【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ

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第47話:虹色の水晶と揺れる心

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ノルディアの広場は今日も賑やかだ。  
屋台「魔道具屋」の前には、  
ドワーフたちが銅貨を手に集まっている。  
耐熱グローブや振動探知器が飛ぶように売れ、  
誠也の顔にも笑みが浮かぶ。  
雪がチラつく中、  
屋台の灯りが温かく揺れる。  

リナが銅貨を数えながら笑う。  

「誠也、今日も大盛況だよ!  
特に振動探知器が、
鉱山のドワーフに大人気だね。」  

誠也が屋台の布を整える。  

「ノルディアの皆、  
実用的な道具が大好きだな。  
商売が軌道に乗って、  
少し安心したよ。」  

そこへ、バルドが駆け寄ってくる。

「おい、誠也!  
リナも!  
大変なもんが採れたぞ!  
鉱山から  
虹色に輝く水晶が出てきたんだ!  
ドワーフの誰一人、  
見たことねえって大騒ぎだ!」  

誠也が目を丸くする。  

「虹色の水晶?  
そんなの、  
俺も見たことない。  
どんなものなんだ?」  

バルドが髭を撫でる。  

「俺もよく分からねえ。  
でも、触ると  
何か変な感じがするって  
鉱夫が言ってた。  
噂を聞いて、  
お前も見に来ねえか?」  

リナが弓を手に持つ。  

「面白そうじゃないか!  
私も見たいよ。  
行こう、誠也!」  

三人は鉱山へ向かう。  
鉱山の入り口には、  
ドワーフたちが集まり、  
興奮した声が響く。  
「こんな水晶、  
初めて見たぜ!」  
「魔力か知らんが、ビリビリするな!」  
ざわめきの中、  
鉱夫が虹色の水晶を掲げる。  

誠也が近づく。  
水晶は手のひらサイズで、  
虹色に輝き、  
光が揺らめく。  
「確かに綺麗だ。  
でも、魔力とは少し違う感覚がする。」  

バルドが肩を叩く。  

「触ってみな!  
何か感じるってよ!」  

誠也が水晶に手を伸ばす。  
指先が触れた瞬間、  
水晶が強く光り、  
表面に映像が浮かび上がる。  
それは、  
誠也が元いた世界の街並みだった。  
高層ビルが立ち並び、  
車が走り、  
人々が忙しなく行き交う。  
まるでテレビの映像のように動いている。  

誠也が息を呑む。  
「これは……  
俺がいた世界だ。」  
映像の中の人々に声をかける。  

「おい、聞こえるか?」  

だが、反応はない。  
一方的にこちらから見えているだけだ。  
しばらくすると、  
映像が消え、  
水晶は元の虹色に戻る。  

リナが首を傾げる。  

「何だ今の?  
変な街並みだったけど、  
あれ、どこなの?」  

誠也が水晶を見つめる。  

「俺が元いた世界だ。  
この水晶、  
何か特別な力を持ってる。  
調べれば、  
元の世界に戻る方法が  
分かるかもしれない。」  

バルドが驚く。  

「お前、別の世界から来たのか?  
そりゃ驚きだぜ!  
でも、戻る方法って、  
どうやって調べるんだ?」  

誠也が鉱夫に頼む。  

「この水晶、  
少しだけ譲ってくれないか?  
小さな欠片でいい。  
調べたいんだ。」  

鉱夫が頷く。  

「町を救ったお前なら、  
いいぜ。  
小さな欠片なら  
持ってっていい。」  
いくつかある水晶の欠片から、  
小さな欠片を渡す。  

誠也が欠片を手に持つ。  
「ありがとう。  
これで何か分かるかもしれない。」  

夜、  
屋台の灯りが揺れる。  
誠也は水晶の欠片を手に、  
一人考え込む。  
「元の世界に戻れるかもしれない。  
でも……。」  
胸が締め付けられる。  

リナが屋台の布を片付ける。  

「誠也、  
どうしたの?  
さっきから難しい顔してるよ。」  

誠也が水晶を握る。  

「リナ、  
俺、元の世界に戻る方法を  
探したいって思った。  
でも、同時に、  
お前と一緒にいたいって  
気持ちが湧いてきて。  
自分でも分からないんだ。」  

リナが優しく笑う。  

「誠也、  
私もお前と一緒にいたいよ。  
でも、元の世界が  
大事な場所なら、  
戻る方法を探すのも  
大事だと思う。  
一緒に考えようよ。」  

バルドが誠也の背中を軽くたたく。  

「お前、悩むタイプだな!  
俺なら、  
やりたいこと全部やるぜ!  
戻る方法を探しつつ、  
リナと一緒にいりゃいいだろ?」  

誠也が微笑む。  

「そうだな。  
リナがいるなら、  
何でもできそうだ。  
水晶を調べながら、  
ノルディアで暮らしていこう。」  

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