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446.我儘
しおりを挟むとはいえ。
「いつも支えてくれて……あの。あ、ありがとう、ジャニス」
「ぁ、いえ。これは私の役目ですので」
“ふわ……”
会話をするたび柔らかく心地良いそよ風が二人の間を穏やかに、流れていく。だが先程まで意識せず深く見つめ合っていた自分たちの行動を思い出すとだんだん気恥ずかしさを、覚えた。
「「……」」
アメジストは紅潮し、その顔を隠せず。
ジャニスティは光粒のような煌めきと潤みで美しさを増したその瞳が彼女へ気付かれぬよう視線を、逸らす。
すると――。
“トントン”
「ん、どうした? クォーツ」
「ねぇねぇお兄様。わたしもお姉様に行ってらっしゃーいをしたいですの」
「うーん。しかし」
「さーみーちぃーのぉー」
もちもちの頬をぷぅっと膨らまし珍しく我儘を言い始めた妹クォーツの、感情表現と言動に微かな幸せを感じたジャニスティはフッと笑い、許す。
「分かったよ、クォーツ。さぁ、おいで。ただし、お利口にしているんだぞ」
「わーいはぁい!」
(さっきまで御嬢様へ甘えていた雰囲気から、話し方まで。多少変わった気がするが)
現在のクォーツにとって屋敷から一歩出ればそこは『外の世界』とも言える場所。そのように認識しているためか? 馬車から降りる許可を得るとしっかり兄の言いつけを守りレヴ語を話さぬようにと懸命に約束を守り心掛けようとしているのが、見て取れた。
その素直な姿にジャニスティは「切り替えも上手く、本当に賢い子だ」と呟き感心するように微笑むと、頷く。
そんな兄妹の和やかなやり取りも今は耳に入らない程に緊張したままの、アメジスト。馬車を降りてからずっと黙りこくりその場で、立ち尽くしている。その両手はぎゅっと胸の前で握られ自身の心臓音が聞こえないようにと力を込め、目を瞑っていた。
(平常心、平常心……学校へ行けば、落ち着くはず。だから大丈夫、大丈夫……)
「――?」
(御嬢様、どこか痛むのだろうか)
彼女が動かなくなってしまったことにふと気付いたジャニスティは心配になり声をかけようとするが、しかし。その前に小さな御嬢様がアメジストの元へそ~っと近づき、窺っていた。
「ん~? ……アッ! えっへへへ♪」
――タッタッタ~ぴょん!
“ぺちっ!”
「んひゃっ!?」
「にゅふふー」
「ク、クォーツ!! びっくりしたぁ……」
「わぁ~い!」
アメジストは飛びついてきたクォーツを反射的に抱っこする。おかげで両頬はクォーツの小さく可愛い手のひらに包まれ、驚いていた。
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