【完結】勇者の孫は、自分が最強だとまだ知らない

シマセイ

文字の大きさ
51 / 65

第51話 王たちの決断

しおりを挟む
『黎明の子供たち』と名乗る、謎の集団が、白銀の光と共に、玉座の間から、忽然と姿を消した。
後に、残されたのは、大混乱に陥った、各国の代表たちと、そして、あまりにも、重い、世界の真実だった。

「静粛に!!」

水の女王コーラリアの、凛とした声が、響き渡る。その声には、もはや、以前の物憂げな響きはなく、一国の主としての、力強い、威厳が、満ちていた。

「パニックは、敵の思う壺ですわ。今、我々が、為すべきは、団結し、この、新たな脅威に、どう、立ち向かうべきかを、議論することのはず」

彼女の言葉で、各国の王族や、重臣たちは、我に返り、再び、席に着いた。
もはや、『世界平和サミット』ではない。これは、世界の命運を左右する、『戦時作戦会議』だった。

しかし、その議論は、すぐに、紛糾した。

「奴らは、世界の理を、破壊しようと企む、異端者どもだ!『黎明の子供たち』などという、大層な名前を、名乗ってはいるが、その実態は、テロリストと、何ら変わりない!即座に、四王国合同の、討伐軍を結成し、その、根城を突き止め、殲滅すべきだ!」

蒼氷帝国の、クラウス皇子が、拳を、強く、握りしめ、そう、主張する。彼のやり方は、常に、直接的で、苛烈だった。

「お待ちあそばせ、クラウス殿下。影を、狩ることは、できませんわ」
砂漠の王国の、アミーラ王女が、それを、冷静に、制する。

「彼らは、何百年、あるいは、何千年も、歴史の裏で、活動してきた、古の組織。その力も、規模も、我々には、全く、わかっておりません。下手に動けば、相手の思う壺。まずは、諜報に、全力を注ぎ、敵の、正体と、目的を、正確に、知るべきです」
彼女のやり方は、常に、慎重で、緻密だった。

「がっはっは!回りくどいのは、性に合わねえな!」
ドワーフの王子、ブロックが、腕を組んで、豪快に笑う。

「話は、簡単だ!奴らの狙いは、この、アッシュの小僧だ!なら、やることは、一つ!この小僧を、世界一、頑丈な、お城の中に、閉じ込めて、誰も、手出しできんように、守り固める!それが、一番、手っ取り早い!」
彼のやり方は、常に、単純で、実践的だった。

議論は、平行線を辿る。
封印を、守る、という、一点では、一致しているものの、その「方法」が、全く、まとまらない。

その、堂々巡りの議論を、エリアス学院長は、静かに、聞いていた。
そして、やがて、重々しく、口を開いた。

「皆様方。あなた方は、『鍵』を、どう使うか、という、議論ばかりを、しておられる。しかし、その前に、一つ、為すべきことがあるのでは、ないかな?」

「……『鍵』、そのものに、どうしたいのか、と、聞いてみること、が」

その言葉に、全ての視線が、一人の少年に、注がれた。
アッシュは、会議の、あまりの退屈さに、先ほど、ブロックにもらった、ドワーフの干し肉を、こっそり、もしゃもしゃと、食べていた。
突然、注目を浴びて、きょとんとしている。

女王コーラリアが、優しく、彼に、問いかけた。

「アッシュ殿。あなたも、話は、聞いていたでしょう。『黎明の子供たち』は、あなたの力を使い、封印を、解こうとしている。我々、王国は、あなたと共に、封印を、守りたい。……あなた自身は、どうしたいと、お考えですか?」

世界の、指導者たちが、初めて、彼の「意志」を、問うた。
アッシュは、うーん、と、しばらく、考え込んだ。
彼は、さっき見た、恐ろしい、影の巨人のことを、思い出した。そして、銀色の髪の、どこか、悲しそうな顔をした、ルナのことも、思い出した。

やがて、彼は、一つの、彼らしい、結論に、たどり着いた。

「あのね、ルナさんたちも、別に、悪い人じゃない、と思うんだ。ただ、僕たちとは、考え方が、違うだけで……」
彼は、まず、そう、前置きした。そして、続ける。

「でも……。あの、ビジョンで見た、真っ黒くろすけは、なんだか、『調和』とか、そういう話が、通じる相手には、見えなかったなあ。あいつが出てきたら、全部、食べられちゃう感じがした。お城も、人も、お花も……」

彼は、そこで、一度、言葉を切り、会議室にいる、全ての王族たちを、これまで、誰も、見たことのない、真剣な、まっすぐな、瞳で、見つめた。

「……おやつも、全部、食べられちゃうのは、絶対に、嫌だ」

その、あまりにも、シンプルで、しかし、誰もが、否定できない、根源的な、理由。
それは、全ての、複雑な、政治的、哲学的な、議論を、貫いて、その場にいる、全員の心を、一つにした。

「……がっはっはっはっは!」
最初に、沈黙を破ったのは、ブロックだった。

「その通りだ!おやつが、なくなっちまったら、世界なんぞ、終わったも、同然よ!『厄災から、おやつを守る』!おう、その戦い、乗ったぜ!」

「……ふふっ。単純にして、真理。ですわね」
アミーラも、心からの、感嘆の笑みを、浮かべた。

「……フン。反論の、しようが、ないな」
クラウスも、その、あまりにも、まっすぐな理屈に、頷くしかなかった。

こうして、新たな、四王国同盟が、結成された。
その、崇高なる、統一目的は、『厄災による、おやつの消滅を、阻止すること』。

エリアス学院長は、その光景を、静かに、見つめていた。
この、どうしようもなく、呑気な、旧友の孫の、その、単純な心が、またしても、最も、賢明な、答えを、導き出したのだ。

『世界平和サミット』は、閉会した。
そして、今、ここに、『世界おやつ防衛同盟』が、結成された。
彼らの、次なる任務は、『黎明の子供たち』の計画を、阻止し、世界の、平和と、おやつを、守り抜くこと。
壮大で、そして、どこか、気の抜ける、新たな戦いが、始まろうとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

つまみ食いしたら死にそうになりました なぜか王族と親密に…毒を食べただけですけど

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私は貧しい家に生まれた お母さんが作ってくれたパイを始めて食べて食の楽しさを知った メイドとして働くことになれて少しすると美味しそうなパイが出される 王妃様への食事だと分かっていても食べたかった そんなパイに手を出したが最後、私は王族に気に入られるようになってしまった 私はつまみ食いしただけなんですけど…

異世界に転生したら人生再スタート、追放された令嬢は恋と復讐で輝きます

タマ マコト
ファンタジー
現代日本で“都合のいい人間”として心をすり減らし、27歳で人生に幕を下ろした女性は、異世界の貴族令嬢リュミエールとして15歳に転生する。 王太子の婚約者として完璧を求められる日々の中、冤罪と裏切りによって婚約破棄と追放を言い渡され、すべてを失う。 だがその瞬間、彼女は悟る――選ばれる役割の人生は、もう終わったのだと。 追放の先で、彼女は自分の意思で生き直すための一歩を踏み出す。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜

☆ほしい
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。 王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。 戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。 彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。 奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、 彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。 「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」 騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。 これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。

処理中です...