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第19話 ミラ(※ミラ視点)
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グロウおじさんは悪い人だった。
グロウおじさんはティグリナさんの仲間だった。
エリンが危ない。
エリンを助けてあげなきゃ。
そんな言葉が、頭の中でぐるぐる渦を巻く。
暗い部屋の中で、ミラはぎゅっと膝を抱えた。
彼女の隣には、少し古びたうさぎのぬいぐるみがある。
エリンが大好きだったぬいぐるみだ。
「エリン……」
ミラは小さく呟いて、膝を抱く腕により力を込める。
苦しくって辛くって涙が溢れそうになる。
誰も見てない。泣いたところで、誰も気が付かない。
だけど無意識のうちに、ミラは歯を食いしばって涙をこらえてしまった。
小さなころから、ティグリナによってテイマーとしての英才教育を施された。
最初はわけもわからず、彼女の言うことだけを聞いていた。
ティグリナは人格的にどうあれ、昔はテイマーとして優秀だったらしい。
その教えとミラ自身の才能が合わさり、飛躍的に能力は伸びていった。
だけど大きくなるにつれて、嫌なものがたくさん見えるようになった。
ティグリナは、全然良い人なんかじゃなかった。
私だけ優遇されるから、他の子供たちには妬まれた。
気付いたらひとりぼっちで、ただ領主のところに売られる時を待つだけの無気力な日々を過ごしていた。
そんな時に孤児院へやってきたのが、エリンだった。
はっきり言って、ミラから見てもエリンにテイムの才能はなかった。
ティグリナからはひどい扱いを受けていたし、他の子供たちからもバカにされ仲間外れにされていた。
だけどエリンは、本当に優しくて強い子だった。
――ミラお姉ちゃん。
ひとりぼっちだったミラに、ただ1人だけ声をかけてくれたエリン。
いつしかエリンは、ミラにとって心の支えになり、そして癒しになっていた。
エリンだけは私が絶対に守る。
エリンだけは私が絶対に幸せにする。
そう決意して、ミラは少しずつ気力を取り戻していった。
だけどある日、目が覚めたら。
エリンがいなくなっていた。
そして知った。彼女がティグリナによって追放されたと。
わずか5歳の生き延びるすべを持たない幼女が、魔境とすら呼ばれる森に捨てられたと。
本当はすぐにでも助けに行きたかった。
でもティグリナが仕込んだ隷属の焼き印が、ミラにそれを許さなかった。
再び気力を失ったミラに追い打ちをかけるように、グロウとティグリナの会話が耳に入ってきた。
エリンが生きているなら、それはミラにとって希望の光になる。
でもグロウという信頼していた人間に裏切られたことは、すでに傷だらけだったミラの心をより痛めつけた。
本当にエリンが生きているかどうかすら、分からない。
グロウが金儲けのために考えた作り話かもしれない。
「ミラ」
ガチャリと音がして、部屋の扉が開く。
戸口に立ったティグリナが、にやりと笑って言う。
「出かける準備をしな。お前を良いところに連れて行ってあげるよ」
知ってる。知ってるよ。
エリンのところに連れて行くんでしょ?
それでエリンを連れ戻させるんでしょ?
やだよ。そんなことしたくないよ。
もしエリンが本当に生きてるなら、何とか逃げさせてあげたい。
でも隷属の焼き印のせいで、ティグリナには逆らえない。
「はい……」
ぐちゃぐちゃの感情を飲み込んで、ミラはか細く返事した。
そして立ち上がる。
隣にあったうさぎのぬいぐるみを拾い上げると、ぎゅっと抱きしめた。
グロウおじさんには頼れない。
もう誰にも頼れない。
でもお願い。誰か助けて。
――我々が必ず助けるゆえ、安心して森に参られよ。
ふと、頭の中に声が響いた気がした。
でもそんなはずはないと頭を振って、ミラは外に出る。
そしてティグリナに連れられ、馬車に乗りこんだ。
「ん……?」
視線を感じて、ミラは右斜め前方に視線を向ける。
そこでは艶やかな体を持つ馬と、それを引く男性が立っていた。
こちらを見ているのは男性ではなく、馬の方だ。
少しの間ミラと目が合わせ、そして馬は男性に連れられて歩いて行った。
――変なお馬さんだな。
そう思った程度で、ミラは足元に視線を落としてしまう。
ゆっくりと馬車が動き出し、エリンがいる魔境の森へと進み始めた。
その後ろ姿を、馬と男性――ホスとリエルはしっかり見届ける。
ギルが仕組んだ作戦の駒たちが、いよいよ決戦の地へ集結しようとしていた。
グロウおじさんはティグリナさんの仲間だった。
エリンが危ない。
エリンを助けてあげなきゃ。
そんな言葉が、頭の中でぐるぐる渦を巻く。
暗い部屋の中で、ミラはぎゅっと膝を抱えた。
彼女の隣には、少し古びたうさぎのぬいぐるみがある。
エリンが大好きだったぬいぐるみだ。
「エリン……」
ミラは小さく呟いて、膝を抱く腕により力を込める。
苦しくって辛くって涙が溢れそうになる。
誰も見てない。泣いたところで、誰も気が付かない。
だけど無意識のうちに、ミラは歯を食いしばって涙をこらえてしまった。
小さなころから、ティグリナによってテイマーとしての英才教育を施された。
最初はわけもわからず、彼女の言うことだけを聞いていた。
ティグリナは人格的にどうあれ、昔はテイマーとして優秀だったらしい。
その教えとミラ自身の才能が合わさり、飛躍的に能力は伸びていった。
だけど大きくなるにつれて、嫌なものがたくさん見えるようになった。
ティグリナは、全然良い人なんかじゃなかった。
私だけ優遇されるから、他の子供たちには妬まれた。
気付いたらひとりぼっちで、ただ領主のところに売られる時を待つだけの無気力な日々を過ごしていた。
そんな時に孤児院へやってきたのが、エリンだった。
はっきり言って、ミラから見てもエリンにテイムの才能はなかった。
ティグリナからはひどい扱いを受けていたし、他の子供たちからもバカにされ仲間外れにされていた。
だけどエリンは、本当に優しくて強い子だった。
――ミラお姉ちゃん。
ひとりぼっちだったミラに、ただ1人だけ声をかけてくれたエリン。
いつしかエリンは、ミラにとって心の支えになり、そして癒しになっていた。
エリンだけは私が絶対に守る。
エリンだけは私が絶対に幸せにする。
そう決意して、ミラは少しずつ気力を取り戻していった。
だけどある日、目が覚めたら。
エリンがいなくなっていた。
そして知った。彼女がティグリナによって追放されたと。
わずか5歳の生き延びるすべを持たない幼女が、魔境とすら呼ばれる森に捨てられたと。
本当はすぐにでも助けに行きたかった。
でもティグリナが仕込んだ隷属の焼き印が、ミラにそれを許さなかった。
再び気力を失ったミラに追い打ちをかけるように、グロウとティグリナの会話が耳に入ってきた。
エリンが生きているなら、それはミラにとって希望の光になる。
でもグロウという信頼していた人間に裏切られたことは、すでに傷だらけだったミラの心をより痛めつけた。
本当にエリンが生きているかどうかすら、分からない。
グロウが金儲けのために考えた作り話かもしれない。
「ミラ」
ガチャリと音がして、部屋の扉が開く。
戸口に立ったティグリナが、にやりと笑って言う。
「出かける準備をしな。お前を良いところに連れて行ってあげるよ」
知ってる。知ってるよ。
エリンのところに連れて行くんでしょ?
それでエリンを連れ戻させるんでしょ?
やだよ。そんなことしたくないよ。
もしエリンが本当に生きてるなら、何とか逃げさせてあげたい。
でも隷属の焼き印のせいで、ティグリナには逆らえない。
「はい……」
ぐちゃぐちゃの感情を飲み込んで、ミラはか細く返事した。
そして立ち上がる。
隣にあったうさぎのぬいぐるみを拾い上げると、ぎゅっと抱きしめた。
グロウおじさんには頼れない。
もう誰にも頼れない。
でもお願い。誰か助けて。
――我々が必ず助けるゆえ、安心して森に参られよ。
ふと、頭の中に声が響いた気がした。
でもそんなはずはないと頭を振って、ミラは外に出る。
そしてティグリナに連れられ、馬車に乗りこんだ。
「ん……?」
視線を感じて、ミラは右斜め前方に視線を向ける。
そこでは艶やかな体を持つ馬と、それを引く男性が立っていた。
こちらを見ているのは男性ではなく、馬の方だ。
少しの間ミラと目が合わせ、そして馬は男性に連れられて歩いて行った。
――変なお馬さんだな。
そう思った程度で、ミラは足元に視線を落としてしまう。
ゆっくりと馬車が動き出し、エリンがいる魔境の森へと進み始めた。
その後ろ姿を、馬と男性――ホスとリエルはしっかり見届ける。
ギルが仕組んだ作戦の駒たちが、いよいよ決戦の地へ集結しようとしていた。
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