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第64話 (最終話)満腹の世界
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世界の終わり、そのものともいえる、『厄災』の渦。
その、絶対的な、虚無の中心へと、アッシュが、全力で投げ込んだ、おやつのバスケットが、吸い込まれていった。
一瞬、完全な、静寂が、訪れる。
世界を、引き裂くかのような、引力は、変わらない。
アッシュの、あまりにも、突飛な、最後の、一手が、失敗に終わったかのように、思われた、その時。
変化は、訪れた。
渦の中心、その、漆黒の、闇の、さらに、奥から、ぽつり、と、一つの、暖かな、黄金の光が、灯ったのだ。
『厄災』とは、純粋な、「無」であり、「飢餓」そのもの。
それは、これまで、何かを、「味わう」という、概念を、知らなかった。
しかし、今、その、空っぽの、中心に、初めて、「物質」が、投げ込まれた。
それも、ただの、物質ではない。生命の、喜びと、混沌と、そして、優しさが、凝縮された、究極の、「味」を持つ、存在が。
厄災は、プリンの味を、知った。ある晴れた日の、幸福感を、知った。
厄災は、クッキーの味を、知った。友と、肩を並べる、勇気を、知った。
厄災は、干し肉の味を、知った。懸命に、働くことの、満足感を、知った。
生まれて初めて、「無」以外の、何かで、その、存在が、満たされていく。
その、感覚は、厄災にとって、あまりにも、異質で、あまりにも、強烈だった。
黄金の光は、渦の内側から、爆発的に、溢れ出す。
しかし、それは、破壊の、光ではない。
全てを、生み出す、始まりの、光。「創造」の、奔流だった。
虚無は、生命に、満たされ、その、存在意義を、失っていく。
やがて、渦は、急速に、収縮し、その、中心に、一つの、新しい、天体を、生み出した。
それは、日食の闇の中でも、明るく、輝く、小さな、黄金色の、太陽だった。
『厄災』は、滅びなかった。ただ、『変質』したのだ。
純粋な、無と、飢餓の、存在は、生涯で、最初で、そして、最高の、食事を、終え、純粋な、創造と、満足の、存在へと、生まれ変わった。
『終焉の門』は、静かに、閉じ、空には、二つの、太陽が、並んで、輝いていた。
『大いなる封印』は、もはや、必要なくなった。
封じるべき、厄災が、もう、どこにも、存在しないのだから。
島に、穏やかな、光が、戻ってくる。
アッシュは、空を見上げ、新しく、生まれた、黄金の、「おやつの星」を見て、にっこりと、笑った。
「なんだか、すごく、嬉しそうだ。もう、お腹、すいてないんだね」
その、隣に、いつの間にか、祖父が、立っていた。
「ああ、お前さんが、満腹に、してやったからのう」
彼は、アッシュの頭を、優しく、撫でた。
「世界を、救ったな、アッシュ。いや……世界に、ご飯を、食べさせてやった、と言うべきかのう」
「さあ、帰るぞ。うまい、漬物が、わしらを、待っとる」
その、絶対的な、虚無の中心へと、アッシュが、全力で投げ込んだ、おやつのバスケットが、吸い込まれていった。
一瞬、完全な、静寂が、訪れる。
世界を、引き裂くかのような、引力は、変わらない。
アッシュの、あまりにも、突飛な、最後の、一手が、失敗に終わったかのように、思われた、その時。
変化は、訪れた。
渦の中心、その、漆黒の、闇の、さらに、奥から、ぽつり、と、一つの、暖かな、黄金の光が、灯ったのだ。
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それは、これまで、何かを、「味わう」という、概念を、知らなかった。
しかし、今、その、空っぽの、中心に、初めて、「物質」が、投げ込まれた。
それも、ただの、物質ではない。生命の、喜びと、混沌と、そして、優しさが、凝縮された、究極の、「味」を持つ、存在が。
厄災は、プリンの味を、知った。ある晴れた日の、幸福感を、知った。
厄災は、クッキーの味を、知った。友と、肩を並べる、勇気を、知った。
厄災は、干し肉の味を、知った。懸命に、働くことの、満足感を、知った。
生まれて初めて、「無」以外の、何かで、その、存在が、満たされていく。
その、感覚は、厄災にとって、あまりにも、異質で、あまりにも、強烈だった。
黄金の光は、渦の内側から、爆発的に、溢れ出す。
しかし、それは、破壊の、光ではない。
全てを、生み出す、始まりの、光。「創造」の、奔流だった。
虚無は、生命に、満たされ、その、存在意義を、失っていく。
やがて、渦は、急速に、収縮し、その、中心に、一つの、新しい、天体を、生み出した。
それは、日食の闇の中でも、明るく、輝く、小さな、黄金色の、太陽だった。
『厄災』は、滅びなかった。ただ、『変質』したのだ。
純粋な、無と、飢餓の、存在は、生涯で、最初で、そして、最高の、食事を、終え、純粋な、創造と、満足の、存在へと、生まれ変わった。
『終焉の門』は、静かに、閉じ、空には、二つの、太陽が、並んで、輝いていた。
『大いなる封印』は、もはや、必要なくなった。
封じるべき、厄災が、もう、どこにも、存在しないのだから。
島に、穏やかな、光が、戻ってくる。
アッシュは、空を見上げ、新しく、生まれた、黄金の、「おやつの星」を見て、にっこりと、笑った。
「なんだか、すごく、嬉しそうだ。もう、お腹、すいてないんだね」
その、隣に、いつの間にか、祖父が、立っていた。
「ああ、お前さんが、満腹に、してやったからのう」
彼は、アッシュの頭を、優しく、撫でた。
「世界を、救ったな、アッシュ。いや……世界に、ご飯を、食べさせてやった、と言うべきかのう」
「さあ、帰るぞ。うまい、漬物が、わしらを、待っとる」
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