出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ

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第百五十二話:王の目

王から、そして父からの承認を得て、僕はついにノーランドの真の支配者となった。
だが、それは僕の戦いが終わったことを意味するのではない。
むしろ、より大きく、そしてより複雑な戦いの始まりを告げる号砲だったのだ。

父との交渉から一月後。王都から僕の新しい「お目付け役」がやってきた。
国王陛下が直々に派遣したという『王室連絡官』。
その男の名は、サー・カイエン。
かつては王国騎士団の千人隊長としてその名を馳せ、引退後は王の側近として仕えてきた百戦錬磨の老騎士だった。

彼がグレイロックの町に到着した日、僕は腹心たち全員を引き連れて彼を出迎えた。
馬車から降り立ったサー・カイエンは、僕が想像していた通りの男だった。
その背筋は鋼のように真っ直ぐで、顔に刻まれた深い皺は、彼がくぐり抜けてきた数多の死線を物語っている。
そして、その灰色の瞳はまるで鷹のように鋭く、僕の心の奥底までを見透かそうとしていた。
彼からはゲルラッハ子爵のような小物特有の傲慢さやいやらしさは一切感じられない。
そこにあったのは、ただ自らの王に対する絶対的な忠誠心と、自らの任務に対する鉄の意志だけだった。

「辺境伯閣下。お初にお目にかかる。カイエンと申す」

彼の声は低く、そして重かった。

「陛下のご命令により、本日よりこのノーランドに駐在させていただく。私の役目はただ一つ。この地の発展を見届け、そしてその真実の全てを陛下にご報告すること。……お見知りおきを」

その丁寧な言葉遣いの裏に隠された、鋭い牽制。
僕はそんな彼に穏やかな笑みを向けた。

「ようこそ、サー・カイエン。長旅ご苦労だった。あなたのような高潔な騎士に来ていただけたこと、心より歓迎する。……どうぞ、僕の全てをご覧になるといい。このノーランドには、隠し立てするようなものは何一つないのだから」

僕たちの最初の挨拶は、静かな火花を散らして終わった。
僕は彼に僕の「公」の施設を案内して回った。

ボリンが管理する西の鉄鉱山と新しい精錬所。リリアが監督する町の再開発地区。
そして、ニールが研究を進める魔法研究会の出張所(ということになっている、ただの書斎)。僕が彼に見せたのは、全て僕が作り上げた完璧な「表の顔」だった。

目覚ましい発展を遂げているが、その全てが常識の範囲内で説明のつく光景。サー・カイエンは、その全てを無言で、しかし鋭い観察眼で見て回っていた。

その夜、僕は僕の新しい力を使った。
『視界共有』。
僕はノーランドの夜空を飛ぶ一羽のフクロウの視界を借りて、カイエンに与えられた館の客室を監視していた。
彼は部屋の中で、王都との定期報告を行っていた。
通信用の魔道具が放つ淡い光の中で、彼の声が静かに響く。

「……陛下。本日、ノーランドに到着いたしました。町の発展は噂以上。辺境伯の手腕は本物でございます。……ですが」

彼はそこで一度、言葉を切った。

「……ですが、あまりに全てが完璧すぎます。彼の報告する収支と、この町の発展の速度が釣り合っておりません。この土地には、我々がまだ知らない何か別の力の源泉がある。それは間違いございません。……はい。このカイエン、この命に代えましても、その謎を解き明かし、陛下にご報告いたします」

僕は静かにフクロウとの同調を解いた。
彼の報告内容は僕の予想通り。
やはり、彼はゲルラッハのような愚か者ではなかった。
僕の完璧な舞台は、初日にしてその綻びを見抜かれ始めていた。

「面白い」

僕は呟いた。

「王の目は、節穴ではなかったというわけか」

だが、僕の心に焦りはなかった。
むしろ、その逆だった。
有能な敵役の登場は、物語をより面白くする。僕と、王の忠実な老騎士。
その静かで息の詰まるような化かし合いが、今、この北の地で始まった。

僕が彼に僕の本当の宝の正体を気づかせるのが早いか。
それとも、彼が僕の仮面を完全に引き剥がすのが早いか。
僕の新しいゲームの相手として、彼は申し分ない存在だった。

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