【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

第22話：簡易洗濯機と水の調べ

誠也は作業場の机に腰かけ、  
防刃スカーフを手に持っていた。  
窓から差し込む朝の光が、  
ダンジョンの暗さを遠ざける。  
市場の喧騒が耳に届き、  
日常の穏やかさが戻ってくる。  

「今日はどうするかな？
一般家庭向けの物でも考えてみようかな」  

ダンジョンでの緊張を思い出し、  
少し疲れを感じる。  
市場で耳にした  
「洗濯が大変だ」という  
主婦の声を思い出す。  
「簡易洗濯機なら、  
家庭で喜ばれるかも」  

水と魔石で動く、  
簡単な洗濯道具。  
冒険者向けとは違い、  
日常を楽にするものだ。  

その時、  
扉が軽く叩かれた。  

「誠也、いるかい？」  
聞き慣れた声。  
サリヤが顔を覗かせる。  

「おお、サリヤさん！  
うん、いるよ。  
どうしたの？」  

「市場で  
お前がダンジョン行ったって  
噂になってたよ。  
何か新しいもん  
作ってるのかい？」  

「今、  
簡易洗濯機を考えてるんだ。  
家庭向けにね」  

「洗濯機？  
カーラムじゃ  
水が貴重で  
洗濯なんて滅多にしないけど、  
リムドじゃ需要ありそうだね。  
材料はあるかい？」  

「水を動かす仕組みが  
欲しいけど、  
手元にないんだ。  
新しい仕入れ先探さないと」  

「なら、  
リムド郊外の  
水車工房はどうだい？  
水車作ってる職人がいて、  
面白い部品があるよ。  
私も行くさ」  

「水車工房！  
面白そう。  
行こう！」  

市場を抜け、  
郊外へ向かう。  
石畳が土道に変わり、  
小川のせせらぎが聞こえる。  
木造の工房が見え、  
水車がゆっくり回る。  

「おお、客か。  
何だい？」  
白髪の職人が  
工具を手に迎える。  

「誠也です。  
簡易洗濯機を作りたくて、  
水を動かす部品が欲しいんです」  

「洗濯機？何だそれ？」 

「箱に水を溜めて、汚れた衣服などをクルクルまわすんです」

「よく分からんが、それなら水車のパーツが使えるかもな。  
これなんかどうだ？」  
小さな歯車と  
細い水管、  
小さな魔石を出す。  

「歯車と管は  
銅貨15枚、  
魔石は5枚だ。  
水で回る仕組みだよ」  

「ありがとう。  
これで！」  
銅貨20枚を渡す。  

作業場に戻り、  
製作開始。  
サリヤが机の端に座り、  
「カーラムじゃ  
水が少ないから  
こんな発想ないよ。  
楽しみだね」と言う。  

木の箱を用意し、  
歯車を底に固定。  
水管を繋ぎ、  
水が流れる道を作る。  
「これで水が  
布を回すかな……」  

魔石を管の入り口に埋め込み、  
「水を動かせ」と意識を集中。  

魔石が光り、  
歯車が微かに動き出す。  
水を入れると、  
箱の中で渦が巻き、  
布がくるくる回る。  

「おお！  
洗濯っぽい！  
これなら家庭で使えるよ！」  

完成したのは「簡易洗濯機」。  
水と魔石で布を洗う道具だ。  
「『魔石の水流魔法』ってことにしよう」  

サリヤが笑い、  
「試してみたいね。  
市場で売る前に  
私の外套でどうだい？」  

汚れた外套を渡され、  
洗濯機に水と共に入れる。  
歯車が回り、  
泥が落ちていく。  

「すごい！  
きれいになったよ！」  

「誠也、いい仕事だ。  
リムドの主婦に  
売れるよ。  
値はどうする？」  

「便利だから  
銀貨1枚でどうかな。  
でも最初は2、3台売って、  
後は受注生産にしよう。  
お試しは銅貨1枚でいいよ」  

市場へ向かうと、  
グラントが剣を手に現れる。  

「おお、誠也！  
何だその箱？  
サリヤと何か企んでるのか？」  

「簡易洗濯機だよ。  
家庭向けに作った。  
お試し銅貨1枚でどう？」  

「おお、面白え！  
俺のマント、  
ダンジョンで汚れたままだぜ」  

銅貨1枚を受け取り、  
マントを洗う。  
「すげえな！  
きれいになっちまった！
銀貨1枚なら  
詰所に欲しいぜ。  
受注で頼むよ」  

しばらくすると、バロンが鍛冶場から  
槍を手に歩いてくる。  
「おい、誠也。  
その洗濯機、  
市場で噂になってたぜ。  
俺の作業着、  
汗と鉄くずで汚いんだ。  
お試し銅貨1枚でいいか？」  

「うん、どうぞ！」  
作業着がきれいに。  
「これ、鍛冶場で  
毎日使いたいな。  
銀貨1枚で1台くれよ」  

「ありがとう。  
最初の1台だよ」  
銀貨1枚を受け取る。  

ゼッドが市場の端から  
走ってきて、  
「おい、誠也！  
何だその箱！  
また俺の客取る気か？」  

「ゼッド、  
家庭向けの洗濯機だよ。  
お試し銅貨1枚でどう？」  

「へっ、俺のシャツ  
汗臭いからな。  
試してやるよ！」  

シャツが回り、  
ゼッドが驚く。  
「すげえじゃん！  
銀貨1枚なら  
俺も欲しいぜ。  
1台、注文で頼むな！」  

主婦が近づき、  
「おい、それ洗濯機？  
お試ししてみていい？」  

「銅貨1枚でどうぞ！」  
試した主婦が喜び、  
「これ欲しいわ！  
1台ちょうだい！」  

夕方までに  
2台を銀貨2枚（銅貨200枚相当）で売り、  
お試しで銅貨5枚を稼ぐ。  
受注を3件受け、  
作業場に戻る。  

銅貨205枚を机に並べ、  
「家庭の笑顔か…  
日常が少し楽しくなったな。  
家庭向けの
便利なものも、  
もっと作っていこうかな？」  

小川の音を思い出し、  
誠也は穏やかに目を細めるのだった。