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「……あなたの言葉に、救われた者がいる限り、私は再び祈ることを選びます」
そう言って、フェルナン=ド=ボネール神官は深く頭を下げた。
初夏の風が、静かに薬草畑を吹き抜ける。
かつて修道院《エルメリア》で出会ったときよりも、その眼差しは穏やかだった。
「こちらこそ、お越しいただき感謝します。
貴方のような方が、この場所の“中心”にいてくださるだけで、子どもたちは救われるでしょう」
「中心などではありません。私はただ、“語る者”に過ぎません。
信仰とは“導く”のではなく、“隣に立つ”ことだと──ようやく学びました」
フェルナンの言葉は、風のように静かだった。
だがその中には、神殿という巨大な制度に立ち向かった者だけが持つ、揺るがぬ確信が宿っていた。
「ここには、王都から送られてきた少年たちや、居場所を失った娘たちも集まってきます。
貴方には、彼らに“恐れずに問いを持て”と教えてほしい」
「“問いを持つこと”こそが、信仰の始まりですから」
彼の言葉に、私は心からうなずいた。
ユリアが遠巻きに様子を見ながら、そっと呟いた。
「……まるで、長い間さまよっていた神官が、やっと“祈るべき場所”を見つけたようですね」
「祈るべき“神”ではなく、“人のために祈る場所”。
それがここにあるのなら、彼もきっと、また立てるわ」
薬草院兼学び舎の建設地は、もう柱が立ちはじめていた。
木材の香り、湿った土の匂い、苗を植える音。
すべてが、“始まり”の息吹だった。
「ところで、エヴァリーナ様。──貴方自身は、これからこの場所で、どう生きるおつもりですか?」
フェルナンの問いに、私は少しだけ微笑んで返した。
「私は、“居場所を作る側”になります。
もう、“誰かの居場所”に合わせて自分を削るようなことは、いたしません」
彼は静かに頷いた。
「それはきっと、かつて貴族だった誰よりも、尊い生き方です」
その言葉を、私は決して“褒め言葉”としては受け取らなかった。
──これは“選び直した道”なのだ。
誰かに認められるためではなく、
誰かを見下ろすためでもなく、
ただ、目の前にいる人と同じ高さで、生きていくという選択。
「これで、この場所の骨が決まりましたね」
「ええ、あとは、肉と血と魂を育てていくだけです」
フェルナン神官の穏やかな笑みに、私は確信を持って頷いた。
かつて、“悪役令嬢”と呼ばれた私。
今はもうその肩書きも、重荷でもない。
ここから始まるのは、
──誰の脚本でもない、“私たちの物語”だった。
そう言って、フェルナン=ド=ボネール神官は深く頭を下げた。
初夏の風が、静かに薬草畑を吹き抜ける。
かつて修道院《エルメリア》で出会ったときよりも、その眼差しは穏やかだった。
「こちらこそ、お越しいただき感謝します。
貴方のような方が、この場所の“中心”にいてくださるだけで、子どもたちは救われるでしょう」
「中心などではありません。私はただ、“語る者”に過ぎません。
信仰とは“導く”のではなく、“隣に立つ”ことだと──ようやく学びました」
フェルナンの言葉は、風のように静かだった。
だがその中には、神殿という巨大な制度に立ち向かった者だけが持つ、揺るがぬ確信が宿っていた。
「ここには、王都から送られてきた少年たちや、居場所を失った娘たちも集まってきます。
貴方には、彼らに“恐れずに問いを持て”と教えてほしい」
「“問いを持つこと”こそが、信仰の始まりですから」
彼の言葉に、私は心からうなずいた。
ユリアが遠巻きに様子を見ながら、そっと呟いた。
「……まるで、長い間さまよっていた神官が、やっと“祈るべき場所”を見つけたようですね」
「祈るべき“神”ではなく、“人のために祈る場所”。
それがここにあるのなら、彼もきっと、また立てるわ」
薬草院兼学び舎の建設地は、もう柱が立ちはじめていた。
木材の香り、湿った土の匂い、苗を植える音。
すべてが、“始まり”の息吹だった。
「ところで、エヴァリーナ様。──貴方自身は、これからこの場所で、どう生きるおつもりですか?」
フェルナンの問いに、私は少しだけ微笑んで返した。
「私は、“居場所を作る側”になります。
もう、“誰かの居場所”に合わせて自分を削るようなことは、いたしません」
彼は静かに頷いた。
「それはきっと、かつて貴族だった誰よりも、尊い生き方です」
その言葉を、私は決して“褒め言葉”としては受け取らなかった。
──これは“選び直した道”なのだ。
誰かに認められるためではなく、
誰かを見下ろすためでもなく、
ただ、目の前にいる人と同じ高さで、生きていくという選択。
「これで、この場所の骨が決まりましたね」
「ええ、あとは、肉と血と魂を育てていくだけです」
フェルナン神官の穏やかな笑みに、私は確信を持って頷いた。
かつて、“悪役令嬢”と呼ばれた私。
今はもうその肩書きも、重荷でもない。
ここから始まるのは、
──誰の脚本でもない、“私たちの物語”だった。
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