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第2章 金の成る魚編
王都の商業ギルド
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鳥人族の襲撃を乗り切った私たちは、宿場町で一晩を過ごし、翌日ついに王都へ到着した。
さすがに国の中心なだけあって、たくさんの人がいる。
ニクメシを食べたハレスも栄えてはいたけど、やっぱり王都の比じゃない。
これだけの人がいる場所。
関心を引くことができれば、刺身商売が大成功する可能性は十分にあるね。
「すごい……! 高いです……!」
そびえ立つ城壁を見上げて、ニナが感嘆の声を上げる。
売り物の魚と一緒に、私たちは商業ギルドへと向かった。
王都にあるギルドは商業ギルド、冒険者ギルド共に本部にあたる。
都の中心に向かって歩いていると、巨大で豪華な建物が見えてきた。
「あれが王宮だ。王様が住んでいるところだな」
ネロが教えてくれる。
遠くからでも分かる壮麗さは、まさに王様にぴったりの雰囲気だ。
一般庶民の私たちには、とうてい縁のない場所だろう。
商業ギルドに着くと、やはりたくさんの人が来ていた。
私たちと同じように物を売りに来た人、逆に何かを買いに来た人、登録に来た人など、その目的は様々だ。
「こんにちは」
「こんにちは。あ、ネロさんお久しぶりです」
空いたカウンターの受付嬢さんに、ネロが声を掛けた。
どうやら知り合いみたいだ。
「例によって魚を売りに」
「お疲れ様です。ネロさんの村の魚は質がいいと、王都でも評判なんですよ」
「それじゃあもうちょっと高く買ってくれてもいいんじゃないか?」
「ははは……。あ、そちらの方々は?」
話をそらした受付嬢の視線が、ネロの後ろにいる私たちの方へ向けられる。
「私はミオン。新しく村の仲間になったの」
「私はニナです。村生まれの村育ちです」
「私はここで受付嬢をしているピノといいます。よろしくお願いしますね」
自己紹介が住んだところで、ネロが再び口を開く。
「今日は魚を売りに来たのと、あとはミオンも売りたいものがあってきたんだ。そうだよな?」
「うん。魚の取り引きが終わったら、続けて私のもお願いしていい?」
「もちろんです。ではまず、魚の方を終わらせてしまいましょう」
ピノは手早く処理を済ませていく。
これだけの人が訪れる王都の商業ギルドともなれば、正確さはもちろんスピードも必要とされるはずだ。
その手つきはさすがといったところだね。
「それでは次、ミオンさんどうぞ」
あっという間に魚の売買が終わり、私の番になった。
ネロと場所を交代し、例のあれを取り出す。
「売りたいのはこれなんだけど……」
「こ、これはっ!?」
「竜血茸って知ってるでしょ?」
私の言葉に、商業ギルド全体がどよめいた。
みんながこちらを見ている。
ひょっとして私、やっちゃったか?
「ここここんなアイテム、どどどどどどどこで手に入れたんですかっ!? しかも2本!?」
「あー、えっとぉ……」
私の予感が告げている。
ここで龍を倒して手に入れたとか言ったら、めちゃくちゃ面倒くさいことになると。
下手なことは言わない方がいいね。
「拾ったんだよ。たまたま」
「そんな石ころみたいに言わないでくださいよ……。残念ですが、今すぐに代金をお渡しすることはできません」
「え? 何で?」
「竜血茸のような超激レアアイテムは、オークションにかけられます。なので売価は不確定なんです。ですからそれが確定するまでは、お金をお渡しできないんです。オークションで売れた額の10%を手数料としていただき、残りをお渡しする形になります」
手数料が取られるのかぁ……。
仕方ないと言えば仕方ないけど。
「なるほどね。次のオークションはいつ?」
「1週間後の予定です」
「結構先だなぁ」
1週間も王都に居続けるわけにもいかない。
ここは一度村に帰って、竜血茸が売れたらその代金を受け取りにくるのが良さそうだ。
「じゃあお金が入るころにまた来るよ」
「はい。そうしてください。こちらは、商業ギルドが責任をもって管理致します」
「うん。よろしく」
さて、目的は果たしたね。
まだギルド中の視線が私に向けられているけど、気にせず建物を出る。
商売をする相談は、実際に元手になるお金が手に入ってからでいいだろう。
「すごい注目されちゃいましたね」
通りを歩きながら、ニナが苦笑した。
ネロもやれやれと笑っている。
目立とうとしたわけじゃないんだけどね。
ちょっと注意深さが足りなかったか。
でもそれだけ、竜血茸が希少なものだということ。
オークションの結果が楽しみだ。
「さあ! 王都のご飯を楽しんで帰るぞー!」
ランガルの懸賞金がまだまだ残っている。
私が拳を突き上げると、2人も「おー!」と笑った。
さすがに国の中心なだけあって、たくさんの人がいる。
ニクメシを食べたハレスも栄えてはいたけど、やっぱり王都の比じゃない。
これだけの人がいる場所。
関心を引くことができれば、刺身商売が大成功する可能性は十分にあるね。
「すごい……! 高いです……!」
そびえ立つ城壁を見上げて、ニナが感嘆の声を上げる。
売り物の魚と一緒に、私たちは商業ギルドへと向かった。
王都にあるギルドは商業ギルド、冒険者ギルド共に本部にあたる。
都の中心に向かって歩いていると、巨大で豪華な建物が見えてきた。
「あれが王宮だ。王様が住んでいるところだな」
ネロが教えてくれる。
遠くからでも分かる壮麗さは、まさに王様にぴったりの雰囲気だ。
一般庶民の私たちには、とうてい縁のない場所だろう。
商業ギルドに着くと、やはりたくさんの人が来ていた。
私たちと同じように物を売りに来た人、逆に何かを買いに来た人、登録に来た人など、その目的は様々だ。
「こんにちは」
「こんにちは。あ、ネロさんお久しぶりです」
空いたカウンターの受付嬢さんに、ネロが声を掛けた。
どうやら知り合いみたいだ。
「例によって魚を売りに」
「お疲れ様です。ネロさんの村の魚は質がいいと、王都でも評判なんですよ」
「それじゃあもうちょっと高く買ってくれてもいいんじゃないか?」
「ははは……。あ、そちらの方々は?」
話をそらした受付嬢の視線が、ネロの後ろにいる私たちの方へ向けられる。
「私はミオン。新しく村の仲間になったの」
「私はニナです。村生まれの村育ちです」
「私はここで受付嬢をしているピノといいます。よろしくお願いしますね」
自己紹介が住んだところで、ネロが再び口を開く。
「今日は魚を売りに来たのと、あとはミオンも売りたいものがあってきたんだ。そうだよな?」
「うん。魚の取り引きが終わったら、続けて私のもお願いしていい?」
「もちろんです。ではまず、魚の方を終わらせてしまいましょう」
ピノは手早く処理を済ませていく。
これだけの人が訪れる王都の商業ギルドともなれば、正確さはもちろんスピードも必要とされるはずだ。
その手つきはさすがといったところだね。
「それでは次、ミオンさんどうぞ」
あっという間に魚の売買が終わり、私の番になった。
ネロと場所を交代し、例のあれを取り出す。
「売りたいのはこれなんだけど……」
「こ、これはっ!?」
「竜血茸って知ってるでしょ?」
私の言葉に、商業ギルド全体がどよめいた。
みんながこちらを見ている。
ひょっとして私、やっちゃったか?
「ここここんなアイテム、どどどどどどどこで手に入れたんですかっ!? しかも2本!?」
「あー、えっとぉ……」
私の予感が告げている。
ここで龍を倒して手に入れたとか言ったら、めちゃくちゃ面倒くさいことになると。
下手なことは言わない方がいいね。
「拾ったんだよ。たまたま」
「そんな石ころみたいに言わないでくださいよ……。残念ですが、今すぐに代金をお渡しすることはできません」
「え? 何で?」
「竜血茸のような超激レアアイテムは、オークションにかけられます。なので売価は不確定なんです。ですからそれが確定するまでは、お金をお渡しできないんです。オークションで売れた額の10%を手数料としていただき、残りをお渡しする形になります」
手数料が取られるのかぁ……。
仕方ないと言えば仕方ないけど。
「なるほどね。次のオークションはいつ?」
「1週間後の予定です」
「結構先だなぁ」
1週間も王都に居続けるわけにもいかない。
ここは一度村に帰って、竜血茸が売れたらその代金を受け取りにくるのが良さそうだ。
「じゃあお金が入るころにまた来るよ」
「はい。そうしてください。こちらは、商業ギルドが責任をもって管理致します」
「うん。よろしく」
さて、目的は果たしたね。
まだギルド中の視線が私に向けられているけど、気にせず建物を出る。
商売をする相談は、実際に元手になるお金が手に入ってからでいいだろう。
「すごい注目されちゃいましたね」
通りを歩きながら、ニナが苦笑した。
ネロもやれやれと笑っている。
目立とうとしたわけじゃないんだけどね。
ちょっと注意深さが足りなかったか。
でもそれだけ、竜血茸が希少なものだということ。
オークションの結果が楽しみだ。
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