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216.会話
しおりを挟む「アメジストさん。先程のお話――お茶会のことですが。もう一度、伺ってもいいかしら」
「え? は、はい」
先生の柔らかな表情は変わらずしかし言葉は鋭く、そして真っ直ぐ耳に届く声量。少しだけ気を緩めていたアメジストの背筋は改めてピンっと、伸びる。
「貴女のお母様が亡くなってから、ベルメルシア様のお屋敷で、お茶会などの招宴が行われることは一度もありませんでした。その理由が、スピナさんが家にいる方々以外と関わるのを、拒んでいたからだと聞いています」
淡々と話し始めた先生の顔は真剣に、両手は膝の上でギュッと握られている。
「先生の……仰る通りです。スピナお継母様は、あまり知らない方との会話をなさらない。そして顔を合わせることもなく、それは安全の為だと聞きました」
(安全? スピナさんは、何かに怯えていたのかしら)
ふと考えが過ぎった先生はアメジストの方へ、目を向ける。
「私はお継母様から、どのような理由があっても『絶対に友人を家に連れてきてはいけない』と、固く命じられております」
ベリルの死後――半年も経たずにベルメルシア家はスピナの思うがままに管理されそして自分の事を知る者、もしくはオニキスの仕事関係者以外の者が屋敷内に立ち入るのを異常に嫌い、彼女の許可なく足を踏み入れることを禁じたのである。
「そこまで嫌がっていたはずのスピナさんが、今になって一体何故? 事前のお知らせもなく明明後日お茶会を開こうと決めたのか。それを思うと、私はとても気がかりでねぇ」
その瞬間――顔を上げ先生と目を合わせたアメジストの桃紫色の大きな瞳はキラキラと光る、宝石のようで。二人の間は心地良い静寂に包まれまるで、美しい森の中にいるようであった。
「先生……スピナお継母様は、きっと私が十六歳になったこの時期を思い、考えて下さってのことだと思います。今後恥ずかしい思いをしないように『そろそろ社交の場を経験させる』と、優しいお心遣いでの言葉でしたので」
相手が誰であろうと、どんなに自分が辛い目に遭っていようとも。
それでもアメジストは相手を悪く言う事は、決してない。そんな彼女をますます心配した先生は助言の気持ちを込め言葉少なに、話す。
「アメジストさん、最後に一つ、私からお伝えしたいことがあります」
「えっ……はい、先生?」
しかしそれはアメジストの考えを否定するものではなく、あくまでもある可能性についてその深層心理へ、注意を促すものであった。
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