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第二章
番外編 はじめてのしゅっちょう⑤
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なおも言い争う三人にエルザの父親は目を白黒させていた。どうにも、思っていた男と目の前の男は違う。
こちらのあからさまな侮辱に怒るでもなく、むしろ怒る部下を叱りつけ、頭を下げた。わざと他の男の名を出したのに眉を寄せすらしなかった。
大事な娘を怒鳴りつけるくせに、挨拶にもこない男など禄でもないと思っていたのに。
これは一体、どういうことかと。
そんなエルザの父親の心情を的確に悟ったミアは「そういうことか」と手を打った。
「おじさん、勘違いしてない?」
そう言ってミアが耳元に口を寄せると父親の目が丸く見開かれた。
「あんのバカ娘は……っとによぉ」
静かに呟かれた独り言には、どことなくばつの悪い響きがあった。
「あーっと……そうだな。男の方の欠点ばかり聞いたんじゃあ、フェアじゃねえ。俺の娘はどうだ。何か困ったところはないか。まああれは昔から要領がいいから部下に迷惑なんざかけてないとは思うが……」
聞かれたグレンとザックは顔を見合わせもしなかった。
「居眠りが多いです。あと書類が溜まってくると、目を離すとすぐに逃げてしまって、中庭のベンチで寝てるところをよくオーウェン様に叩き起こされています」
「物もよく無くすよな。この間だって書類を無くしてオーウェン様が見つけてきたし、その前は大事な印鑑をどこかで落としたって大騒ぎになってオーウェン様に怒られてました」
「そうそう。その印鑑を昨日は窓から落としたんです。生きてるみたいに跳ねて落ちていきました」
「オーウェン様がいないのによく見つけたなぁ」
「見つからなきゃ殺されると思ったら誰だって必死になるだろ……」
ここに来て上官の父親が額を押さえる姿が二人の視界に入った。まずい、言い過ぎた、と慌てて弁解する。
「で、でも以前に無くした印鑑はすぐに見つかったんですよ! オーウェン様が鈴をつけていたから、すぐに見つけてくれました! 無くしたのが初めてじゃないそうで!」
「そうですよ! 今回もオーウェン様が戻るまで待つしかないかしらね~って一人で呑気にしていたので少し殺気立ちましたが、必死に訴えれば探してくださいました! ちゃんと言って聞かせれば分かるんです!」
二人の叫び声は店の外まで聞こえていたらしい。
扉が勢いよく開かれ、エルザが憤然と駆けつけてきた。
「ちょっと二人とも! どうして父さんに私の悪口を聞かせてるのよ! ひどいじゃない!!」
今度こそ上官の目の前で欠点を話した格好になった二人は慌てたが、エルザは恋人に泣きついた。
「オーウェン! 二人がひどいのよ! 私の悪口言って!」
だが恋人は父親と同じく頭痛でもするように額に手を添えてため息をついた。
「二人の言うことが何か間違っていますか。全て純然たる事実でしょうが。常々申し上げておりますが、あなたは仕事に関して注意力が散漫すぎます。さきほどザックが言っていましたが印鑑を窓から落とす必要がどこにありますか。机の上にあれば万に一つも落ちるようなことなどありませんでしょう。どうせ横着して持ち歩きでもしたのでしょうが、以前にもあなたは印鑑をなくしたことをお忘れですか。先ほどグレンが言った時のことですよ。あれはスペードの10が確認したことを証する大切な印鑑で、もしも悪用されればあなたの名でとんでもない許可を出したことにされかねない。無くしたとあればとてつもない大事になるのですよ。──と何度も申し上げたはずですが、また失くしましたか。一体何度目ですか。まったくあなたと言う人は一日も目を離せな──」
慣れたオーウェンの舌は止まらない。
グレンがおずおずと上官に囁いた。
「オーウェン様……あの……ご両親の前ですが……」
オーウェンの心臓が、今度こそ間違いなく止まった。
だが父親はなんとも居た堪れない表情で娘に目を向けた。
「エルザ。今日帰れなくなったとでもうちに知らせを出したのか」
恋人に叱られてしょんぼりしていたエルザだが、父親に聞かれて目を瞬かせた。
「出したわよ。三日前に。行けなくなったからまた次の機会にオーウェンを紹介するわねって。届いてないの?」
「……母さん。手紙は届いてたか」
娘と共に戻ってきていた母親はのほほんと頬に手を添えた。
「届いていましたよ。そうそう。それをね、本のしおりと間違えて仕舞ったままになっていたのに今朝気付いたんですよ。それで探していましたのに、あなたったら娘が来るのが遅いって町中歩き回るんですもの。お伝えするタイミングがないじゃありませんか。……あら? それならどうしてエルザがここにいるのかしら?」
オーウェンを含む部下三人は、この人は紛れもなくエルザの母親だと思った。
「伝えるタイミングは何度もあっただろう! ……それがわかってりゃあんな態度は取らなかったってのに……常々思っとるが、お前はちょっとばかしのんびりし過ぎとるぞ!」
「まぁ……申し訳ございません。わたしがしたことであなたに迷惑をお掛けしてしまったのですね……」
「あ、いや……そこまで謝らなくともいい。数日で気付けたなら僥倖というものだ。お前のこれは、いつものことだからな……」
神妙に頭を下げる母親にお説教の二の句が告げられない父親のこれは、確実に惚れた弱みと見た。
オーウェンはこの時、もしやこれは、自分の将来の姿なのではと少々不安になっていた。
住居となっている二階からゆったりと降りてくる音がした。降りてきたのは老人だった。騒ぐ一団を見て上がった口角が長い髭で隠れる。
その懐かしい笑顔に、オーウェンは喜色を浮かべた。
「なんだか賑やかな声がすると思ったらエルザが来ていたのかい。久しぶりだねぇ」
「おじいちゃん! お久しぶりです。お元気でいらっしゃいました?」
エルザが年長者に丁寧に話しかけると、相変わらず老人はむっつりと拗ねた顔になった。
「お前さんときたら、またそんな他人行儀な……もう私はスペードの5でもなんでもないただのおじいちゃんだよ。おお、そうだった。私の方こそ、スペードの10に対してこのような失礼な態度ではいかんですなぁ。この無礼は如何様にもお詫び申し上げます故、何卒処罰はこの老骨だけでご容赦賜りたく──」
「……もう! わかったから止めてよ! おじいちゃんに敬語で話されたらなんだかむず痒くなるわ」
「ほほ。そうだろうとも。私も同じだよ。──おや。今日はルウ坊達は一緒じゃないんだねぇ」
老人の目がオーウェンへと向けられて、オーウェンは心からの喜びを表してかつての恩師へと頭を下げた。
「ご無沙汰しております。ジュノ様。ひと月だけでございましたが、お側で学ばせていただきました、オーウェンです。私のことを覚えておいででしょうか」
ほんの少し不安に思いながら尋ねたオーウェンに老人はコテンと首を横に傾げた。
「んん? 誰だったかなぁ?」
やはり覚えていただけていなかった。
ミアの名前だけでは思い出さなかったが、この老人はエルザの友人であるミアの祖父で、前任のスペードの5のジュノだ。
たかがひと月なのだから仕方ないが、スペードの5の補佐として学んだあの日々を思うと、オーウェンはかなり寂しい気持ちになる。
しかし目の前の老人はクスクスと可笑しそうに肩を揺らし、エルザが呆れて注意した。
「おじいちゃん。オーウェンをしょんぼりさせないでちょうだい」
目を瞬くオーウェンに、老人は声を上げて笑った。
「ほほ。ごめんごめん。覚えとるよ、オーウェン殿。あなたのように優秀な補佐官を忘れるほど、私はまだ耄碌しとらんよ」
「……人が悪いですよ、ジュノ様。忘れられていたと思った私がどれだけ落胆したか」
そういえばこの恩師は少々食えないところがあったことを思い出し、ほんの少し抗議したオーウェンだった。
「ごめんねぇ。それにしても今日はまた二人して何を……ああ、そうだった! ちょうど良い機会だ。ミア! ミア、こっちにおいで!」
はたと手を打ったジュノが孫を呼ぶ。しかしミアは顔の前でバツを作った。
「ぜーったいに行きません。どうせ婿にどうだって言うんでしょ。そんな説教くさい男はお断りよぉ」
「何を贅沢言っとるのか。オーウェン殿は現スペードの5として真面目に働いとる良い人だ。顔を合わせておくくらい──」
来ないならこちらからだとばかりにジュノがオーウェンの背を押して孫の前へと連れて行こうとする。
そういえば孫を紹介させられかけていたのだったと思い出したオーウェンは慌てて断ろうとするも、どのあたりが老骨かと思うほどジュノの力が強い。
そんな孫思いの老人を止めたのはもちろん──。
「──だめっ!! オーウェンは絶対にだめよ!! ミアには、その、オススメかもしれないけどっ、この人は、わ、私の……っ」
顔を真っ赤に染めて、ほとんど恋人に抱きつく勢いでジュノを止めたエルザは必死だった。
「私の、恋人なんだから!! 絶対にミアにはあげないわよ!!」
「いやだから、いらないんだってば……」
ミアは冷静な友人だった。しかし必死なエルザの耳には届いていない。
「大好きなの! 私のなの! ほんとにほんとにオススメなのは誰よりもわかってるんだけど、で、でも私のだから、その……他を当たって欲しいというか……っオーウェンも、私が一番好きよね!? 私の恋人だものね!?」
かつての恩師、その孫、現在の部下、そして恋人の両親を前にしてこの仕打ち。全身の血が集まったのではと思うほど顔が熱くなったが、オーウェンは耐えた。
「そ、うですね……あ、あなたの恋人です。あなたを愛していますから、その……ほ、他の方にあげられるものでは、ありませんし………………ああもう勘弁してくれ……っ」
耐え切れなかったオーウェンの耳に「どうやら娘はかなり迷惑をかけとるらしいな……」という呟きが聞こえてきたが、心から否定はし切れないと思った。
こちらのあからさまな侮辱に怒るでもなく、むしろ怒る部下を叱りつけ、頭を下げた。わざと他の男の名を出したのに眉を寄せすらしなかった。
大事な娘を怒鳴りつけるくせに、挨拶にもこない男など禄でもないと思っていたのに。
これは一体、どういうことかと。
そんなエルザの父親の心情を的確に悟ったミアは「そういうことか」と手を打った。
「おじさん、勘違いしてない?」
そう言ってミアが耳元に口を寄せると父親の目が丸く見開かれた。
「あんのバカ娘は……っとによぉ」
静かに呟かれた独り言には、どことなくばつの悪い響きがあった。
「あーっと……そうだな。男の方の欠点ばかり聞いたんじゃあ、フェアじゃねえ。俺の娘はどうだ。何か困ったところはないか。まああれは昔から要領がいいから部下に迷惑なんざかけてないとは思うが……」
聞かれたグレンとザックは顔を見合わせもしなかった。
「居眠りが多いです。あと書類が溜まってくると、目を離すとすぐに逃げてしまって、中庭のベンチで寝てるところをよくオーウェン様に叩き起こされています」
「物もよく無くすよな。この間だって書類を無くしてオーウェン様が見つけてきたし、その前は大事な印鑑をどこかで落としたって大騒ぎになってオーウェン様に怒られてました」
「そうそう。その印鑑を昨日は窓から落としたんです。生きてるみたいに跳ねて落ちていきました」
「オーウェン様がいないのによく見つけたなぁ」
「見つからなきゃ殺されると思ったら誰だって必死になるだろ……」
ここに来て上官の父親が額を押さえる姿が二人の視界に入った。まずい、言い過ぎた、と慌てて弁解する。
「で、でも以前に無くした印鑑はすぐに見つかったんですよ! オーウェン様が鈴をつけていたから、すぐに見つけてくれました! 無くしたのが初めてじゃないそうで!」
「そうですよ! 今回もオーウェン様が戻るまで待つしかないかしらね~って一人で呑気にしていたので少し殺気立ちましたが、必死に訴えれば探してくださいました! ちゃんと言って聞かせれば分かるんです!」
二人の叫び声は店の外まで聞こえていたらしい。
扉が勢いよく開かれ、エルザが憤然と駆けつけてきた。
「ちょっと二人とも! どうして父さんに私の悪口を聞かせてるのよ! ひどいじゃない!!」
今度こそ上官の目の前で欠点を話した格好になった二人は慌てたが、エルザは恋人に泣きついた。
「オーウェン! 二人がひどいのよ! 私の悪口言って!」
だが恋人は父親と同じく頭痛でもするように額に手を添えてため息をついた。
「二人の言うことが何か間違っていますか。全て純然たる事実でしょうが。常々申し上げておりますが、あなたは仕事に関して注意力が散漫すぎます。さきほどザックが言っていましたが印鑑を窓から落とす必要がどこにありますか。机の上にあれば万に一つも落ちるようなことなどありませんでしょう。どうせ横着して持ち歩きでもしたのでしょうが、以前にもあなたは印鑑をなくしたことをお忘れですか。先ほどグレンが言った時のことですよ。あれはスペードの10が確認したことを証する大切な印鑑で、もしも悪用されればあなたの名でとんでもない許可を出したことにされかねない。無くしたとあればとてつもない大事になるのですよ。──と何度も申し上げたはずですが、また失くしましたか。一体何度目ですか。まったくあなたと言う人は一日も目を離せな──」
慣れたオーウェンの舌は止まらない。
グレンがおずおずと上官に囁いた。
「オーウェン様……あの……ご両親の前ですが……」
オーウェンの心臓が、今度こそ間違いなく止まった。
だが父親はなんとも居た堪れない表情で娘に目を向けた。
「エルザ。今日帰れなくなったとでもうちに知らせを出したのか」
恋人に叱られてしょんぼりしていたエルザだが、父親に聞かれて目を瞬かせた。
「出したわよ。三日前に。行けなくなったからまた次の機会にオーウェンを紹介するわねって。届いてないの?」
「……母さん。手紙は届いてたか」
娘と共に戻ってきていた母親はのほほんと頬に手を添えた。
「届いていましたよ。そうそう。それをね、本のしおりと間違えて仕舞ったままになっていたのに今朝気付いたんですよ。それで探していましたのに、あなたったら娘が来るのが遅いって町中歩き回るんですもの。お伝えするタイミングがないじゃありませんか。……あら? それならどうしてエルザがここにいるのかしら?」
オーウェンを含む部下三人は、この人は紛れもなくエルザの母親だと思った。
「伝えるタイミングは何度もあっただろう! ……それがわかってりゃあんな態度は取らなかったってのに……常々思っとるが、お前はちょっとばかしのんびりし過ぎとるぞ!」
「まぁ……申し訳ございません。わたしがしたことであなたに迷惑をお掛けしてしまったのですね……」
「あ、いや……そこまで謝らなくともいい。数日で気付けたなら僥倖というものだ。お前のこれは、いつものことだからな……」
神妙に頭を下げる母親にお説教の二の句が告げられない父親のこれは、確実に惚れた弱みと見た。
オーウェンはこの時、もしやこれは、自分の将来の姿なのではと少々不安になっていた。
住居となっている二階からゆったりと降りてくる音がした。降りてきたのは老人だった。騒ぐ一団を見て上がった口角が長い髭で隠れる。
その懐かしい笑顔に、オーウェンは喜色を浮かべた。
「なんだか賑やかな声がすると思ったらエルザが来ていたのかい。久しぶりだねぇ」
「おじいちゃん! お久しぶりです。お元気でいらっしゃいました?」
エルザが年長者に丁寧に話しかけると、相変わらず老人はむっつりと拗ねた顔になった。
「お前さんときたら、またそんな他人行儀な……もう私はスペードの5でもなんでもないただのおじいちゃんだよ。おお、そうだった。私の方こそ、スペードの10に対してこのような失礼な態度ではいかんですなぁ。この無礼は如何様にもお詫び申し上げます故、何卒処罰はこの老骨だけでご容赦賜りたく──」
「……もう! わかったから止めてよ! おじいちゃんに敬語で話されたらなんだかむず痒くなるわ」
「ほほ。そうだろうとも。私も同じだよ。──おや。今日はルウ坊達は一緒じゃないんだねぇ」
老人の目がオーウェンへと向けられて、オーウェンは心からの喜びを表してかつての恩師へと頭を下げた。
「ご無沙汰しております。ジュノ様。ひと月だけでございましたが、お側で学ばせていただきました、オーウェンです。私のことを覚えておいででしょうか」
ほんの少し不安に思いながら尋ねたオーウェンに老人はコテンと首を横に傾げた。
「んん? 誰だったかなぁ?」
やはり覚えていただけていなかった。
ミアの名前だけでは思い出さなかったが、この老人はエルザの友人であるミアの祖父で、前任のスペードの5のジュノだ。
たかがひと月なのだから仕方ないが、スペードの5の補佐として学んだあの日々を思うと、オーウェンはかなり寂しい気持ちになる。
しかし目の前の老人はクスクスと可笑しそうに肩を揺らし、エルザが呆れて注意した。
「おじいちゃん。オーウェンをしょんぼりさせないでちょうだい」
目を瞬くオーウェンに、老人は声を上げて笑った。
「ほほ。ごめんごめん。覚えとるよ、オーウェン殿。あなたのように優秀な補佐官を忘れるほど、私はまだ耄碌しとらんよ」
「……人が悪いですよ、ジュノ様。忘れられていたと思った私がどれだけ落胆したか」
そういえばこの恩師は少々食えないところがあったことを思い出し、ほんの少し抗議したオーウェンだった。
「ごめんねぇ。それにしても今日はまた二人して何を……ああ、そうだった! ちょうど良い機会だ。ミア! ミア、こっちにおいで!」
はたと手を打ったジュノが孫を呼ぶ。しかしミアは顔の前でバツを作った。
「ぜーったいに行きません。どうせ婿にどうだって言うんでしょ。そんな説教くさい男はお断りよぉ」
「何を贅沢言っとるのか。オーウェン殿は現スペードの5として真面目に働いとる良い人だ。顔を合わせておくくらい──」
来ないならこちらからだとばかりにジュノがオーウェンの背を押して孫の前へと連れて行こうとする。
そういえば孫を紹介させられかけていたのだったと思い出したオーウェンは慌てて断ろうとするも、どのあたりが老骨かと思うほどジュノの力が強い。
そんな孫思いの老人を止めたのはもちろん──。
「──だめっ!! オーウェンは絶対にだめよ!! ミアには、その、オススメかもしれないけどっ、この人は、わ、私の……っ」
顔を真っ赤に染めて、ほとんど恋人に抱きつく勢いでジュノを止めたエルザは必死だった。
「私の、恋人なんだから!! 絶対にミアにはあげないわよ!!」
「いやだから、いらないんだってば……」
ミアは冷静な友人だった。しかし必死なエルザの耳には届いていない。
「大好きなの! 私のなの! ほんとにほんとにオススメなのは誰よりもわかってるんだけど、で、でも私のだから、その……他を当たって欲しいというか……っオーウェンも、私が一番好きよね!? 私の恋人だものね!?」
かつての恩師、その孫、現在の部下、そして恋人の両親を前にしてこの仕打ち。全身の血が集まったのではと思うほど顔が熱くなったが、オーウェンは耐えた。
「そ、うですね……あ、あなたの恋人です。あなたを愛していますから、その……ほ、他の方にあげられるものでは、ありませんし………………ああもう勘弁してくれ……っ」
耐え切れなかったオーウェンの耳に「どうやら娘はかなり迷惑をかけとるらしいな……」という呟きが聞こえてきたが、心から否定はし切れないと思った。
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