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第三章 けだものでも、まおうでも
エルロイドの魔法
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『良ろしければ、これを使って下さい』
そう言って、銀の栞を渡された。
こんな高価なものは使えないし、栞を使う必要もないと伝えたが、相手は差し出した栞をグレウスが持つ本の上に置いてしまった。
返そうとしてその栞に触れた途端、意識に霞がかかったようになる。
『――それを、肌身離さず持っていてください。そう……襟のところにでも入れましょうか』
声に操られるように、グレウスは折り返した襟の間に手に持った栞を差し込んでいく。
しなるほど薄い銀製の栞は襟の曲線に従い、グレウスの首筋にぴたりと沿った。
首元の太い血管を通して、何かが全身を巡るような気がしたが、グレウスはすぐにその感覚を忘れた。
『今日の勤務が終了したら、私のところへ戻ってきなさい。その頃には十分な効果が出ているはず』
形のいい唇が弧を描く。
『魔王の呪縛から解放されなさい。そして私の忠実な騎士となり、魔王を斃すのです』
耳を擽るのは、うっとりするほど魅惑的な声だった。
白い肌、肩から流れ落ちる光のような銀の髪。優艶な面で輝く、空色の瞳――。
グレウスの愛する妻によく似た美貌が、清らかで優しい笑みを浮かべていた。
「エル、ロイド、卿…………エルロイド卿です……!」
グレウスは記憶の淵から手繰り寄せた人物の名をオルガに告げた。
栞に見せかけた魔導具をグレウスに与えたのは、聖教会の分室で会ったオルガの異母兄だ。
「……あいつか」
苦々しい声でオルガが言った。
グレウスは汗を浮かべて目の前に立つ伴侶を見る。
オルガの姿が二重にぶれて、別の人物の顔と重なった。黒髪が銀の髪に、切れ長の赤い瞳が澄み切った青に。
重なるように明滅して、印象が混ざり合っていく。
目の前にいるのがオルガなのか、分室にいた聖職者なのか、わからなくなる――。
ぶるり、とグレウスは頭を振った。
皇帝にとまで言われたオルガの異母兄弟だけあって、魔力の強さは並外れているようだ。
常ならば無意識のうちにあらゆる魔法を無効化するグレウスの体が、魔法の効力に押し負かされている。
「オルガ……」
情けない声で、グレウスは伴侶の名を呼んだ。
魔導具の紋様を見たオルガなら、グレウスが今どういう状態か察しがついているはずだ。
チッと一つ舌打ちして、オルガはグレウスの足元に膝をついた。
木の幹に凭れたグレウスの足元は、背の低い植え木が周囲の目を遮っている。
万全の目隠しとは言えないが、オルガが幻惑の魔法をかければ異常に気づく人間はいないはずだ。
「……エルロイドめ……あいつ、本気でグレウスを制御できるつもりでいたのか。身の程知らずが」
苦々しく吐き捨てて、オルガはグレウスのズボンに手を掛けた。
前の留め具を外すと、太い肉棒がブルンと飛び出す。
「く……」
オルガの白磁の肌が恥じらいの色に染まった。
「すみません、オルガ……どうしても、もう……」
「わかっている」
いても立ってもいられなくなって、グレウスは背中を木に凭れさせたまま、震える手でオルガの肩を掴んだ。オルガは目の前の肉棒から目を逸らしながら、忌々しそうに答える。
エルロイドが忍ばせた魔導具は、グレウスに掛けた魅惑の魔法を強化するためのものだった。
おそらくは魔法でグレウスを誘惑し、意のままに操ろうとしたのだろうが、魅惑の魔法は色情を亢進させる効果もある。精力旺盛なグレウスの場合は、効果の大半がそちらの方にいってしまったようだ。
「エルロイドの阿呆め……」
腹立たしそうに異母兄を罵って、オルガはいきり立つ肉棒を手に取る。
冷たい指に支えられて、グレウスの牡はますます勢いを増し、腹につかんばかりに反り返った。
「口でしてやるから、早く済ませろ……」
覚悟を決めたように、オルガが目を閉じた。
薄い唇を開き、濡れた舌で張りつめた先端を巻き取るようにしながら、筋を浮かせた逸物をゆっくりと咥えこむ。
「う、く……っ」
食い縛った歯の間から、グレウスは低い呻きを漏らした。
敏感な雁の部分が、少し温度の低いオルガの口内へと導かれていく。
柔らかくて気持ちがいい。濡れた舌が溝を這い、裏筋を広く包んでくれる。
先端はすぐに上顎に行き当たった。なだらかな上顎の曲線は、まるでグレウスのために誂えられた容れ物のように、ぴったりと亀頭に吸い付いてくる。
「ンッ!?」
「あ……すみませ……んッ……!?」
無意識のうちに腰を突きだしてしまったらしい。オルガが短く呻いて、グレウスの体を押し返してくる。
慌てて謝罪したグレウスは、腹の下で広がる光景を見てしまい、思わず息を呑んだ。
ディルタスにさえ頭を下げることのないオルガが、グレウスの足元に膝をついてしゃがんでいる。
中庭の背の低い植え込みの間だ。
魔法をかけていなければ、通りすがる人間は真昼の不埒な行いにすぐに気が付くだろう。
艶やかな黒髪が黒衣の背を覆い、真上からの木漏れ日を反射して夜の星のように光っていた。オルガは白い顔を仰向けて、大きく開いた口に隆々としたグレウスの逸物を咥えている。
小振りで品のいい唇に、グレウスの怒張は大きすぎるようだ。根元の部分が収まりきらずにたっぷりと露出している。暴力的なほど淫猥な光景だ。
白い顔の口元から生える、筋を浮かべた男の性器。
オルガは顔をしかめて傾けながら、奥まで咥えられないのを補うかのように、裏筋に珊瑚色の舌をちろちろと這わせている。
不慣れな行為に戸惑いと嫌悪を隠しもせず――。
「オルガ……」
ガクガクと震える手で、グレウスはしゃがんだオルガの肩を掴んだ。
あの誇り高いオルガが男の欲望に奉仕している。冷たい地面に膝をつき、誰が通るとも知れない中庭の片隅で。
万が一、通りすがった人間にこれが見えてしまったらどうなることか。オルガが、まるで屋敷に戻るまでさえ待ちきれない、色に狂った淫婦のように思われるのではないか。
「ンンゥッ……!?」
口の中で膨れ上がった肉棒に、白い美貌が苦しそうに歪んだ。
整いすぎているせいで冷淡に見える顔が、恥じらいに赤く染まった。逸物を咥えた自分の顔をグレウスが見ていると知って、怒りと屈辱を垣間見せる。
その顔が、グレウスの欲望を暴走させた。
「ンンッ! ンッ、ン――ッ……」
すみません、と絞り出すような声で謝りながら、グレウスは欲望に負けて腰を入れた。
喉を突かれると苦しいのはわかっている。一方的に快楽を搾取し、オルガをまるで道具かのように貶める行為はすべきでないともわかっている。
だが、止められない。
「……ッ、ン、ンヴッ……ヴッ、ンブゥッ……」
柔らかな舌の付け根に先端を擦りつけ、上顎の奥を突き上げる。
小振りなオルガの口にすべてを収めさせることは無理だとわかっているのに、少しでも奥を目指さずにはいられない。もう少し、あともう少しだけ。
細い眉が苦し気に寄せられ、喉の奥が痙攣するのが伝わった。
息苦しいだけでなく、嘔吐感にも襲われているのだろう。赤い瞳が細められ、涙を浮かべて潤んでいる。
それでもオルガは歯を立てたりはしない。
「すみません、オルガ……許してください……」
細く尖った顎を飲み込めない唾液が滴り始めていた。
申し訳なく思いながらも、口の中の滑りが良くなってさらに気持ちがいい。グレウスは目を閉じ、射精することに集中する。
本当はオルガに触れたかった。
口づけを交わし、体中を愛撫してゆっくりと愛し合いたい。
だが今は余裕がない。
ひとまず一度は吐き出さねば、体中が燃え滾っておかしくなりそうだ。オルガの体を丁寧に扱うための余裕がない。それに、勅命任務の出立時間も迫っている。
長い髪の間から見える小さな耳朶にも触れたかったが、中途半端に昂らせて放置していくほうが残酷だろう。
今はオルガの口を使って、一刻も早く魔法の影響下から逃れるのが先決だ。
「あ……ッ、出るッ……オルガ、出ます、ッ……――ッ、ッ!」
逃げようとする肩を掴んで、グレウスは自分の方へと引き寄せた。
「ッ、ッ……!?」
奥歯を噛み締めて、グレウスは思いきり胴震いした。
熱いものがオルガの口の中に勢いよく迸る。魔法を使われているせいか射精感は強く、その分精液の排出も多いようだ。
あまりの心地よさに、声を抑えることが難しい。
「ぅ、う……ううぅ――……ッ……!」
ドッ、ドッ、ドッ、と大量の精が断続的に出ていく。根こそぎ出て行って、下の袋が空っぽになりそうだ。
ぶる、と腰を震わせて、グレウスは最後の一滴まで絞り出した。
頭の芯を焼く快感に、暫し我を忘れる。
これほどの快楽を与えてくれた相手にひれ伏し、どんな望みでも叶えたい気分になった。たとえそれが国を裏切るような望みでも。
天を見上げて荒々しい息をつき、グレウスは爆発的な恍惚が徐々に薄れていくのを名残惜しく味わった。
「ふ、ぅ……」
全身の血が燃え立つような快楽が過ぎ、心地いい余韻も覚めていく。
早鐘を打つようだった鼓動が落ち着く頃、グレウスはやっと正気に返った。
恐る恐る下を向くと、涙目になったオルガが口に逸物を咥えたまま、上目遣いにグレウスを睨みつけている。
「す、す、すみませんッ」
一瞬で縮こまったものをオルガの口から抜き取って、慌てて上着を探った。
口いっぱいに溜まったものをオルガはどうしていいかわからないようで、涙目のまま口元を手で押さえている。
手拭いの一つでもあればと思ったのに、謁見のために着替えたせいで、隠しには手巾も何も入っていなかった。
「出してください! そこの地面に、早く!」
治まったものを仕舞いこみながら地面を指さすと、自分のローブから手巾を取り出したオルガが、植え込みの影に蹲って口元を押さえた。
申し訳なく思いながら、長い髪が汚れないように束ねて背をさする。
「……おま、え……帰ってきたら、覚えていろ……」
時折噎せ込みつつ、粘りつく体液を手巾で拭い取るオルガが、地の底を這うような声で脅した。
「わかりました! 出来るだけ早く任務を終えて帰ってきます!」
任務を終えて帰宅したら、念入りに礼をしよう。
オルガがしてくれたように口で奉仕もするし、今まで試したことのないアレコレにも挑戦する。
何しろ騎士団は男所帯で、経験豊富な先輩諸氏がさまざまな裏技を教えてくれる。オルガを愛するのにせいいっぱいで試す機会がなかったが、今度こそ新しい世界にも踏み込んでみるべきだろう。
オルガが寛大な気持ちになって、もう許してやると言ってくれるまで、一晩中でも快感に溺れてもらおう。
グレウスは固く心に誓った。
手巾で口元を押さえたオルガは、恨みの籠った目で見上げながら、グレウスに大きな布包みを投げつける。中身はあらかじめ用意してあった旅装一式のようだ。
「さっさと行って、さっさと帰ってこい!」
「わかりました、行ってきます! あの、オルガ……愛してますから!」
それだけ言うと、グレウスは荷物を抱えて脱兎のように走り去った。
そう言って、銀の栞を渡された。
こんな高価なものは使えないし、栞を使う必要もないと伝えたが、相手は差し出した栞をグレウスが持つ本の上に置いてしまった。
返そうとしてその栞に触れた途端、意識に霞がかかったようになる。
『――それを、肌身離さず持っていてください。そう……襟のところにでも入れましょうか』
声に操られるように、グレウスは折り返した襟の間に手に持った栞を差し込んでいく。
しなるほど薄い銀製の栞は襟の曲線に従い、グレウスの首筋にぴたりと沿った。
首元の太い血管を通して、何かが全身を巡るような気がしたが、グレウスはすぐにその感覚を忘れた。
『今日の勤務が終了したら、私のところへ戻ってきなさい。その頃には十分な効果が出ているはず』
形のいい唇が弧を描く。
『魔王の呪縛から解放されなさい。そして私の忠実な騎士となり、魔王を斃すのです』
耳を擽るのは、うっとりするほど魅惑的な声だった。
白い肌、肩から流れ落ちる光のような銀の髪。優艶な面で輝く、空色の瞳――。
グレウスの愛する妻によく似た美貌が、清らかで優しい笑みを浮かべていた。
「エル、ロイド、卿…………エルロイド卿です……!」
グレウスは記憶の淵から手繰り寄せた人物の名をオルガに告げた。
栞に見せかけた魔導具をグレウスに与えたのは、聖教会の分室で会ったオルガの異母兄だ。
「……あいつか」
苦々しい声でオルガが言った。
グレウスは汗を浮かべて目の前に立つ伴侶を見る。
オルガの姿が二重にぶれて、別の人物の顔と重なった。黒髪が銀の髪に、切れ長の赤い瞳が澄み切った青に。
重なるように明滅して、印象が混ざり合っていく。
目の前にいるのがオルガなのか、分室にいた聖職者なのか、わからなくなる――。
ぶるり、とグレウスは頭を振った。
皇帝にとまで言われたオルガの異母兄弟だけあって、魔力の強さは並外れているようだ。
常ならば無意識のうちにあらゆる魔法を無効化するグレウスの体が、魔法の効力に押し負かされている。
「オルガ……」
情けない声で、グレウスは伴侶の名を呼んだ。
魔導具の紋様を見たオルガなら、グレウスが今どういう状態か察しがついているはずだ。
チッと一つ舌打ちして、オルガはグレウスの足元に膝をついた。
木の幹に凭れたグレウスの足元は、背の低い植え木が周囲の目を遮っている。
万全の目隠しとは言えないが、オルガが幻惑の魔法をかければ異常に気づく人間はいないはずだ。
「……エルロイドめ……あいつ、本気でグレウスを制御できるつもりでいたのか。身の程知らずが」
苦々しく吐き捨てて、オルガはグレウスのズボンに手を掛けた。
前の留め具を外すと、太い肉棒がブルンと飛び出す。
「く……」
オルガの白磁の肌が恥じらいの色に染まった。
「すみません、オルガ……どうしても、もう……」
「わかっている」
いても立ってもいられなくなって、グレウスは背中を木に凭れさせたまま、震える手でオルガの肩を掴んだ。オルガは目の前の肉棒から目を逸らしながら、忌々しそうに答える。
エルロイドが忍ばせた魔導具は、グレウスに掛けた魅惑の魔法を強化するためのものだった。
おそらくは魔法でグレウスを誘惑し、意のままに操ろうとしたのだろうが、魅惑の魔法は色情を亢進させる効果もある。精力旺盛なグレウスの場合は、効果の大半がそちらの方にいってしまったようだ。
「エルロイドの阿呆め……」
腹立たしそうに異母兄を罵って、オルガはいきり立つ肉棒を手に取る。
冷たい指に支えられて、グレウスの牡はますます勢いを増し、腹につかんばかりに反り返った。
「口でしてやるから、早く済ませろ……」
覚悟を決めたように、オルガが目を閉じた。
薄い唇を開き、濡れた舌で張りつめた先端を巻き取るようにしながら、筋を浮かせた逸物をゆっくりと咥えこむ。
「う、く……っ」
食い縛った歯の間から、グレウスは低い呻きを漏らした。
敏感な雁の部分が、少し温度の低いオルガの口内へと導かれていく。
柔らかくて気持ちがいい。濡れた舌が溝を這い、裏筋を広く包んでくれる。
先端はすぐに上顎に行き当たった。なだらかな上顎の曲線は、まるでグレウスのために誂えられた容れ物のように、ぴったりと亀頭に吸い付いてくる。
「ンッ!?」
「あ……すみませ……んッ……!?」
無意識のうちに腰を突きだしてしまったらしい。オルガが短く呻いて、グレウスの体を押し返してくる。
慌てて謝罪したグレウスは、腹の下で広がる光景を見てしまい、思わず息を呑んだ。
ディルタスにさえ頭を下げることのないオルガが、グレウスの足元に膝をついてしゃがんでいる。
中庭の背の低い植え込みの間だ。
魔法をかけていなければ、通りすがる人間は真昼の不埒な行いにすぐに気が付くだろう。
艶やかな黒髪が黒衣の背を覆い、真上からの木漏れ日を反射して夜の星のように光っていた。オルガは白い顔を仰向けて、大きく開いた口に隆々としたグレウスの逸物を咥えている。
小振りで品のいい唇に、グレウスの怒張は大きすぎるようだ。根元の部分が収まりきらずにたっぷりと露出している。暴力的なほど淫猥な光景だ。
白い顔の口元から生える、筋を浮かべた男の性器。
オルガは顔をしかめて傾けながら、奥まで咥えられないのを補うかのように、裏筋に珊瑚色の舌をちろちろと這わせている。
不慣れな行為に戸惑いと嫌悪を隠しもせず――。
「オルガ……」
ガクガクと震える手で、グレウスはしゃがんだオルガの肩を掴んだ。
あの誇り高いオルガが男の欲望に奉仕している。冷たい地面に膝をつき、誰が通るとも知れない中庭の片隅で。
万が一、通りすがった人間にこれが見えてしまったらどうなることか。オルガが、まるで屋敷に戻るまでさえ待ちきれない、色に狂った淫婦のように思われるのではないか。
「ンンゥッ……!?」
口の中で膨れ上がった肉棒に、白い美貌が苦しそうに歪んだ。
整いすぎているせいで冷淡に見える顔が、恥じらいに赤く染まった。逸物を咥えた自分の顔をグレウスが見ていると知って、怒りと屈辱を垣間見せる。
その顔が、グレウスの欲望を暴走させた。
「ンンッ! ンッ、ン――ッ……」
すみません、と絞り出すような声で謝りながら、グレウスは欲望に負けて腰を入れた。
喉を突かれると苦しいのはわかっている。一方的に快楽を搾取し、オルガをまるで道具かのように貶める行為はすべきでないともわかっている。
だが、止められない。
「……ッ、ン、ンヴッ……ヴッ、ンブゥッ……」
柔らかな舌の付け根に先端を擦りつけ、上顎の奥を突き上げる。
小振りなオルガの口にすべてを収めさせることは無理だとわかっているのに、少しでも奥を目指さずにはいられない。もう少し、あともう少しだけ。
細い眉が苦し気に寄せられ、喉の奥が痙攣するのが伝わった。
息苦しいだけでなく、嘔吐感にも襲われているのだろう。赤い瞳が細められ、涙を浮かべて潤んでいる。
それでもオルガは歯を立てたりはしない。
「すみません、オルガ……許してください……」
細く尖った顎を飲み込めない唾液が滴り始めていた。
申し訳なく思いながらも、口の中の滑りが良くなってさらに気持ちがいい。グレウスは目を閉じ、射精することに集中する。
本当はオルガに触れたかった。
口づけを交わし、体中を愛撫してゆっくりと愛し合いたい。
だが今は余裕がない。
ひとまず一度は吐き出さねば、体中が燃え滾っておかしくなりそうだ。オルガの体を丁寧に扱うための余裕がない。それに、勅命任務の出立時間も迫っている。
長い髪の間から見える小さな耳朶にも触れたかったが、中途半端に昂らせて放置していくほうが残酷だろう。
今はオルガの口を使って、一刻も早く魔法の影響下から逃れるのが先決だ。
「あ……ッ、出るッ……オルガ、出ます、ッ……――ッ、ッ!」
逃げようとする肩を掴んで、グレウスは自分の方へと引き寄せた。
「ッ、ッ……!?」
奥歯を噛み締めて、グレウスは思いきり胴震いした。
熱いものがオルガの口の中に勢いよく迸る。魔法を使われているせいか射精感は強く、その分精液の排出も多いようだ。
あまりの心地よさに、声を抑えることが難しい。
「ぅ、う……ううぅ――……ッ……!」
ドッ、ドッ、ドッ、と大量の精が断続的に出ていく。根こそぎ出て行って、下の袋が空っぽになりそうだ。
ぶる、と腰を震わせて、グレウスは最後の一滴まで絞り出した。
頭の芯を焼く快感に、暫し我を忘れる。
これほどの快楽を与えてくれた相手にひれ伏し、どんな望みでも叶えたい気分になった。たとえそれが国を裏切るような望みでも。
天を見上げて荒々しい息をつき、グレウスは爆発的な恍惚が徐々に薄れていくのを名残惜しく味わった。
「ふ、ぅ……」
全身の血が燃え立つような快楽が過ぎ、心地いい余韻も覚めていく。
早鐘を打つようだった鼓動が落ち着く頃、グレウスはやっと正気に返った。
恐る恐る下を向くと、涙目になったオルガが口に逸物を咥えたまま、上目遣いにグレウスを睨みつけている。
「す、す、すみませんッ」
一瞬で縮こまったものをオルガの口から抜き取って、慌てて上着を探った。
口いっぱいに溜まったものをオルガはどうしていいかわからないようで、涙目のまま口元を手で押さえている。
手拭いの一つでもあればと思ったのに、謁見のために着替えたせいで、隠しには手巾も何も入っていなかった。
「出してください! そこの地面に、早く!」
治まったものを仕舞いこみながら地面を指さすと、自分のローブから手巾を取り出したオルガが、植え込みの影に蹲って口元を押さえた。
申し訳なく思いながら、長い髪が汚れないように束ねて背をさする。
「……おま、え……帰ってきたら、覚えていろ……」
時折噎せ込みつつ、粘りつく体液を手巾で拭い取るオルガが、地の底を這うような声で脅した。
「わかりました! 出来るだけ早く任務を終えて帰ってきます!」
任務を終えて帰宅したら、念入りに礼をしよう。
オルガがしてくれたように口で奉仕もするし、今まで試したことのないアレコレにも挑戦する。
何しろ騎士団は男所帯で、経験豊富な先輩諸氏がさまざまな裏技を教えてくれる。オルガを愛するのにせいいっぱいで試す機会がなかったが、今度こそ新しい世界にも踏み込んでみるべきだろう。
オルガが寛大な気持ちになって、もう許してやると言ってくれるまで、一晩中でも快感に溺れてもらおう。
グレウスは固く心に誓った。
手巾で口元を押さえたオルガは、恨みの籠った目で見上げながら、グレウスに大きな布包みを投げつける。中身はあらかじめ用意してあった旅装一式のようだ。
「さっさと行って、さっさと帰ってこい!」
「わかりました、行ってきます! あの、オルガ……愛してますから!」
それだけ言うと、グレウスは荷物を抱えて脱兎のように走り去った。
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