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224.執拗
しおりを挟む「カオメド様、どうかされましたか」
「……」
「顔色が悪いようですが、お水をお持ちしましょうか」
「……」
彼がテントの奥にある簡易休憩室へ戻ると店番の為に連れてきていた側近の男性が心配し、声をかける。それでも無言のまま一人掛けソファにドサッと座り物思いに、耽っていた。
――――シン……。
微動だにしない、カオメド。
さすがの側近も彼の機嫌が悪状態だと察し黙って自分の任された仕事の準備に、戻る。少し薄暗いそのテント内休憩室でしばしの、沈黙。そしてやっとカオメドがゆっくりと、口を開く。
「此処に、少なくとも。三日後までは滞在することにした」
「――ンはッ!! あの、しかしカオメド様。次の……」
「何だ? お前は私に意見するつもりか」
突然の予定変更に思わず次の仕事先は遠方であることを言いそうになった男性は即、制止される。抑揚のないカオメドの声は誰も聞いたことがないような、重低音。そして鋭く睨みつけるような視線に男性は震え、一瞬テントの隙間から差し込んできた一筋の陽光が彼の右目に当たるとギラリと、光った。
それは悪寒が走るような、眼光。
「ヒィッ!? いいえ、あ……あの、お許しください! 私は貴方様に忠誠を誓う者!! い、意見など滅相も」
「……で?」
「は! 仰せのままに、宿の延長を」
「無駄は嫌いだ、解ったらさっさと行ってこい」
「ハイッ!! しっ、失礼します――」
深々とお辞儀をした側近の男性は言われた通りに大急ぎでテントを出て行く。その様子を足を組み肘をついたカオメドは首を右に三十度程傾け自分の頬を撫でながら「役立たずが」と、据わった目付きで舌打ちをした。
そして暗がりでなぜか? 縮む瞳孔をギロッと動かし見たテーブルの上に置かれていたのは、一通の招待状。
――そうだ、いつだって私は。幸運に恵まれている。
「オニキス、よくもこのカオメド=オグディアを虚仮にしてくれたな。お礼はじっくりと……貴方の大切なモノを頂こうか」
(念には念をだ。明日からのんびり観光がてら聞き込み、調査するとしよう)
「一先ず今日は、商品が売れれば御の字だ。ハッ、大人しく過ごしてやるさ。今日だけは、な」
そう呟きおもむろに立ち上がった彼はその招待状を手に取るとペーパーナイフを使うことなく、ビリビリと封を開ける。中をサラッと読み終え再度、不敵な笑みを浮かべた。
“ベルメルシア家、花咲く茶会へ、ぜひ――”
「~♪」
陽気に鼻歌を歌い始めた彼からは異様な妖気が、漂う。
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