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126.直感

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(名残惜しいけれど……)
「クォーツ、良い子にしているのですよ」

「はぁ~い、お姉様!」

 溢れんばかりの笑顔で大きく両手を振るクォーツへ、はにかみながら応えるアメジストはふとジャニスティの顔に目を向けた。数秒見つめ合う二人――それから彼はフッと微笑みお辞儀をすると、口を開く。

「ではお嬢様、後程お迎えに参ります」
 そのホッと信頼できる優しい声は彼女の胸に、響く。

「いつもありがとう、ジャニス」

「ん、はぅあ? わ、わたくしも行きますの!」

 すると兄の挨拶を真似るようにお辞儀をし「お兄様と一緒に!」と興奮気味に頬を紅潮させお迎え宣言をする、可愛い妹。その品格の良さと姿勢からは想像できないような慌てたクォーツの表情に思わず微笑むアメジストは「とても嬉しい」と、気持ちを伝えていた。

 後ろ髪惹かれる思いを振り切るように長めのまばたきを、一回する。
 そして彼女は颯爽と、食事の部屋を後にした。

 ギィ~……ガチャ、ン。

(はぁ、良かった。皆さんにクォーツを紹介出来て……そして、受け入れてもらえて本当に――)

「よかった……うふふっ!」
「あ、えっと? アメジストお嬢様、いかがなさいましたか?」

 皆の明るい笑顔や話し声を思い出すアメジストは安堵の言葉と笑みが零れてしまう。すると不思議そうな声で彼女の顔色を窺うのは支度のため一緒に自室へ向かっていた、お手伝いのラルミだ。

「えっ? うふふ、気にしないで、何でもないの。それより、ラルミ」
「はい、お嬢様」
「今朝のお迎えはなぜ、ラルミだったの?」
「あ、えっ」



 アメジストが不思議に思う理由――。
 部屋の前へ来るお手伝いの早朝挨拶はいつもであれば抑揚なくハキハキと、そして淡々と話す声が訪れる。いついかなる時もその者は毎朝ピタリと同じ時間に扉を叩いては決められたセリフで話し、それが終わるとアメジストに顔を合わせることもなく早々に、部屋の扉前を去っていく。

 慣れてしまった、冷たい時間。

 しかし今朝、お嬢様を起こしに扉の外から聞こえた声はいつもとは違う穏やかさを感じる、声色こわいろだった。

 幼い頃から密かに信頼を寄せていたお手伝いの“ラルミ”だと直感したアメジストは、扉を開けたのである。その目に飛び込んできた相手は予想通り――。
 その姿を確認した彼女は喜びのあまり躊躇ちゅうちょなく部屋へ招き入れ時間の許す限り、歓談した。



 気持ちが落ち着いた今のアメジストもふと、直感を口にする。
 楽しく過ごしたあの時間を笑顔で、思い出しながら。
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