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241.天色
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「綺麗……」
迎えの馬車が着く校門近くまでゆっくりと向かっていたアメジストはふと空を見上げ、思う。
目を細めた彼女の視界に映ったのは職員室へ行く途中に見た空とはまるで違う、別の日かと感じる風景、一点の雲もとどめぬ空だった。
「いつもより、深い……」
(広大な空は澄みきって、どこまでも続いて)
夕方――射す光は、柔らかい。
しかし今日はいつもよりその陽光がなぜか眩しく感じ、空の青は濃いようにも見える。
「寂しい……色」
それは何か自分の心が抱く不安の表れで今、そう見えているだけではないか? と錯覚しその“いつもと違う広い空”という感覚が彼女にそう、呟かせていた。
サァー……ザワザワ……。
彼女の耳に触れ意識が惹かれたのは、木々の葉音。
木々が風に吹かれ枝は音を鳴らしまるで会話するように優しく葉擦れさざめくのをアメジストは瞳を閉じ、聴いた。その音は次第に校庭中の木々が重奏するかのように心身に、流れる。
――その音色に思わず彼女は聴き惚れ、歩みを止めた。
「とても素敵な木々と葉……風の“音楽”のようだわ」
葉音が織り成す、空間。
素晴らしい名もなき曲たちはその場その時、一度きり。それはどんなに心地良くとも二度と聞くことの出来ない今だけの、音色。一瞬の風たちが紡ぐ“音楽”なのだとアメジストは感動していた。
(今日は、感性が研ぎ澄まされているみたい!)
「うふふ、何だか心が癒されました。風と木々の音楽隊さん♪ 素敵な葉の音色を、ありがとうございます」
大自然に感謝の言葉を言っていた自分の口をハッと抑え「いけないわ。こんな姿を誰かに見られたりしたら、可笑しいって笑われちゃうかも……」とアメジストは急に恥ずかしくなり周囲を、見渡す。
「誰も……いないみたい? 良かった」
不思議と風や木々、葉の音を感じ自分も一緒に“会話をしている”――彼女はそんな気分になっていたのだ。
「いつも此処を通って、何も変わらないはずなのになぁ」
微笑みながらぽつりと呟きまた、歩き出す。
いつもより校門へ着くのが遅くなってしまったアメジストは「大変! 心配させていたかも」と馬車が見え、慌てる。
(あ……)
視線の先、優しい表情で待つ人物を見てあることに気付く。
「お嬢様、本日もお疲れ様です」
「ごめんなさい。遅くなりました」
(そう、寂し気な)
「問題ありません。さぁ、帰りましょう」
(あの、綺麗な空の色は)
「えぇ、ありがとう」
――ジャニスの美しい髪色、“天色”と一緒。
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