アイテムボックスを極めた廃ゲーマー、異世界に転生して無双する。

メルメア

文字の大きさ
8 / 37
第1章 竜の巣編

選手交代

しおりを挟む
 時おり振動を感じながら、私は3つ目の洞窟に飛び込んだ。
 この振動があるうちは、まだ戦いが続いているということになる。
 つまりティガスが生き続けているということだ。

「機功戦士に罠……気を付けないとだね」

 そう言っているそばから、洞窟の壁から突き出した槍が襲ってくる。
 それを身をひねってかわすと、今度は天井から、そして下からも槍が突き出してきた。
 一つ一つに対応していたらきりがないので、ここは思い切って奥へと駆け抜ける。
 すると今度は、暗闇の向こうに二足歩行の何かが出てきた。

「人間……にしては動きがぎこちないな……」

 それに足音がガシャンガシャンいってる。
 これが機功戦士か。
 はっきりと見えたその姿は、人間の胴体に竜の頭がついたいわゆる竜人だった。
 本当に生きているわけではなく、作り物のようだ。
 しかしからくり人形としてはかなり精巧。
 ガルガームという竜、知能も技術もなかなか高いみたいだね。

 機功竜人は、特に何か声を発するわけでもなくいきなり突っ込んできた。
 左右の手に剣を持っている。二刀流だ。

「おっとっと~」

 私は2本の剣を難なくかわした。
 ゲーム内でのステータスが有効なので、体もゲームの通りに動かすことができる。
 本来の楠木美音だったらあっさり斬られてるところだけど、ミオンならかわすという判断に体が追い付いてくる。
 AGIが高くてこの世界でも速く走れたのと一緒だ。

「【収納ストレージ】」

 機功竜人をさくっと収納してしまう。
 全く攻撃力も何もあったもんじゃない。
 我ながら瞬殺がすぎるよね。

 仕掛けられた罠をかいくぐり、たびたび出てくる機功竜人を瞬殺しながら奥へと進む。
 道はやや下り坂気味だ。
 地下王宮っていうくらいだから、きっと豪華な造りになっているはずなんだけど……

「お、あった」

 唐突に行く先を塞ぐ扉が現われた。
 扉の前には機功竜人が立っている。
 どうやらこれが地下王宮の入口、そして門番みたいだ。
 扉には鍵穴がある。
 サラマンダーの炎を使えば破れそうではあるけど、ここで使ってしまうのはもったいない。
 鍵はおそらく門番が持っているだろし、拝借するとしよう。

 私に気付いた機功門番が、ガシャンガシャンとこちらへやってくる。
 その手にあるのは剣ではなく槍。
 リーチは長いけれど、かわそうと思えばかわせる。
 それにそもそも、私の無効スキルには【物理無効】も含まれてるしね。
 どんな攻撃も無効化してしまうんで、運営が「無効無視」みたいな特性を持つスキルを出していたのが懐かしい。
 完全に私対策だったよね、あれ。

 槍を突き出して向かってくる機功門番。
 私は切っ先を拳で受け止めようとする。
 ……しかし

「うわっ!」

 機功門番は口から炎を噴いた。
 私の顔面を高温の炎が直撃する。
 もちろん、【炎無効】のおかげでノーダメージだけど。

「びっくりしたぁ」

 まさかはったりをかましてくるとはね。
 いよいよ機功のレベルが高い。

「【収納ストレージ】!」

 門番の頭を掴んで収納する。
 そうだ。鍵が必要なんだった。

「【解体ディセクション】」

 アイテムボックスの中で、機功門番を細かく解体する。
 中に入っているものを自然と頭の中に浮かべることができるので、私は分解したものから鍵らしきものを見つけ出した。

「【解放リリース】」

 手にした鍵を差し込むと、がちゃっと音がして扉が開いた。
 最初に比べて、だいぶ振動の回数が少なくなってきた。
 あんまり時間がないみたいだ。

「ふぅ……」

 私は1つ息を吐くと、再び走り出した。



 ※ ※ ※ ※



 階段、分かれ道、曲がり角などなど……。
 かなり複雑な造りになっている王宮を、時々聞こえる音だけを頼りに進んでいく。
 奥へ進めば進むほど、機功戦士の精度も上がっていった。
 でも触れるだけで瞬殺できるので、てこずることなく突っ走れる。

「えーっと……」

 私の前に分岐が現われた。
 右へ進む道、左へ進む道、下へ降りる階段の三択。
 どれが正解なんだろ……?

 迷っているところへ、またしても振動が襲う。
 かなり近い。そして振動の元は足元からだった。

「下だ!」

 下へ降りる階段を選び、思い切って飛び込む。
 まるで何かの舞台みたく、派手に階段を転がり落ちた。
 走って降りるよりこっちの方が速い。どうせ無傷なんだから。

 降りた先には扉があり、やはり機功門番が配備されている。
 そしてひときわ大きな音が聞こえてくる。
 間違いない。
 ティガスとガルガームが戦っているのはこの奥だ。

「【収納ストレージ】! 【解体ディセクション】! 【解放リリース】!」

 私は怒涛のコンビ技で鍵を奪い取り、扉を開いた。

「ティガス!」

 名前を呼びながら、私は扉の向こうへと駆け込む。
 そこはきれいに整地された闘技場だった。
 中央には巨大な機功戦士が1体。
 そして、その前に仰向けで寝転がっている満身創痍の男がいる。
 彼がティガスみたいだ。

 そして戦士2人を挟んで私の反対側には、青い体を持つ巨大な竜がいる。
 あれがガルガーム。
 体を丸めて目を閉じているってことは、眠っているみたいだ。
 そうか。彼は、機功戦士にティガスの相手をさせて、自分は寝ているだけなんだ。
 究極に人をバカにした竜だ。

「ああ……? 誰だ……?」

 私の声で目を覚ましたのか、ガルガームがギロリとこちらを睨む。
 そして闘技場の中央に視線をやると、豪快に笑った。

「がっはっは! おいティガス、何だそのざまは。その機功戦士に勝って俺を殺すんじゃなかったのかぁ!?」

 倒れ込んだティガスは何も言わない。
 もう答える余力は残っていないみたいだ。
 私は闘技場に入り、ティガスの横に立った。

「誰……だ……」

 かすれた声でティガスが尋ねる。

「私はミオン。ガルガームをぶっ飛ばしにきた」

「さっき……俺の名を……呼んだな……」

「ニナから、あとはガンとグルとギアからも話は聞いたよ」

「ニナを……知ってるの……か……?」

「いろいろ話したいんだけどさ、時間がないんだよね。フェンリアの毒の暴走が始まってる。この意味、あなたなら分かるでしょ?」

「何……!?」

 ティガスが目を見開いた。
 そして無理やりに傷だらけの体を起こそうとする。
 しかし思うようにいかず、彼は再び地面に倒れ込んだ。
 その目に涙が浮かぶ。

「俺はっ……妻も救えずっ……娘にも寂しい思いをさせてっ……俺はっ……」

「いや、あなたはよく頑張ったと思うよ。こっからは私の番」

「何を……する……つもりだ……?」

「ニナと約束したんだよね、竜をぶっ飛ばして血を手に入れるって」

「無茶だ……」

「ふっふ~ん。ここまで自力で来た私の力をなめないでよ」

 私は仰向けのティガスに右手を差し出した。

「あなたとしては自分でガルガームを倒したかったかもしれないけど……。ごめん、ここは私に任せてもらうよ」

 しばらくの沈黙の後、ティガスは震える手で私の右手を取った。

「数分前に会った相手に……家族を託さなきゃ……いけないとはな……」

「ニナは託してくれた」

「なら……仕方ない……」

「任された。選手交代だよ」

 流れ弾でも食らったら、ティガスはもう生きていられない。
 妻のいる場所に避難してもらうかな。

「【収納ストレージ】」

「ん……? あああ……」

 さーてと。
 準備は整ったね。
 ポキポキと指の関節を鳴らし、戦闘態勢に入る。
 そんな私を、ガルガームは険しい顔で睨みつけた。

「人間の小娘が何をする気だ?」

「あなたを倒して血をいただく」

「俺も随分となめられたもんだなぁ。この数日のうちに、人間が2人も俺の血を狙うとは」

 ガルガームは、尻尾で私の目の前の巨大な機功戦士を指した。

「俺を倒そうというなら、まずは目の前の機功戦士を……」

「【収納ストレージ】!」

 ガルガームが言い終わらないうちに。
 私は一時的に動きが止まっていた機功戦士の腹部に触れ、アイテムボックスへと放り込んだ。

「何っ!?」

 驚いたガルガームが目を見開く。
 そんな悪竜に向けて、私は立ち塞がる壁のなくなった闘技場を走り始めた。

「ガルガーム! 覚悟しろ!!!!!!」

 思いっきり地面を蹴って飛び上がる。
 私は最強の右手を、特等席に寝そべるガルガームへと伸ばした。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません! 神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...