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209.呼出
しおりを挟むアメジストに声をかけた彼女。名はフレミージュ。
綺麗な黒髪は二つに結っても腰まであるほど長く、八重歯の可愛い同級生。
いつも太陽のように明るい彼女は、友人も多い。人族ではなく、学校へ通うため隣街にある故郷からこの街へ――当然だが親元を離れ今は親戚の家でお世話になり、暮らしている。
◇
「あ、そういえばフレミージュさん。私に何かご用があったのでは」
「えっ、あぁ! そうそう、先生が職員室に来てほしいと、アメジストちゃんをお呼びで……それを伝えに来たのでした!」
「先生が、ですか?」
(何だろう、お呼びがかかるなんて。あまりない事だわ)
少しだけ思案顔になり、考え込んでしまう。
名家ベルメルシアの御令嬢――“お嬢様”としていつも毅然とした姿勢を崩さぬよう努めているアメジストだが屋敷を出れば、此処にいる皆と変わらない十六歳の女の子。
内容不明な突然の呼び出しが今は、彼女の心へ普段以上の不安を与える。
「急ぎ……なのかな?」
「えっ?」
ふと、フレミージュは頬をプクっと膨らまし小さく呟いた。
その様子を見たアメジストは「どうしたの?」と声をかけ眺めていると彼女はアメジストの両手をギュッと握り、話し始めた。
「だって! アメジストちゃんのお昼休みが、なくなっちゃう!!」
「えぇぇっ!?」
大変だとフレミージュが声を大きく話していると「なになに~?」とまた数人、同級生たちが集まってくる。理由を聞いた皆は口々に心配の声を上げ「一緒に行こうか?」「ご飯食べられなくなっちゃう!!」など、一気に場は楽しく和やかな雰囲気になった。
思いやる心――アメジストもまた友人から慕われその信頼は、厚い。
「え? うふふ。皆さん、ありがとうございます」
その出来事が力になり「お時間のかからないお話かもしれません」と前向きになる。そして先生も考えてくれているだろうと話す。
「そっかー……うん。じゃあ、アメジストちゃん! 頑張って行って、早く帰って来てね!!」
「えっと?」
どういうことなのだろうかとアメジストが困惑していると皆はニコニコと顔を見合わせ、そして――。
「「「み~んなで一緒に、お昼ご飯食べましょう!!」」」
「まぁ! ふふ……ハイ!」
その明るく優しい友人たちは皆、同じ教室の生徒でありアメジストとは違う種族の者ばかりである。
「では、行ってきます」
「いってらっしゃ~い!」
「頑張ってぇ」
アメジストは頬をピンク色に染め満面の笑みで皆へ手を振り、教室を出た。
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