王宮に咲くは神の花

ごいち

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最終章 神饌

二人の王子6

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「若く不慣れな王を閨で導くのは、世慣れた妃の役割。そうでしょう、シェイド」

 ラナダーンの言葉に、シェイドは怠い体を起こした。
 体がふらついて思うようにならないが、下から伸びた青年の腕に助けられながら、シェイドは脚を開いて引き締まった腰を跨ぐ。
 尻の間に天を突く怒張が触れた。

 一度吐精したセリムを再び奮い立たせるのは、それほど難しいことではなかった。
 精魂尽き果てそうなほどシェイドを苦しめたのは、馬のそれのような巨大な張型だ。

 優に拳ほどもある責め具が、体内に残されていたディリウスの白濁を纏わせて、今は傍らに置かれている。
 あんなものが入っていたのかと、ゾッとするような代物だ。
 後孔は痺れてジンジンと疼いていた。きっとまだ口を閉じられずに開いたままだ。
 限界を超えて拡張されたまま何度も昇りつめたせいで、足が震えて力が入らない。
 なのにラナダーンは寝台に仰臥した王子の怒張を、馬に騎乗する姿で自ら受け入れよと命じた。

 逆らう余地はない。抵抗する気力を殺ぐように、濡れた凶器が目に入る場所に置かれている。
 寝台横の机には、洗礼の秘薬とそれを塗り込めるための硝子の棒もあった。
 いつかはまたあの秘薬を使われるだろうが、今はセリムの前でこれ以上の醜態を晒さずに済ませたい。

「シェイド……愛しています」

 一度解放を迎えたことで、若い王子にも余裕が生まれたらしい。
 決心がつかぬように膝立ちで止まったシェイドの脚を、労わるように掌が撫でた。

 着やせして見えていたが、剣や馬の鍛錬を怠らぬ若者は、ウェルディの血に恥じぬ見事な肉体を披露した。
 聳え立つ牡の逞しさもすっかり成長した大人のものだ。

 シェイドは唇を噛んで震える脚で腰を浮かせると、まだ疼く入り口に切っ先を宛がい、ゆっくりとしゃがみこんでいった。

「……ん…………ん……」

 十分以上に解された肉壺は少しの抵抗もなく、新たな伴侶を吸い付くように受け入れた。
 腰を下ろしきると張り出した先端が腹の奥まで到達して、甘美な恍惚が下腹に広がっていく。セリムの牡は大きかった。
 じんわりとせり上がってきた快感に、シェイドは熱い吐息を漏らす。




 ――ここを満たされるのが好きだ。
 体の中心に脈打つ肉棒が入っているのを感じながら、シェイドは両眼を閉じた。

 男の欲望は正直なものだ。いくら奮い立たせようとしても、義務感だけでは思い通りにならない
 相手を求める気持ちがなければ、肉の塊は萎えたままだ。

 自分を欲して隆々と姿を変えた昂ぶりに、体奥を満たされるのは心地が良かった。
 この力強さに偽りはない。
 支配され、所有され、繋ぎ留められていると感じる瞬間は、悦びと安心感を与えてくれる。

 ――圧倒的な力で支配されることを望んでいるのは、本当はシェイドの方なのだろう。





「ジハード……」

 抱き寄せられるまま、シェイドは身体を倒して温かい胸に頬を寄せた。心臓の鼓動が聞こえる。

 孤独という言葉も知らなかった自分に与えられた、命の音。
 親も兄弟も既に亡く、子は初めから持たなかったが、ジハードがシェイドに家族を残してくれた。

 もしもこのまま老いもせず、長い時の流れを見守らねばならないのだとしても、この国にはジハードの血を引く子どもたちが居る。
 命を繋いでいく彼らの存在が、これからもシェイドの拠り所になるだろう。

「シェイド」

 背中からもう一つの温もりが覆い被さった。ラナダーンだ。

「私の愛しい人。貴方の上を通り過ぎる大勢の男の一人だとしても、どうか私を忘れないでいて欲しい」

 背後から告げられた言葉は、傲岸不遜なラナダーンが乞うには、ずいぶんささやかな願いだった。





 忘れるものか。
 そう、答えようとしたとき――。

「……ッ!?」

 硬く猛ったものが後孔を押し拡げて入ってきた。
 もうすでにセリムの牡を呑み込んでいる狭い肉壺に、もう一人の怒張が。

 思わず逃れようと起こしかけた体は、セリムの両腕に拘束された。

「セリムッ」

 咎める声にも、下になった王子は胸を喘がせるだけで腕の力を緩めようとはしない。
 そうしている間にも、ラナダーンは体重をかけて後ろから圧し掛かってくる。
 自身の息子の妃と呼んだシェイドの中に、変わらぬ所有権を主張するかのように。

「……ヒィ、ッ……」

 逃げ場はない。体を揺らそうとしてもセリムの腕に捕らえられている。
 残酷な二本目の凶器は、罪人を串刺しにしてやろうとでもいうかのように、じわじわと潜り込んでくる。
 直前まで巨大な張り型で拡げられていた肉環は、拒むこともできずにもう一人の怒張を呑み込まされる。
 ――こうするために、常軌を逸したあんな張型を呑まされたのだ。
 それを知ってシェイドの目に涙が滲んだ。
 ラナダーンは、どこまで自分を貶めるつもりなのか。

「……ラナダーンッ……やめて、ッ……こんな…………ッ!」

 やめてくれと叫んだところで、ラナダーンが容赦しないことはわかっていた。
 そのためにこそ、馬並の張型で入念な準備をさせ、シェイドが受け入れられることを確認済みだ。
 その上、あれを肉環に咥えこんだまま昇天し、悦びの蜜を零すところを見られたのだから。

「お好きなだけ叫んでください。悶え苦しみながら堕ちて果てる瞬間が、貴方は一番美しい」

「――――や、ぁあああ……ひぃあぁああ――ッ」

 弱々しくもがく体を押さえつけ、勢いを失わぬ怒張はますます膨れ上がって肉を穿つ。

 より深く受け入れられるよう、ラナダーンはシェイドの膝を曲げさせ、セリムは腰を突き上げた。
 潤滑剤となっているのは、今なお体内に残るディリウスの白濁だ。

 囚われの獲物に肉の杭を打ち込みながら、ラナダーンは残酷に囁く。

「ディリウスの妃が王子が産めば、三人で貴方を愛してあげましょう。千年経っても色褪せぬ記憶を刻み付けてみせますよ。……貴方がどんなに忘れようとしても、決して忘れられぬように」

 シェイドは口を開け、声にならぬ叫びを上げた。





 身の内いっぱいに男たちの怒張が埋め込まれている。

 我が子のように慈しんだラナダーンと、孫も同然に思ってきたセリム。
 ――そしていつかは、ディリウスがここに加わる。

 彼らが居なくなった後も、その息子が、孫が、王位に就いた男たちが白桂宮を訪れ、シェイドを支配する。

「ジハード……!」

 懐かしい伴侶の名をシェイドは口にした。
 死の国から今すぐ迎えに来てくれと、天高く伸ばした手は男たちに捕らわれて引きずり降ろされる。

「もっと名を呼んでください、シェイド」

「私の名も」

 シェイドを征服する二人の男が口々に言った。
 敏感になった肌に口づけを落とし、吸い跡をつけ、歯型を刻み込む。
 下になったセリムの体が揺れ、二本の杭も動き始めた。

「……あぁッ……やめて、もうやめて――……ッ」

 息もつかせぬほど太いものが、奥深い場所を擦りながら交互に突き上げる。
 四本の手が胸元を嬲り、涙を流す屹立とその下の小振りな玉をも弄んだ。体中のそこかしこに歯型と吸い跡が残り、前と後ろから愛を囁く声がする。

 痺れるような恍惚の波が押し寄せてきた。




「――い、くぅ…………ッ!……いや、いやぁッ……いっちゃぅうう――ッ……あぅううう――ッ……」

 もう何も考えられない。
 生も死も余りにも遠い。
 あるのはただ、体の中を埋め尽くして絶頂へといざなう、この快楽だけだ。

「――貴方は永遠に私たちのものです」

 狂ったように叫び続けるシェイドの耳に、運命を告げる声が囁いた。
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