アイテムボックスを極めた廃ゲーマー、異世界に転生して無双する。

メルメア

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第1章 竜の巣編

旅立ちと炎のヘビ

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「これがティガスの作った竜の巣への地図じゃ」

 ミョン爺が1枚の紙を手渡してくれる。
 現在地としてこの村、そして竜の巣と道中の目印が書き込まれている。

「ニナが誰かに助けてと頼るところなど、ティガスがいなくなってから初めて見た。おぬし、決して死ぬんじゃないぞ」

「絶対に助けるってニナと約束したんだから、必ず果たすよ」

「道中の食料と水を準備する。それを持っていくといい。すまんが、村から一緒に行ってあげられる者はおらん」

「大丈夫だよ。ソロプレイには慣れてる」

「ソロプレイ……?」

「ああ、何でもない。ちょっと故郷の方言が出ちゃった」

 適当にごまかして、再び地図に目を落とす。
 一番時間がかかるのは、竜の血を手に入れることだよね。
 行き帰りの時間は出来る限り短縮しないといけない。
 1日半も寝れば元気は満タンだ。走れるだけ走ろう。

 水と食料が入ったカバンを受け取り、それもアイテムボックスに収納する。
 いよいよ出発。
 村の入口へニナが見送りに来た。

「ミオンさん。竜血茸をお願いします。でも、絶対に死なないでください」

「うん。ニナも辛いと思うけど、信じて待っててね」

「はい」

「気を付けるんじゃぞ」

「うん。それじゃあ行ってきます」

 私は改めて地図を確認すると、海と平行に西側へ走り始めた。
 セブホラにも、他のゲームと同じくステータスがあった。
 攻撃力を示すATAとか、防御力を示すDEFとかだ。
 私の特性上、ATAはほとんど必要ない。だって触ればいいんだから。
 そしてDEFも、無効スキルが増えてからは上げるのをやめた。
 だから私のステータスは、敏捷性を表すAGIと幸運値のLUCが高くなっている。
 その自慢の走力を活かして、私は一心不乱に駆けていくのだった。



 ※ ※ ※ ※



 竜の巣があるのは、普通に歩いたら2日かかる谷の底だという。
 お昼過ぎに出発してぶっ通しで走り、辺りが暗くなり始めた頃に半分の目印へ到着した。
 うん。まあまあ良い調子で来れてるね。
 ゲームのステータスシステムによって強化された身体能力に感謝だ。
 でも竜との戦いを考えると体力温存も必要なため、夜は少しペースを落として進む。

「水ぅ……」

 立ち止まって、アイテムボックスからもらった水を取り出し給水。
 さすがに喉が渇く。
 この水を飲むのをサボってゲームをやったばかりに、私は異世界に転生したわけだな。
 リリアちゃんだったら、「今の方が人の役に立ってるので死んで良かったですね」とか言ってきそうだ。
 あんなに毒舌だとは思わなかったなぁ。
 それにしても死んで良かったって……。

 本人が言ってもいない、ただの“言ってそう”というだけの言葉でリリアちゃんのイメージを下げたところで、私は再び竜の巣を目指す。
 今度は全力疾走ではなく、小走り程度だ。
 どんどん日が落ちて、辺りが暗くなっていく。
 でも私には、セブホラで真っ暗な地下エリアをクリアするともらえる特性『夜目』があるので視界には困らない。

「シャアアア!」

 森の中を進んでいると、木陰からモンスターが飛び出してきた。
 体に斑点模様のあるヘビ型モンスター。
 ゲームでも似たようなモンスターを見たことがある。

「シャアアア!」

 モンスターは大きく口を開けると、こちらに向かって火を噴いた。
 やっぱりサラマンダーか。
 もちろん、【炎無効】を持つ私には何のダメージもない。
 でもゲームのサラマンダーよりだいぶ小さいし、炎もただの炎だね。
 ゲームのサラマンダーは、毒炎の複合攻撃だった。

「シャアアア!」

 再び火を噴こうとしたサラマンダーの頭をむんずと掴み、口を強制的に閉じさせる。

「【収納ストレージ】」

 あっさり排除したところで先に進もうとすると、何かにごつんとぶつかった。
 あれ? さっきはこんなところに木なんてなかった気が……

「ありゃりゃ」

 上を見上げて私は呟いた。
 そこにいたのはさっきよりも数倍大きなサラマンダー。
 ひょっとしたら、さっきのは子供でこっちが成熟したサラマンダーなのかもしれない。というか、絶対にそうだ。

「キシャアアアア!」

 サラマンダーが大きな口をぱっくりと開ける。
 私なんて丸呑みされちゃいそうなくらい巨大だ。
 でもその分、的は大きくなる。
 敵が大きければ大きいほど、触るのが楽になって収納しやすくなるのだ。

「……せっかくだから」

 私はすぐにアイテムボックスへ放り込むのではなく、サラマンダーが攻撃してくるのを待つ。
 その攻撃を収納しておけば、増幅して竜との戦いに使えるかもしれないからだ。

「キシャアアアア!」

 サラマンダーが火を噴いた。
 さっきとは段違いの火力で、色も紫色をしている。
 毒も混ざった複合攻撃みたいだ。

「【収納ストレージ】!」

 私は右手一本で毒の炎を消し去った。
 でもまだ本体は収納しない。
 もう一発食らい攻撃をちょうだいしといて、外した時のスペアにするのだ。

「キシャアアアア!」

「【収納ストレージ】!」

 これ以上ないデジャブ。
 さっきと全く同じ光景が繰り広げられた。
 よし、時間もないしこれくらいにしておくかな。

「攻撃手段をありがとね。【収納ストレージ】!」

「キシャ? キシャアアアア……」

 サラマンダーの腹に手を触れて、本体も収納する。
 さあさあ、まだここは行きの半分だ。
 どんどん進んで行こうっと。
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