界なんぞ、終わったも、同然よ!『厄災から、おやつを守る』!おう、その戦い、乗ったぜ!」
「……ふふっ。単純にして、真理。ですわね」
アミーラも、心からの、感嘆の笑みを、浮かべた。
「……フン。反論の、しようが、ないな」
クラウスも、その、あまりにも、まっすぐな理屈に、頷くしかなかった。
こうして、新たな、四王国同盟が、結成された。
その、崇高なる、統一目的は、『厄災による、おやつの消滅を、阻止すること』。
エリアス学院長は、その光景を、静かに、見つめていた。
この、どうしようもなく、呑気な、旧友の孫の、その、単純な心が、またしても、最も、賢明な、答えを、導き出したのだ。
『世界平和サミット』は、閉会した。
そして、今、ここに、『世界おやつ防衛同盟』が、結成された。
彼らの、次なる任務は、『黎明の子供たち』の計画を、阻止し、世界の、平和と、おやつを、守り抜くこと。
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