アイテムボックスを極めた廃ゲーマー、異世界に転生して無双する。

メルメア

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第3章 海の主討伐編

一撃必殺の【収納】

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「【解放リリース】!」

 私は再び雷竜サンダードラグの背中に乗り、空へと飛び上がる。
 例によって高く飛び、アーケロンたちの上空へと移動する。
 ちらりと振り返ると、エルバウたちはただただ私の様子を見つめている。
 プランAではクラーケンに粉砕され、最終手段は一村人にあっさり打ち砕かれた。
 もはや戦意を喪失しているみたいだ。

「【収納ストレージ】」

 そっと雷竜サンダードラグに触れて収納する。
 私は二度目のフリーフォールを始めた。

「しょ、正気か!?」
「さっきから何なんだあいつは……」

 冒険者たちが騒いでいるみたいだけど、正直あんまり聞こえない。
 そりゃそうだよね。高速で落ちてるんだから。

「来たっ!」

 海中から太い腕が伸びてくる。
 クラーケンだ。
 それも左右1本ずつの計2本。
 この間は不意打ちでホームランされちゃったからなぁ。
 でも来ると分かってれば対応ができる。

「ふぅ……」

 私は一発逆転の打席に入るバッター、あるいは最終回ツーアウト満塁の場面でマウンドに立つピッチャーのごとく神経を研ぎ澄ます。
 ……うーん、野球の例えが多いな。

「はっ!」

 両横からクラーケンの腕が襲う。
 私は思いっきり両手をサイドに突き出した。
 早すぎても遅すぎても、タイミングが合わなければ収納できない。
 再びホームランされてしまう。
 クラーケンが突き出した手に触れるその瞬間に、私は声を上げた。

「【収納ストレージ】!」

 ぬちゃっとした感触がしたか、しないか。
 完璧なタイミングで、私はアイテムボックスへクラーケンを放り込んだ。
 パッと腕が消え去り、アーケロンの下の影もいなくなる。
 あとはアーケロンだけ……!

 アーケロンだって何か攻撃をしてくる可能性はある。
 私は警戒しながら、その甲羅を目指して落ち続ける。

「……!」

 アーケロンの良く見ればつぶらでかわいい瞳が、向かってくる私を捉えた。
 クラーケンがいなくなったことにも気づいているみたいだ。
 こうなると、アーケロンは自分で自分の身を守るしかない。
 何かしてくるね。
 そもそもアーケロンは、クラーケンに勝って舎弟にしてたわけだ。
 クラーケンより強い。

「ウウウウウ……」

 低く太い音を喉から響かせながら、アーケロンは前ヒレを海中へ沈める。
 そして次の瞬間、その前ヒレを勢いよく跳ね上げた。
 海水が猛烈な勢いの柱となって、こちらに上昇してくる。

「マジか……」

 さすがは海獣。主と呼ばれるだけのことはある。
 海水の勢いはすさまじく、普通の人が食らったらひとたまりもない。
 エルバウたちだって即死ものだ。
 まあ私は、【水無効】だから死にはしないんだけど。

「はああああ!!」

 私は迫ってくる海水の柱に向けて、両手を構えた。
 ダメージを受けなくたって、食らったら余裕で吹っ飛ばされる。
 また機功竜マシンドラグに乗って飛び直しなんてことはごめんだ。

「【収納ストレージ】!」

 襲いくる大量の水を、収納しながらアーケロンへと突き進む。
 視界は水でいっぱいだ。
 柱は押しつぶされるように短くなり、私とアーケロンの距離も短くなっていく。

「届いた!」

 私は水面に叩き付けられ、次いでアーケロンの前ヒレを掴む。
 あの高さから水に落ちたら、普通は即死だ。
 よく言うじゃん、コンクリの硬さがどうとか。
 本当に無効スキルさまさまだね。

 アーケロンが再び前ヒレを海中へ沈めようとする。
 私を溺れさせるか、あるいは空中に跳ね上げようというのだろう。
 ダメ元で飛び込んだら大波で崖に叩き付けられ、2回目はクラーケンの腕によってこれまた崖に叩き付けられ。
 やっと掴んだアーケロンの体。
 もうこれ以上、弾き飛ばされちゃたまらない。
 3度目の正直だ。
 二度あることは三度あるなんて日本語は……今は無視!

「【収納ストレージ】!」

 さっきまで海に鎮座していた小島のようなウミガメが、一瞬で消え去った。
 一撃必殺の【収納ストレージ】。
 エルバウ、一撃必殺っていうのはこういうことを言うんだよ。

「終わったぁ……」

 厳密に言えば、アーケロンもクラーケンもまだ生きている。
 アイテムボックスに放り込んだだけだからだ。
 でも、アイテムボックスから自分で出てくることは絶対に出来ないし、中で暴れまわることもできない。
 この瞬間をもって、海獣の脅威は過ぎ去ったと言っていいだろう。

「【解放リリース】」

 私はアーケロンの水柱として収納した海水を、海の中で噴射する。
 その勢いを使って、一切泳ぐことなく海岸へと到着した。
 そこにはエルバウたちと……ありゃ、何か見たことある格好の人たちがいる。
 王都でみた騎士団の甲冑を来た男たちが数人、冒険者たちを囲んで立っていた。
 騎士の中の1人に、見覚えのある顔がいる。
 ヘルムート王が店に来た時、入ってきた騎士の1人だ。
 名前は確か……

「ファックスだっけ?」

「アクスだ。銀髪でまさかとは思ったが、あの料理店の店主とはな。なぜこんなところにいる?」

「なぜって……家がここにあるからだけど」

「まあいい。一部始終、見させてもらった。海獣出現の話を聞いて、早馬を飛ばしてきたんだが……。まさか料理人に先を越されるとは思わなかった。少しばかり、話を聞かせてくれ」

「えー、疲れてるんだけどなぁ……」

「そんなに時間は取らない。はっきり言って、騎士一同驚いているんだ。我々も来たはいいが、どう倒そうかというアイデアまではなかったからな。それをあっさり倒してしまった。どんな手を使ったのか、個人的にも興味がある」

「しょうがないな……。あ、そいつらは海を汚そうとした最低の人間だから」

 私はエルバウに鋭い視線を向ける。
 彼はもう何がなんだか分からないと言った感じで、ただただ呆然としていた。

「そこも見ていた。いくら海獣退治とはいっても、倒す前に守らなければいけないものがある。彼らにはしかるべき処置を受けてもらう」

「うん。任せたよ」

「さあ、店主にも来てもらおうか」

「ミオンね」

 あーあ、早く特大イカリングとか超濃厚なウミガメのスープとか作りたいんだけどなぁ。
 取り調べなんて嫌んなっちゃうよ。
 まあ、悪いことはしてないから怖い取り調べじゃないんだけどね。
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