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9.理由
しおりを挟む「わ、たしの、協力……?」
泣きながら答えるアメジストに、ジャニスティは淡々と話し始める。もう迷っている時間はないと焦る気持ちを、彼女に悟られぬよう感情と表情を抑えながら。
「はい、これより私の全魔力を投じて回復させていきますが、小さな傷よりも最優先で、その失われた羽の復元を試みます」
「え……」
優しくも険しいジャニスティの表情と言葉に、アメジストは戸惑う気持ちを隠しきれなかった。
「お嬢様もご承知のとおり、この街や隣街周辺でも、治癒魔法、回復魔法を使える者は私と他、数えるほどしかおりません」
◆
ある日、ベルメルシア家当主であるアメジストの父が、ジャニスティを連れて帰ってきた。聞けば家柄が良いわけでもない。ではなぜ街でも有名なベルメルシア家の、しかも御嬢様付きという重要な職を任され雇われているのか?
それは特別な魔法が使えるから、というものだった。しかしただ単に使えるだけで、ここまで良い待遇はされない。
そう……理由は別にあったのだ。
ジャニスティはこの辺りでは珍しいとされる『治癒回復』を完璧にこなす魔法の使い手だったのだ。その力欲しさにアメジストの父は彼と交渉し契約。いざという時に自分たちの命を守り危険を回避できるよう、屋敷に住まわせているのだった。
この街には魔法を使えるものが少なく、特に重宝され羨ましがられた。その内に、ジャニスティのような魔力の持ち主がいる事は、ベルメルシア家当主にとって別の理由で手放す事のできない“存在”となっていった。
――お父様にとってのジャニスは、“利益”なの。
それはアメジストも承知している、ジャニスティの置かれる立場であり、それが現実であった。
◆
(全魔力ですって?! そんな事をしたら)
「えぇジャニス、魔法を使える者が少ないと……それは分かっている、知っているわ。その意味は分かったのよ。でも――」
言いにくい事で、アメジストは少しだけ口籠った。その間もジャニスティは待たずに話し続ける。
「えぇ、助けられる可能性は五分五分。もし成功したとしても、運悪く失敗に終わったとしても。――どちらにせよ明日一日、私は心身ともに動く事が出来ないでしょう。ですので」
「違うのよ! 全魔力って?! そんな事をしたら、あなたの命が」
その言葉を聞いて彼は少し嬉しそうにフッと笑う。そして一言「ご心配には及びません」と真剣な眼差しと力強い声で答え、その為の準備を急ぐようアメジストに指示をした。
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