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水族館に行く
ホテルにて
しおりを挟む「じゃあここにしようか。」
「はい。あれここって普通のホテルですか?」
着いた施設は高級ホテルの外観をしていて物怖じしてしまう。前のときみたいに料金が看板に書いてあったりもしないがどれほどかかるのだろうか。
「あの…ここ料金って、」
「私が予約取って料金も払ってるから心配しないで。」
「えっ⁉︎何円でしてたか?忘れないうちに払います。」
「いいよここは奢るから。その代わり私を幸せにして。」
「―――はい。」
2人で車を降りてエントランスに向かう。二重になっている扉を抜けると広いロビー。高そうなソファがいくつか置かれる空間はすごく高級そうに見えた。
「ここ、いくらしたんですか?」
「とりあえずチェックインして部屋行ってからゆっくり話そう?」
「あっはい。」
腕を取られて受付を済ませエレベーターで上がっていく。さっきは期待と緊張で鼓動が早くなっていたが、今は不安が心の中で大きくなっていた。
「おお!いい部屋だね。」
「そうですね。泊まったことないです、こんなところ。」
「慶介さん緊張しすぎですよ。もう料金は払った後ですし、今更半分料金払えなんて言いませんから。」
「いえ、そんな心配はないんですけど。あの、こんな高級なところ来たことがなくて。」
「ふふ、今日の最後まで2人でゆっくり楽しみましょう。」
ジャケットを脱いだ鏡花さんが俺の首に手を回して顔を近付けてくる。
「鏡花さん、あのお話があって。」
「ん?なに?」
首に回された腕を掴みながら彼女の目を至近距離から見つめる。
「ホテル取っていただいて料金も払ってない身で言うのは申し訳ないですが、言わないと後悔しそうたので言います。鏡花さん、好きです。付き合ってくれませんか。」
告白してもすぐに返事はなかった。目を見開いて僕を見たあと無表情で時間が過ぎていく。表情のない美人の顔は至近距離で見ると少し怖い。さっきまで会話していた口は少しも動かずに閉じられている。
「きょ――」
「慶介さん。私のこと好きなんですか?」
「えっ?はい好きです。」
「そうですか。……嬉しいんですけど、私も慶介さんに言わなきゃいけないことがあって。」
「……なん、ですか?」
手を解いて一方下がり、暗い表情を浮かべる彼女。最悪の想像が頭に浮かんで鼓動が一層大きくなった。
「……私、バツイチなの。」
「えっ?そうなんですか。」
「うん。」
「……えっそれだけですか?」
「えっ?いやまあそれだけだけど。」
バツイチなことは驚いたが離婚歴がある女性なんていくらでもいるだろう。いやまだ何かあるのかも知れない。
「あっ子どもがいるとかですか。不安ですけど一緒に育てましょう。」
「いないよっ!違うそうじゃなくて。」
「えっじゃあ……前の旦那が忘れられなくてとか。」
「それならホテルに誘ったりしないよ。違うそうじゃなくて。」
呆れて笑いながら俺の服を掴む彼女は少し泣いていた。
「大丈夫ですか?鏡花さん。」
「うん。ありがとう。前の旦那は、普通にお金使い込まれて離婚したの。だからもう交流とかないよ。」
「そうなんですね。……粘着とかされてないですか。」
「うん、接近禁止令出してもらったし大丈夫。」
俯く彼女を抱き寄せると体を預けてくれた。そのまま頭を撫でて会話を続ける。
「あと何か言うことはありますか?」
「ううん、私からはこれだけ。」
「そうですか。じゃあ僕と付き合ってくれますか?」
「うん、いいよ。付き合いましょう。」
「すごく嬉しいです。幸せにします。」
感極まって抱きしめるとすぐに彼女も抱きしめ返してくれる。
「2人で一緒に幸せになりましょう。」
「告白した自分が言うのもなんですけど、バツイチ関係なしにあっさりOKしてよかったんですか?」
ベッドに座って後ろから鏡花さんを抱きしめながら会話を続ける。
「今日なんで高いホテル取ったと思う?」
「……えっ?な、んでですかね?」
僕に凭れながら頭を首に擦るようにされてくすぐったい。
「私も慶介さんに交際申し込もうと思ってたの。それでバツイチの自分が有利になれる状況を作ろうと思ってさ。」
「……そうだったんですね。嬉しいです。そういうことならやっぱり料金払いますよ。」
「いいよ、付き合ってるんだし。経済力ある部分を見せようとしてたのもあるから。不安なら次のとき慶介さんが払ってくれる?」
笑顔を向ける彼女がかわいくて愛しくて両手に力が入る。彼女のお腹に腕が少し沈んで柔らかさが伝わってくる。
「あの、慶介さん。」
「なんですか。」
「キスして。」
「はい。」
後ろを向く鏡花さんの顔に手を添えて口付けをする。前会ったときもホテルでしたし、今日も信号待ちの車の中でキスしたが今が一番幸せなキスだと確信できる。
「んぁ、慶介さん。」
「鏡花さん。」
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