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193.変遷
しおりを挟む時間の流れと共に変化し続ける馬車内の、雰囲気。そんな三人の状況とは関係なく楽しそうに前へ進んでゆく馬はこれからのベルメルシア家を応援しているかのように、軽快な足取りである。
そんな中、オニキスの言葉にエデ、そしてフォルは黙って聞き入っていた。
「……失われたかもしれぬ“力”。『ベルメルシア家の者だけが継承出来る魔力』を何とかして、何としてでも、出来る事で補おうと。決意はあの日から、今日この日これまでずっと――そう、私は、必死だった」
再び深刻な表情になり喪失感に襲われそうになるオニキスにふと、信頼する彼らが言葉をかける。
「えぇ、重々承知しております。旦那様はこれまで、立ち止まることなく進んでこられた。そしてもう十分に、その“力”を補い、達成されております」
「そうです。案ずることはありませんぞ、旦那様。後は、お嬢さ……おっと――――ぃぇゴホンッ、失礼」
フォルの力強い声に同意し何かを言いかけたエデは先程のフォルと似た咳払いをし、口をつぐむ。その様子に気付いたオニキスはフフッと、笑う。
(ありがとう。そうか……そうだな)
それからすぐに顔を上げ肩の荷が下りたように二人へ、答えた。
「祭典は、運営者からの連絡がないのを考えると。急遽、時間変更をした余程の理由があったに違いない。少々、気にはなるが、これから大事な仕入先との打ち合わせだ。まぁ、特段な変更はないだろう、早めに切り上げ向かうとしよう」
「はい、かしこまりました」
オニキスの言葉にスッと仕事の姿勢に戻るフォルはやはりその落ち着いた声と重みのある姿、そして身に備わった威厳でオニキスの心を護るように安心させる。
カッポカ、ポカ……。
ふと。音色のように響いてきた馬の足音に彼の頭にはある思考が、走る。
(茶会は三日後と、言っていたな)
この瞬間、頭の中でオニキスは様々な思索を、巡らせていく。
以前から考えていたとは思えないスピナの発言。
お茶会について「アメジストはもう十六歳、社交の場を経験させなければ」と取って付けたような理由を言った。不在になるオニキスが「許可できない」と言えば「もう招待状は送った」などと荒言を突き付けてきたのだ。
彼女の狙いは一体、何なのか?
(調査をせねば、な)
「エデ、フォル――例の件だが。詳細はまた、今夜にでも話そう。恐らくこれが、最後の正念場だろう。すまないが、また私に力を貸してくれ」
その言葉に「もちろんです」と、二人は頷く。
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