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27.懸念

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 その笑顔に不思議そうな顔で少し首をかしげる彼は、どうしたのか? と聞いた。するとアメジストの淡い桃色の頬はさらに濃く染まり、笑顔で理由を話し始めた。

「うふふ。ねぇ、ジャニス。私、この子にお名前をプレゼントしたいの!」
「名前……ですか?」
 一瞬で顔色を曇らせるジャニスティ。

 嬉しそうに話す声に明るく答えたかったが、それは思いもよらない提案だったからである。アメジストの言葉を聞いたジャニスティは難しい表情に変わり、しばらく考え込んでしまった。

(ジャニス、困っているみたい?)
 良い考えを思いついたと自信あり気に話したアメジストであったが今、目の前で彼が見せる眉をひそめた面持ちで、彼女の心には不安が生まれる。

 出来ればアメジストの願いは、極力叶えてあげたいといつも考えているジャニスティ。だが、この件に関しては様々な危険や予想される結果が、彼の頭を悩ませていたのである。

 その一つがレヴシャルメという特殊な種族であるがゆえの、不安要素。

 この子がいつの日かレヴ族の元へ帰る時が来る可能性を考え、レヴのおきてを破ったと言われとがめられるのは自分たちではなく、この子ではないのかと懸念したのだ。

(しかし、確かにお嬢様の言う通り。この世界で生きていくには、名も言葉も必要だ)

 たとえ少しの間だとしても、此処で一緒に暮らしていくのに話せないのは困難を極める。その上、名前がないとなればベルメルシア家の者たちに、不信感を抱かれるのは間違いない。

――そう特に、奥様には、な。

「ジャニス……どうかしら?」

 人族とはまた違う思想と考え。助けたとはいえ人が他種族(レヴシャルメ)の掟を破るような行動を勝手に取るのは、当然良くない事と理解はしていた。

 しかしアメジストの中でその子の存在は大きく、これからずっと一緒にいるのだと感じていたのだ。根拠のない自分の直感を信じる彼女の表情は、強い決意に満ちている。

「承知しました。今後を思うとリスクは多くありますが。このまま何もしない、というわけにもいきませんので」

 ジャニスティは少しだけ眉を下げ、アメジストの提案に賛同した。

「良かった! 私……この子と一緒にいる為に、頑張る!」
「はい、お嬢様」
(私は、貴女あなたの為……仰せのままに)

 それから二人の視線はレヴシャルメの子に向けられる。

「ねぇ、大切なお話があるの。聞いて下さる?」

「なになに?」と言わんばかりに、その子は大きなくりっとした目できょろきょろと二人の顔を見上げていた。
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