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228.選定
しおりを挟む「やはりこの店には、丁寧な縫製で作られた素晴らしい品物ばかりだ」
「嬉しいお言葉をいただき光栄です」
「うん、この色……品の良い装飾。どれもアメジストが気に入るだろう」
満足気なオニキスの表情はあまり周囲には見せない、微笑み。大切な娘への贈り物が久しぶりだということもあり選ばれた洋服の寸法を見つめふと、アメジストの成長を思う。
「エデさんの、ご助言のおかげでございます」
「しかし、君も一緒に選んでくれたのだろう? 本当にありがとう」
「いえいえ、そんな! オニキス様、本日は本当に、ありがとうございます。お嬢様にもよろしくお伝えください」
「あぁ、娘も喜ぶ。また暇が出来たら、此処へ連れて来るよ」
「それは! 楽しみにしております!!」
自店の品物を褒められさらに懸命に選んだ服飾も喜んでもらえたことに心から、安堵していた。その嬉しそうに話す店主の笑顔に軽く頷き応えたオニキスはフォルに目で、合図をする。
「では店主、そろそろ」
「あぁ! 申し訳ありません、つい嬉しくなってしまって。ではこちらへ」
服飾店の店主とエデ、それぞれの経験と感覚を合わせた最高の選定がされた素敵な洋服や靴は文句のつけようがない程、納得のいく品物だった。その愛娘への贈り物を購入し終えたオニキスはアメジストが身に纏う姿を思い浮かべながら、店を後にした。
◇
祭典の急な時間と場所の変更(カオメドの仕業だったと判明)により午前の仕事を早め街へ出向いていたオニキスはその後、午後からの仕事を終えると予定より早い、十四時頃には屋敷へ戻る。
「旦那様、お茶をお持ちしましょう」
「あぁ、頼む」
(十四時か。十分時間に余裕ができた。書類確認も難なく終わりそうだ)
キィー……ガチャ。
フォルがお茶準備のため書斎を出て行くとオニキスは一人になりふと、一言。
「これなら、今日はアメジストとゆっくり話せそうだ」
朝、食事の部屋を出る直前にこっそりと耳打ちした、愛娘との約束。オニキスは彼女が成長するまでは話さないようにしていた事を今日伝えようと、決心していたのだ。
「うむ……誰に対しても慈悲深く、優しい」
――ベリルに似て正義感も強く、素晴らしい娘に育ってくれた。
「黙っていた私の事を、果たして許してくれるだろうか」
腰掛けたアンティーク調の革張椅子に疲労した身体を委ね珍しく不安気な表情で独り言を呟くと、目を瞑った。
◇
ベルメルシア家の専属御者であるエデもまた、分刻みの日々を送っていた。
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