31 / 37
第3章 海の主討伐編
海の主
しおりを挟む
海鮮料理店「美音」の開店から1ヶ月。
最初の大騒ぎは少し落ち着き、毎日ちょうどいいくらいのお客さんに恵まれている。
順調に利益が増えているし、みんなも仕事に慣れてきた。
フェンリアも調理場のメンバーに入ってくれたことで、私の仕事量もだいぶ楽になった。
「ふわぁ~おはよう」
「おはようございます」
朝早く起きて外に出ると、ニナが笑顔で挨拶してくれた。
うん。良い目覚めだね。
今日は午前中は村の仕事を手伝って、お昼からはお店で頑張る予定だ。
「そろそろティガスたちが帰ってくるころだね」
「はい。今日も大漁だといいです」
「珍しい魚が獲れてたら『美音』にもらおうね」
「もちろんです!」
冗談を言いながら漁師勢の帰りを待っていると、ネロが村へと駆け込んで来た。
手には魚はおろか、漁の道具も何も持っていない。
相当急いでいたみたいで、ぜえぜえと息を切らしている。
「どうしたのー? トイレ漏れそうなの?」
のんきに私が尋ねると、ネロは青い顔をして言った。
「それどころじゃない! 村長、一大事です!」
「何じゃ?」
「主が……」
ネロの一言に、ミョン爺の顔もまた青くなる。
どうやら、トイレがどうとかふざけている場合じゃなさそうだ。
本当に一大事が起きたらしい。
「漁に出たみんなはどうなったんじゃ!?」
「全力で逃げ帰ったのでみんな無事です。俺が急いで帰って報告することになったので」
「そうか。無事なら良かったわい。いや、状況は良くもないんじゃが」
「主って何なの?」
どうやらニナも“主”について知っているようで、深刻そうな顔をしている。
1人だけ置いてけぼりの私が尋ねると、ミョン爺は1つ頷いてから言った。
「主というのはこの近海の主。といっても、かなり行動範囲が広くてな。ある時はこの村の近くに居座り、ある時はまた別の漁村の近くに居座り、またある時は沖合の方に住んでいる。最後にこの村の近くに来たのは、10年くらい前じゃな」
10年前なら、ニナに直接的な記憶はないはずだ。
それでもあの表情ということは、よっぽど危険な奴で、しっかりと村中に話が伝わっているということだろう。
「そいつが居座るとどうなるの?」
「大変に狂暴なんじゃ。水中の魚はもちろん、船など近くを通るものは全て襲う気性の荒さでな。主が近くに来てしまったら、とても漁などできん。気分が変わって他のところに移動するのを待つしかないんじゃよ」
「そんな! 漁ができなかったら村の収入はなくなるし、『美音』も営業できなくなっちゃうよ!?」
「そうなんじゃ。そうなんじゃが、どうにもできんのじゃよ。何せ主の身体は固く、ほとんど攻撃を通さない。それに海の中にいるもんじゃから、そもそも攻撃がなかなかできん。無理に近づいて水中戦に持ち込まれたら、勝ち目はないんじゃからな」
「居座るのって、だいたいどれくらいの期間なの?」
「前回は確か……1年半ほどじゃったな?」
「そうですね」
ミョン爺に確認されてネロが頷く。
正直言って、冗談じゃない。
せっかく『美音』が上手くいっているのに、1年半も主が去るのを待ってなんていられない。
そもそも1年半でいなくなる保証はないのだ。
「主には海洋生物として異例の懸賞金がかけられておる。その額は4,000万Gじゃ」
「4,000万!?」
ランガルの50倍の額だ。
竜血茸の売却価格に迫る高さ。
それだけ討伐が難しく、挑戦はされてきたものの成功しなかったということだろう。
「一体、主ってどんな奴なの?」
「実際に見てみるのが早いじゃろう。主が近くに現れたということは、丘の上から目視できるはずじゃ」
私とニナはミョン爺に連れられて、帰ってきた漁師たちと入れ違いに村を出る。
みんな青ざめた顔をしていた。
あのティガスですらだ。
よっぽどの怪物らしい。
「ぬう……。やはり現れておる」
最初に丘の先端へ立ったミョン爺が、忌々し気に言葉を漏らした。
続いて私とニナも、その横に立って海を見下ろす。
「あれが懸賞金4,000万Gの主。“巨大海亀”アーケロンじゃ」
「アーケロン……」
私は海に鎮座する巨体に息を呑む。
ガルガームよりもはるかに大きなウミガメだ。
アーケロンってそんな名前の古代の生き物が元の世界にもいたけど、それが爪垢に見えるくらい大きい。
「……ぶっ飛ばすよ」
「何じゃと?」
「あれをぶっ飛ばして、1日も早く漁と『美音』を再開する」
「たたたた確かに竜を倒したミオンさんですけど! あれも倒せるんですか!?」
慌てふためくミョン爺とニナ。
2人を前に、私は言う。
「やってみなきゃ分からないけど……でも、やってみせるよ」
竜血茸の入手、海鮮料理店の開店。
さあさあ、お次は“巨大海亀”アーケロンの討伐といこうか。
最初の大騒ぎは少し落ち着き、毎日ちょうどいいくらいのお客さんに恵まれている。
順調に利益が増えているし、みんなも仕事に慣れてきた。
フェンリアも調理場のメンバーに入ってくれたことで、私の仕事量もだいぶ楽になった。
「ふわぁ~おはよう」
「おはようございます」
朝早く起きて外に出ると、ニナが笑顔で挨拶してくれた。
うん。良い目覚めだね。
今日は午前中は村の仕事を手伝って、お昼からはお店で頑張る予定だ。
「そろそろティガスたちが帰ってくるころだね」
「はい。今日も大漁だといいです」
「珍しい魚が獲れてたら『美音』にもらおうね」
「もちろんです!」
冗談を言いながら漁師勢の帰りを待っていると、ネロが村へと駆け込んで来た。
手には魚はおろか、漁の道具も何も持っていない。
相当急いでいたみたいで、ぜえぜえと息を切らしている。
「どうしたのー? トイレ漏れそうなの?」
のんきに私が尋ねると、ネロは青い顔をして言った。
「それどころじゃない! 村長、一大事です!」
「何じゃ?」
「主が……」
ネロの一言に、ミョン爺の顔もまた青くなる。
どうやら、トイレがどうとかふざけている場合じゃなさそうだ。
本当に一大事が起きたらしい。
「漁に出たみんなはどうなったんじゃ!?」
「全力で逃げ帰ったのでみんな無事です。俺が急いで帰って報告することになったので」
「そうか。無事なら良かったわい。いや、状況は良くもないんじゃが」
「主って何なの?」
どうやらニナも“主”について知っているようで、深刻そうな顔をしている。
1人だけ置いてけぼりの私が尋ねると、ミョン爺は1つ頷いてから言った。
「主というのはこの近海の主。といっても、かなり行動範囲が広くてな。ある時はこの村の近くに居座り、ある時はまた別の漁村の近くに居座り、またある時は沖合の方に住んでいる。最後にこの村の近くに来たのは、10年くらい前じゃな」
10年前なら、ニナに直接的な記憶はないはずだ。
それでもあの表情ということは、よっぽど危険な奴で、しっかりと村中に話が伝わっているということだろう。
「そいつが居座るとどうなるの?」
「大変に狂暴なんじゃ。水中の魚はもちろん、船など近くを通るものは全て襲う気性の荒さでな。主が近くに来てしまったら、とても漁などできん。気分が変わって他のところに移動するのを待つしかないんじゃよ」
「そんな! 漁ができなかったら村の収入はなくなるし、『美音』も営業できなくなっちゃうよ!?」
「そうなんじゃ。そうなんじゃが、どうにもできんのじゃよ。何せ主の身体は固く、ほとんど攻撃を通さない。それに海の中にいるもんじゃから、そもそも攻撃がなかなかできん。無理に近づいて水中戦に持ち込まれたら、勝ち目はないんじゃからな」
「居座るのって、だいたいどれくらいの期間なの?」
「前回は確か……1年半ほどじゃったな?」
「そうですね」
ミョン爺に確認されてネロが頷く。
正直言って、冗談じゃない。
せっかく『美音』が上手くいっているのに、1年半も主が去るのを待ってなんていられない。
そもそも1年半でいなくなる保証はないのだ。
「主には海洋生物として異例の懸賞金がかけられておる。その額は4,000万Gじゃ」
「4,000万!?」
ランガルの50倍の額だ。
竜血茸の売却価格に迫る高さ。
それだけ討伐が難しく、挑戦はされてきたものの成功しなかったということだろう。
「一体、主ってどんな奴なの?」
「実際に見てみるのが早いじゃろう。主が近くに現れたということは、丘の上から目視できるはずじゃ」
私とニナはミョン爺に連れられて、帰ってきた漁師たちと入れ違いに村を出る。
みんな青ざめた顔をしていた。
あのティガスですらだ。
よっぽどの怪物らしい。
「ぬう……。やはり現れておる」
最初に丘の先端へ立ったミョン爺が、忌々し気に言葉を漏らした。
続いて私とニナも、その横に立って海を見下ろす。
「あれが懸賞金4,000万Gの主。“巨大海亀”アーケロンじゃ」
「アーケロン……」
私は海に鎮座する巨体に息を呑む。
ガルガームよりもはるかに大きなウミガメだ。
アーケロンってそんな名前の古代の生き物が元の世界にもいたけど、それが爪垢に見えるくらい大きい。
「……ぶっ飛ばすよ」
「何じゃと?」
「あれをぶっ飛ばして、1日も早く漁と『美音』を再開する」
「たたたた確かに竜を倒したミオンさんですけど! あれも倒せるんですか!?」
慌てふためくミョン爺とニナ。
2人を前に、私は言う。
「やってみなきゃ分からないけど……でも、やってみせるよ」
竜血茸の入手、海鮮料理店の開店。
さあさあ、お次は“巨大海亀”アーケロンの討伐といこうか。
11
あなたにおすすめの小説
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜
と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます!
3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。
ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです!
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
非常に申し訳ない…
と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか?
色々手違いがあって…
と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ?
代わりにといってはなんだけど…
と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン?
私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。
なんの謝罪だっけ?
そして、最後に言われた言葉
どうか、幸せになって(くれ)
んん?
弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。
※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします
完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる