アイテムボックスを極めた廃ゲーマー、異世界に転生して無双する。

メルメア

文字の大きさ
30 / 37
第2章 金の成る魚編

明日からも

しおりを挟む
 2日目。
 オープンを前にして、早くも店の前には行列ができていた。
 朝早くから必死に駆けまわり、村の漁師たちにも無理を言って、何とか昨日の2倍の材料を確保することに成功した。
 実際に昨日は店に来なかった人たちにも、口コミで広まっているようだから、これでも足りるかは分からないんだけどね。

「開店しまーす!」

 お昼ちょうど。
 海鮮料理店「美音」の2日目が始まった。
 すぐに満席になり、続々とオーダーが流れ込んでくる。
 今日は店員の数も増やしているから、昨日よりは幾分かスムーズにまわっている。
 でも調理自体は私とニナの2人がメインなので、ここの忙しさは半端じゃない。

「カルパッチョできました!」

 出来上がった料理をフェンリアに渡すニナ。
 本当に楽しそうに働くなぁ。
 もし2号店をオープンすることがあったら、ニナに店長を任せちゃおうかな。

「ミオンさん」

「どうしたの?」

「楽しいですね!」

「そりゃ良かった」

 え、何? 今の不意打ち。
 急にそんな笑顔を向けられたらお姉さんときめいちゃうよ?
 ……昨日のピノの時しかり、百合キャラと誤認されそうな言動が続いてるな。
 全くそんなことはないんだけど。



 ※ ※ ※ ※



「ふう……」

 2日目の営業が終わり、みんなが村に帰った後。
 私は再び王都に戻って、閉店した店舗でピノとテーブルを囲んでいた。
 テーブルに置かれているのは、昨日と今日の営業成績が書かれた紙だ。
 どちらも予想の2~3倍ほど売り上げている。

「すごいことになりましたね」

「うん。国王パワー偉大なりだよ」

 言ってみれば、大人気インフルエンサーが無名の店を紹介してくれようなものだ。
 ありがたいと言ったらありゃしない。

「こうなってくると……2号店のオープンをありえそうですね。相当な額の利益が出そうですし」

「それはありだと思う。でも先の話かな。人材が確保できないし」

 1つの店で手一杯なのだ。
 とても2号店まで手を広げる余裕は、今はない。
 一番肝心なのは調理スタッフ。
 私とニナで何とか1店舗を回していると考えると、2号店を展開するならさらに2、3人の調理スタッフがほしい。

「そうですね。賢明だと思います。それにしてもこの額……税金もかなりの額になりますね」

「だねぇ……」

 オークションの収入に関しては、税金が課されないというルールになっていた。
 ここは宝くじと一緒だ。
 でも店をやって得た利益に関しては、当然のことながら税金がかかる。
 だから税金のことも計算しながら、しっかり資金繰りをしないといけない。

「プロの目から見て、このペースのまま営業を続けて大丈夫かな?」

「はい、みなさんの身体がもつのであれば大丈夫だと思いますよ。売り上げから費用を差し引いても十分な利益が出ていますし、回転率も良いと思います。今はかなり忙しいですけど、少しすればちょうど良い繁盛具合になるはずですし」

「そっか。ふわぁ……疲れたな」

「でしょうね。寝た方がいいです」

「そうするよ。ピノ、いろいろありがとう。これからもよろしくね」

「何でもお任せください」

 ピノと一緒に店を出て、きっちり鍵を閉める。
 そして私は漁村へ、ピノは王都内の自分の家へと帰っていった。

 ひょんな思い付きから始めた海鮮料理店「美音」。
 まさかまさかの国王来店に始まり、大大大大繁盛だ。
 働くことってこんなに楽しかったんだと実感する。
 リリアちゃんに異世界へ送ってもらって良かった。
 さあさ! 明日からも異世界ライフを全力で楽しむぞー!
 でも今日はもう疲れたので、おやすみなさい。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

処理中です...