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367.傷跡
しおりを挟む「キレイキレ~イ、するのですのぉ」
「ふふ、そうね。綺麗にしましょ」
きゃっきゃと胸躍らせ喜ぶクォーツを風呂場へ案内したアメジスト。自分で湯浴みの準備が出来るか心配し、声をかける。
「クォーツ……その、お洋服とか、一人でも大丈夫かしら?」
「もちろんですの! 一人で出来ますですわぁ♪」
「んーと、そう? 良い子ね」
上機嫌に答えたクォーツの頭をよしよしと撫で「私もすぐに行くからね」と先に入るよう促す。そして彼女は自分の着替えを取りに一度、脱衣所を出た。それから支度部屋に向かいタオルなどを準備すると足早に、戻る。
すると風呂場と脱衣所の間にある扉にぼんやりと映った、クォーツの姿。奇跡の回復で取り戻した純白の翼が、揺れていた。
それはジャニスティが命を懸けて行った復元魔法による、覚悟の結晶である。
「んぅキュあ♪ ぅに~♫」
そして中から聞こえてきたのはまるで小鳥が鳴くように可愛らしい、歌声。その透き通り響く音色にアメジストはあの夜に瀕死の状態だったクォーツがこうして、元気に今“生きていること”への悦びを感じ思わず嬉し涙と笑顔が一緒になり、こぼれる。
(ジャニス。クォーツを救ってくれて本当にありがとう)
目を瞑り思い浮かべた彼へ深い感謝を心の中で、呟く。
「おねぇ~さま? あったかぁーですのぉ♪」
「え? あっすぐ、準備するわね」
「んっきゃ~っはにゅ!」
楽しそうなクォーツの声に呼ばれ「きっと、お風呂が好きなのね」と言いながら自身も同じ思いだと、笑む。
湯に入ることで身を清め、その身体をじんわりと暖めることは心身へ癒やしをも与える。落ち込んだ日、何かに迷い悩んでしまう日でもなぜか? 不思議と穏やかな思考になれる。
アメジストにとって此処は、そんな場所でもあるのだ。
キィ、カチャ――。
「お姉様だー! にゅはぅ~♪」
「お待たせクォーツ。さぁ、身体を流し……ぁ」
ドックン――。
「……」
「おねぇさまぁ、どうしたですのぉ?」
「ぇ……えぇ、何も。何でもないのよ」
「うにぃなぅ?」
この時アメジストは息が止まる程の衝撃を全身に受けていた。
それはレヴシャルメ種族の生命の証とされる美しきふわふわ純白の羽やジャニスティと同じ天色の長い髪に見惚れたからでは、決してない。
「んーん。さぁ、おいで」
「はぁ~い!」
服を脱いだクォーツの体に残っていたのは痛々しい、傷跡。
見た瞬間、彼女の心にグサリと突き刺さる。それはあの事件によるものだと、解っていたからだ。
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