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第2章 金の成る魚編
800,000Gの男
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ぽかぽかとした日差しを浴びながら、気持ちよく寝ていると、急に馬車が止まった。
その衝撃で目が覚める。
「ん……どうしたの~?」
体を起こしてみると、馬車が武装した男たちに囲まれていた。
危険ですので次の宿場町まで護衛……って雰囲気じゃないね。
どうやら賊のようだ。
「囲まれたか……」
ネロが顔をしかめる。
やや遅れて目を覚ましたニナも、賊を見てびくりと肩を震わせた。
「俺は山賊ランガル。懸賞金800,000G。札付きの賊なんだぜ」
800,000Gか。
懸賞金として高いのか低いのかは分からないけど、それなりに名の知れた山賊ではあるみたいだ。
ランガルは腕を組んで立ち、ネロを見ながら言う。
「ここらの道を護衛もなしに通ろうなんてのは、襲ってくれって言ってるようなもんだぜ。さあ、持ち金と積み荷を全部置いて行ってもらおうか」
「護衛ならいるんだけどな」
そう言うと、私は荷台から軽い身のこなしで飛び降りた。
そしてランガルの前に立って笑う。
「お前が護衛だと?」
「そうだよ。何か文句ある?」
「女が1人か」
「おやおや、女だからってなめちゃいけないと思うけどな」
「ふむ。確かにそうだ。女だろうと男だろうと、強い奴は強い。だがな、強い奴にはオーラってもんがある。お前にはそれがねえ」
能ある鷹は爪を隠すんだけどなぁ。
それに……
「それを言ったらあなたにもオーラはないよ」
「ああ?」
ランガルの目が鋭くなった。
組んでいた腕を解き、右の拳を振り上げる。
「大人しく金と荷物を置いていくなら命は見逃してやろうと思ったんだがな」
ランガルの拳が勢いよく私の頭へ迫ってくる。
私は避けるどころか一歩も動くことなく、その拳を見つめていた。
「【頭砕拳】」
本気の拳が私の頭を直撃した。
なるほどね。
確かに普通だったら頭が砕けてもおかしくないレベルの攻撃だ。
でも……
「な、何だ!?」
「全くダメージを受けてないぞ!?」
「ボスの拳を頭で受け止めたってのか……?」
馬車を囲んでいた取り巻きたちが、一斉に驚きの声を上げる。
目の前のランガルも目を見開いた。
「ね? 強くない」
拳の強さ、重さは上々。破壊力はある。
でも遅い。
この至近距離でも、ゲームで必須のPSである見切りを身に着けている私なら避けられる。
「これで終わると思うなよ」
ランガルは再び拳を振り上げた。
「【火炎拳】」
今度は炎をまとった拳。
しかしこれもまた、私の頭を粉砕するどころか焦げ傷を作ることもできない。
「何で効かねえ……」
「強いから」
私は笑って答えると、振りきれなかった拳を掴んだ。
いまだに炎をまとっているけど気にしない。
「あなたを突き出したら800,000Gもらえるんでしょ?」
「だとしたらどうした?」
「【収納】」
「何だと?……おわぁぁぁ……」
「ボスぅ!」
「ボース!!」
「何しやがった今ぁ!」
ランガルをアイテムボックスに収納する。
よし。800,000Gゲットだぜ。
「それで」
私は後ろで馬車を囲んでいる手下どもを振り返った。
「次は誰がやるの?」
数秒の沈黙。
そして、手下たちは一斉に逃げ出していった。
めんどくさいし、何か取られたわけでもないから追わなくてもいいか。
王都への行程に影響が出てもいけないからね。
「よっこらしょ」
私が荷台に戻ると、ニナが笑って言った。
「さすがです。ミオンさん」
ネロも助手席からグーサインを出している。
まあ護衛も兼ねて連れて行ってもらってるんだから、これくらいの仕事はしないとね。
「懸賞金がかかってるのって、捕まえたらどうすればいいの?」
「今日、泊る予定の宿場町で引き渡せばいい。お金ももらえるはずだ」
「わーい。そしたら夜ご飯がちょっと豪華になるかもね」
私はアイテムボックスの中を思い浮かべた。
きちんとランガルが収納されている。
さあ、次の街までまた寝るかなぁ。
その衝撃で目が覚める。
「ん……どうしたの~?」
体を起こしてみると、馬車が武装した男たちに囲まれていた。
危険ですので次の宿場町まで護衛……って雰囲気じゃないね。
どうやら賊のようだ。
「囲まれたか……」
ネロが顔をしかめる。
やや遅れて目を覚ましたニナも、賊を見てびくりと肩を震わせた。
「俺は山賊ランガル。懸賞金800,000G。札付きの賊なんだぜ」
800,000Gか。
懸賞金として高いのか低いのかは分からないけど、それなりに名の知れた山賊ではあるみたいだ。
ランガルは腕を組んで立ち、ネロを見ながら言う。
「ここらの道を護衛もなしに通ろうなんてのは、襲ってくれって言ってるようなもんだぜ。さあ、持ち金と積み荷を全部置いて行ってもらおうか」
「護衛ならいるんだけどな」
そう言うと、私は荷台から軽い身のこなしで飛び降りた。
そしてランガルの前に立って笑う。
「お前が護衛だと?」
「そうだよ。何か文句ある?」
「女が1人か」
「おやおや、女だからってなめちゃいけないと思うけどな」
「ふむ。確かにそうだ。女だろうと男だろうと、強い奴は強い。だがな、強い奴にはオーラってもんがある。お前にはそれがねえ」
能ある鷹は爪を隠すんだけどなぁ。
それに……
「それを言ったらあなたにもオーラはないよ」
「ああ?」
ランガルの目が鋭くなった。
組んでいた腕を解き、右の拳を振り上げる。
「大人しく金と荷物を置いていくなら命は見逃してやろうと思ったんだがな」
ランガルの拳が勢いよく私の頭へ迫ってくる。
私は避けるどころか一歩も動くことなく、その拳を見つめていた。
「【頭砕拳】」
本気の拳が私の頭を直撃した。
なるほどね。
確かに普通だったら頭が砕けてもおかしくないレベルの攻撃だ。
でも……
「な、何だ!?」
「全くダメージを受けてないぞ!?」
「ボスの拳を頭で受け止めたってのか……?」
馬車を囲んでいた取り巻きたちが、一斉に驚きの声を上げる。
目の前のランガルも目を見開いた。
「ね? 強くない」
拳の強さ、重さは上々。破壊力はある。
でも遅い。
この至近距離でも、ゲームで必須のPSである見切りを身に着けている私なら避けられる。
「これで終わると思うなよ」
ランガルは再び拳を振り上げた。
「【火炎拳】」
今度は炎をまとった拳。
しかしこれもまた、私の頭を粉砕するどころか焦げ傷を作ることもできない。
「何で効かねえ……」
「強いから」
私は笑って答えると、振りきれなかった拳を掴んだ。
いまだに炎をまとっているけど気にしない。
「あなたを突き出したら800,000Gもらえるんでしょ?」
「だとしたらどうした?」
「【収納】」
「何だと?……おわぁぁぁ……」
「ボスぅ!」
「ボース!!」
「何しやがった今ぁ!」
ランガルをアイテムボックスに収納する。
よし。800,000Gゲットだぜ。
「それで」
私は後ろで馬車を囲んでいる手下どもを振り返った。
「次は誰がやるの?」
数秒の沈黙。
そして、手下たちは一斉に逃げ出していった。
めんどくさいし、何か取られたわけでもないから追わなくてもいいか。
王都への行程に影響が出てもいけないからね。
「よっこらしょ」
私が荷台に戻ると、ニナが笑って言った。
「さすがです。ミオンさん」
ネロも助手席からグーサインを出している。
まあ護衛も兼ねて連れて行ってもらってるんだから、これくらいの仕事はしないとね。
「懸賞金がかかってるのって、捕まえたらどうすればいいの?」
「今日、泊る予定の宿場町で引き渡せばいい。お金ももらえるはずだ」
「わーい。そしたら夜ご飯がちょっと豪華になるかもね」
私はアイテムボックスの中を思い浮かべた。
きちんとランガルが収納されている。
さあ、次の街までまた寝るかなぁ。
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