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32.家族

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「クォーツとお嬢様に直接的な繋がりはありませんが、私を通して――」
「ジャニスを?」
「はい。私の中には今、貴女が……アメジスト様が生きているのですから」

――ジャニスの中に、私が?
「……アッ」

 その時ふと、アメジストの目に浮かんだシーン。それは彼を助けるために自分の指を傷付け血を与えた時の事が、まるで映像のように蘇ってきたのである。

――痛い思いをした、記憶なのに。

 普通であれば思い出したくはないだろう。しかし今の彼女は役に立てた事への気持ちと彼への強い想い。そして心に溢れてくるほんわかとした喜びが勝っていたのだ。

「私の血がジャニスの――あなたの身体で、生きているのね」

 ジャニスティはフッと一瞬笑うと「はい、お嬢様に助けていただいた命です」と、深い声で呟いた。

 その言葉に嬉しくなり舞い上がるアメジスト。その浮かれた気分のままベッドから立ち上がると、紅潮した自分の頬に両手を当て満面の笑みだ。

(ジャニスの役に、私が立てたのね!!)

 子供のようにわぁ~いと喜びの気持ちを全身で表現していた。その姿にクォーツも一緒になり喜び、楽しそうに羽を広げながら飛び跳ねている。

「じゃあ……私たち三人、身体の中から繋がっているんだわ」
 まるで家族ね、と幸せそうな顔でジャニスティに笑いかけた。

「そのようなお言葉……私などには」

 ぱふっ! ぎゅううう~。

「キャうぅ~……んぱ」
 とにかく顔の表情で様々な事を感じ取る、クォーツ。まだベッドに座ったままのジャニスティに飛びつく。そして冗談を言っているような顔と言葉で彼の笑いを誘おうとしていた。

(クォーツ、ありがとう。そうだな)

 ジャニスティが笑いながら頭を撫でると満足したかのようにクォーツは、彼の背中に回る。

 自己嫌悪に陥りそうになっていたジャニスティ。クォーツのおかげで自分のあるべき姿を思い出し我に返る。そして楽しそうにしているアメジストの後ろ姿にそっと、微笑みかけた。彼女はご機嫌で穏やかな陽の当たる窓際から見える、美しい裏庭を眺めていた。

 そんなアメジストは“家族”という言葉に反応を示したジャニスティの表情や、視線の変化には気付いていない。

「ありがとうございます。お嬢様」
「えっ?」
「いえ、何でもございま……」「あぁ~!」

 ジャニスティが話していた途中、声を出して笑う彼女。桃紫色の大きな瞳は、陽の光でキラキラと宝石のように輝く。そう、それはまるで――本物のアメジストのようだった。

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